魔法少女リリカルなのはstrikers Return of a soul   作:K-15

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第2話 ミッドチルダのそら、なの

「フィル、あの男が消えたぞ。あの光のせいか?」

 

「そう見て間違いないな。どの道アイツから情報を引き出すのは無理だった。どうして私達がここに来てしまったのか、手掛かりすら見つからん」

 

「少なくとも前に居た場所とは違う。この環境に適応するしか生き延びられない」

 

「まずはどうする? 武器は手に入れたがコレだけでは何も出来ん。今日を生きる事も」

 

「なら決まってる。まずは食い物だ」

 

「ふふ、変わらないな。クレア」

 

「当然、まずはあそこに行くぞ」

 

2人の女、クレアは眼前の高層ビルを見上げた。

青白い長髪の女、フィルは奪い取った武器、デバイスを構えて出入口である自動扉のガラスに向かってデバイスの銃口を向ける。

 

(使い方が頭の中へ入り込んで来る。射程距離、威力、アレぐらいなら簡単に撃ち抜ける。行くぞ)

 

青い銃のデバイスのトリガーを引くと銃口から魔法弾が発射された。

1発、2発、3発。

高速で発射された3点バーストは正確に1点を撃ち抜き自動扉を破壊する。

 

「よっしゃ!! 行くぞフィル!!」

 

クレアはデバイスを肩に担いで無理やり開けた高層ビルの入り口へ走った。

その赤い瞳は無邪気に遊ぶ子供の目そのものだ。

飛び込んだ先にはビルで働く職員が居り、突然の襲撃に皆慌てふためき動揺して居る。

物陰に頭を抱えて隠れるモノ。

一目散に上の階へ逃げるモノ。

管理局へ通報するモノ。

 

「な、何者だ貴様!! ここを何処だか知ってるのか!!」

 

「うるせぇ!! さぁて、食い物は何処だぁ?」

 

「食い物だと? そんなモノの為に襲撃したのか?」

 

このビルの局長である中年男性はクレアが言う襲撃の理由に驚きを隠せない。

 

「このビルはデバイスを修理する為の部品を供給する会社だ。本当に食べ物だけが目的ならこんな所へ来たって――」

 

「そんなモン知るかァァァ!!」

 

人の話もまともに聞かないでクレアは赤い剣を振り上げた。

大振りで叩き付けられた剣は床の白いタイルを砕き、コンクリートの破片らが飛び散る。

彼女は本当に、只食料を奪い取る事しか考えてない。

 

「ひぃ!?」

 

「チッ、避けやがった」

 

「か、管理局がもうすぐ来る。そうすれば貴様のような盗賊になど」

 

デバイスを持つクレアに怯え床に転げる局長。

情けなく震える姿にクレアは心の中でたまらない気持ちを抱く。

 

(アタシの攻撃にビビってる!! こんな気持ちは初めてだ!!)

 

「ミッドチルダでこのような事を。管理局が黙ってる筈がない」

 

「管理局? 何だか知らねぇがソコになら食い物があるのか?」

 

剣の切っ先を向けるクレア。

局長は助かりたい一心で頭を上下にブンブン振った。

 

「ならこんな所に用はない。命拾いしたなオッサン」

 

その言葉を信用したクレアは嵐のように現れて嵐のように去って行く。

肩に赤い剣を担いで、ぶち破った自動扉から悠々と外に出て行ってしまう。

出た先にはフィルが待って居た。

 

「ここに食い物はないってよ」

 

「だろうな」

 

「だろうなって、知ってるなら教えろよ」

 

「お前は言っても言う事を聞かないからな。行けばすぐにわかると思った」

 

「無駄に体力使っちまったじゃねぇか。それより、次は管理局って所へ行くぞ」

 

「行くのは良いが何処にあるのか知ってるのか?」

 

「適当に行けば着く」

 

根拠もない自信に満ちた声で言い切るクレア。

それ以上は聞いても無駄だとフィルは言及しない。

けれどもわざわざ出向かなくても管理局側からクレアに接触して来た。

 

「そこの2人、止まりなさい」

 

「うん?」

 

そこには2人の少女が。

青い短髪にハチマキ、ローラースケートと籠手型のデバイスを装備したスバル・ナカジマ。

オレンジ色のツインテールに銃型のデバイスを持つティアナ・ランスター。

ティアナは自身のデバイス、クロスミラージュを構えてクレアとフィルに向かって警告する。

 

「何が目的かは知らないけれど、これ以上の破壊行為は許しません」

 

(会議で偶然近くに居たから派遣されたけど。ティア、この人達の事どう思う?こんな街の真ん中で騒動を起こすなんて)

 

(わからない。取り敢えず、交渉して本部まで連れて行かないと)

 

「何だ? 邪魔するならぶった斬るぞ」

 

スバルとティアナの考えとは裏腹にクレアは交戦する気が満々だ。

切っ先をスバルへと向け、デバイスを使いたくてたまらない。

 

「交渉は通じそうにないわね。行くわよスバル!!」

 

「了解!!」

 

スバルが前衛、ティアナが射撃戦で後方支援。

長く一緒に居る為どうすれば互いに動きやすいのか考えなくても体が動いてくれる。

スバルのローラースケート、マッハキャリバーが火花を上げ急加速し接近戦を仕掛けに行く。

右腕のリボルバーナックルも回転させクレアの赤い剣をねじ伏せようと試みる。

 

「はやい!?」

 

クレアは初めて見るデバイスを使った戦闘に驚くも、反射神経だけでリボルバーナックルを剣で受け止めた。

ローラーと剣身がぶつかり合い激しい火花を散らす。

スバルの青い瞳とクレアの赤い瞳から来る視線が交わる。

 

「コイツ、さっきのオッサンとは違ってアタシらと同じ様な武器を!!」

 

「この人!?」

 

接近したスバルだがある事に気が付くとバックステップをして距離を離してしまう。

念波で後衛のティアナに声を送りどうすれば良いのか指示を仰ぐ。

 

(ティア、この人デバイスは使ってるのにバリアジャケットは着てない。このまま普通に殴ったらケガさせちゃう)

 

(デバイスは非殺傷に設定されてるんだし、加減して攻撃すれば良いでしょ!!)

 

(そんな繊細な事出来ないよぉ~)

 

(なら捕獲魔法!!)

 

念波で怒鳴るティアナ。

自分と似たタイプのデバイスを持つフィルに彼女は苦戦して居た。

両手のクロスミラージュから放たれる魔法弾、シュートバレットがことごとく撃ち落とされ相殺してしまう。

スバルの邪魔をさせないようにフィルを狙ってこちらに注意を引きつつ隙を突いて援護射撃する筈が、想定以上のフィルの射撃センスのせいで思うようにはいかない。

 

「こんな感じか。大体わかった」

 

「っ!!」

 

ティアナは息を呑んだ。

1発づつ撃って居たフィルがギアを上げ3点バーストで魔法弾を発射しだした。

クロスミラージュの魔法弾を相殺してもまだ2発残って居る。

バリアジャケットで防御する事も出来るがわざわざ当たりたくもない。

瞬時に横へ飛び込み弾を回避する。

ティアナがさっきまで居た場所には魔法弾で破壊されたアスファルト。

 

(只の不良にしてはデバイスの使い方が上手い。これくらいの仕事ならさっさと終わらせられると思ったけど、予想が外れたわね)

 

「次は当てる」

 

フィルの射撃精度は凄まじかった。

狙った場所へ正確に着弾するだけでなく、ティアナが動く先を予測してブラスターバレットのトリガーを引いて来る。

街の真ん中で広くはあるが周囲の被害も考えなくてはならないティアナはそう自由には動けない。

物陰にも隠れれば建造物内の人に被害が及ぶ可能性もある。

道路を広く使えば復旧させるのに時間が掛かってしまう。

それでも攻撃を避け続けられるのは日頃の訓練の賜物と今までの経験を培ったお陰だ。

 

「撃って、回避。撃って、回避!!」

 

「しぶとい女」

 

けれどもいつまでも防戦一方の彼女ではない。

培った経験がティアナの体を動かし、相手の弱点を見つけ出す。

 

「これくらいの攻撃、なのは隊長の訓練で慣れてる!!」

 

『ヴァリアブルバレッド』

 

デバイスの電子音声が響き、銃口から発射される魔法弾の種類が変わった。

攻撃魔法の弾をバリアで守り貫通威力を高めて発射。

オレンジ色に光り目標へ進む魔法弾にフィルもすかさずトリガーを引いた。

正確な射撃、3点バースト。

青の魔法弾とオレンジの魔法弾が激突した時。

 

「何っ!?」

 

「貫ける」

 

青い魔法弾を撃ち抜き、更に先のフィルに向かって魔法弾は飛んで行く。

瞬きする暇もない。

フィルはその場から飛び退き魔法弾の直撃から回避した。

砕け散るアスファルトに舞い上がる砂埃。

 

「まだ私の攻撃は終わってない」

 

『シュートバレット・バレットF』

 

「なにっ!?」

 

息を呑むフィル。

前方に注意を向けて居る隙に放たれた誘導弾が既に背後から迫って来て居た。

その事に気が付いた時にはもう遅く、逃げるも防ぐも出来ない。

攻撃を喰らう覚悟を決める。

思考がクリアになり、放たれたオレンジ色の魔法弾がスローモーションに映しだされ、自分の体に流れる魔力が手に取るようにわかった。

体内に眠る莫大な魔力量。

それを開放する事が出来れば。

 

(私の中にあるこの力……エネルギー……。もっと力を!!)

 

誘導弾は直撃はせず、アスファルトにぶつかり爆発を巻き起こす。

砂煙に視界が遮られるがティアナは構わず捕獲魔法を唱えた。

魔法弾と同じオレンジ色のリングが3つ、フィルを捉える為に飛ぶ。

しかし煙の中に飛び込んだリングが彼女の体に触れる事はなかった。

 

「手応えがない? 上なの!?」

 

青い魔法弾が9発、3点バーストで発射された。

 

「ヴァリアブルバレッド」

 

青い光を帯びる魔弾は一直線にティアナに発射される。

瞬時に飛び退き回避するが、魔弾は彼女の動きに合わせて誘導して行く。

時間が経過するにつれて戦闘技術を上昇させて行く相手にティアナは驚きながらも、自身が積み重ねた戦闘技術をぶつける。

足元から魔法陣を展開すると、幾つものオレンジ色の魔球が現れた。

 

「クロスファイアァァァ!! シュゥゥゥット!!」

 

ティアナの意思に従い無数の魔球が発射される。

迫る青い魔弾。

その全てに正確に着弾するティアナの攻撃。

響く爆音、爆発する魔力は煙を生み視界を遮る。

だが、煙の中から青い魔弾が数発飛んで来た。

 

「っ!! 全弾命中したのに!!」

 

相殺出来ない相手の攻撃。

アスファルトを蹴るティアナは後ろに下がると、次の瞬間には今まで居た場所に青い魔弾が直撃した。

再び砂煙が舞い上がり相手の位置が見えなくなる。

念波を飛ばすティアナは、共に戦闘を繰り広げるスバルに状況を確認した。

 

(スバル、そっちはどう?)

 

(手加減しながら出来る程、おとなしい子じゃないよ。なんとかやってるけれど)

 

(非殺傷には設定されてるんだし、少し本気を出すしかないか。これ以上暴れられても困るしね)

 

(わかったよ。こっちもやってみる)

 

スバルはもう1人の暴人、クレアと戦闘を繰り広げる。

バリアジャケットを装備して、マッハキャリバーとリボルバーナックルも同時に装備。

接近戦を得意とする両者は力の限りアームドデバイスをぶつけ合う。

スバルが装備するリボルバーナックル。

高速回転する右手首部の歯車状の機構へ、クレアの赤い大剣が叩き付けられる。

 

「こんな街中で暴れるんじゃない!!」

 

「コイツ、潰れろっ!!」

 

激しく飛び散る火花。

魔法による攻撃をするのでもなく、クレアは自身の身体能力を駆使してがむしゃらに剣を振る。

その度に響く甲高い金属音。

スバルはその全ての攻撃を防ぎながら、相手の戦闘能力を感覚的に理解する。

 

(バリアジャケットも装着してない。魔法も使わず、ただ力任せに剣を使ってるだけでこれだけのスピードとパワー。普通の人と違う事くらいはあたしにもわかる。でも……)

 

「手ぇ抜いてるなら、そのままぶった斬る!!」

 

「ウォォォォッ!!」

 

大きく振り上げられ、そして力任せに叩き付けられる赤い剣。

たったそれだけの攻撃でも相当な威力を持つ。

空気すら斬り裂き、触れるモノ全てを切断し、粉砕するだけのパワー。

だが、機動六課で積んだスバルの経験と技術はソレを凌駕する。

 

「なっ!?」

 

「悪いけれど、これ以上暴れられる訳にはいかないんだ!!」

 

白刃取り、スバルは寸前の所でクレアの剣を両手の平で挟み込み攻撃を受け止めた。

予想だにしない行動に動揺してしまい動きが止まってしまう。

 

「リボルバァァァ」

 

(っ!! マズイ)

 

スバルの意思に従い、火花を撒き散らし高速回転するガントレットの歯車。

そのモーションに警戒して直ぐ様離脱を図るクレアだが、両手に掴まれたデバイスは押しても引いてもビクともしない。

そうして居る間にも、放出される魔力が収縮され、スバルの拳が音速を超える。

 

(間に合わない!!)

 

「キャノン!!」

 

拳が離れたその瞬間、クレアの体に拳が叩き込まれんとした。

デバイスは非殺傷に設定されて居るが、攻撃による衝撃や痛みは伴う。

瞬きする一瞬、クレアが握るデバイスに埋め込まれた黒いクリスタルが光る。

無意識の防御反応が彼女の魔力をクリスタルへと流し、本来備わるデバイスの力が開放された。

周囲を光に包み込む強烈な輝き。

 

「こ……これは!?」

 

クレアの体にバリアジャケットが装備される。

赤と白を基調としたソレは不可視の防御フィールドを形成し攻撃を防ぐと同時に、クレアを空へと浮遊させた。

今まで装備して居なかった相手が突然バリアジャケットを展開した事に驚くスバルだが、1番驚いて居るのはクレアの方で、自分の身に起こった変化に目を見開く。

 

「どうなってるんだ? コレは一体何なんだ? わかんねぇけど……強くなったのはわかる!!」

 

「バリアジャケットを展開した……来る!!」

 

『ウイングロード』

 

魔力により生成された青い道がスバルの足元より伸びる。

ウイングロードを足場として空中にどこまでも伸ばし、マッハキャリバーのローラーを駆動させ走った。

その時にはもう、スバルの視界にクレアの姿は映ってない。

赤い閃光のように、弾丸となってスバルに襲い掛かる。

 

「遅え!!」

 

「っ!?」

 

火花が走る。

クレアの剣とスバルのガントレットが再びぶつかり合う。

闘志をむき出しにして剣を振るうクレアに、スバルも得意の格闘術で対抗した。

拳を突き出し、蹴りを繰り出す。

マッハキャリバーの加速を利用した打撃の連打。

ただの暴徒ならスバルの力をここまで引き出さなくても倒す事は出来る。

けれどもクレアはその連打に反応した。

反射、攻撃、反応、速攻。

互いに一歩も譲らない攻撃の応酬。

響く激音。

 

「なんで倒せねぇんだよ!! 鬱陶しい!!」

 

「悪いけど、負ける訳にはいかない。行くよ、マッハキャリバー!!」

 

『カートリッジリロード』

 

「街にも一般人にも被害は出させない。アナタはここで止めます!!」

 

(コイツ……流れが変わった……)

 

ガントレットから吐き出される薬莢。

カートリッジに込められた魔力が開放され、瞬間的に爆発的な魔力を得る。

高速回転する歯車。

 

「リボルバァァァ」

 

衝撃波と魔力を一気に収縮。

目の前に居る目標に目掛け、力の限り拳を突き出した。

 

「シュゥゥゥット!!」

 

青い魔球と衝撃波が同時に発射される。

迫る攻撃に、クレアは瞬間的に理解した。

 

(避けられない。だったらやる事は1つだ!!)

 

片腕で振り回す剣のグリップを握り直し、目前に迫る青い魔球に腕を伸ばし剣を突き刺した。

スバルの渾身の攻撃とクレアのがむしゃらなパワーがぶつかり合う。

 

「っぐ!? 押し負ける!?」

 

力と魔力と技術。

それらを備えて居るスバルに、力だけで対抗しようとしたクレアに勝ち目はなかった。

グリップを両手で掴む彼女は力を振り絞り、気力だけで剣を振り上げ魔弾の軌道を変える。

空に消える青い魔球。

攻撃を往なす事が出来たクレアだが、ペース配分も何も考えずに戦闘を続けて来たせいで体力の低下が伺える。

 

「はぁ、はぁ、クソッ!! コイツラが管理局。なんだって言うんだ!!」

 

「まだ続ける気ですか?」

 

「いいや……その必要はない……」

 

(スバル、そっちに!!)

 

闘争心を収めるクレアにスバルも構えを解いた。

それを見計らって、背後から魔弾が迫る。

ティアナの念波も届き攻撃を察知するスバルは、ウイングロードの道を伸ばし軌道上から回避した。

 

(ふぅ、不意打ちとはね。ティアナは大丈夫?)

 

(なんとかね。普通の暴徒とは違う感覚だった。それでも負けるような相手ではないけれど、上手く逃げられた)

 

(だね。取り敢えず、八神隊長に報告しないと)

 

既に目の前には誰も居ない。

隙を見計らって合流したクレアとフィルはその場から瞬時に逃げ出した。

既に追い掛けられる距離ではなく、2人の影は空の彼方へ消える。




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