ウルトラマンメビウス -The Day After- 作:高月
「やあやあ諸君、揃っているようでなによりだ」
ふいにディレクションルームのドアが開き、二人の人物が入ってきた。一人は茶色の士官服を着ている頭が少々寂しい中年の男性で、もう一人は同じデザインのベージュの服を着た妙に腰の低い男性。そしてカナタは、その二人に見覚えがあった。
「……トリヤマさん、それにマルさんじゃないですか。どうなさったんですか」
「はっはっは、驚いたかねハルザキくん。八年ぶりくらいかな?」
「ひさしぶりですねぇ。CREW GUYS隊長への就任、おめでとうございます」
カナタの記憶にある通りの姿で、息の合った挨拶をするトリヤマとマル。カナタもつられて頭を下げた。
トリヤマ ジュウキチは、カナタがまだ研修生だった第四次怪獣頻出期に、GUYS JAPAN総監の仕事を補助する補佐官の役目についていた人物だった(もっともその総監がほとんど姿を見せなかったため、その間に総監代行という職務も存在したのだが)。そしてマルは彼の秘書である。
しかしカナタの記憶が正しければ、トリヤマ補佐官及びマル補佐官秘書は第四次怪獣頻出期の終了後しばらくして任期を終え、他部署へ異動となったはずだが。
そのことを尋ねると、
「いやぁワシもそう言ったのだがね、さる人物から是非にと頼まれて補佐官職に復帰することになったのだよ。まこれも、第四次怪獣頻出期におけるワシの見事な現場指揮を見込んでのことだろうがね」
はっはっは、と高笑いする補佐官。カナタは、その人物というのはきっと当時の補佐官を知らない人に違いないと思った。なにせ当時のトリヤマ補佐官はGUYSきってのトラブルメーカーで、彼がへまを踏まなければ起こりえなかった事案も相当数あると聞く。例えば魔人怪獣コダイゴンジアザーの出現はどうみても廃棄処分が決定していたメテオール『グロテスセル』が原因で、めったに現場に出ない補佐官が該当区域で必死に走り回っていたという目撃証言もあったことから、当時専科ではあの事件は十中八九彼が元凶であろうと噂されていた。
ただ、一応補足しておくと彼は単なるトラブルメーカーというだけではなく、エンペラ星人侵攻の際には毅然とした態度で臨んだとも聞いているため、カナタは(一応)彼に一目置いてもいる。
しかし平時に頼りになるかといえば、はなはだ怪しいと言わざるを得ない。
クルーの面々がポカンとしているのを見てカナタは、
「みんな、こちらはトリヤマ ジュウキチ補佐官だ。総監の補佐が仕事で、俺がいないときには代わりに指示を出すこともある」
と紹介した。「よろしく、新入隊員の諸君」と胸を張る補佐官。
「ちなみにワタシは秘書のマルと申します。どうぞよろしく」
マル補佐官秘書がトリヤマ補佐官の脇からひょこりと顔を出した。しかしすぐさま「お前は出てこんでもいい」と補佐官にピシャリと頭を叩かれ、すごすごと顔を引っ込める。やはりこのコンビは変わっていないようだ、とカナタは思った。
「じゃあさっそく業務に入ることにしようか。まず全員に確認しておいてもらいたいのは……」
全員の自己紹介がつつがなく終了したことを確認して、カナタが前クルーからの引き継ぎ事項を説明しようとしたその時。
けたたましい警報音がディレクションルームに鳴り響いた。新入隊員たちの顔にも緊張が走る。
同時に、突如として正面の三次元大型スクリーンに柔和な顔立ちの男性の姿が映った。現GUYS JAPAN総監のサコミズ シンゴである。
「総監のサコミズだ。
GUYSスペーシーが警戒態勢に入っていた例の隕石だが……」
なんのこっちゃ、という五つの顔が自分を向いたのがわかって、カナタは咳払いをした。スクリーンの中のサコミズに目で説明してもよいか、と許可を求める。柔和な顔が頷くのを確認して、
「昨日、正確には十七時間前に、GUYSスペーシーのレーダー網に宇宙からの飛来物体がひとつ確認された。地球との衝突軌道上にあることが判明したので、今日の午前七時――つまり一時間前に攻撃衛星による攻撃が予定されていたんだ。
……何か、不測の事態でも?」
サコミズに問いかける。サコミズは首肯して話を再開した。
「一時間前に怪獣攻撃衛星V55からシルバーシャークGによる破壊を試みたところ、隕石本体は破壊できたが内部から宇宙怪獣が出現した。
速力は増加したが軌道は変化せず、このままのコースを維持すれば日本に降下するだろうというのがスペーシーの出した結論だ」
隣に立っているイチノセがごくりと唾をのみ込んだのがわかった。もし本当に日本に降下してくれば、これが彼らの最初の実戦となるのだから当然である。
「サコミズ総監。その……宇宙怪獣とやらですが、どうして撃ち落とさんのですか。もう一度シルバーシャークGを撃てばよいのでは?」
トリヤマ補佐官が半笑いを浮かべながら、皆が思った疑問を口にする。半笑いの原因は、自分が赴任して一日で日本が宇宙怪獣の脅威にさらされつつあることに対してまだ実感が沸いていないことだろう、とカナタは冷静に分析した。
「もちろん、GUYSスペーシーも宇宙怪獣の出現に際して即座に二度目の射撃を行いました。しかしその宇宙怪獣の速力や軌道に変化がなく、また宇宙ステーションV5のカメラ映像からも特に損傷が見られないことから、シルバーシャークGの命中に耐え切ったものと思われます」
ひえぇと情けない悲鳴を上げ、マル補佐官秘書にすがりつくトリヤマ補佐官。「どうしてワシばかりがこんな目に遭わねばならんのだ」などと愚痴を漏らしている。
そんな補佐官を横目で見ながら、カナタは考えていた。
シルバーシャークGは彗星や超巨大隕石なども一撃で破壊できる威力を持つビーム砲で、五十メートル級の怪獣や宇宙人など通常であれば一瞬で蒸発させることができる。それを正面から受けて傷ひとつ負わないというのは確かにただ者ではない。
「スペーシーの計算によれば、あと一時間で大気圏内に突入する。……迅速な対応を期待しているよ、ハルザキくん」
柔和な顔に、かすかな微笑みを浮かべる。
総監としての態度を崩さなかったサコミズが、そのときだけ、かつての『サコミズ隊長』に戻ったようにカナタには思えた。
(そうだ、だけど今は俺が隊長なんだ)
気持ちを引き締め、「GIG!」と叫ぶ。
そして新隊員たちへ向き直り、
「ただ今よりCREW GUYS JAPANは、宇宙怪獣の殲滅作戦にあたる。イチノセとサンノミヤはガンブラスターに、シンドウは俺とガンサマウンターに搭乗し空中で目標を破壊。キノムラとハナサカはコマンドシートで状況の分析・報告に当たってくれ」
と指示を出す。
そこでカナタは、いったん言葉を切った。大きく息を吸い込み、そして――
「GUYS SALLY GO!」
おなじみガンフェニックスでなくてすみません。十年たったので代替わりしてます。
次回、みんな大好き(とは限りませんが)ワンダバ回!