問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~ 作:shin-Ex-
私独自の考えが強いので理解の程を
それでは本編どうぞ
「シナナ・・・・くん」
穴の空いたシナナの胸を呆然と見つめる飛鳥。だが、その手はゆっくりと穴へ伸ばされていく。そんな飛鳥の手を掴みシナナは、自身の穴へと導いた。
「ッ!?」
「この通り、俺には心臓がない。俺はもう死んだ人間・・・・・死物だからな」
まるで怯えたように震える飛鳥とは対照的に、シナナは穏やかな声色で語りかける。
「・・・・・・自分に
「ああ。虚野十六夜は死の間際に自身に
「・・・・・なんでそんなことをした?」
十六夜は睨むようにシナナを見つめながら尋ねる。さすがの十六夜もそのような外法は快く思わないようだ。
「戦うためさ。当時虚野十六夜が居た国は隣国と戦争をしていてな。その戦争で自国を勝利に導くために・・・・・戦死してなお戦えるように自分を死物兵器へと変えた」
「戦死?それほどの力を持っていながらですか?」
黒ウサギには腑に落ちないようだ。虚野十六夜の力はシナナの力・・・・・にも関わらずなぜ戦死などしたのかが。
「驚くことじゃないさ。毎日毎日休む間もなく戦い続ければいかに強力な力を持とうとも心臓えぐられて戦死するのも仕方がないこと。それこそ虚野十六夜は半年も前線で戦い続けてたんだからな」
「「「半年!?」」」
休みなく戦い続けるのにはあまりにも長すぎる期間だ。一同が驚くのも無理はない。
「なんで・・・・・虚野十六夜はそんなにも戦い続けたの?」
飛鳥が恐る恐るとシナナに尋ねる。
「戦える兵・・・・それも主力を担える戦力が圧倒的に不足していたからだよ。あの国はそもそも総人口さえ隣国に大きく劣っていたからな。まあだからこそ・・・・・・
「・・・・・え?」
「どういうこと?」
なぜ戦力がが少ないことが
そんな二人の疑問に、白夜叉が答えた。
「単純に戦力補充のためであろう。貴重な戦力が死して失われてしまえば溜まったものではない・・・・・・故に死物兵器などという戦力を求めて
「その通りだよ。母国ながら中々の外道だと思うよ。まあ死物兵器の俺が言う資格なんてないがな」
「ですが研究が進んでいたということは・・・・
「・・・・・そうだよ。本来超常の理である魔術を科学の力で技へと変貌させたんだ。あの国は科学力と技術力だけは抜きに出てたからな」
考えようによってはそれは非常におぞましいことだ。魔術を技へと変貌させる・・・・・・それは理さえも捻じ曲げる神のごとき所業にもなりえないのだから。
「なら聞くが・・・・・なんで虚野十六夜はそんな力に手を出し、自分を死物兵器に変えてまで戦うことを選んだ?正直言って俺の残影ともあろう奴がそこまで愛国心があるとは思えないんだが?」
「・・・・ふっ、流石はオリジナルだ。いい勘してるよ。確かに虚野十六夜に愛国心なんてものは欠片もなかった。どころか自国を恨んでいたぐらいだ」
十六夜の推察は当たっていた。
虚野十六夜に愛国心というものは微塵もなく、それどころか恨みさえ抱くほどに嫌っていたようだ。
「虚野十六夜が自分を戦死し、自らを死物兵器に変えたのは・・・・・ひとえに友人のためだ。友人を守るため・・・・・・死なせないために戦っていた。それ以外に戦う理由はなかった」
「・・・・友人思いだったのね」
「まあ・・・・・・虚野十六夜にはそれしかなかったってだけの話だがな」
どこか憂いを秘めた笑みを浮かべながら呟くシナナ。そんなシナナの様子から、あまり触れない方がいい話題なのだと察した一同はそれ以上問うことはなかった。
「まあつまるところ、死ぬ間際に
話題を変えようと、白夜叉がこれまでのシナナの話をそうまとめた。
だが・・・・・・
「いや、それは違うな。俺が・・・・・シナナという人格ができたのはこの箱庭に来たときだ」
「そうなのか?ならば箱庭に来る前までは別の名と人格があったということかの?」
「そうともいえるしそうじゃないともいえるな。死物兵器になってから箱庭に来るまでは人格を持つことに意味を見出さなかったからそのへん適当だった。名前だってなかったし」
どうやら死物兵器になってから箱庭に来る前までの『彼』はそういうことには無頓着だったらしい。
「・・・・・随分とまあいい加減だったんだね」
「まあ・・・・・死んで価値観や考え方がガラリと変わったということだ。虚野十六夜との共通点と言えばロマンチストと快楽主義者ってところぐらいだ」
「へえ、俺と同じなんだな」
「そもそも『十六夜』っていう存在の根本にあるポリシーって事なんだろう。そんなことより・・・・・・・」
突如として、シナナはこれまでにないほどに真剣な表情を浮かべて一同に向き直った。
「これが俺の正体だよ。俺は既に死んだ人間・・・・・それも兵器だ。どうだ?俺が・・・・・・悍ましいか?」
「「「・・・・・・・」」」
シナナの問いかけに、一同は黙り込んでしまった。
この場にいる者は全て特異な力を持ち、それ故に大抵のことは受け入れられるほど器は深い。だが・・・・・それでもシナナが既に死者であり、さらには兵器として戦っていたという事実は衝撃的だと言わざるを得ないであろう。
そんな沈黙の中・・・・・一番初めに口を開いたのは飛鳥であった。
「確かに・・・・・悍ましいわね。私はシナナくんのことを・・・・・酷く悍ましく、恐ろしい存在だと思うわ」
「・・・・・・そうか。まあそう思うのは「でもそれだけよ」・・・・・え?」
「さっき言ったはずよ。私はあなたが何者であろうとも忌み嫌ったりなんかしない。それは今だって変わらないわ。私にとってシナナくんはシナナくんでしかないから」
「飛鳥・・・・・・」
「だから・・・・・もう一度言うけれどそんな無駄なこと心配しなくてもいいのよ」
シナナの手を、自身の手で包み込みながら優しい声色で言う飛鳥。
飛鳥のその言葉は、シナナの心に波紋をもたらす。
「まあ、お嬢様の言うとおりだな。流石に驚きはしたがそれだけだ。それがお前を嫌う理由にはならねえ」
「今日会ったばかりだけど・・・・・シナナが悪い人じゃないってことはわかってる。だから私も嫌わないよ」
「私もです!シナナさんのことを嫌ったりなんかしません!」
「ふむ、まあ確かに珍しい経歴ではあるし存在自体特異であるが・・・・・箱庭には似たような者は探せばいくらでもいるであろう。対して気にすることでもない」
「皆・・・・・」
飛鳥に引き続き、十六夜が、耀が、黒ウサギが、白夜叉が思い思いに言葉を紡ぐ。そのどれもが、シナナを否定するものでも忌み嫌うものでもなかった。
「・・・・・ははっ!ほんっと、揃いも揃って問題児だなお前達は」
「なっ!?ちょっとシナナさん!他の方はともかく私は問題児ではございませんよ!?」
「いやいや、黒ウサギも問題児だろ」
「そうね。黒ウサギも私達と同類よ」
「・・・・黒ウサギも同じ穴の狢」
「ふむ、黒ウサギと同類とは喜ばしいの」
「黙らっしゃい!」
必死に問題児ではないと否定する黒ウサギは、どこから取り出したのかハリセンで皆の頭をスパンと叩いた。
「くくっ・・・・・あははははは!」
そんなやりとりに思わず満面の笑みを浮かべながら笑うシナナ。
その笑顔は、『シナナ』が生まれてから一番のものだった。
(本当に・・・・・・話してよかった)
忌み嫌うことなく自分に接してくれたことを嬉しく思うシナナ。
だが、それ故にだろう
シナナは皆に重要なことを一つ伝えていなかった・・・・・伝えることができなかった
自らに残された時間・・・・・・タイムリミットのことを
死物兵器について
死物兵器は虚野十六夜が居た世界において、死んでなお戦えるようにと兵士の死体に死霊魔術をかけられた存在です
当然ながら本来は自分にかけるものではありませんし、かけられるようなものではありませんが虚野十六夜はそれをやってのけられる程度に異常だったと解釈してください
また、施された死霊魔術はいつまでも持つはずもなく、いずれタイムリミットを迎えて消滅する宿命にあります
それでは今回はここまで
次回もまたお楽しみに