魔法少女リリカルなのはstrikers Return of a soul 作:K-15
脱衣所にまで来るヴィヴィオとクレアは着ていた服を脱ぎ始める。ヴィヴィオはいつもの習慣でありすぐに肌を晒すと着ていたモノをカゴの中へ入れると浴室の扉を開けた。クレアもフェイトに着させて貰った服を脱ぎ始めるが、まだ力加減を覚えてない為に上着の布からブチブチと嫌な音が鳴る。ジーンズのベルトも外し方がわからずにガチャガチャと力任せに引っ張った。
「クソッ! どうやるんだコレ? もう良い、腹を減っこませれば!」
我慢のできなくなったクレアは口から息を思い切り吐き出し腹部を強引に凹ませる。わずかな隙間に指を差し込んで、またも力任せに思い切りずり下ろす。ベルトに引っ掛かる骨の位置を体をくねくねと動かして何とかくぐり抜けた。下着も乱暴に投げ捨てて、ヴィヴィオが先に向かった浴室へと足を踏み入れる。
「うっ!? なんだ、煙が出てるのか?」
クレアが見たモノは白いタイルに大人が全身映る程の鏡、湯船から溢れ出す白い湯気が天井に向かって登っていた。シャワーヘッドを持つヴィヴィオは振り返ると勢い良く流れ出るお湯をクレアの足に当てる。
「熱ッ! うあああッ!?」
驚くクレアは反射的に足を引いて飛び上がってしまう。濡れたタイルに再び足を付けた時、体を支える事ができず尻から思い切り倒れてしまった。白く柔らかい肌がじんわりと赤くなる。
「大丈夫、クレアさん!? ケガしてない?」
「痛てて、なんで水が熱いんだ?」
「そこまで熱くないよ? 普通の温度だよ?」
「こんなの知らない。水が熱いだなんて」
話が食い違ってる事にヴィヴィオもクレアも気が付かない。そのままシャワーヘッドを壁に掛けるヴィヴィオはお湯を流したままクレアへ入浴の仕方をレクチャーした。
「お風呂に入る前に体を洗わなきゃダメってなのまママが言ってたんだ。ほら、クレアさんは先に体を洗って! 私は髪の毛洗うから」
ヴィヴィオはシャンプーの液体を右手に受け、濡れた栗色の長髪を洗い始める。クレアもシャワーヘッドから出るお湯に恐る恐る指を伸ばした。
微かに濡れる指先。わかっていても初めての体験に動揺せざるを得ない。触れては引っ込め触れては引っ込めを繰り返す。そうしてる間にも全裸の体は冷えていくばかり。
「はぁ、はぁ、ぐぬぬッ!」
「クレアさん、お湯が怖いの?」
「だ、大丈夫だこんなの! これくらい簡単にやってやる!」
意地を見せるクレアはシャワーヘッドを乱暴に掴み上げるとお湯を赤い髪の毛に当てた。思い切り目をつむり、今にも震えそうな体を押さえ付ける。滴り落ちる水滴は白い彼女の肌を温め、しなやかな足へ落ちていく。
「シャンプー終わったよ。じゃあクレアさん、こっちの椅子に座って」
「あ……あぁ、大丈夫だ」
「次は体を洗いましょ。ほら、これがスポンジだよ」
片手に持てるボトルからボディーソープを出すヴィヴィオは濡らしたスポンジに掛けるとクレアに手渡す。微かにまぶたを開けるクレアはソレを受け取り何も考えずに体を擦った。泡立つ石鹸が皮膚に溜まった垢と汚れを落としていく。
「ぐぅっ!? ぐぬぬぬぬッ!」
「ちゃんと全部洗わないとダメだからね。背中は私が洗ってあげる」
「グッ!?」
「クレアさん?」
弱酸性の泡が肌を刺激する。普通の人ならそんなモノを感じ取る事などできないが、彼女に至っては違っていた。過敏に反応する触覚は全身から伝わる刺激を脳に伝え、クレアの表情も見る見る内に赤くなっていき我慢の限界が訪れる。
「ぐあああァァァッ! もう無理だッ!」
「クレアさん!?」
「もう嫌だこんな事!」
突然立ち上がるクレアは走り出し浴室から飛び出してしまう。ヴィヴィオでは想定し得ない事であり、彼女を止める事などできなかった。
「えぇっ!? ダメ、クレアさん! フェイトママ!」
浴室で叫ぶヴィヴィオの声は届かない。
全身泡だらけ、水浸しの体で家の中を走り回るクレア。飛び散る水は床を濡らし、無数の泡の玉があちこちに散乱した。
ドタドタ足音を響かせて走る中、角を曲がると何かにぶつかってしまう。それは2人が寝る為の準備を進めていたフェイトの姿。
「キャッ! イタタ、何なの?」
「ぐぅっ!? あぁッ、気持ち悪い! 離れろ!」
「クレア? 何をしてるの?」
両手を使って体に付着する泡を投げ飛ばそうとするが、そのくらいでは全身の泡をすぐに取る事などできない。駆け付けるフェイトは彼女の様子を見ようとしたが、立ち上がるクレアはまた走りだそうとする。
「ちょ、ちょっと!? そんな格好で暴れないで!」
「う゛ううぅぅぅッ!」
走りぬけようとした彼女の体を背後から両腕で押さえ込んだ。その間に考える暇などなく、偶然にも左手が彼女の胸を押さえていた。
形の良い膨らみが、フェイトの左手の動きに合わせて歪み、震える。
(ッ!? や、柔らかい……って、何考えてるの!)
「う゛ううぅぅぅッ!」
「ちょっと、お願いだから!? もう、この事恨むからね、はやて」
「離せ、離してくれ! 気持ちが悪いんだ!」
「やっぱり私がやっておけば良かった……。ほらクレアも、気持ち悪いのはすぐに取れるから暴れないの。すぐにお風呂に戻るよって、キャアァッ!」
ベタベタのフローリングに足を滑らせてしまうフェイトはクレアの体と共にまた倒れてしまう。濡れた白い柔肌が白いワイシャツに染み込み黒い下着が微かに透けて見える。クレアを押し倒した状態のフェイトは上体を起き上がらせるが、その時になって後ろから小さな足音が聞こえた。
「フェイトママ……」
「ヴィ、ヴィヴィオ!?」
「それ知ってる、不倫ってヤツ。お昼のテレビで見たよ!」
「お昼にテレビ見たらダメでしょ! って違う、不倫なんかじゃない!」
「なのはママにも教えなくちゃ!」
「ちょ!? ちょっと待ちなさいヴィヴィオ! ヴィヴィオ!」
「う゛うううッ!」
暴れるクレアを押さえてるせいで動けないフェイトを尻目に、ヴィヴィオは興奮した様子でどこかへ歩いて行く。背中に嫌な汗が流れるも止めに行く事もできず、顔を真っ赤にしてフェイトは叫んだ。
「どうしてこうなるのぉぉぉッ!」
クレアとフェイト、彼女達の新しい生活は始まったばかり。
///
機動六課に所属する高町なのは、その名は管理局どころかミッドチルダ中に知れ渡っている。彼女は今、白いバリアジャケットを身に纏い別次元の青い空を飛んで居た。追い掛けるのはなのはとは対照的に真っ黒なバリアジャケットを装備する少女。
「警告します、止まりなさい!」
「まだ……追い掛けて来る……しつこい……」
なのはの前を進むのは、まだ10代の幼い少女。けれどもその顔の左半分は醜く焼け爛れている。火傷の痕を隠すように黒い髪の毛が左前面を覆う。
速度を維持したまま体を反転させ向き直ると、両手を前方に突き出した。全身から溢れる魔力を集結させ、エネルギーは炎となり、彼女の意思に従い大空を飛ぶ。
「ブレイジングアーレントゥ、邪魔なアイツを……消して……」
現れるのは炎の鷲、全長が3メートルは超える巨大な炎の鷲。
触れるモノ全てを焼き尽くし、近づくだけでもその高熱で燃やし尽くす。巨大な鷲は翼を羽ばたかせなのはに向かって飛んで行く。
「炎熱変化系、珍しい魔法だけど対処できる。レイジングハート、ディバインシューター」
『了解、マスター』
なのはの周囲に現れる4つの魔力球、ピンク色の魔力珠は誘導性に優れ射程も長く操作性に優れている。握るレイジングハートを前方へ突き出して、4つの魔力球を一斉に発射させた。
優れた点の多いディバインシューターでも攻撃力は低く、普通なら大きなダメージを与える事はできないが、ランクSを超えるなのはの魔力ともなれば話は別。
炎の鷲、ブレイジングアーレントゥに四方から突っ込むディバインシューターは、巨大な翼の1回羽ばたかせただけでかき消されてしまう。
「一撃ではやらせてくれないか。なかなか手強いかも」
『キョエエエェェェッ!』
「でも今は時間がないの、一気に決めるよ!」
ブレイジングアーレントゥはその巨体で相手にぶつかりに行く以外の攻撃を持たない。単純で明快な攻撃だが、それ故に強力な魔力を宿しており並の魔道士なら苦戦は避けられないが、エース・オブ・エースと呼ばれるなのはは違う。
レイジングハートのコアが輝き魔力で形成されたチェーン、チェーンバインドがブレイジングアーレントゥの動きを拘束する。
『ギギャァァァッ! キャアアァァァス!』
足を、首を、翼を、動こうにも全くと言って体は動かない。それでもその身に宿した炎の魔力がチェーンバインドを溶かしていく。
見る見る内にチェーンは剥がされていき、拘束できていた時間は10秒そこら。けれども彼女にはそれだけの時間があれば充分だ。
『ACSスタンバイ』
「アクセルチャージャー起動、ストライクフレーム! エクセリオンバスターACS」
アクセラレーション・クリティカル・ストライカー、レイジングハートからピンク色の6つの翼が生え、切っ先には魔力刃が形成される。カートリッジをリロードする事で外部からも魔力を供給し、高い攻撃力を更に増幅させて、なのはは鋭い視線を相手に向けた。
「これで決める、フルドライブ!」
瞬時に加速しなのはが突撃する。眩い閃光が走り、赤とピンクがぶつかり合う。どんなバリアでも貫くこの攻撃はブレイジングアーレントゥの炎を物ともせず、巨大な体の胴体に切っ先が突き刺さった。瞬間、蓄えられた魔力が爆発。炎の鷹が消滅していく。
『キョアアァァァ――』
「ふぅ、コレを使うのも久しぶり。何とかできたけれど、あの娘には逃げられた」
なのはが視線を向ける先には青空が広がるだけでさっきまで居た少女は影も形もない。唯一わかるのは微かに残された魔力の形跡だけ。
「転移魔法……ようやく手掛かりを見付けたのに。また1から洗い直しかぁ」
口から息を吐きながら肩の力を抜くなのは、追い掛けていた少女は別次元へと転移していた。
///
異次元空間、虹色に囲まれたこの空間はどこへでも繋がれるしどこからも繋がる事ができない。この空間に入る方法は1つ、彼女が許可を通すしかなかった。
亜麻色の髪の毛、ローズマリーの香水。白いドレスは彼女の気品さを増幅させる。彼女の名前はメガミ・クライシス。
「お帰り、フレアちゃん。管理局に邪魔されちゃったねぇ」
彼女は誤ってアキラを転移しそうになり、クレアとフィルをミッドチルダの地に送った張本人でもある。
ニタニタと笑みを浮かべながらなのはに追われながらも帰って来たフレアの傍にやって来た。
「オーバーソウルも残り4つ、早く全部集めてお母様の所に持っていかないと! そうしたらフレアちゃんにも何かご褒美をくれるかも!」
「興味……ない……。私は自分の……復讐を果たす……だけ……」
「そんな寂しいこと言わないで。最近は働いてばかりだよ? 体の火傷だって完璧には治ってないんだよ?」
まだ幼いフレアの全身は酷い火傷の痕がある。髪の毛で隠した顔面の左側だけでなく全身に広がっている。そのせいで喉の器官にも影響があり言葉に詰まりながらでしか喋れない。
「フレアちゃん反応うすぅい! ねぇ、コバチンも言ってあげてよ」
メガミが振り返った先には筋肉質の男が居た。黒髪をオールバックにしたその男はゆっくりと近づいて来ると笑顔を浮かべながら口を開く。
「何度も言わせないで下さい。コバチンではありません、コバルトです」
「コバルトって言い難いし長いもん。だから私がアダ名を付けてあげたの!」
「もしかしたら言い難いかもしれません。ですが文字数は同じです。そんな卑猥なアダ名は止めていただきたい」
「えぇ~!」
駄々を捏ねるメガミにコバルトは呆れるばかり。この少女こそがクレアの体に埋め込まれたオーバーソウルに関わっている。彼女達の出生の謎、その鍵を握ってるのがメガミ・クライシス。
スーパーかみさんと白だるまさんのキャラを使用させていただきました。
あと1人か2人くらいなら出せると思いますので、よろしければ活動報告に書き込んでくれると嬉しいです。
ご意見、ご感想お待ちしております。