妖精世界の竜神 作:妖精さん
「……起き……さ……」
「……」
「……起きて……ください……」
目を開けると目の前には金髪碧眼の少女が覗いていた。何処かで見た事がある。でも、とりあえずいう事は一つ。
「……あと……なな……ねん……」
「そうですか」
また眠る。しばらくしてまた揺さぶられた。
「七年経ちましたよ」
「っ!?」
がばっと起き上がると、何処か知らない巨大な森の中に居た。頭上には世界樹のような巨大な大樹がそびえたっている。
「……なな……ねん……?」
それにしてもなんだか声が高く、自分から発せられたとは思えない程可愛らしい声が漏れた。
「ええ、そうです。しかし、まさか島を消滅させる程のアクロノギアの攻撃を受けて生きているどころか、寝っぱなしだとは驚きました。それに傷もないようですしね」
「?? 我、意味……わからない……」
ちょっと意味がわかりませんと言ったはずなのに、こんな言葉が口から出た。というか、良く見ればこの少女、金髪碧眼の美少女なんだけど森の中には似合わない白いドレスのような姿だ。それに宙に浮いている。
「さて、先ずは名前を聞きましょうか」
「……名前……名前……? 我、わから……ない……」
おかしい。記憶がない。名前も何もわからない。というか、知識以外は無い。知識自体はあるようで、自分が男だったという事と、自分の身体が変わってしまったという事だけはわかった。
「……我、誰……?」
「いえ、私にもわかりませんよ? ですが、とんでもない力を持っているのがわかります。それと、それは魔眼ですか? そうじゃないと、私の姿が見えるはずがないのですが」
「? 我、不明」
「ちょっとこっちの泉で見てみませんか?」
「……ん……」
まともに会話をしようとしても、言葉が変わっていく。とりあえず、泉を覗いてみると、水面には綺麗な長い黒髪をした耳の尖った綺麗な幼い美少女が居た。頭には紫の色のヘッドドレスを着けている。服は黒いゴスロリドレス。しかも、前が全開で乳首には黒い罰印のテープが貼られている。まさに痴女。
「……なに……これ……痴女……?」
「まあ、その服はどうかと思いますよ」
まあ、これ以外は服がないので仕方ない。というか、心は男なので直にでも着替えたい。だが、そんな事よりも瞳だ。瞳の中心に、朱の五方星の模様が浮き出ている。
「……魔眼……?」
「魔眼ですね~」
これって考えてる奴ならかなりチートじゃないかな? 姿はわからないけれど、どう見ても伝勇伝の複写眼だよ。この複写眼はありとあらゆる魔法を解析して、即座に自分の物に作り替えて模倣してしまうという魔眼で、暴走の危険もある。伝説の勇者の伝説こと伝勇伝に出て来る主人公の瞳なのだけれど、主人公はそれの上位版である涙の紋様の瞳を持っている。こちらは魔法など一切関係無い。それと、この魔眼は普段は薄くしか見えないので、顔を覗き込まれでもしなければ気付かれる事はそうそうないが、発動時には朱の色が強く輝く為にある程度の距離を置いても視認が可能だ。つまり、今は発動中という事である。
「……我、強い……?」
強すぎ? っと、聞いたのだが、こんな感じになった。
「わかりませんが、少なくとも頑丈ですね。なんせ、世界を終わらせる黙示録の竜、アクロノギアの攻撃を受けても寝ていられたのですから。あっ、大事な事なので二回いいましたよ」
「……」
「ところで、お名前が思い出せないという事は、記憶喪失ですか?」
「……そう……」
「では、私が作ったギルドに来ませんか? 衣食住を保証しますよ」
「……む……」
ギルド? よくわからない。でも、それがオンラインゲームとかでプレイヤーが集まって作られるギルドならわかる。それにしても、この子は人間じゃない。幽霊。それも生霊みたい。
「抵抗があるようですが、ここは我がギルドが保有する島です。不法侵入はいけませんよ? まあ、もう一人いるのですが」
「……名前……教える……」
「ギルドの名前はフェアリーテイル。私は初代マスターのメイビス・ヴァーミリオンです」
碧眼に星のようなものを浮かばせて答えてくる幽霊少女、メイビス。与えられた選択肢はぶっちゃけ、選べるのが少ない。どこの世界にいっても一人では大変だし、受けるしかないのだ。異世界でしょっぱなから放浪とか、無理。だいたい、ここ島みたいだし。
「……ん、行く……」
「では、名前を考えないといけませんわね。オーフィス、オーフィス・ヴァーミリオンにしましょう」
「……オーフィス……」
その名前はしっくりとくる。欠けた記憶もそれが正解だといっている気がする。
「おや、嫌ですか? 我ながらびびっと来たピッタリの名前だと思うのですが」
「……気に……入った……我、オーフィス……」
「オーフィス・ヴァーミリオンです。私の苗字も差し上げます」
「……いい……の……?」
「ええ、構いませんよ~。むしろ、逃がしません」
そう言って抱き着いてくるメイビス。
「……ん、わかった……我、オーフィス・ヴァーミリオン……なる……」
「これで対抗策と次世代の戦力ゲットです」
「?」
不思議に思うと身体が勝手に小首を傾げてしまう。
「いえいえ、なんでもありません。ところで、先ずは着替えましょうか。昔の私の服ですが、きっと大丈夫でしょう」
「……ん……」
こくこくと頷いて了承する。それから移動して貰った服に着替える。貰った服は黒色の生地に真ん中に水色の罰印がついたシャツと黒いミニスカート。薄い紫色のパーカーと帽子を貰った。
「着替え終わりましたね。では、その魔眼の能力を調べましょうか」
「……必要、無い……わかる……」
「どんなのですか?」
「……簡単……」
移動した先には石碑みたいなのがあり、そこには魔法が収められていた。俺の複写眼はそれを解析して自らの物にしてしまった。その証拠に腕に痺れが走り、文様が刻まれた。これは妖精三大魔法の一つとされるフェアリー・グリッターと呼ばれる超位魔法の一つみたい。
「嘘です。こんな簡単に奪ばわれてしまいました……」
説明してあげたら泣き出した。
「……駄目……?」
「いえ、別にいいですよ。ついでに他のも教えます。どうせ見たら覚えますし、我がギルドの戦力になるならいいでしょう。ただし、裏切るのは駄目ですよ」
「……ん、いい……ただ、条件……」
「なんでしょうか?」
「……三食昼寝、おやつ付き……」
「……いいでしょう。ただし、世界の危機とかには働いて貰いますからね」
「……任せる……」
ちょっと怖いけど、複写眼があれば問題ないだろう。
「では、ちょうど暇ですし、教えた後にフェアリーテイルに向かいましょう。といっても、面白そうな大会があるみたいですし、先にそちらへいくとしましょう。今からいけば間に合うでしょうし」
「……まか、せる……」
二人で海の上を走って移動していく。もちろん、この身体のスペックをしっかりと測ってからだ。この身体のスペックは尋常じゃなく、疲れという疲れを感じない。それどころか、地面を殴ったらクレーターが普通に出来てしまうぐらいだったし、全力で走れば水面に足が沈む前にもう片方の足を付けられてそのまま走れるのだ。
人が多い所に到着し、素早く走って闘技場みたいな所に壁をジャンプで超えて上から侵入。メイビスに案内された場所、フェアリーテイルの観覧席に座ってメイビスと一緒に足をぶらぶらさせる。観覧席は闘技場を囲っている壁の上の方の一角にある。
「おい、誰だ?」
「んなっ!? 初代っ!」
小さなおじいちゃんが私達の顔を見て驚いている。いや、他の人もか。
「暇なのできちゃいました」
「いやいや」
「あ、大丈夫ですよ。私の姿はギルドの者にしか見えませんから。例外はこの子だけです」
「この子は誰ですかな?」
俺の方に視線を向けて聞いてくるおじいちゃん。
「この子はオーフィス・ヴァーミリオン。私の……」
「……子供……お母さん……」
「「「ええぇっ⁉」」」
「違いますからね!」
「……我、捨てられた……」
のの字を指先で書いていく。すると、石が指の跡にそって削れていく。
「違います、違います! 捨てません! ただ、お母さんという訳では……」
おろおろしながら、一生懸命に弁明してくるメイビスは可愛い。
「初代」
「ええ、もう私の娘で構いません」
「……我、男……」
「「「嘘っ⁉」」」
「いえ、女ですよ。着替える時に確認しましたし」
思いっきり抵抗したが、スカートしかないと言われた。というか、貰った服も海を走るときに濡れてしまったので、今はゴスロリの恰好だ。ただし、しっかりと前がしまっているもので、首元は紫色のリボンがあり、腰の後ろにも大きなリボンがある。これはメイビスの趣味だ。
「……我……」
心は男ですと言いたいが、流石に問題ありそうだ。
「まあ、女の子です」
「そうよね」
「まあ、ぶっちゃけると天狼島で保護していた娘です。貴女達が来る前から島に居て、ずっと寝ていました」
「えええ!?」
「それはつまり、あの攻撃に……」
「彼女は軽く耐えていました。もう、わかりますね?」
「はっ、もちろんですとも。それで、お主は我がギルドに入るという事でいいんじゃな?」
「……ん、衣食住、三食昼寝、おやつ付きで……」
「初代?」
「仕方ないじゃないですか。既にフェアリーグリッターまで覚えられているんですから、放逐するのはとっても、とーっても危険です」
「はぁ、わかりましたぞ。ですが、魔導士として働いてもらいますぞ」
「ん、わかった。じゃあ……これ……出る……」
「カナの代わりに出せばよいか。実力も図れるじゃろうし。よし、印をつけるぞい」
こうして俺はフェアリーテイルの一員となった。