魔法少女リリカルなのはstrikers Return of a soul 作:K-15
本部へ戻るスバルとティアナは、八神はやてに今回の件に付いて報告した。
A4用紙にまとめられた資料の活字に目を通し、デスク正面にピンと立つ2人へ視線を向ける。
「急な出動で大変やったな」
「いえ。もう少しの所で取り逃がしてしまって……」
「まぁ、そんな日もあるよ。いつも上手く行く訳やあらへん」
「街にも多少被害が出てしまって……本当にすみません」
頭を下げるティアナと、少し遅れて続くスバル。
2人とは対照的にはやては笑みを浮かべて、この時点ではそこまで心配する程の事件とは考えて居なかった。
「一切のデータがない相手。素人同然のデバイスの使い方。そこに油断がなかったとは言えやんけど、その辺りは他の隊長に指導してもらうとして。今回の相手の事はシャーリーとリーンに分析して貰っとるから、次に備えて今日は休み。2人とも慣れへん会議で疲れとるやろ?」
「もう途中で眠たくて大変でしたよ」
「コラッ!!」
思わず本音を言ってしまうスバル。
ティアナに脇腹を肘で叩かれ慌てて口を塞ぐが、漏らしてしまった声ははやてに聞かれてしまって居る。
「ふふふ。ほな、報告は終わり。ゆっくり休んで体を回復させるように」
「了解!!」
「了解です!!」
敬礼をするスバルとティアナは執務室から出ると、言われた通り体を休める為に自分の部屋へと向かう。
2人が部屋から出て行ったのを確認するはやては椅子の背もたれに体重を預ける。
まぶたを閉じ、深く息を吐く。
そのまま数秒経ってから、右手を伸ばし端末に触れた。
パネルを叩き、別室のシャーリーに通信回線を繋げる。
展開するディスプレイにはデバイス関係の主任を務めるシャリオ・フィニーノの姿。
仲の良い人からはシャーリーと呼ばれて居る彼女は、掛けてるメガネの位置を修正してはやてに視線を向ける。
「シャーリー、分析はどうなっとる?」
『はい、おおよそは終わりました。ですが……』
「何かあったん?」
『はい……』
神妙な面持ちのシャーリーは重たい口を開け、スバルとティアナと戦闘を行った2人の分析結果を報告した。
『魔道士としてのランクはそこまで高くないです。赤い剣を持つ人がB、青い銃を持つ人も同じくB。逃げられはしましたが、スバルとティアナが負ける相手ではないかと』
「なら何が問題なん?」
『あの2人の体にはロストロギアが埋め込まれて居ます』
「ロストロギアやて!?」
目を見開くはやて。
ロストロギアは管理局で厳重に管理されており、職員でも近づく事は許されない。
考えられる可能性は、限りなく低いが管理局からの強奪。
もしくは、新たに発見、開発されたかのどちらか。
『どのような経緯かはわかりませんが、あの人達はロストロギアを所持しています。ですが、幸いなのはその力を充分に発揮してない事。力を使われる前に確保出来れば、最悪の事態は防げます』
「そうやな。このままスバルとティアナに任せるつもりやったけど、そうも行かへん案件やな。なのはちゃんとシグナムは出張中やし……」
顎に軽く手を添えて考えるはやて。
ロストロギア違法所持者。
あの2人を確保するのは勿論だが、危険を伴って仲間が傷付くのは見たくない。
今や管理局でエースと呼ばれる存在であるなのはも、数年前には無理をしたせいで大怪我を負ってしまった。
その時の事がはやての頭の中で鮮明に蘇る。
真っ赤に染まるバリアジャケット。
腹部からは血が止めどなく溢れ、力を失って行くなのは。
(もうあんな事は繰り返させへん!! その為には……)
決意を固めるはやて。
彼女は機動六課の長として、この案件を早急に終わらせるべく動く。
「フェイト執務官とヴィータ副隊長にもこの事を伝えて頂戴。もしかしたら、2人にも出動して貰うかもしれへん。何かが起こってからでは遅い。早い事片付けやんと」
『わかりました』
うなずくシャーリー。
当面の方向性を固めた所に、別の回線が割り込んで来る。
映し出される映像には銀色の長髪と幼い容姿、妖精のように小さな体のリーンフォース・ツヴァイ。
『はやてちゃん。あの2人についてもう少しだけ報告が』
「なんや?」
『あの2人のデバイスには、まだわからない機能があります。本体に埋め込まれたクリスタルが機能すればどうなるのか』
「でも、あの時の戦闘映像からもわかるやろうけど、まだデバイスに使い慣れてへん。そうなる前に確保して、ロストロギアの事を聞かんと」
『はい。でも充分に警戒して下さいね。2人の能力は完全に分析出来た訳ではありませんので。特にロストロギア関連ともなれば、その力は未知数です』
最後に見せたリーンの表情は、眉を傾け心配そうな表情をして居た。
「シャーリー、そのロストロギアの名称は?」
『はい、データバンクを調べて居たら少しだけ情報が。オーバーソウル……それが、2人が所持するロストロギアの名前です』
///
高層ビルの屋上で、クレアは握る赤いりんごにかじり付く。
シャリシャリと音を鳴らしながら歯ですり潰される実からは、甘い果汁が絞り出され喉を潤す。
その果汁で口元が汚れるが、それでも気にせずに食べる動作を止めない。
彼女の隣でフィルは青白い長髪を風になびかせて、遠い空を眺めて居た。
「クレア、次はどうするつもりだ?」
「そうだな。奪い取ったのも、今食ってるのが最後だからな」
言いながら最後のひと口を頬張った。
種と芯だけになったりんごを投げ捨て、ベタベタになった口元を無造作に袖で拭う。
2人の目の前に広がる景色、ミッドチルダの風景。
天高くそびえ立つ高層ビルはどこまでも広がって居る。
ココは完全に整備された大都市。
ゴミ1つ落ちて居らず、街は清潔の一言。
故に、金を一切持って居ない2人は、このミッドチルダの恩恵を授かる事は出来ない。
「ここに来て1週間。私はこの土地が嫌いだ」
「あぁ、前に奪い取ったモノも食べきったしな。管理局って奴らが来ると、奪い取るのもめんどうだ」
「何もないこんな所、さっさと移動するか?」
「だな。そうと決まれば、さっさと行こうぜ。レッドストライマー」
コンクリートの床に置かれたデバイス。
使い方を未だに理解してない為、デバイスは武器化した状態のままだ。
クレアは赤い剣のデバイス、レッドストライマーのグリップを握り締めると、自身の体から溢れ出る魔力をクリスタルに流し込みバリアジャケットを展開させる。
白と赤を基調としたバリアジャケット。
フィルの方も黒と青のバリアジャケットを展開すると、2人は同時に屋上から飛んだ。
風を感じながら飛ぶ、なびく栗色の髪の毛。
宛もなく進む先に何があるのかは知らない。
それでも2人はこの地から、ミッドチルダから出たかった。
果てしなく続く空、遮るモノなど何もない空。
けれどもそこで、自分達以外の存在を感じ取る。
「なんだ!?」
逃げようとした時にはもう遅い。
拘束魔法、黄色のバインドが2人の体を締め上げる。
クレアとフィルは背中合わせにされて、身動きを封じられた。
「これは管理局が使って居た魔法か……」
「クソッ!! このくらいなら!!」
腕力だけでバインドを引きちぎろうと試みるクレアだが、その程度ではビクともしない。
無駄に体力だけを消費してしまう。
そうして動けない2人の元へ、黒いバリアジャケットを装着した金髪の女が現れた。
「管理局のモノです。アナタ達は器物破損罪等の容疑で逮捕します」
「やはりまた管理局か」
「お前……誰だ!!」
「私はフェイト。フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。勧告もなしに拘束したのは謝ります。ですが、アナタ達が今までに繰り返して来た事は犯罪です。処罰を受ける必要があります」
「勝手にアタシらを枠組みにはめるな!! そんなの、お前らが勝手に決めた事だろ!!」
「ですが、アナタ達だけを特別視する訳にはいきません。それに私は危害を加えたりはしません。法律に則り、然るべき対処を行います」
「クソッ!! フィル、行けるか?」
「問題ない。行くぞ」
フィルは握って居たデバイス、ブラスターバレットのトリガーを引くと、甲高い銃声が響く。
地面に向かって発射された青い魔弾。
けれどもソレは空中で旋回すると、2人を締め上げる黄色のバインドへ命中した。
魔弾はバインドを破壊し、拘束されて居た体は自由になる。
「良し、これで!!」
「あなたは!? 止まりなさい!!」
「こんのォォォッ!!」
フェイトの静止も聞かずに、クレアはレッドストライマーを振り上げて突っ込んだ。
ぶつかり合う金属音。
フェイトは自身のデバイス、バルディッシュを展開し、その柄でクレアの攻撃を受け止める。
鍔迫り合い。
力任せにクレアは剣を押し付けるが、それくらいで倒せる相手ではなかった。
「バルディッシュ!!」
『サンダースラッシュ』
柄の先端から魔力で形成された黄色い刃が発生した。
それは巨大な鎌のよう。
剣を押し返すフェイトはそのままバルディッシュで斬り掛かる。
「ハァッ!!」
「チッ!!」
黄色い刃は空を切る。
反応したクレアは瞬時に剣を引くと後方へ飛び退いた。
周囲は一気に殺気立った空気が支配する。
戦闘態勢に入るフェイトだが、それでも説得を試みる。
「これ以上すると言うのなら、ケガでは済みませんよ? それに今ならまだ、これ以上罪は重くなりません」
「聞くと思うのかい?」
「アナタでは私に勝てません」
「同じように武器を持ってるからって……」
「下がれクレア!!」
フィルがブラスターバレットのトリガーを引いた。
激しい閃光、3点バースト。
青い魔弾はフェイトに襲い掛かる。
「アイゼン!!」
『シュワルベフリーゲン』
赤い魔力に包まれた鉄球が4発、別方向から飛来する。
それらはフィルが放つ青い魔弾に直撃すると相殺し、3発全てを破壊した。
残る1発は魔力により軌道を制御されながら、フィルを目掛けて飛んで行く。
「新手か!? クッ!!」
反射的に向ける銃口は赤い魔弾を狙う。
引かれるトリガー、マズルフラッシュ。
正確な射撃はソレを撃ち落とし、爆煙が発生する。
現れた増援は、真っ赤なバリアジャケットとシルバーのハンマーを構える幼き少女。
その小さき体のどこにそれだけのパワーがあるのか、片腕で軽々とハンマーを振り回す。
「ヴィータ!!」
「悪ぃ、少し遅れた」
「こっちは大丈夫。それよりも……」
「あぁ、コイツラがはやての言ってたロストロギア所持者だな?」
「報告通り、今はまだ大丈夫だけれど、いつ暴走するのか……」
「アタシラに比べたら明らかに格下なんだ。さっさと終わらせるぞ」
キッと鋭い視線を向けるヴィータにクレアも負けじと威嚇する。
「なんだ? このチンチクリンは? 管理局って所はこんなガキに頼ってるのか? 背も小せぇし、前の奴よりも弱いんじゃねぇの?」
煽るように相手を見下すクレアだが、ヴィータはこの場面では冷静だった。
管理局員として、はやてに仕える部下として、仕事を真っ当する。
「言いたい事はそれだけか? なら、こっちが聞きたい事はお前達を捕まえた後だ」
瞬間、小さな体は赤い残像となって加速した、
残像はクレアに接近し、右手に握るハンマーを振り上げる。
「こいつ!!」
レッドストライマーを両手で構え、振り下ろされる衝撃を受け止める。
外見からは想像も付かないパワー。
刃がギリギリと悲鳴を上げる。
「どっからこんな力が出るんだよ!!」
「アタシの事を舐めてくれた礼はさせて貰うからな」
「冗談。そんなので殴られたら死んじまうだろ」
「非殺傷に設定してある。ちょっと痛いだけだから安心しな」
「痛いのも……嫌だね!!」
ハンマーを弾き返す。
すかさずレッドストライマーを振り斬撃を繰り出すが、ヴィータはその動きを容易く見破る。
右へ、左へ。
体を半身動かすだけで、クレアが振る切っ先は空を切る。
何度攻撃しても当たらない。
自身の身体能力と感覚だけで戦うクレアとは違い、ヴィータは培った経験と技術がある。
出会って数刻でその事に気が付いて居たが、クレアは攻撃する手を止めない。
「こなクソッ!!」
「無駄だ。お前じゃアタシに勝てない。どんなに頑張っても、ランクBのお前じゃ」
「やってみなきゃ……わっかんねぇだろ!!」
大きく振り下ろされたレッドストライマー。
ヴィータは敢えて避けようとはせず、左肩にその一撃を受ける。
「なっ!?」
「言っただろ? お前じゃアタシに勝てねぇんだよ!!」
息を呑むクレア。
切っ先は赤いバリアジャケットを貫けない。
ヴィータはハンマーを振り被り、自身の力を見せ付ける様に全力で叩き込む。
「アイゼン!!」
『カートリッジリロード』
「ラケーテン!!」
排出される薬莢。
魔力カートリッジを消費して赤いバーニアを噴射する。
推進力をパワーに変えて、更に打撃力の上がった一撃を繰り出す。
「ハンマァァァッ!!」
「っ!?」
避ける事は出来ない。
その一撃はクレアの脇腹に直撃し、為す術もなく吹き飛ばされ、重力に引かれて行く。
ガンダム以外を書き慣れてないせいで更新が遅くなっております。
なのはの知識が浅い事もありますが、更新を早く出来るように頑張りますので。
ご意見、ご感想お待ちしております。