ウルトラマンメビウス -The Day After- 作:高月
翌日、GUYS JAPANの隊員寮の一室で。
アオイは目覚まし時計の騒々しいサウンドで叩き起こされた。そばに置いてあるスマホを見ると、時刻は午前六時一分。彼女はスマホのアラームではどうしても目覚めることのできないタイプなのである。
勤務の開始時刻は八時三十分なのでもう少し寝ていても問題ないのだが、ぐずぐずしていると食堂が人でいっぱいになってしまう。アオイは、朝食は一人で静かに摂りたいタイプなのである。
「ふわぁ……」
あまり人には見せられないような顔で大きなあくびを一つして、ベッドから降りる。少し迷って、いつもは下ろしている髪を今日は後ろで縛り、ポニーテールにしてみた。化粧は最低限で済ませる。
全GUYS隊員共通の制服である青いシャツの上から、行動隊専用のオレンジのジャケットを羽織る。ちなみにCREW GUYSの女子の制服は一応スカートもあるのだが、屋外戦闘などがざらにあるのでアオイは常時パンツスタイルである。というか、スカートなどという実用性皆無のものを履く隊員がいるのだろうかとアオイは疑問に思った。
隊員寮の廊下に出てしばらく歩くと、突き当りにライフルを持った警備員が二人詰めている部屋がある。アオイは軽く敬礼して、メモリーディスプレイを電子ロックにかざしドアを開錠した。
部屋はさほど広くはないが、壁面にずらりとならんだ
警備の隊員にもう一度敬礼して、アオイは武器庫を出た。
その頃、隊員寮から五百メートルほど離れたGUYS JAPANベースの四番ゲートで。
ゲートを一歩入れば軍事機密の塊ともいえる施設が広がっているため、当然ながらここにもライフルを持った警備員が二人配置されている。そのうち一人は、絶対数の少ない女性だった。彼らは実動隊CREW GUYSのメンバーには及ばないながらも、訓練を受けている隊員たちの中ではかなりの実力を誇っている。
と、そのうちの一人――ゲートの右側に立っていた男性警備員の目が、まだ薄暗い一本道に誰かがいるのを捉えた。しかも、こちらへ向かって歩いてくる。
こんな早朝に来客の予定はなかったはずだが、もしや久しぶりの不審者か――などと警戒しつつライフルを構える両手に力を込めるが、はたして顔のつくりが分かるほどまで近づいてきた
やがて
果たして
「うふふふふ……」
と含み笑いをして、また歩き始めた。
これを見てさすがに二人の警備員も、ライフルを交差させ「ここから先は、立ち入りはご遠慮願います」と言った。一応は電子ロックのかかったゲートがあるが、それをものともしない重武装した輩が襲撃してくる可能性だってゼロではないので常時こうやって警備員が置かれているのである。
「うふふふふ」
突然、右側の警備員に回し蹴りを放った。ワンピースのスカートがくるりと奇麗な円を描き、たまらず彼は数メートルほど宙を舞う。人間としては考えられないほどの威力の蹴りである。彼は地面に叩きつけられライフルを取り落とした。
もう片方の女性の警備員は、非常事態と見て距離を取りそのまま両手に持ったライフルを構えた。CREW GUYS隊員が所持しているトライガーショットと同じくいくつかのタイプの弾丸を使い分けることができるが、警備員たちが相手をするのは主に人間であるため通常は実弾モードに設定されている。他の弾丸は高出力のレーザーなど、主に巨大怪獣に使用するために作られたもので人間相手に使用すると一撃で跡形もなく吹き飛ばしてしまうほどの威力なのだ。
とはいえ人間大の相手であれば、ライフル弾は充分に脅威たりえる。しかし
一瞬で距離を詰めた
刃渡りは二十センチから三十センチほど。かつて防衛組織MACの隊員が常時携帯していたマックナイフと同型のもので、近接戦闘においては使い勝手の良い武器だ。警備員はそのナイフを、
腹部に強い衝撃を受け、警備員は数歩後退した。すかさず体勢を立て直し、今度は固めたこぶしを正面に突き出す。こんどは
見れば、先ほどまで十三、四歳ほどに見えていた
(彼女の身長が縮んで、それでナイフが当たらなかった?)
そう考えて一瞬動きの止まった警備員を、次の瞬間元の姿に戻った
と、ちょうどその足元で最初に攻撃を受けて地面に伏していた男性警備員が、傍らのライフルを構え
しかし
その姿が突然、先ほどの女性警備員のものに変わった。思わず引き金に掛けようとした指を止める男性警備員。
次の瞬間、彼の意識が断絶する直前に見た物は、自分の顔に向かって振り下ろされてくる黒い靴だった。
止める者のいなくなった
その頃、GUYS JAPANベースから二十キロほど離れた木曽谷の山中で。
木々が生い茂るなか、ある湖のほとりにくすんだ金色をした多角形の巨大な円盤のようなものがひっそりと隠されていた。どう見ても地球の乗り物ではないので、これは宇宙人が乗ってきたものなのだろうか。さいわいあたりにはひと気がなく、その円盤は誰に見られることもなく静かに姿を隠すことに成功していた。
と、その円盤の下部からタラップのようなものが降りてきて、そこから誰かが飛び出してきた。黒いワンピースを着た、十三から四歳の少女の姿……彼女はGUYS JAPANベースを襲撃したものと全く同じ姿かたちをしていた。
飛び出してきた
「行くのよ、エレキング! GUYSの基地を破壊するのよ!」
と大声で叫んだ。
その声に呼応するかのように、突然湖面が盛り上がる。一瞬後、大音響とともに水しぶきがはじけ散った。その向こうにかすかに見える、白と黒の異形の姿――そして金属質の奇怪な鳴き声が、木曽谷一帯に響き渡った。