ウルトラマンメビウス -The Day After-   作:高月

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その6

 コンソールに、フェニックスネスト周辺の三次元立体図が映し出される。砲塔から射線が真上に伸びているシルバーシャークGと、その周囲で距離を保ちつつ動いている二つの光点――アントラーとガンサマウンター。ちなみにガンブラスターは、サブエンジンとして推進力を最大限に引き上げるためにガンサマウンター本体内に収納されている。

『シルバーシャークG、射撃準備完了しました!』

 レシーバーからディレクションルームのハナサカの声が。トライガーショットをシルバーシャークGの制御システムに直接接続しているのだろう。

「よし――サンノミヤ、そっちはどうだ」

『……問題ありません』

 シルバーシャークGの射程範囲内にアントラーを誘導する役割を担うため、必然的にガンサマウンターもその効果範囲内に入っている。だから命中と同時にガンサマウンターはシルバーシャークGの射線から離脱しなくてはならず、そのためシンドウよりもフライトテクニックに長けているサンノミヤが現在操縦桿を握っているというわけだ。

「作戦、開始!」

『GIG!』

 

 

 

 エンジン系統のシステムの制御権は完全にガンサマウンター本体側にあるが、その代わり射撃系統のシステムの操作権はガンブラスター側に委ねられている。旧主力戦闘機のガンウィンガーには装備されていなかったシステムで、これにより個々のパイロットがそれぞれの役割に専念することができる。

「メーザーキャノン、ファイア!」

 イチノセが操縦桿の赤いボタンを押すと同時に、画面内のアントラーの体表付近で小爆発が起こった。もちろんその強固な壁を突き崩すほどの出力ではないが、奴を怒らせる程度の役割は果たしている。

 ガンサマウンターは先刻から推進力をフルパワーまで引き上げまっすぐにフェニックスネストへ向かって飛行している。複雑な空中機動ではなく一直線なのでアントラーも何とかついてこられているが、何かの拍子で興味を失われてコースを外れられると作戦が完遂できない。

 そういうわけで、ガンブラスター側のイチノセがときおりアントラーの鼻先に高出力メーザーを叩き込んでいるのである。もちろん真正面から当てるとアントラーの速度が減少してしまうので、絶妙なバランスで背中などの衝撃を受け流しやすいポイントを狙っているが。

『もうすぐフェニックネストで展開中のシルバーシャークGに到着します! 上昇は五秒後っス!』

 レシーバーからシンドウの警告。ガンブラスターの書きシステムは現在アントラーの攻撃のため全て後方に向けられているので、予告なしに九十度上昇すると攻撃が地表の民家などに及んでしまう危険性があるためだ。

『四、三、二、一、上昇します!』

 予告と全く同じタイミングで、重力の方向が九十度回転する。背中がシートに押し付けられているようだ。

 メーザーキャノンのターゲットスクリーンの真ん中に、まっすぐこちらを向いたシルバーシャークGの砲塔が。一瞬後に、その砲塔を覆い隠すようにアントラーの黒光りする巨体がターゲットスクリーンを埋め尽くした。

『シルバーシャークG、発射五秒前!』

 レシーバーからハナサカの声。それとほぼ同時に、『……パーミッション・トゥ・シフト・マニューバ!』というサンノミヤの声も。アントラーの爆発に巻き込まれないように、シルバーシャークGの発射と同時にマニューバモードの高い運動性能で回避するのである。

 機体に更なるGがかかり、身体がいっそう締め付けられるような感覚があって、そして――

 

『……ファントム・アビエーション、スタート!』

『シルバーシャークG、ファイア!』

 

 

 

「やあやあ諸君、本当によくやってくれた! 一時はどうなるかとひやひやしたが、ま、ワシは諸君のことだから必ず奴を撃破できると信じておったよ」

 ディレクションルームへ戻るなり毎度おなじみのトリヤマ補佐官の言葉に出迎えられ、少々げんなりしたものの「ありがとうございます」とカナタは笑顔を作った。その向こう側でケーブルを引き抜きトライガーショットの設定を元に戻しているハナサカに「よくやった」と声をかけることも忘れない。

 アントラーは外部の装甲は堅牢だったものの内部はさほどでもなく、シルバーシャークGの一撃で爆散した。発射と同時に発動されたマニューバモード本来の運動性能のおかげでガンサマウンター本体には爆発の余波による影響もなく、こうして初戦でだれ一人かけることなく戻って来れた。

 なおも何か言おうとした補佐官だったが横合いから割り込んできたマル補佐官秘書に邪魔され、しぶしぶ口を閉じる。「アントラーの肉片が自宅の天井を突き破ったと苦情が来てます」「どうしてワシがそんなことを処理せねばならんのだ、法務部に任せんか」「電話を掛けてきたのが都知事だからです」などと会話を交わしながらディレクションルームを出ていく。

「さて、残るは事後処理――主に戦闘の反省会と上層部に提出しなければならない報告書の作成なわけだが……」

 コマンドシートに全員が着席したのを確認して話し始めたカナタだったが、唐突にシンドウが発した言葉のために最後まで言い終えることができなかった。

「そんなの後でいいっスよ隊長! それより今からパーティーしましょうよパーティー」

「いいねそれ!」

 と同調したのはハナサカである。

「パーティー……?」

「そうっス、隊長。俺たちまだお互いのことほとんど知らないわけですし、ここでいっちょパーティーでもやって親睦でも深めないと」

「うーん……」

 顎に手をあてるカナタ。その動作で自分が考え込んでいることに気づき、彼は少し驚いた。

 十年前の自分は、こうではなかったはずだ。専科の仲間と遊びに出掛けることもあったにはあったが、それはあくまでもオフの時であって、ましてや勤務時間内にパーティーをするなど昔の自分であれば即座に却下していたに違いない。

 それをあまつさえ真面目に検討しているのは――やはり、あの人達(、、、、)の影響なのだろう。

 

「……却下だ。反省会はともかくとして報告書は明日までに提出しなければならない」

「えぇ!?」

 カナタが考え抜いた末の答えに、驚愕の声をあげるシンドウたち。

「ただし」

 しかしカナタは、こう付け加えることも忘れなかった。

「今日は反省会と報告書の作成があるが、明日は特にやらなければならない業務というものはない。もちろん非常時のためにディレクションルーム(ここ)から離れるわけにはいかないが、まあ食べ物を持ち込むくらいは問題ないだろう」

 ポカンとして聞いていたクルーたちだったが、次の瞬間どっと歓声を上げた。一旦ディレクションルームの外へ出ていた補佐官たちも何事かと様子を見に来たほどである。

 早くもパーティーの段取りを始めるクルーたち。それを眺めていたカナタはふと、

 

(……気をつけて)

 

 という、どこか懐かしい声が聞こえたような気がしたが――

「……気のせいか」

 そう呟いて、クルーたちの輪に入っていった。




 はい、というわけで一話終了です。思えば空中戦だけのものをよく六話も引き延ばしたものですが。あと何だか女性陣がばりばり活躍してて男性陣が食われてるような気がした方もいらっしゃるとは思いますが気のせいです。
 毎週月・金曜日の投稿としておりましたが、次回から第二話に入りますので今週の金曜日はお休みとさせていただきます。来週からはまた通常通りに更新していきたいと考えています。


次回予告
 フェニックスネストに忍び寄る二つの侵略者の影。同時に湖から彼女たちが操る怪獣も出現し、新生CREW GUYS双方向からの攻撃で窮地に陥る。
『第2話 雷撃の侵略者』
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