魔法少女リリカルなのはstrikers Return of a soul 作:K-15
フェイトの家で過ごして数日、クレアの体内に埋め込まれているロストロギアの調査も進まず、はやてから新しく提案が投げかけられた。それは彼女を一時的にスターズ部隊に入れる事。
「なんや1人では大変そうやから、少しでも楽になるようにこれからはスターズで面倒を見よ。まぁ、朝から夕方までの間だけやし、仕事が終わったらフェイトちゃんと一緒に家へ帰るから。なのはちゃんとシグナムは出張中でこうするしかないんよ。じゃあそう言う事で!」
はやてはそう言うとクレアの面倒をヴィータに押し付けた。渋々彼女の面倒を引き受けるがどうしらた良いものかわからず、スバルとティアナの訓練に参加させる事に。
ヴィータはスバル、ティアナ、クレアの3人を引き連れて訓練場にまでやって来た。今回行うのは市街地戦を想定した戦闘訓練だ。2人は何度も経験しているがクレアは初めての事なのでまずはコレを優先しようと判断した。
制服姿で集められた3人の前でヴィータは仁王立ちする。
「良いか、クレアはデバイスを使うにしても体術を使うにしても全部反射神経で動いてるだけだ。これからの訓練を通じて実践的な戦闘術を覚えて貰う。その間に自分のデバイスの使い方くらいはわかってくれ」
「使い方って言ってもアタシだって全部はわからないんだ。コイツは無理やり奪い取っただけだからな」
「その事は後でシャリーにでも聞いてくれ。解析は進んでるらしいが、それでもまだ完璧って訳じゃないらしい。だから使う時に自分でも試行錯誤するんだ。でも取り敢えず、デバイスは非殺傷に設定したからな」
「非殺傷?」
「お前のデバイス、レッドストライマーは攻撃すれば相手を殺す事だってできた。でもソレにセーフティーを掛けて押さえ込んだ。それが非殺傷設定。これなら間違って相手を殺すなんて事はなくなる。アタシラ管理局の職員は犯罪者を捕まえるのが仕事だからな」
「チッ、めんどくせぇ」
クレアの最後の一言は聞かなかった事にしてヴィータは訓練の概要を3人に説明する。
「今回はガジェットドローンの殲滅が目的だ。3人で協力して全てのガジェットを破壊しろ。タイムリミットは15分。新参者も居るが今のスバルとティアナなら行ける筈だ」
「はい!」
「了解です」
返事を返すスバルとティアナの表情を鋭い眼光で見ると、今までの訓練の成果と実戦経験から彼女達の自信が伝わって来た。その目には昔のような迷いや無理に背伸びをしているようなモノは感じられない。
「良し、なら180秒後に訓練を開始する。その間に準備しろ」
言うとヴィータはバリアジャケットを展開して地面から浮き上がるとどこかに行ってしまう。残された3人、スバルとティアナもいつものルーティンで合図も送らずにバリアジャケットを展開する。
「ティアナ、2人で訓練するのも久しぶりだね!」
「そうだけれど、でもそんな事で気を抜いてるとヴィータ隊長に締め上げられるからね。気を抜かないでよ」
「それくらいわかってるよ。あ、クレアさんもバリアジャケットを展開して」
「あ……あぁ」
スバルに言われて展開しようとするが、さっき自身が言ったようにデバイスの使い方は未だに熟知できていない。バリアジャケットの展開も然りだ。
しかたがなく感覚で、心の中でレッドストライマーに念じてみる。
(でも、こんな事でできるのか? 前だってどうやったのか自分でもわからないのに。まぁ、やるだけやってみるか。来い、レッドストライマーッ!)
彼女の声に答えるかのように、異空間からデバイスが突如として姿を現した。名前の通りに赤く巨大な剣。クレアはその持ち手を右手で力強く握り締めると自身の体にも変化が。身に纏っていた管理局の制服から赤と白を基調としたバリアジャケットを展開した。
「できたのか?」
「前も思ってたけど大きい剣だよね。シグナム隊長のレーバテインよりも大きい」
「スバル、そんな事は後にして」
「っと、そうだね。クレアさん、念波は使える?」
「念波? また初めて聞く単語だ」
「デバイスを展開できるのならこれくらいならできると思うんだ。試しにこっちでやってみるね」
スイッチをただ押すかのように、スバルは造作もなくクレアに向かって念波を飛ばした。魔法やデバイスを使う者にとってこのくらいは初歩の初歩。耳からではなく脳裏からスバルの声が聞こえて来る。
(どう、クレアさん?)
「な、なんだ!? どこから聞こえた?」
(これが念波だよ、アタシとティアナ、と言うより管理局員なら全員使えるかな。クレアさんもデバイスを展開できたんだしやれると思うよ)
「そんな事言ってもよ」
大してやり方を説明もしないスバルにクレアは困惑した。それでも右手に握るレッドストライマーに視線を向け、本当にできるのかどうかを念じてみる。持ち主の意思に答えるように、クリスタルが一瞬光った。
(本当にこんな事ができるのか? レッドストライマー、やってみせてくれ)
(どうかな? 難しくはないと思うんだけど)
(どうって言われても、これでできてるのか? 相手に届いてるのかどうかがわかんねぇ)
(あっ! 聞こえるよ、クレアさんの声!)
(これで届いてるのか? 声も出さずに)
(この念波を使えば戦闘中に離れていても意思の疎通でができるんだ。あと、会話の内容を誰にも聞かれたくない時もね。ティアナ、まずはOKだよ)
スバルの念波に応じてティアナも会話に加わった。今回の訓練をどのように攻略するのかを短い時間ではあるが考え、3人で共有しスムーズに連携を取れるようにして無理なくクリアする。
(だったらいつも通り、スバルが前衛で私が後衛。細かな指示はまた現場に直面したら出すから。それとクレアさんも前衛、スバルと一緒に付いて行って。隊長も言ってたようにデバイスの使用感を確かめながらね。今回の訓練はそれが目的なんだから)
(わかってる。アタシもこいつの事はちょっと気になってるんだ)
(だったら始めましょう。スバル、援護はするけど無理はしないでね。今回はクレアさんも居るんだから)
(わかってるよ、ティアナ)
(良し、訓練開始!)
鋭く前を睨む3人は一斉に走り出す。スバルはローラースケートの形をあしたマッハキャリバーを両足に展開し、クレアはバリアジャケットの性能でそのまま空を飛ぶ。
マッハキャリバーのローラーは高速で回転しスバルを動かしてくれる。
(クレアさんはアタシの後に付いて来て。先制攻撃はこっちで仕掛ける。撃ち漏らしたのを叩いて)
(わかったよ)
魔力を供給された右腕のリボルバーナックルが火花を上げて回転する。アスファルトを高速移動するスバルは目の前に現れる複数のガジェットに狙いを定め、右腕に力を籠めると大きく拳を突き出した。
「リボルバーシュートッ!」
スピナーにより加速した衝撃波が発射されターゲットにぶち当たる。配置されたガジェットは只の1発も攻撃する暇もなく爆散した。
舞い上がる黒煙に巻き上がる炎。瞬く間に視界は全く効かなくなる。
(良し、次に行こう!)
(いいや、まだ残ってる)
爆発する直前、ほんの一瞬見えた敵の姿。クレアはその時のイメージを頭に焼き付けレッドストライマーを構え力任せにぶん投げた。
「場所は見えてる。外さない!」
切っ先は風を斬り、黒煙の中へと飲み込まれて行く。瞬間、固い金属音が響くと再び黒煙の中で爆発が起こった。爆発に吹き飛ばされたレッドストライマーはクルクルと空中で回転しながらもクレアの手元に戻って来る。
(クレアさん凄い! 良くアレが見えてたね)
(別に、この位何でもない)
(ティアナ、このまま2人で先行するよ?)
(了解、でもあんまり突っ走らないでよ。スバルの悪い癖)
(大丈夫、メンバーも1人増えたし)
(はぁ、全く)
ティアナの心配を他所にスバルはこのまま真っ直ぐに道を進んで行く。クレアは事前に言われた通りその後に続いて移動するが、またしても進行を妨害するガジェットの群が現れた。
(アレはバリアプログラムが搭載されたガジェット)
(バリア?)
何度も訓練を繰り返して来たスバルには見ただけで判断が付くが、管理局にすら来たばかりのクレアには何の事なのかさっぱりわからない。
それを察して、姿は見えないがティアナからも念波が送られて来た。
(魔法で障壁を張って攻撃を防いでくるの。だからさっきみたいに簡単にはいかないから。バリアを突破しない限り破壊する事はできない。スバルは正面から攻撃、クレアさんは回り込んで横から叩いて。まずは相手の陣形を崩さないと)
(ティアナ、サポートお願いね)
(わかったよ。回り込めば良いんだな?)
進路を変更するクレアは大きく迂回してガジェット達に気付かれないように奇襲を掛ける。スバルはティアナの作戦と合流するクレアを信じて正面から殴り込みに行く。
「うおおおぉぉぉォォォッ!」
雄叫びを上げながらも突っ込むスバルの姿を見送り、クレアは奇襲を掛けるべく急いで回り込もうとする。風を感じながら空を飛び、けれども突如として彼女の姿は消えてしまう。
///
気が付けばそこは今まで居た場所とは違う空間。見渡せばコンクリートの壁と柱に囲まれて、その至る所には紙が貼り付けられている。
外気も伝わらず、冷たい空気が肌に伝う。
「これも訓練の1つか? 知らない内に知らない所に来たけど、何だここは?」
人の姿は見当たらない。歩けばクレアの足音だけが反響して聞こえる。試しに柱に貼り付けられている紙を剥がして手にとって見た。
白い紙には墨で『爆発』と書かれている。
「文字? なんて読むんだ?」
彼女には日本語を読めるだけの学がない。墨で書かれている文字をマジマジと見つめていると、持っていた紙から熱が伝わって来る。
「何か来るッ!?」
感じ取ったクレアは咄嗟に紙を手放し全力で背後に飛び跳ねる。瞬間、持っていた紙から巨大な爆発が発生した。
爆発の威力と衝撃に体は吹き飛ばされ、背中からコンクリートの壁にぶつかる。幸いにもバリアジャケットのお陰でそこまでダメージはない。
「ぐぅっ!? ギリギリで避けられた。でもさっきのは?」
「なんと、今のを避けるとはの。あの女が目を付けただけはあると言うことかの」
「誰だ! どこに居る!」
「騒がしい奴は嫌いなの」
「子どもだと?」
柱の影からひっそりと現れたのは黒い着物を身に纏う幼き少女。服と同じで髪の毛も黒く肩まで伸びており、それとは対称的に肌は透き通るように白い。だが、おっとりとした佇まいから向けられるエメラルドに瞳には殺気が宿る。
「子どもと侮るなかれ、でなければ貴様は死ぬ事になるの。我が名はネネ、貴様の体内に宿るオーバーソウルを返して貰うの」
「オーバーソウル!? ヘッ、向こうから手掛かりがやって来るとはよ。お前を叩き潰して聞かせて貰うからな。この体の事も、オーバーソウルってのが何なのかも!」
「何度も言わせないで欲しいの。五月蝿い奴は嫌いなの」
「うるせぇぇぇッ!」
レッドストライマーを振り上げるクレアはネネと名乗った少女に向かって走り出す。その重たい剣の切っ先を、武器すら持たない幼き少女の頭上へ叩き付けようとした。
だが剣は目の間の少女に届かない。
「なっ!?」
「ふふふっ、我に近づく事は許されないの。吹き飛ぶと良いの」
切っ先を、体を弾き飛ばす程の突風が突如として発生しクレアはネネの傍から引き剥がされる。あまりの風の勢いに満足に姿勢を維持する事もできず、床に剣を突き立てて何とか体が飛ばされるのは防ぐ。
「グゥゥッ、この風……動く事もできない」
「この程度で終わると思わないで欲しいですの。次、参りますの」
コンクリートの床に貼られた紙から魔力が発生する。紙に書かれている文字は『崩』。ネネの意思でコンクリートは何も触れてないのに破壊され、吹き荒れる突風がクレアの所にまで運んで行く。
今のクレアにはレッドストライマーを振るう以外に攻撃手段はない。突き立てる床から引き抜き、向かって来るコンクリートの塊を叩き斬る。
「クソッ! 風が!」
縦に、横に剣を振る。迫るコンクリート片は簡単に往なす事ができるが風ばかりはどうしようもない。瞬く間に体は浮き上がり、制御もできぬまま背後に吹き飛ばされる。そしてその勢いのままに背中から壁にぶつかってしまう。
「グッ! 野郎!」
「案外簡単だったの。そのまま壁にへばり付いて居て欲しいですの。すぐに終わらせるの」
床に貼られた紙がまた光ると床のコンクリートが再び崩れた。迫る塊を前にクレアは動く事もできない。
心は永遠の中学二年生さんのキャラを使用させて頂きました。
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