魔法少女リリカルなのはstrikers Return of a soul   作:K-15

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第6話 家族の温もり、なの

医務室に居るクレアを迎えに行くフェイトは彼女を着替えさせた。

外に出るのに病衣で行く訳にもいかず用意した服に着替えるクレアだが、その動作は酷く不慣れに見える。

力任せに動く手や腕は今にも生地を引き裂きそう。

 

「なんだよ!! 前が見えないじゃないか!!」

 

「袖から頭が入る訳ないでしょ。ちょっと待って、着せて上げるから」

 

見ていられなくなったフェイトは手を伸ばし服を掴むと、動き回るクレアから1度脱がし下着を手に取った。

 

「付け方わからないでしょ? ほら、こっちに背中を向けて」

 

「あ……あぁ……」

 

両腕に紐を通し、膨らんだ胸にパットを当てて背中のホックを掛ける。

水色の下着を付けるクレアに、そのまま次は無地の白いトレーナーに袖を通させた。

 

「ほら、できたでしょ? 下は自分でやってちょうだい……で、できるでしょ?」

 

「下ってコレの事か?」

 

そう言ってジーンズの裾に腕を入れる彼女を見て、フェイトの背中に嫌な汗が流れた。

ため息を付き、顔を赤らめながらクレアをベッドに座らせる。

今の彼女は上半身にトレーナーを着てるだけだ。

 

(ヴィヴィオならまだしも、同い年くらいの子に着替えをさせるだなんて……ど、どこ見てたら良いんだろ)

 

あたふたとしながらもクレアからジーンズを取るフェイトは彼女の生足を見つめる。

滑らかな脚線美に思わず嫉妬してしまいそうになる程に、彼女のプロポーションはフェイトと負けず劣らず素晴らしい。

無意識的に指が足に触れる。

 

「って、ダメダメ!! ほら、足を伸ばして」

 

「伸ばすってこうか?」

 

「そう、そうやって。後はベルト付けて……って、コレもやらないとダメか」

 

腰に両手を回してベルトも付ける。

ようやく服を着替えたクレアは用意された靴をはいてベッドから立ち上がった。

 

「服って……こう着るのか……」

 

「はい、完成。それじゃ行こうか」

 

「行く? どこに?」

 

「アナタには複雑な事情が絡み過ぎてる。だから暫くの間は私達の家で生活して貰います」

 

「ここから出るのか?」

 

「そう、一緒に来てくれる?」

 

強い眼差しを向けるクレアはその言葉に頷いた。

同意を得たフェイトは歩き始め、クレアもその後に続く。

通路を歩き、管理局を出たフェイトが向かう先は愛しい娘が待つ我が家。

高層ビルが立ち並ぶミッドチルダの街並みを眺めるクレアに、フェイトは事情を説明しながら歩き続ける。

 

「アナタは自分でも気が付いてないみたいだけど、その体に危険なモノを持ってるの。それがロストロギア、名称はオーバーソウル」

 

「ろ、ろすろるキア?」

 

「ロストロギア。高度に発達した魔法技術の総称の事をそう呼ぶの。でもソレは開発者ですら制御できなかったり、完璧に能力を把握できてる訳ではないの」

 

「また知らない言葉か。そのロストロギアをアタシが持ってるのか?」

 

「自覚はないでしょうけれど。今は何もなくても、何かの拍子で暴走するかもしれない。そうなったらアナタだけでなく回りの人達にも被害が及ぶ。だから時々は、また管理局で検査しないといけないけれど」

 

簡単に説明するフェイト。

それを聞くクレアは状況を把握すると同時に表情が硬くなる。

 

(ロストロギアってヤツがアタシの体に……って事はフィルにもか?)

 

「何か気になる事でもあった?」

 

「どうしてこんな事になってるのかなって。知らない間にこんな体になって、こんな所に来てしまって」

 

「クレアは別次元からミッドチルダに来たみたいだから、この環境に慣れるのも大変だと思う。苦労するだろうけど、それは頑張って貰わないと。でもシャーリー達もロストロギアの解析を急いでくれてるから、摘出できれば元の場所に帰れるから」

 

(帰った所でフィルが居ないんじゃ……でも、あの時に見た男と女。男の方は何も知らないみたいだったが、女の方は気になるな……)

 

歩き続ける2人は高層ビルが密集した地域から住宅街にまでやって来る。

何度も通り慣れた道を歩くフェイトは最後に伝えなければならない事を言う。

 

「家には今、ヴィヴィオって女の子が居るの」

 

「ヴィヴィオ?」

 

「私達の子、今の家に住み始めてもう半年かなぁ」

 

「こ? こって子どもの事か? お前、もう出産なんてしてるのか!?」

 

「違う違う!! いろんな事情があって養子になったの!! 勘違いさせるような言い方した私がマズかったけれど、私はまだ結婚も出産もしてません!!」

 

顔を赤らめて、ブンブンと首を横に振って否定するフェイト。

そんな様子を見てクレアはすぐに納得する。

 

「そうか、そうだよな。それともう1つ聞いて良いか?」

 

「答えられる事ならね」

 

「ずっと私達って言ってるけど、アンタと誰の事なんだ?」

 

「あ、ゴメン。それも説明してなかったね。家には私とヴィヴィオともう1人、なのはが住んでるの」

 

「なのは……」

 

「高町なのは。私と一緒で管理局の機動六課に所属してるけれど、今は別の案件で出張してるから」

 

「つまり、暫く会う事はないって事か」

 

「シグナム副隊長も一緒だから長くなる事はないと思うけれど。でもそれよりもロストロギアの摘出の方が早いかも」

 

話している内に2人は家の前に到着した。

フェイトは白い門を片手で開けてクレアを敷地内に誘導する。

 

「ここがそうなのか?」

 

「私達の家だよ。さぁ、中に入って」

 

庭を抜けるフェイトは玄関まで来ると、ドアノブに親指を押し付けて指紋認証センサーでロックを解除する。

そして家の中に入ると同時に、奥のリビングからはドタドタと足音が響いてきた。

 

「ただいま~、ヴィヴィオ」

 

「フェイトママッ!!」

 

飛び出して来た幼い少女、ヴィヴィオは勢いをそのままにフェイトの胸に飛び込んだ。

フェイトも彼女の小さな体を抱え上げて、笑みを浮かべながら見つめ合う。

 

「お帰り、フェイトママ」

 

「ただいま、ヴィヴィオ。良い子にしてた?」

 

「うん!!」

 

「そっか、偉いね。今日はね、お客さんが来てるんだよ」

 

「お客さん?」

 

振り返るフェイトは手招きしてクレアを傍にまで誘導する。

どうしたら良いのかわからない彼女の表情は固いが、ヴィヴィオは満面の笑みを浮かべて声を上げた。

 

「はじめまして、高町ヴィヴィオです!! よろしくお願いします!!」

 

「えっと……アタシはクレア……」

 

「クレア……さん?」

 

「そう、ただのクレア」

 

「お父さんやお母さんはいないの? ここならなのはママとフェイトママがいてくれるの」

 

条項を理解してないヴィヴィオは無邪気に答え、フェイトは心情を考慮して彼女の腕を引く。

 

「取り敢えずご飯にしましょ。2人ともお腹減ってるだろうし」

 

「は~い!!」

 

言うとヴィヴィオはまたリビングに走り出しフェイトもハイヒールを脱いでついて行く。

クレアも見よう見真似で靴を脱いで2人の後について行った。

進んだ先にあるリビングは広く大きなソファーやモニターが設置されており、ヴィヴィオはテーブルの傍の慎重よりも大きなイスを引くと全身を使ってよじ登る。

 

「ヴィヴィオ、そんなに慌てないの。簡単なモノ、すぐに作るから」

 

脱いだジャケットをソファーの背もたれに置くフェイトはキッチンへ行くと黄色いエプロンを付けてフライパンを握った。

リビングの様子をグルグル見渡すクレアは落ち着かないままヴィヴィオの隣に座る。

 

(言われるがまま付いて来たけど、この場所は何なんだ? アイツの家って言ってたけど)

 

イスに座ってもまだ環境に落ち着かない。

その様子を感じてヴィヴィオは笑顔のままで振り向いた。

 

「どうしたの?」

 

「何でもない、落ち着かないだけだ」

 

「アタシも最初はそうだったよ。でもなのはママもフェイトママもとっても優しいよ!!」

 

「そうだったとしても、アタシには無理かもしれない」

 

「大丈夫、私も最初はそうだったから。みんなも仲良くしてくれるし、クレアさんもすぐに慣れるよ」

 

「アタシとヴィヴィオは違うんだ。アタシの体は――」

 

言いかけたその時、両手に皿を持つフェイトはテーブルにやって来た。

 

「どうしたの? ほら、ご飯できたよ。この前の残り物だけどね」

 

「スパゲティーだぁ!!」

 

持って来たのは茹で立てのパスタの上にかけられた熱々のミートソース。

酸味のあるトマトの香りが湯気に乗って食欲を唆る。

パスタが盛り付けられた皿をヴィヴィオとクレアのテーブルへ置き、1度キッチンへ戻ると次は自分の分を持って来た。

そして銀色のフォークをそれぞれの皿の横に置く。

 

「さて、冷めない内に食べましょ」

 

「うん!! いただきますッ!!」

 

「はい、どうぞ。クレアも食べて頂戴」

 

「あ……あぁ……」

 

そう言うと両手を合わせてヴィヴィオとフェイトはフォークを手に取った。

未だに戸惑うクレアだが、体が訴え掛ける空腹には逆らえない。

2人の目もはばからずに勢い良く手を伸ばした。

 

「熱ッ!?」

 

「ちょっと大丈夫!? 何してるの!!」

 

右手にべっとりと付いたミートソース。

ヒリヒリと伝わる熱の痛みに顔を歪ませるクレアに急いで立ち上がるフェイトは彼女の腕を掴んだ。

 

「とにかく冷やさないと」

 

クレアを引っ張りキッチンに行くフェイトは蛇口から水を流し彼女の右手を冷やさせる。

付着していたミートソースは流れ落ち、外観からは変化のない肌にフェイトは安堵した。

 

「手は何ともない?」

 

「ちょっと違和感はあるけど」

 

「どうしてあんな事したの?」

 

「あんなに熱いだなんて」

 

「当たり前じゃない。フォークもちゃんと用意したんだから」

 

「わからないんだ、本当に……」

 

(この娘、前も服の着方を知らなかった。元々居た次元での生活レベルがそうだった可能性も捨て切れないけれど……)

 

思考するフェイトだがクレアはわからない事が多すぎる。

蛇口を触り水を止めて、濡れた手をタオルで拭いてあげた。

 

「本当に何ともない?」

 

「大丈夫」

 

「そう、良かった。なら戻りましょ」

 

手を繋ぎながら2人はキッチンから料理の置かれているテーブルに戻った。

フェイトは自分のイスに座り、クレアもヴィヴィオの隣に戻ると置かれている銀のフォークに目を移す。

ゆっくり手を伸ばしフォークを掴むと柄を握り締め、ミートスパゲティーの中央へ突き立てる。

隣では片手でクルクルとフォークを回しながら料理を食べるヴィヴィオが振り向いていた。

 

「食べ方がわからないの?」

 

「あぁ、初めて見た」

 

「フォークはね、こう使うの!!」

 

得意げに見せ付けるヴィヴィオは絡めとるパスタを口の中に運ぶ。

目線をチラチラと横に動かしながら真似をするクレアは柄を持ち直すが、際限なく回し続けるせいで先端が重たくなってしまう。

 

「違うよ、ひと口で食べれるようにしないと」

 

「ひと口で食べれば良いんだろ? 食べれるじゃん」

 

「ダメ!! お行儀が悪い!! なのはママに怒られるよ!!」

 

口一杯に頬張るクレアはソースで唇どころか顎まで汚してしまう。

それを怒るヴィヴィオに、フェイトは2人の様子を微笑ましく眺めていた。

暫く時間が経過し、食べ終えた皿と食器を洗い終えたフェイト。

ヴィヴィオはソファーに座りながらモニターに映るテレビを見て、クレアは隣に座って逐一質問を投げ掛けていた。

 

「なぁ、今はもう夜なのに何で昼なんだ?」

 

「映像を取った時間がお昼なんだよ」

 

「えいぞうをとる……」

 

「アハハッ、これ面白い!!」

 

笑うヴィヴィオに対してクレアはモニターの中央1点を睨むだけ。

夜が更け初め、フェイトも家事を終えてソファーの所にやって来た。

 

「ヴィヴィオ、そろそろお風呂の時間だよ」

 

「あ、ハァイ!! クレアさんも一緒に入る?」

 

「入る? 何に?」

 

「お風呂!! 広くて気持ち良いよ!!」

 

「おふろ……」

 

ヴィヴィオの言葉を理解できずオウム返しするしかできない。

だがこの時になってようやく、フェイトはある事に気が付く。

気が付くのが遅すぎた。

 

(そう言えばこの娘、お風呂入れるの? 入れる……よね……)

 

「クレアさん、一緒に入ろ!!」

 

「あ、あぁ……」

 

ヴィヴィオに手を引かれて、クレアは浴室へ行ってしまう。




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