古道具屋が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮に入ります。   作:えぬろくよん

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前回の話の続きです。

長ったらしい説明が多いので、面倒と思ったらその部分は読み飛ばして問題ないです。霖之助ならそういう考えはするだろう、位の気持ちで書いたので^^;


1話(プロローグ) 古道具屋が賢者の依頼を受けるようです。〈 下〉

ひとまず気を取り直した僕は、初雪と一緒に鎮守府へ向かうことにした。そこで詳しく話を聞こうかとも思ったが、もうひとり艦娘がいるとの事だったから、その娘と合流してからの方がいいと判断したのだ。

 

 

(しかし、深海棲艦、ねぇ……。実際に見たわけじゃないからなんとも言えないが、一体どんな相手なのか……。)

 

 

初雪から『まずは司令室に行くのがいいかも』と言われ、あてもないのでそれに従い僕らは司令室に向かうことに。

幾ばくか歩くと、それらしい部屋の前に着いた。そこにはでかでかとした字で『司令室』と書かれていた。

なるほど、ここで僕は彼女達に色々な指示を出すわけだ。

 

 

「……それにしても。」と、初雪がおもむろに口を開いた。

 

 

「司令官は、 珍しい格好してるね。手作り?」

「ん? ああ、これは僕が作ったものだよ。何かと動きやすくてね。」

「ふーん。」

 

 

「今度私にもつくってー。」と、あまり強い主張ではなかったが、恐らくはお互いの人となりを知るための会話、なのだろう。多分。

 

「……中で、深雪ちゃんが待ってるから。入ろー?」

 

 

と、初雪から急かされてしまった。確かに初対面であまり待たせるのも宜しくない。印象はいいに越したことはないからな。

ドアをノックし、返事を確認した後中へ入った。

 

 

「待たせてしまったみたいだね、申し訳ない。僕がこの鎮守府で提督となる、森近霖之助だ。よろしく。」

「おう! 深雪だよ、よろしくな!」

 

 

……初雪とは正反対の性格みたいだな。突然のことで一瞬思考が止まってしまった。

とはいえこちらも軍ができる前から生きている身だ。あまり無様なところは見せられないな。

 

 

「……あぁ、よろしく。他の艦娘はいないのかな? なにか別件で動いているのかい?」

「いや?ここにいる艦娘はこの深雪様と初雪だけだぜ?」

 

 

……なんという事だ。つまりはこのふたりと戦いを進めなければならないということか?

無茶とかそういう問題じゃないぞ。あまりにも人手が足りなすぎる。そう思ってその旨を聞いてみたら、

 

 

「あぁ、そのあたりは提督としての仕事を進めていけば、自然と戦力は増えていくぜ。

それに司令官は新任なんだろ? だったら自分で頑張らないといけない、らしいぜ?」

 

 

『それでも初期艦2人はそうあることじゃないんだけどな』と付け足していた。

なるほど、つまり僕は他の新人提督に比べれば多少なりとも有利な立場、という訳だ。……他の提督との交流はなさそうだから、それがどうした、と言った感じなのだが。

 

 

「さて、改めて自己紹介をさせてもらおう。僕は森近霖之助。古道具屋の店主をしている。訳あって今は提督としてここにいるがね。」

「へー、転職にしても随分と思い切ったんだな。」

 

 

まあね。と、その場は濁すことにした。

 

幻想郷の説明をしても、理解はできないだろうし、正直面倒だ。幸いそのあたりは説明しなくても齟齬は起こらないので、省ける部分は省いていこう。

 

 

「さて、先も説明したが、僕は元々古道具屋だ。正直に言って提督になって何をすればいいのかはよくわかっていない。

かろうじて深海棲艦とやらと戦うことは知っているがね。それ以外は何もわからないんだ。」

「そういうのって、前もって説明されるんじゃないのか?」

「残念ながら、僕は普通の方法で提督になったわけじゃない。ろくな説明もなしに放り出されたと言っていい。」

「……そんなこともあるんだねー。だから深雪ちゃんと私が初期艦なのかな?」

「かもしれないね」と、ひとまずは同意をしておいた。

 

解らないことだらけだが、とにかく動くしかない。幸い資料などは残っているので、それらを読んでからでも遅くはないだろう。そう結論づけた僕は書棚にある資料を読みふけった…………

 

 

資料をあらかた読み終える頃には既に陽は落ちていた。む、存外量が多かったらしい。こんなにかかるとは。

そういえば初雪と深雪の姿が見えない。

『やるべき事が終わったなら好きにするといい。ただ、有事の際に駆けつけられなかったでは話にならないから鎮守府内で、とさせてもらうけどね。』と言い含めていたから、恐らくは鎮守府内のどこかにいるのだろう。

 

体を起こし、背筋を伸ばすとパキポキと小気味よい音が鳴った。

さて、僕は半分妖怪の血が流れているから食事を摂らなくても死にはしないが、何も腹に入れないまま寝るのは宜しくない。

そう思い食事を用意しようとした時、重大なことを思い出した。

 

 

────僕は司令室以外にどこに何があるか知らないじゃないか。

 

迂闊だった。せめて初雪と深雪から鎮守府内の地図かなにか貰っておくんだった。

というか、先程から気になってはいたのだが、やたらとなにかの気配を感じる。詳しくは判らないのだが、この感覚は、幻想郷で妖精が近くを通った時に似ている。

はて、こんなところに妖精がいるものなのだろうか、と思いあたりに気を配っていると、小さな女の子と目が合った。童とかそういった小さい、ではなく。文字通りに『小さい』のだ。それこそ手のひらサイズと言ったところか。

 

 

「────、────────!」

 

 

なにやら僕に話しかけているみたいだが、如何せん小さくて聞き取れない。そう思い手の上に乗せて耳元で話してもらうと、どうやら僕を心配して食堂まで行かないか、と言ってくれているらしい。

 

 

「驚いたな。まさか妖精にそこまでの知能があったなんてね。」

 

 

と、幻想郷の妖精と比べてしみじみとしていると、手の上の妖精の様子がなにやら先ほどと変わっている。はて、どうしたのかと思っていると、突然妖精にひっぱたかれた。大きさの関係で痛くはなかったが。

どうしたのかと思い話を聞こうとすると、怒ってどこかへ行ってしまった。

……何だったんだろう、あれは。

 

まあいい、おそらく彼女に付いていけば食堂までたどり着けるのだろう。腑に落ちない点もあったが、とりあえずは彼女に付いて行くとしよう。

 

 

 

 

結論から言えば僕は食事にありつけなかった。妖精が怒って僕の食事を隠してしまったらしい。ちなみに初雪と深雪はずっと食堂にいたようだ。

初雪から説明を受け、やっと僕は自分の失態に気付いたのだった。幻想郷の妖精たちがこぞってあれだったものだから、印象がそちらにつられていたらしい。

 

妖精の機嫌を直すのに3日も費やすとは思わなかった。なにせ彼女達を不機嫌のままにしておくと食事だけでなく、初雪たちを始めとした艦娘を呼び出すための『建造』、彼女達の装備を作るための『開発』、他にも様々な点で問題が起こるのだ。

ただ、救いと言ってよかったのが、鎮守府内の資材と施設は自由に使える、という点だった。

そしてこの3日間何をしていたかと言うと。

 

 

「……おいしそーな匂い。司令官って料理とか出来たんだ。なんか意外。」

「古道具屋を営んでいた時はひとり暮らしのようなものだったからね。嫌が応でも慣れるものさ。」

「……へー。ところで司令官。今作ってるのって、もしかしてチョコレート?」

 

 

あぁ、と首肯しながらも手は止めない。

そう。今僕は鎮守府内の食堂を使ってチョコレートを作っている。

初雪達から話を聞いて、妖精は甘いものが好き、と聞いたのだ。個人的には餡子の方が好きなのだが、チョコレートに比べて非常に手間がかかる。なおかつ、僕は餡子を使った菓子作りの方法を知らない。……たまたまチョコレートの作り方が書いてある外界の書物を読んでいてよかった。いやほんとに。世の中何が役に立つかなんてわからないものだな。

 

さて、チョコレートの作り方だが、はっきり言ってかなりの手間がかかる。下手したら餡子を使った菓子作りの方が簡単なんじゃないのか。とはいえ作り方すら知らないものを機嫌を直すために作る度胸はない。

そんな訳で3日間ひたすらチョコレートを作り続けていた。

チョコレートを作るために重要な工程は二つ。

一つはカカオ豆をできるだけきめ細かくすり潰すこと。これによってチョコレートの味、舌触りに差が出るのだとか。ちなみにこの作業で出来上がったカカオが俗に言う『カカオマス』と呼ばれるものである。

そしてもう一つが精錬──一般的には『コンチング』と呼ばれる──という作業である。これは先に作ったカカオマスに粉糖、スキムミルク、ココアバターをまぜあわせたものを湯煎にかけながらかき混ぜる作業のことだ。

はっきり言ってこれが一番面倒だ。紫もいつだったか言っていたが、

『コンチングで美味しいチョコレートにするためには3日から5日は掛かるそうですわ。まあ私の能力なら一瞬ですけれど』との事らしい。

そんなわけでこの作業に一番時間をかけた。……2日目も半分に差し掛かったあたりで妖精が心配そうにしてくれたあたりで作る理由もあまりなくなっていたのだが、ここまで作ったのなら最後までやろうという、ある種の職人魂のようなものが火をつけたらしく、結局3日かけてコンチングを行った。

そこからの作業は妖精も手伝ってくれたおかげでスムーズに進んだ。

そして冷やして完成したチョコレートを妖精たちや(何故か)初雪、深雪たちと一緒に食べることになった。

 

 

「……おいしーね。」

「だな! なんつーか、優しい感じがするっていうか、なんかそんな感じ。」

「……そうだねー。妖精さんたちも喜んでるし。」

 

 

彼女達からも好評なようだ。

ちなみに本命の妖精の方はと言うと、

 

 

「────、────────♪」

 

 

と、かなりご満悦の様子。ちなみに彼女達は僕の肩とひざの上で食べている。

 

僕と妖精が意思疎通をしているのを見て、初雪と深雪は意外そうに僕を見ていた。

 

 

「……妖精さんと喋れる人なんて初めて見た。みんな妖精さんが何を言ってるかわからないのに。」

「そうなのかい? そのあたりは気にしたことがないからわからないな。」

 

 

と、とりあえずごまかすことにした。妖精と会話することはそこまで難しくないんだがなぁ……。

 

ひとまず先日の発言を謝罪した後(非常にいい顔をして許してくれた)、『建造』、及び『開発』を頼むことに。

 

 

「……とはいえ僕には右も左もわからない。多少情報を仕入れたとはいえ鎮守府運営に関してはてんでド素人だ。だから君達の力を借りたいんだが、この場合僕はどうすればいいかな?」

「────?」

「ああ、すまない。言葉が足りなかったね。

具体的にはこれらの資材をどのくらい使うのがいいのか、っていう目安だけでも知りたいんだが。」

 

 

僕は彼女達艦娘が、一種の神様に近しい存在だと定義付けていた。その理由として、複数の鎮守府で同名の艦娘が散見されるのだ。

これは先程も考えていたことだが、艦娘とはひとつの分霊ではないか、と考えた。分霊ならいくら増えようとも力が減衰することはない。また、それぞれで性格が変わるのも分霊を降ろす際に願う事が人によって変わるからではないか、と推測する。これは神様が持つ多面性と関わりがあるのではないか、という考察からである。

そして、『建造』について詳しく話を聞いたところ、どうやら用いる資材の量で結果をある程度操作できるのだとか。

これはそれぞれがどの神に対する供物なのかを分ける要因なのではないかと考えたのだ。

 

 

「様々な資料を読んで思ったのは、ここには駆逐艦として君たちがいる。つまり優先すべきは軽巡洋艦、並びに空母である、と思ったんだ。

これらが有るか無いかで取れる戦術の幅はかなり変わってくる。空母に関してはそこまで急がなくてもいいと思っているが、軽巡洋艦に関しては早急に降ろす必要がある。

君たちがどちらかしかいなかった場合は駆逐艦も候補に入ったけどね。」

「へぇ、来たばっかでそこまで考えてるんだ。その眼鏡は伊達じゃないんだね、司令官!」

(……降ろすって何のことだろう?)

 

そんな理由で妖精に先の条件で『建造』を頼んだ結果、最初は全部30ずつでやるのが良い、と教えてもらった。

ちなみに配分を教えるのは最初だけのサービスとの事らしい。おそらくは今回の配分を元に今度からは自分で考えろ、という事なのだろう。

 

 

「ならひとまずはそれで。回数は……最初は2回でいいかな?」

「……司令官。それなら『任務』も一緒に片付けちゃえばいいんじゃない?」

 

 

「『任務』?」と、僕が要請に頼んでいると、初雪がそんな事を言ってきた。

 

 

「……えっと、『任務』って言うのは、大本営から出される課題みたいなものなの。達成したことを報告すれば、報酬として資材とかが送られてくるんだって。」

「と、言うことは、しばらくは『任務』をこなして資材を集めるべきだ、と?」

「……うん。まだ『遠征』も行けないし。」

 

 

『遠征』……確か資材の収集を旨とした出撃、だったか。

確かにうちには人員そのものが少ない。そのためにも『任務』をこなしながら『建造』で艦娘を呼ぶことが急務、か。

 

 

「……よし。なら早速『任務』に当たろうか。今の僕たちでは何が出来るんだい?」

「ちょっと待っててくれよな、えーっと……」

 

 

さて、僕が彼女達の上に立つと聞いた時はどうなるかと思ったが、案外どうにかなりそうだ。このまますんなり進んで欲しいものだが────

 

 

 

 

────なんだか始まりから大変だったなぁ。彼女達がいなかったらどうなっていたことか。

しかし、なかなかに癖のある子が来たな……。多少は慣れてきたが。

 

結論から言ってあの後、軽巡洋艦が2隻、駆逐艦が2隻、さらに重巡洋艦が1隻着任した。(どうやら艦娘の分霊を降ろすことをそう言うらしい。)

川内型軽巡洋艦3番艦の那珂。球磨型軽巡洋艦5番艦の木曾。

睦月型駆逐艦3番艦の弥生。そして、暁型駆逐艦2番艦の響。

そして、1度だけ重巡洋艦を狙って『建造』した際に着任した、青葉型重巡洋艦1番艦の青葉。

今はこの5人を含めた7人で回している。

一月が経ったにしては数が少ないのは、しばらくは練度を上げることを重視したためである。数が多くても質が悪ければ結局は烏合の衆と変わらない。

 

初雪曰く、『……早めに第3艦隊が使えるようにした方がいい。『遠征』もやりやすくなるし。』とのこと。その為にはあと川内型軽巡洋艦1番艦『川内』、並びに2番艦『神通』が居ないといけないらしい。

 

はてさて、どうなることやら……。まだまだ先は長そうだ────。

 

 

 

ちなみに、密かに期待していた『コンピューター』とやらは使い物にならない、と言われてしまった。少し泣いた。




と、言うわけでプロローグ、というか説明回でした。

もともとこの話自体、『霖之助が妖精さんを怒らせててんやわんやする』という謎電波を受信した結果生まれたものです。しかも先のことは何も考えてません(を

ひとまずは霖之助たちが勝手に動いてくれるので、そのための舞台を整えることが急務かな、と。


ともあれ、ここまで読んで頂いてありがとうございます。霖之助らしさや、初雪らしさ、深雪らしさが出ていれば僥倖です。


次回の内容は……多分まだ運営に関してなんかするんじゃないですかね、彼のことですから。
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