灰と幻想のグリムガル 十三人目の少年   作:スヴェート

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一話

“ーー目覚めよ。”

 

誰かの声が聞こえてきたような気がして、目を開けた。

暗い。まるで夜のように暗い。でも真っ暗というほどでじゃない。壁に据えつけられた蝋燭の火の灯りがぼんやりとこの空間を照らしている。蝋燭は間隔をあけていくつも、ずっと先まで並んでいる。

あれ?僕はこんなところで何してたんだっけ?そういえばここどこだ?……思い出せない。頭が痛くなってきた。

 

「もしかして、誰かいる……?」

「あ、うん」

「……います」

「あぁ」

「……やっぱり」

 

人の声だ。しかも一人じゃない。男だったり女だったりと複数いるのがわかる。何人いるんだろ?

でも、少し安心した気がする。他の人たちなら何か覚えてるのかな?

 

「何人いるんだ?」

「数えてみる?」

「……ていうか、どこなの、ここ」

「さぁ……」

「わかるやつ、いえねぇのかよ」

「どうなってんの? 」

「何だよ、これ」

 

あれ?みんな俺と一緒っぽい?まじか。ほんとにどうしよう。誰一人何も覚えてないってなるとやばいな。うん、非常にやばい。

 

「どっか行くの?」

「壁伝いに灯の方向に進んでみる」

 

うわ、かっこいいな。声もなんだか落ち着いてるように聞こえるし、怖くないのかね。こんな状況だったら動揺して動けない方が普通だと思ったけど、違うやつは違うのかな?

 

「あたしも行く」

「……俺も行こっかな」

「ま、ま、待てって、じゃあ俺も!」

 

始めて壁触ったけど、なんかゴツゴツしてる。あ、卑猥な意味じゃないよ?(笑)こんなこと一人で思ってる俺ってきもいな。それにしても結構でこぼこしてるけど、わりと歩きやすい。前には誰かいるからいいけど、後ろには誰もいなくて地味に怖い。前のやつは女の子だな。なんでわかるかって?そりゃお前。女の子特有の甘酸っぱい匂いがするからに決まってんだろ?(キリッ)

 

「きゃっ!」

 

「おっと」

 

あぶねぇー。いきなり転んだからびっくりしたわ。まぁ、なんとか間に合って抱きとめられたけど。それにしても女の子ってなんでこんないい匂いするんだろ?それに柔らかいし?ん?あれ?柔らかすぎじゃね?ていうかこれ?

 

「あ、ありがとうございます。そ、その、む、胸揉むのやめてください」

 

「ご、ごめん!」

 

「こ、こちらこそ助けてもらったのにごめんなさい」

 

なんだろ。とてつもなく微妙な空気。あの子には悪いことしちゃったけど、めっちゃ大きかったな。ご馳走様でした。

ていうかこの道どこまで続くんだ?いくら何でも長すぎるだろ。結構歩いたぞ。

 

「ーー階段だ。上に行ける」

 

前の方からそんな声が聞こえてくる。

まだ階段が続くのかよ。光?階段の先に光が見える。あれで外に出られるのかな?あの光の先にも道が続いてたらここ作ったやつは相当性格悪いな。

 

「ーーっ!ここは?」

 

階段を上がった先は石造りの部屋だった。窓はないが、ランプのおかけで部屋の中は明るさを保っている。上ってきた階段の近くには鎧を着た男が立っており、その近くに上階に上がるための階段がある。全体的に古臭いが、手入れがされているのか埃っぽくはない。何故だろう。初めて見るはずなのに、懐かしさを感じる。

不意に壁が、床がわずかに振動した。部屋の中に重い音が響く。そして壁が動いた。開くかのように壁の一部が、ゆっくりと縦長の四角い穴を描くようにして。

その穴が開き終わると、鎧を着た人がぶっきらぼうに「でろ」とだけ言い、顎をしゃくって見せた。

その言葉に従う形になるが、皆それぞれそこから外に出る。薄明るい空がどこまでも広がっている。夜明け前か、黄昏どきか、微妙なところだ。

振り返るとそこにはそそり立つようにして立つ小高い塔。

 

「俺、こんなところにいたのか」

 

その言葉は自然と口から出てきた気がする。外に出てこれたからか少しだけ心が軽くなった気がする。多分、無意識にあそこから出れないんじゃないかなと思っていたのかもしれない。

周りを見渡し、人数を数えてみる。銀髪に眠そうな目に天パにくりくり髪に派手女など、男九人に女四人で十三人か。思っていたより人数が多い。

 

「……あの、ここって、どこなんでしょうか」

 

声からしてさっき胸を揉んでしまった女の子が話しかけてきた。

 

「うーん。悪いけどわかんないかな」

 

「……そう、なんですね。だ、誰か……知りませんか?」

 

「多分だけど、ここにいる人はみんな知らないんじゃないかな?ん?」

 

塔の裏からこちらを覗いている少女を見つけた。何してんだろ?あっ、目があった。

 

「いやー。みつかっちゃいましたかー。なかなか優秀ですね君!ようこそグリムガルへー。案内人をつとめさせていただく、ひよむーですよー。初めましてー。よろしくね?」

 

少女が塔の裏から俺たちを馬鹿にしたような声を上げながら出てきた。他の人たちは驚きを隠せないでいる。それとさっきからなぜか丸刈りの男がガンをつけてくる。

 

「早くしろ」

 

ギャングが低い声で言った。それもかなり威圧的だ。

 

「じゃ。仕事しちゃいますね?とりあえず、ついてきてくださーい。置いてきますよー」

 

ひよむーはツインテールを揺らして歩き始めた。俺たちもそれに続くように歩き始める。踏み固められた黒い土が剥き出しになっている道を歩く中、空を見上げると異様なものが目にとまった。赤い月だ。ルビーのように真っ赤に染まった月。半月と三日月の中間くらいの形をしている。あれ?月って何色だったっけ?

でも、ただ一つわかることは、赤い月はおかしい。

 

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