古道具屋が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮に入ります。 作:えぬろくよん
このあと昼過ぎから仕事です。6時間も寝れないかも……(´・ω・`)
あ、そういえば午後の演習やってなかったような……。
────さて、ここらで今の鎮守府の状況を整理するとしよう。
まず、僕は呉にある鎮守府の一つを任されている。これは『呉鎮守府』の支店のようなものと思えばいい。
そして、着任から1ヶ月が経った今現在、海域の攻略は全くと言っていいほど進んでいない。今は海域の開放を焦るよりも、安定した戦力を整えなければならないと判断したからだ。
……というのが表向きの理由。実際は…………
「提督ー! 那加ちゃんのお仕事まだぁー? ねー提督ってばぁー!!」
「司令官! 鎮守府瓦版に載せるいいネタありませんか!? ねぇ〜司令官〜」
「あぁ、もう! 少し静かにしないか!
『出撃』については当分見送り、先ずは他の鎮守府との『演習』を重ねて練度を上げつつ『遠征』で最低限必要になるであろう資材の備蓄が最優先だ! 大変かもしれないが必要なことだ、わかってくれ!
それと瓦版については僕が情報を提供しても意味が無いだろう! そもそも僕から提供したらそれはもう僕からの指示と変わらないぞ! 他の鎮守府からなにか情報を仕入れたりしたらどうなんだい?」
と、このふたりがいつも騒がしくわがままを言うおかげで進捗は宜しくない。
駆逐艦の皆や木曾なんかはしっかりと指示に従ってくれるから助かっているのだが……。
「僕は君らに頼るしかない。だから君らが動きやすいように環境を整えるのが僕の役目だ。そのために今は土台を固める必要がある。
早いうちに苦労すればそれだけあとから楽になってくる。こういった経験は必ず無駄になることはないんだ。
今は無計画に『出撃』させられる余裕が無いんだ。わかってくれないか?」
「むー、流石に那珂ちゃんもわかってるよー。でもやっぱり地方ロケばっかりじゃ精神的にまいっちゃうよ〜。」
む、その意見には一理ある。
彼女達艦娘は、戦闘を行い、被弾状況に応じて、被害が軽微な【小破】、戦闘にやや支障が見られる【中破】、戦闘及び航行が困難になる【大破】となる。ちなみにこの【大破】の状態で無理に出撃させると、【轟沈】の危険が高まる。
そして、そういった被害状況とは別に、艦娘毎の【コンディション】と呼ばれる《疲労度》が有る。言葉の通り、疲労度が溜まればそれだけ精細を欠くし、疲労が少なければ動きも良くなる。
これは肉体的なものだけでなく、精神的なものも作用するため、なかなかに加減が難しいのだ。
資料によれば、給糧艦である『間宮』ないしは『伊良湖』がいれば多少は軽減がされるそうなのだが、わが鎮守府には何故か未だにどちらもこない。(ちなみに普通の鎮守府であれば既に来ていてもおかしくないのだとか。)
『出撃任務』も消化しておきたくはあるのだが……。
(他の重要な任務があまり消化できてない今、少しでも支出は減らしたいんだよなぁ。)
現在は重巡洋艦2隻を組み込んだ編成任務―通称A7任務―が達成できない。重巡洋艦が青葉のみだから仕方ないのだけれど。
とは言えこの任務が終わらなければ重要な川内型軽巡姉妹の全3艦編成任務―A14任務とも呼ばれる。―に着手できないのだ。……そもそも『川内』並びに『神通』がまだいないので、どのみち達成できないのだが。
演習の際に他の提督に話を聞いてみたところ、『川内』が最もネックである、という情報を手に入れているので、『建造任務』と並行して鎮守府正面海域―通称1-1―の攻略に乗り出すべきか……?
とは言え各資材が4,000~5,000の間を行ったり来たりしているのであまり使うわけにも行かないのだが……。
と、2人をなんとか宥め、退出した後に資材の運用に四苦八苦していると、
「お前もなかなか難儀してるな。少しは気楽にやればいいだろうに。」
と、頭上から男勝りな口調で話しかけられた。
「……あぁ、木曾か。遠征お疲れ様。
すまないね。今日は本来なら那珂が遠征に行く日だったのに、君に任せてしまって。」
「いいさ。最近は那珂も遠征ばっかりで参ってるみたいだったからな。たまには実戦にも行きたいんだろうよ。
ま、お前からすれば悩みの種はどちらかと言えば青葉の方だろう?」
と、ニヤニヤとした笑い方で聞いてきた。
「さあ、どうだろうね? 君の方こそ駆逐艦の娘達の手綱を握るのが上手くなったんじゃないか? 案外学校の先生なんかに向いてるかもな。」
「よせよ、そんな柄じゃねぇよ。」と、実に楽しそうに返してくる。彼女は艦娘の中でも数少ない男性語を話す娘なので、自然とこういった軽口が飛び交う。
ちなみに、こういった話し方や性格のことを『蓮っ葉』としばしば表現されるが、この言葉はもともと『態度や言動が軽はずみで下品な様』を表す言葉である。
間違っても女性にそんな事を言ってはいけない。
「それよりも、だ。」と、先ほどまでの会話を打ち切るように話題を変える木曾。どうやらあまり突っ込まれたくないらしい。
「うちの練度を上げて、運営に支障を来さないようにするのも大事だが、いい加減海域の開放を進めないと、それこそ地盤を固めておしまいになっちまうぞ?」
「……解ってはいるんだがね。こればっかりは、君たちの命がかかっているんだ。軽々しく戦場に送れないよ。」
「……難儀なもんだな。提督、って奴も。俺達艦娘も、な。」
「違いない。」と、僕は苦笑しながらこぼす。
とは言ったものの、序盤にしては練度も高め、資材も全くの余裕が無い訳では無い。……遊ばせる程の余裕はないが。
……そろそろいい頃、か。
「……そうだな。そろそろ海域の攻略に移ろうか。これだけ練度を上げれば負けることは無いだろう。無論、絶対が無い以上、万が一の事態もありうる。
とは言え及び腰になりすぎも良くないしな。」
「お、て事は……。」
あぁ、と頷く。不安がなくなった訳では無いが、彼女からああも言われれば、動くしかないだろう。
「済まないが、今手透きの艦娘達を集めてきてくれないかな? 場所は……まあ数も多くないし、ここでいいか。」
「了解。」と言い残して去って行った。彼女もなかなか働き者だなぁ。
今現在僕の鎮守府は、初期秘書艦の初雪と深雪、それと先程の木曾が中心となって回っている。
なお1番のじゃじゃ馬は青葉である。あれで1番練度が高いというのだから不思議である。
さて、木曾は仕事が早いからな。僕も身だしなみくらいは整えなくちゃあな。
「さて、今回みんなに集まってもらったのは他でもない。皆の練度も順調に伸び、資材もほんの僅かながら余裕が生まれてきた。
よってこれより、海域奪還のため、本格的な『出撃』を開始する!」
僕の鎮守府の艦娘が全員揃ったのを確認し、慣れないながらも大きい声でそう宣言した。
「提督ぅ〜、それってつまり、那珂ちゃんにお仕事が回ってくるってこと〜!?」
と、那珂が真っ先に反応した。ちなみに那珂は、何故か『出撃』の事を『お仕事』と呼んでいる。これは恐らく彼女がアイドル―一般大衆向けの偶像の一種の事だろう。―を目指していることが関係しているのだろう。本人曰く『元々アイドルなんだよー!』との事らしい。正直そこまで気にしていない。よく解らないしな。
「あ、あぁ。今の君達なら1-1は難なく突破できるだろうからね。今回は思いっきり動いてくるといい。」
「やったぁ〜っ!」と大はしゃぎの那珂。とは言え流石に浮かれて支障をきたす様子もないらしい。この分なら旗艦を任せてもいいかもしれないな。
「それじゃあ編成を伝える。まず旗艦は────」
今回の編成は次の通り。
旗艦・那珂。
随伴艦・響、弥生、初雪、青葉、木曾。
以上の6隻1艦隊にて出撃。
過剰戦力気味かも知れないが、初戦という事もあり、士気の高揚のための編成だ。正直な所響か初雪、それと木曾は遠征に回って欲しかったが、これからのことを考えると目の前の利よりも先の利をとるべきだと考えたのだ。
このあたりの考え方はやはり商家で下積みをしていた経験と店を実際に持った事による考え方が役に立ったのだろう。残念ながら僕の店自体はそこまで儲かってはいなかったが。
「さて、今回の出撃で僕達も海域の開放のために動き出す。これはその第一歩だと思って行動するように。
ただし、万が一にも沈む危険があると判断したら、迷うことなく帰投する事。いいね?」
と、さり気なく……あまりさり気なくはないが、とりあえず轟沈は回避するよう伝えておいた。ここから先は彼女達の判断に任せるしかない。こういう事は現場に任せるのが一番いいのだ。
「那珂。今回旗艦は君だ。仲間達の様子もしっかり把握した上で進むか戻るか決めるんだ。今回は沈む危険はないとは思うが、現場での指揮能力を試すものだと思ってくれ。」
「まっかせてー! 那珂ちゃんが全力でプロデュースしちゃうよっ!」
「ああ、頼んだ。
響、弥生、初雪は、那珂の指示にはしっかり従うこと。そのうえで異常を察知したら早急に那珂に報告すること。
君たちがいなければ今回の海域は苦戦を強いられるかもしれない。故に必ず生きて戻ってくること。」
「……わかりました。がんばり、ます。」
「うん。よろしく頼むよ。
青葉はこの鎮守府で1番練度が高い。そして周りをよく観察する『眼』もある。
那珂や響たちが攻めの要なら、青葉は守りの要だ。君の長所を存分に活かすといい。」
「わっかりましたぁ〜! いい写真、期待しててくださいね?」
「写真撮影も程々にな。
最後に木曾。君は恐らくこの鎮守府で最もしっかりしている。彼女達が無茶をしないよう、しっかりと見ていてくれ。」
「任せときな。お前に最高の勝利を与えてやる。なんてな。」
「……全く頼もしいな。
さて、そろそろ時間だ。しっかりと役目を果たし、全員が五体満足で帰ってくること。皆の武運を祈る!」
少しらしくないかなとも思ったが、鎮守府(ここ)にいる時点でらしくなかったな、と思い返し、らしくない台詞回しで彼女達に激を飛ばす。ここからは彼女達の時間だ。
────彼女たちを送り出してから少しした頃。僕は工廠に向かっていた。
ちなみに今回留守番をしている深雪は、司令室に残してある。鎮守府内のみで使える通信機―トランシーバーと言うらしい。―を使うことで、緊急時でもほかの施設内から指示を出すことが出来るのだ。
閑話休題。
なぜこのタイミングで工廠に行くのかというと、今まで読んできた資料、及び『建造』による経験、他提督から仕入れた情報から、1度戦艦を建造するべきではと思ったのだ。……正直な所しばらくは駆逐艦、軽巡洋艦、重巡洋艦を増やしていき、『遠征』が無理なく回せるようになった頃に戦艦を増やそうとも思ったのだが……
「あの様子なら【ドロップ】してきてもらえれば人員は足りるだろう。そして今後の為を考えるなら、決定力を確保しておきたい、ってね。」
と、工廠までの道のりの間、そんなことを考えていた。
ちなみに、何故海域において艦娘が発見、【ドロップ】されるのか、これはその艦娘が祭祀を行われずにさまよってしまった結果であると推測する。
祭祀とは、細かい説明はかなり長くなるので省くが、『神様がそこにいることを認識する』為のものである。つまり、祭祀が行われないということは、存在を認識されていない、ということである。それを認識した状態とし、それぞれの鎮守府に呼ぶことを俗に【ドロップ】または【掘り】と呼ぶのだそうだ。
そして、【ドロップ】する艦娘は、海域毎にある程度決まっているのだとか。何でも鎮守府に近かったり、浅めの攻略海域だと戦艦や空母が出ないとか。
そういう理由もあって、今回は戦艦を目的として『建造』をしようという訳だ。
工廠に着いた僕は、早速妖精達と甘い和菓子(作り方は頑張って調べた。)を食べながら『建造』に取り掛かることにした。
「……そんな理由で、この配分で『建造』を進めてくれないかな?」
「────、────────。────♪」
「わかったわかった。次来た時には色を付けておくから、その分頼んだよ?」
「────!」
さて、ひとまずは問題なさそうだ。
それじゃあ、皆が帰ってくるまで『建造』の結果を待つとしようかな────。
「────、────────? ───!」
しばらく思考の海に沈んでいると、妖精に声をかけられた。どうやらかなりの時間が経っていたらしい。時計を見たら4時間半も経っていた。
「終わったみたいだね。それじゃあご対面と行きますか。」
はてさて、誰が来るのかな────────。
次回は艦娘サイドのお話です。お楽しみに
(予定は変更になる可能性があります。ご注意ください)(ぉ