ウルトラマンメビウス -The Day After-   作:高月

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その4

 ディレクションルームのハルザキ隊長は、ガンサマウンターから送られてきた映像を注視していた。画面中央で白と黒の巨大生物――レジストレーションコード、エレキングが両腕を振り回してビルを破壊する。ビルは中ほどで真っ二つに折れ、もうもうと粉塵が立ち込めた。

 エレキングが金属質な鳴き声を上げた。コクピットのイチノセ隊員に呼びかけるハルザキ隊長。

「どうだイチノセ」

『……厳しいですね。目標の周囲の磁場のせいでガンサマウンターの制御系統が異常反応を示しています、三百メートル圏内への侵入は墜落の危険性が』

「そうか。メーザーキャノンでの遠隔射撃を試みてくれ」

『GIG』

 一度旋回し、安全圏で滞空するガンサマウンター。ディレクションルームのモニターに映る中継画面にも、メーザーキャノンのターゲット・レンジが表示された。頭部がロックオンされる。

『ターゲットをロックオンしました』

「撃て!」

『メーザーキャノン、ファイアー!』

 青白いメーザーの奔流が、一直線にエレキングの頭部へ向かう。近年GUYSの装備品は通常兵器も強力化の一途を辿り、たいていの怪獣はスペシウム弾頭弾を使わずともこのメーザーで仕留めることが可能となっている。エレキングは攻撃力は優れているものの、防御にはそれほど重点が置かれていないので誰もがこの一撃で倒すことができる――と思っていた。

 

 突然の閃光。

 

 画面が一瞬フラッシュし、次いで中継映像のカメラがダウンした。

「イチノセ、大丈夫か! 応答しろ!」

 必死の形相でコンソールの通信機に呼びかけるハルザキ隊長。しかし数秒後に、『……大丈夫です。光量オーバーでカメラがダウンした模様』というイチノセ隊員の声がレシーバーから響いてきた。

「ああ、よかった」

 胸をなでおろすトリヤマ補佐官とマル補佐官秘書。

「周辺の定点カメラに切り替えます」

 キノムラ隊員がそう言うと同時に、スクリーンに再び映像が映し出された。市街地の一角に設置されたカメラからの映像で、画面の手前側には電柱や歩道橋などが写り込んでいる。折しも、エレキングが画面の中央ほどでひときわ大きく吼えたところであった。

「さっきのアレは、どいうことかねハルザキ隊長」

 しかめっつらで尋ねるトリヤマ補佐官。しばし考え込んだハルザキ隊長は、やがて、「定点カメラの映像、一分前まで戻してくれ」とキノムラ隊員に命じた。

「GIG。……六十秒前の映像です」

 現在の映像が画面の右下四分の一ほどに押し込められ、代わりに一分前の映像が映し出される。

 旋回し、射撃体勢を整えるガンサマウンター。メーザーキャノンが発射されるのとほぼ同時に、エレキングの頭部にある二本の角も青く発光するのが何とか捉えられていた。そこから雷のような光が伸びて、画面全体がホワイトアウト。

「つまり、もともと電気を好む性質のあるエレキングは、自身の体内に貯蓄された電気エネルギーを攻撃エネルギーに変換しメーザーを相殺した、ということのようです」

「ど、どうすればいいのかね!」

 再び考え込むハルザキ隊長。慎重に言葉を紡ぐ。

「……電気で相殺できるのは、実体を持たないレーザーやメーザーに限られます。ガンスピーダー2をガンブラスターに移し替え、マニューバモードでスペシウム弾頭弾を使用すればダメージを与えることができるでしょう。ただ……」

「ただ?」

「スペシウム弾頭弾は、目標への誘導のために赤外線を使用しています。しかしエレキングの周辺には磁場が存在するため、赤外線誘導システムが誤作動を起こし市街地に着弾する可能性があります」

「それではいかんではないか!」

「そうです。……とりあえず、シンドウ」

 コンソールの通信機に呼びかけるハルザキ隊長。シンドウ隊員は、地上から攻撃を行う手はずになっている。

『なんスか』

「相手は電撃を攻撃エネルギーに転換し実体を持たない攻撃を相殺できる。一旦下がれ」

『しかし……』

「トライガーショットには実弾は装備されていない。相手の電撃は雷と同等レベルの威力がある、下手に食らったら死ぬぞ!」

『……GIG』

「ガンサマウンターは攻撃を続行。ただし威力の低いレーザーで、足や手などの末端部を狙え」

『威嚇射撃ですね』

「そうだ」

 通信を終え、再びモニターに注意を払うハルザキ隊長。この時、彼の意識からは十分ほど前にアオイから連絡のあった侵入者のことなどきれいさっぱり忘れられていた。

 

 

 

「う、うぅーん……」

 頬に当たるひんやりとした感触で、アオイの意識は覚醒した。二、三度まばたきをし、自分がD-3区画の通路に倒れていたことを認識する。

(……私、何を。侵入者が、いて、それで、戦って……)

 そこまで思考をまとめた時、壁の外から微かに金属質の奇怪な咆哮が。それを怪獣の鳴き声だと認識したアオイは、即座に飛び起きた。いまだズキズキする頭部を片手で押さえながら、建物の外へ出る。

 ガラス扉を押し開けると、白と黒の異形の怪物がすぐそばまで迫ってきているのが見えた。

 怪獣の足下からは黒煙が立ち上り、その後方には無残な姿をさらすビル群が。ガンサマウンターが視界を横切り、翼端の低出力レーザーで威嚇射撃を加える。歯牙にもかけず、進行し続けるエレキング。

(今私に、できることは……)

 無意識のうちに、胸に手をあてるアオイ。と、その手のひらに何か硬い感触が伝わってきた。訝りながらも、胸ポケットからそれ(、、)を取り出すアオイ。

 銀色のカプセルの中に、怪獣をかたどった緑色の物体。そしてそのカプセルに、アオイは見覚えがあった。

「……そうだ、マケット怪獣!」

 慌ててメモリーディスプレイも引っ張り出す。マケットカプセルを、慎重に端子に接続。メモリーディスプレイの画面に怪獣のシルエットが映し出される。

 アオイはメモリーディスプレイを構え、そしてトリガーを引いた。

「行け、エレキミクラス!」

『realize』

 無機質なナビ音声が響き、そして――

 

 エレキングの数十メートル手前に、緑色の光の輪が出現した。輪は二つ、三つと重なっていき、次第に巨大な怪獣の姿を作り出す。フェニックスネスト地下の粒子加速器から出力された高エネルギー分子ミストが吸着されていくのだ。

 そして、吸着が完了したマケット怪獣――エレキミクラスは、ひときわ大きな咆哮をあげた。




 13日は投稿できず誠に申し訳ありませんでした。本日よりまた通常通り投稿させていただきたいと思います。
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