魔法少女リリカルなのはstrikers Return of a soul 作:K-15
「クレア!!」
彼女がやられた事に気づくフィルは、地上に激突する前に助けに行こうとする。
けれどもフェイトは思うようにさせてはくれない。
素早い動きで回り込み、バルディッシュが形成する魔力の鎌を振り被る。
「悪いけど行かせてはあげられない」
「クッ!?」
黄色の閃光。
フィルの目の前を魔力の鎌が斬り裂く。
息を呑み、神経が過敏になる。
はらりと風で飛んで行く銀髪が3本。
数秒も経過すれば、もうどこへ飛んで行ったのかもわからない。
瞬間。
「邪魔だ!!」
ブラスターバレットを向けトリガーを引く。
青い魔弾が3発、フェイトを襲う。
だが歴戦の戦士にこの程度の攻撃は通用しない。
「甘い!!」
体を半身反らすだけで魔弾を回避するフェイト。
バルディッシュを両手で握り直した所を、更に続けて3発の魔弾が撃たれる。
「ハァァァッ!!」
斬り刻む。
取り回しの難しい鎌を巧みに操り、黄色の閃光がほとばしる。
横へ、縦へ、斜めへ。
「チッ!!」
引かれるトリガー。
ブラスターバレットは激しいマズルフラッシュを上げながら魔弾を何発も発射。
けれどもフェイトの黒いバリアジャケットにはキズ1つ付かない。
魔弾を斬り刻む中で、フェイトは離れて居た距離を詰めて来る。
すぐ目の前にまで迫る相手に臆する事なく、フィルはトリガーを引くのを止めない。
何発撃ったかもわからない魔弾。
フェイトはバルディッシュで一閃すると全てを消し去り、遂に2人は肉薄した。
ぶつかり合う2人の視線。
「これだけ近付けば、そのデバイスは使えない」
「まだ終わった訳ではない」
「アナタ達はロストロギアを所持して居る。ソレは危険なモノなの」
「うるさい人間が」
「話してもわからないようですね。残念ですが、アナタを逮捕します」
「誰の言う事も聞かない。私は自分の意思で生きる!!」
握るブラスターバレットの銃口をフェイトの額へ叩き込む。
フェイトはすかさず反応し、バルディッシュの柄でフレームを受け止めると銃口を上に反らす。
ギリギリと押し付けるフィル。
両腕に力を込めても押し返す事が出来ず、フェイトは魔力とは違う単純な力の大きさに驚いた。
(この人、片腕なのに……)
「クレアは私が守る!! 管理局だろうとなんだろうと関係ない!!」
力負けするフェイトの眼前に再び向けられる銃口。
そして、視界が真っ白になる程の閃光。
「っ!?」
反射的に顔を反らすフェイトの数ミリ横を魔弾が通り抜けて行く。
けれどもソレは、彼女とは違い非殺傷設定の施されてない攻撃。
息を呑むフェイト、避ける事が出来たのは運でもある。
(危なかった。この人、本気で……)
「外した!?」
「これ以上は!!」
バルディッシュを引きフィルの前から飛び退く。
たったそれだけで、力んで居た彼女の姿勢は呆気無く崩れて隙を晒してしまう。
「貰った!!」
振り上げられるバルディッシュの鎌。
高い魔力による強力な一撃が叩き込まれんとする一瞬、フィルは逃げるでも防ぐでもなく、姿勢を正す事もなく地上に向かって急降下した。
重力をも利用して加速するフィルの体に、バルディッシュの刃はかすめる事も出来ない。
「しまった!? 逃げられる」
フェイトもその後姿を急いで追い掛ける。
逃げる彼女が向かう先、そこには唯一の仲間であるクレアの姿。
「クレア、聞こえるか!! 私の声が!!」
遥か先、地上のアスファルトに激突寸前で、意識を失って居たクレア力強くまぶたを開け覚醒した。
「フィル……フィル!!」
落下して居た体を地面スレスレで浮き上がらせ、再び空に向かって飛び上がる。
風を切り、栗色の髪とバリアジャケットのスカート部が大きくなびく。
握って居るレッドストライマーのクリスタル部に、クレアの魔力が充填される。
そして眩しく光るクリスタルは、彼女の新たな力を与えた。
「ストライマーバースト」
レッドストライマーの刃を包むように、強力な魔力がクリスタルより発生した。
その形態は剣と呼ぶには余りにも無骨。
赤い魔力は吐き出されるだけで剣としての形状を維持しておらずギザギザで、それでも彼女の魔力量は飛躍的に跳ね上がる。
ヴィータはクレアの突然の成長に興味を持つ。
(シャーリー、観測はできてるな?)
(問題ありません。どのような原理かはわかりませんが、魔力量だけで見れば推定Aランクです)
「面白い奴も居たもんだ。初めて見るタイプだが……」
ヴィータはアイゼンのグリップを握り直し、振り被ったままクレアの方向に飛んだ。
一瞬の内に近づく2人の距離。
「テメェじゃアタシに勝てねぇんだよ!!」
「うあああァァァッ!!」
ぶつかり合う赤と赤。
衝撃波が空間を揺らし、2人は睨み合ったまま互いのデバイスを押し付ける。
クレアのストライマーバーストはまだ不完全なせいで、アイゼンを受け止めるのに魔力が拡散してしまう。
ほとばしる激しい閃光。
目の前の敵に対する闘志が更に燃え上がる。
「今なら勝てる!! コイツのパワーなら!!」
「あんまりアタシを舐めるなよ!!」
「コッチだって!!」
袈裟斬り、袈裟斬り、袈裟斬り。
がむしゃらにパワーをぶつけるクレア。
それは斬ると言うより叩き付ける行為。
自身の身体能力の全てを駆使して、とにかくストライマーバーストをぶん回す。
ヴィータはアイゼンを匠に動かし攻撃を防いでいた。
「ぶっつぶれろォォォッ!!」
「クッ!!」
防戦一方。
クレアはありったけの力で剣をぶつける。
振り下ろし、横一閃、また振り下ろす。
けれどもヴィータは倒れる所か退きもしない。
瞳の奥に宿る闘志は、クレアを倒そうと熱く燃えている。
(スバルやティアナなら勝てたかもしれない。けれどもアタシはそんな甘くねぇ。次だ、次に振り上げた瞬間に――)
「コレならどうだ!!」
クレアは柄を両手で握りしめ、剣を頭上に大きく振り上げた。
力任せにヴィータの態勢を崩そうとするが、その瞬間にヴィータが動く。
「アイゼン!!」
『カートリッジリロード』
カートリッジが充填され、赤い薬莢が排出される。
赤い魔力が噴出して推進力を生み、そしてソレはパワーへと変換され彼女に叩き込む。
デバイスは非殺傷に設定されたはいるが、強力で思い一撃。
眩い閃光が両者を照らし、デバイス同士がぶつかり合う。
ヴィータの一撃に対して全力をぶつけるが、2人の戦いに勝敗の兆しが見えて来る。
「これ以上攻め込めない!?」
「うらぁぁぁァァァッ!!」
ストライマーバーストが振り払われ、クレアの姿勢も崩されてしまう。
同時にクリスタルから放出されていた高い魔力も力を失った。
彼女のデバイスは元の通常形態へと戻ってしまう。
「パワーが落ちてる!? ダメなのか?」
「遅い!!」
力を失った今の状態では、ヴィータの攻撃を受け止める事も出来ない。
凄まじいスピードで迫るアイゼンの一撃。
それでも剣を向けるクレアは、卓越した反射神経でコレを受け流した。
(なんで? なんでさっきの力が出ない!!)
(たった数分だけ? 手を抜いてるって訳でもないらしいが、見逃す理由にはならない。決めるぞ!!)
右から、左から、アイゼンが高速で迫る。
常人を超える反射神経と身体能力を備えるクレアだが、戦闘技術だけは持っていない。
反射神経だけを頼りに戦い続けるには無理があり、すぐにソレは決壊した。
「コレで終わりだァァァ!!」
右肩に打ち付けられる強烈なパワー。
激痛に顔を歪めるクレアは飛行する事も出来なくなり、重力に引かれて落ちて行ってしまう。
その光景を見ていたフィルは急いで彼女の元に向かおうとするが、目の前には再びフェイトが立ち塞がる。
「この先は通しません!!」
「くっ!?」
格上であるフェイトを突破するのは至難の業。
眼差しの先のクレアは、ヴィータにバインドで拘束されて身動きが取れない状態だった。
力なくうつ向いておりその表情は伺えない。
「クレア……ここは1度引く」
「逃しません!!」
バルディッシュを構えて退路を防ぐフェイト。
フィルはデバイスのブラスターバレットに魔力を流し込み、すかさずトリガーを引いた。
降り掛かる弾丸をサンダースラッシュで斬り払う。
しかし魔弾はサンダースラッシュの切っ先に刺さったまま消滅しておらず、次には青い粒子を大量に放出した。
「コレは!?」
「クレアは必ず助けだす。フェイト・テスタロッサ・ハラオウン、覚えたぞ」
「待ちなさい!!」
追い掛けようとするフェイトだが、拡散する青い粒子がそれを許さない。
粒子は魔力で形成されており、触れるモノ全てにダメージを与える。
1つや2つ当たる程度なら耐え切れるが、それが全方位に無数ともなれば無視する事も出来ない。
バルディッシュを大きく振り回し粒子を斬り裂く。
破壊する事は容易で、すぐに進行ルートを確保するが、その時にはもうフィルの姿は見えなかった。
「逃げられた……」
「まぁ、そう焦るな」
「ヴィータ。そっちは上手くいったんだ」
「当たり前だろ。これでまた逃げられたら、機動六課に泥を塗っちまう。それに、スバル達と同じ失敗をする訳にはいかねぇよ」
「この子がロストロギアを……」
気絶するクレアの表情を見るフェイト。
その外見からは、自分と同い年の女の子にしか見えなかった。
けれども危険なロストロギアを違法に所持しているのは事実であり、無差別な暴力行為で街に被害を出した事も無視は出来ない。
「とにかく、今は戻ってはやてに報告しましょう。もう1人の方も気になるけれど」
「そうだな。シャーリーやリーンフォースならコイツの事もわかるだろ」
そう言う2人はクレアを拘束したまま管理局へと帰って行く。
///
ベッドに寝かされたクレアは身体検査を受ける事となる。
未だに意識は回復しておらず、まどろみの中に沈んでいた。
シャーリーとリーンフォースツヴァイが立ち会い、体内のロストロギアが摘出できないか調べている。
けれども結果は失敗。
今は医務室のベッドで眠っている。
検査を終え、2人は別室で調査結果のデータを見ながらシャーリーは顎に手を添える。
「これは少し厄介な事になりそう。こんなケース、初めて見た」
「結果が出ました。このロストロギアは既存のモノではありません。つまり……」
「何者から新しく作った」
「はいです。これから更に詳しい調査に入りますが、現状ではロストロギアの力は全くの未知数。でも無理に摘出は出来ません。そんな事をすれば彼女は……」
埋め込まれたロストロギアは既に彼女の一部となっており、取り出せばどうなるかわからない。
現状では調査が進まない限り、ロストロギアに一切の手出しができない状況。
シャーリは室内のコンピューターのパネルを叩きはやての部屋に繋げた。
「調査が一段落しました。結果を報告させて頂きます」
『ありがとう、シャーリー。それでどうやった?』
「はい。ロストロギアを取り出す事は残念ですができそうにありません。どのように干渉しれるかはわかりませんが、無理に取り出せば彼女の生死に関わります」
『そうか……なら暫くはそのままにするしかないな。本部へは私が伝えます。それで他には?』
「年齢は推定19歳、身体能力が非情に高いです。普通の女性と比べたら比較になりません。魔道士ランクが低いのにスバル達から逃げ切ったり、ヴィータ副隊長と渡り合ったのもこの為かと。所持していたデバイスも独自に開発されたモノかもしれません。AIが搭載されてないのと、解読不明なシステムが組み込まれてます」
『ならデバイスに付いては引き続き調べておいて。そのシステムから何かわかるかも知れへん。そう言えば……この娘の名前は何て言うんや?』
「それも不明です。身元を特定できるモノは一切所持してませんし、バンクで調べてもデータに載ってません。少なくともミッドチルダの住民でない事しか……」
『わかった。彼女の扱いは私の方で進めとくから、暴れまわったりしやんように見といたって。なるべく早めにはするつもりや』
「わかりました」
言うと通信は切れ映像も見えなくなる。
シャーリーは一呼吸置き、部屋から出ると彼女の眠る病室に歩を進めた。
「少し彼女の様子を見て来ます。後の事はお願いします」
「はいです!!」
彼女の眠る病室、そこには担当医に選ばれたシャマルも居る。
ストーリーの進行に従って内容も徐々に明らかにさせて行きますので。
ご意見、ご感想お待ちしております。