「祐斗姉?」
『・・・何でもないよ。ちょっと転んだだけ。』
本当は転んだのではなく骸に刺されたんだが、それを言ったらフウ太を心配させる。精神的打撃を受けているフウ太に、これ以上負担をさせたくない。
ヘルシーランドの入り口でフウ太を一旦下ろす。抱っこして走って、思った以上に体力が削られた。骸はまだ林の中にいるから、大丈夫だろう。
『雲雀さんを助けに行くよ。』
「わかった!」
雲雀さんは・・・良し、まだスタッフルームで大人しくしている。フウ太の手を掴み、階段横の部屋まで急ぐ。
『先輩、俺です。』
ドアをノックし、ゆっくりと入る。部屋に散らかっているダンボールの後ろから、ノロリと雲雀さんの顔が出てくる。
「・・・厄介事って、それのこと。」
『まぁ・・・そうです。』
「うー」
雲雀さんはフウ太を指差して聞いてくる。まぁ、確かに厄介事って呼んだから否定は出来ない。厄介事呼ばわりに、フウ太は少し落ち込んでしまったようだ。
『兎に角先輩、ここから逃げますよ。』
「・・・」
『・・・戦略的撤退をしますよ。骸は大丈夫です。』
「ムクロ?」
『・・・さっき俺達をボコボコにしてくれた奴です。彼奴は、ツナ達が何とかしてくれます。』
「祐斗姉!?」
「沢田綱吉が?」
フウ太、攻めるような目で見ないでよ。確かに責任を押し付けてる感じだけど、ちょっと違うんだからね!
俺がいない方が、物語はすんなり進むだろうし。
『ツナは案外強いですよ。』
俺のボスですしね。
「ツナ兄は凄いんd・・・」
『・・・フウ太?』
フウ太が不自然に言葉を止める。どうしたんだ。体が膠着して、目の焦点が合っていない。
「どうした。」
『フウ太!?』
フウ太の肩を掴んで揺らしてみるが、何の反応も無い。えっ、何、どうしたの!?
『先輩どうしよう、フウ太g・・・ぇぇええっ!?』
雲雀さんに助けを乞おうと振り向くと、手の中あった暖かさが急に無くなる。驚いてフウ太に振り返ると、部屋を走って出て行く小さな背中が。
『えぇえっ!?ちょっ、フウ太!?』
どこ行くんだ!?追いかけないと!
『先輩、追いかけてくるので待っててください!』
雲雀さんの不満や意見を全無視して部屋を飛び出す。もう見えないフウ太を千里眼で探してみると、どうやら二階にいるようだ。
近くの非常用ハシゴを登り終える頃には、フウ太は三階に辿り着いていた。多分だが・・・あれは操られてるな。早く確保してここから逃げないと。
三階の映画館内でやっとフウ太に追いつく。
『つーかまーえた!』
腕の中のフウ太はジタバタと暴れ、逃げようとする。逃がすもんか。両腕でフウ太を固定し、また抱っこの姿勢で抱える。
さて、どうやって逃げようか。腕が塞がっている状態では非常階段は使えない。思い切って、二階の外通路に飛び降りるか。
走り出そうと足に力を入れると、何か違和感が訴えてくる。
何だ何だ?足に力が入らない?いや、入らないんじゃない・・・動かせない。嫌な予感がして恐る恐る手を動かしてみるが、案の定動かない。
骸はまだヘルシーランドの外にいる。あの距離からでも操れるのか。最悪だ、甘く見すぎたか。
〈お帰りなさい、囚われ姫。〉
頭の中にダイレクトに響く不愉快極まりない声。
〈早速ですが、その体を渡してもらいましょう。〉
『断る!』
誰が渡すか!
意識が一瞬遠のくのを感じて、意地で対抗する。骸のこれも多分眼の力のはずだ。幻覚に俺の眼が効くなら、これだって乗り越えられるはずだ。
『うおおおおぉおぉおお!』
〈しぶといですね。その眼のおかげでしょうか。〉
『諦めろ!』
〈そっちが諦めてくれないでしょうかね。〉
乗っ取られるまいと意気込む。具体的に何をすれば良いのか解らないが、とりあえず頭の周りにバリアを想像する。そして、頭の中にいる骸をバリアの外に追い出す様イメージする。
手足の感覚が少しずつ戻ってくる。良かった、方法としては間違っては無いようだ。けど下手に動こうとして集中力が切れると、瞬く間に体は乗っ取られる。本末転倒とはこの事だろう。
『最悪だ・・・』
こっから逃げられねぇ。
後書き:
久しぶりに車酔いして、精神的にダウンな作者です。
千里眼、便利ですねぇ。何と骸のシャットアウトにまで使えちゃいます。
けれどどうやら眼力(がんりょく。めぢからじゃないよ。)は略互角の様です。
最早千里眼ではなく、対骸眼と呼びたいです。
さてさて、物語の進行を邪魔せぬように先に逃げたかった主人公。
しかし、またもや骸に捕まってしまう。しかも今度は戦えないフウ太を抱えている!
雲雀さんは心配だし、もうすぐツナ達が来ちゃうしで計画はボロボロだ!
主人公は自分の体の主導権を守り続けれるのか!?
今回も読んでくれてありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。