問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~   作:shin-Ex-

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今回は理の強制執行の制約についての説明があります

それでは本編どうぞ


制約

「たくっ、とんでもない奴だったな」

 

用を終え、"サウザンドアイズ"から"ノーネーム"本拠地へと戻る道中で十六夜がボヤいた。

 

「全くだな。正直あれはチートの域を超えてる」

 

「・・・・・その白夜叉に勝ったシナナくんが言っても説得力ないわよ?」

 

「・・・・・飛鳥に同意」

 

十六夜の言葉に同意するシナナに、飛鳥と耀がジト目を向けながら言う。

 

「いやいや、そうは言うがあんなの反則技みたいなものだぞ。白夜叉が力を誇示するためにあのゲーム盤を用意したからこそ勝てたようなものだ。本気出されれば俺なんてひとたまりもない」

 

「シナナさんの言うとおりです。決闘といっても白夜叉様は楽しむために手心を加えていましたから。その気になればすぐにゲームを終わらせることができたでしょう」

 

「ほら、黒ウサギだってこう言ってるだろ?」

 

「でも結果的に勝ったのはシナナくんじゃない。だったら謙遜する必要はないのではないかしら?」

 

コテンと首を傾げながら言う飛鳥。

 

そんな飛鳥を見たシナナは・・・・・

 

「・・・・・うん。可愛いぞ飛鳥」

 

「なっ!?何を言ってるのよシナナくん!!」

 

・・・・・例の如く飛鳥を愛でるのであった。もっとも飛鳥の方も例の如くからかってるのだと思い込んでいるが。

 

「ほんとブレないなお前は・・・・・だがまあ、白夜叉にはいつか本気でゲームに挑ませてもらうが」

 

「その時は黒ウサギをチップにね」

 

「嫌ですよ!」

 

ちゃんと黒ウサギ弄り忘れないあたり問題児である。

 

「ですが・・・・・白夜叉様が最後に言っていたこと皆様は本当に理解していらっしゃいますか?」

 

黒ウサギは別れ際に白夜叉が言っていたことを思い返す。

 

 

 

 

 

 

 

『おんしらが"魔王"と戦おうというのならまあそれもいいだろう。だがひとつ忠告しておいてやる。魔王と戦うのならばまず力をつけろ。十六夜とシナナはともかくとして娘ふたりの力では魔王のゲームでは生き残れはしない』

 

 

 

 

 

 

「言ってくれるわよね。魔王のゲームというのはそれほど厳しいのかしら」

 

飛鳥はムッとした表情を浮かべながら言う。同じように耀も若干不機嫌そうだ。

 

「・・・・ええ。この先を見れば魔王の恐ろしさは感じていただけると思います」

 

黒ウサギは表情を暗くし、戸惑いながら居住角の入口の門を開いた。

 

門の向こうから感じる乾いた風。砂塵が舞い、視界を遮る。その中で微かに見える景色は、廃墟としか形容できないものであった。

 

「っ!?これは・・・・!?」

 

街並みに刻まれた傷跡をみた飛鳥と耀は息を呑み、シナナは驚きはしなくとも表情を険しくし、十六夜はこの光景にスっと目を細める。

 

十六夜は木造の廃墟に歩み寄って囲いの残骸を手に取った。そのまま少し握り込むと、残骸は音もなく脆く崩れる。

 

「・・・・・おい、黒ウサギ。魔王のギフトゲームがあったのは今から何百年前の話だ?」

 

「・・・・僅かに三年前でございます」

 

悲しそうに顔を伏せる黒ウサギ。

 

「・・・ハッ、そりゃ面白いな。いやマジで面白いぞ。この風化しきった町並みが三年前だと?」

 

"ノーネーム"のコミュニティは・・・・十六夜の言うとおりまるで何百年の時間経過によって滅んだように崩れ去っていた。砂に埋もれた街路、腐って倒れ落ちている木造の建築物、要所で使われていた鉄筋や針金は錆に蝕まれて折曲り、該当は石碑のように枯れて放置されていた。

 

ここが三年前まで人で賑わっていたとは住んでいたと言われても信じることなどできない。

 

「・・・・・断言するぜ。どんな力がぶつかってもこんな壊れ方はあり得ない。この木造の崩れ方なんて、膨大な時間をかけて自然崩壊したようにしか思えない」

 

「これが魔王の力・・・・・白夜叉があそこまで言うだけのことはあるな」

 

十六夜はあり得ないと言いながらも目の前の廃墟に冷や汗を流し、。

 

「ベランダのテーブルにティーセットがそのまま出ているわ。これじゃまるで、生活していた人間がふっと消えたみたいじゃない」

 

「・・・・生き物の気配も全くない。整備されなくなった人家なのに獣が寄ってこないなんて・・・・」

 

飛鳥と耀も廃屋を見て複雑そうに重みを感じさせる感想を述べる。

 

黒ウサギは廃屋から辛そうに目を逸らしながら朽ちた街路を進みだした。

 

「魔王とのゲームはそれほどの未知の戦いだったのでございます。彼らがこの土地を取り上げなかったのは魔王としての力の誇示と、一種の見せしめでしょう。彼らは力を持つ人間が現れると遊ぶ心でゲームを挑み、二度と逆らえないよう屈服させます。僅かに残った仲間達もみんな心を折られ・・・・コミュニティから、箱庭から去って行きました」

 

醜く残る魔王の爪痕。魔王は自らの力を見せつけ、楽しむためにあえて白夜叉のようにゲーム盤を用意しなかったのだ。

 

黒ウサギは感情を押し殺した瞳で風化した街を進んでいき、飛鳥や耀も複雑な表情でその後に続く。その中で十六夜だけは瞳を輝かせ不敵に笑っていた。

 

「魔王・・・・か。ハッ、いいぜいいぜいいなオイ。想像以上に面白そうじゃねえか・・・・!」

 

「面白そうね・・・・・・流石というかなんというか。俺はお前ほど前向きには考えられそうにない」

 

「随分と弱気じゃねえか」

 

「・・・・・戦いの中で身を置いていたんだ。死物兵器といえども臆病者にならざるを得ない」

 

シナナは問題児の中では唯一戦いの渦中に身を置いていた。それ故に、どのようなものであれ、"力"というものに人一倍過敏になっているのだ。

 

「・・・・ねえシナナ。一ついい?」

 

「ん?なんだ耀?」

 

「シナナの理の強制執行(ルールメイカー)でこの土地を元に戻すことはできないの?」

 

「!?」

 

耀のシナナに対する問いかけは、黒ウサギの表情を希望に染めた。

 

理に干渉するシナナのギフトならばもしかしてこの惨状をどうにかできるかもしれない・・・・・・・それは黒ウサギにとっては願ってもないものであるからだ。

 

ただ・・・・・現実はそこまで甘くはない。

 

「・・・・・それは難しいな」

 

シナナは申し訳なさそうな表情で首を横に振った。

 

「なぜですか?シナナさんのギフトで(ルール)を創れば・・・・・」

 

「黒ウサギ」

 

すがるような目で問い詰める黒ウサギに対して、シナナは彼女の名を呼び遮った。

 

「・・・・・さっきも言っただろ、そいつは難しい話なんだ。そもそも、理の強制執行(ルールメイカー)はそんなに都合のいいギフトじゃあない。こいつは酷く使い勝手が悪いからな」

 

「使い勝手が悪い?どういうことかしら?」

 

どこか忌々しげに語るシナナに、飛鳥が尋ねる。

 

理の強制執行(ルールメイカー)は確かに決まれば非常に強力ではある。だがそれ故にいくつか制約があるんだ」

 

「まあ当然といえば当然か。あんなデタラメギフト無尽蔵で使えるはずがねえ」

 

十六夜の言うとおりだ。強力な力にはそれに見合ったリスクや制約があるのが道理。

 

なんの制限もなければそれこそ理の崩壊に繋がりかねない。

 

「それで?その制約っていうのは何なの?」

 

「主な制約は三つ。まず一つに一度使うと一週間使用不能になる。これ絶対な」

 

「白夜叉との決闘の時に使ったからこの先一週間は使えないんだね」

 

「で、でしたら一週間後に改めて・・・・・というわけにはいかないのですか?」

 

黒ウサギは恐る恐るとシナナに尋ねる。

 

「残念ながらな。制約その二、関連付けのできない(ルール)は創ることができない」

 

「関連付け?」

 

「まあわかりやすく言うと無から有を生み出すことはできず、因果から外れた事はできないってことだ」

 

「・・・・・余計わからなくなったのだけれど?」

 

「・・・・・同じく」

 

シナナなりにわかりやすく言ったつもりなのだろうが、飛鳥と耀にはさっぱりのようだ。

 

「シナナ、具体例を交えて説明しろ」

 

「わかった。ならさっきの白夜叉との決闘の時を例にだそう。あの時俺は『白夜叉の強さは白夜に依存する』という(ルール)を創った。これは白夜叉が白夜を司る存在だったから可能だったことで、それを利用して白夜を乱して白夜叉の力を押さえ込んだ。ただこの時もしも『白夜叉の力を弱くする』というルールと創ろうとしてもそれはできない。どうしてだと思う?」

 

「関連性がない・・・・から?」

 

「そのとおり。なんの理由も関連性もなく力を弱くするなんて突飛すぎる。そんな(ルール)は創ることができないんだよ。これがこのギフトの最も面倒なところだ」

 

「だから・・・・・この土地を元に戻すことができないということですか」

 

シナナの説明を聞き、黒ウサギは落胆する。

 

だが・・・・・

 

「いや、そうじゃねえだろ」

 

「え?」

 

「どういうことですか十六夜さん?」

 

「今の説明はつまり『関連性さえあればどんな(ルール)でも創れる』ってことだろ?関連性なんてものは少し考えればこじつけでどうとでもなる。違うか?」

 

「・・・・・まあその通りだよ。考えるのは面倒だがその気になればこの土地を生き返らせること自体は可能だ」

 

「だがそれにも関わらずお前は難しいと言った。つまり・・・・三つ目の制約が足枷になってるってことだろ?」

 

「・・・・・ああ、その通りだよ」

 

そう、シナナがこの土地を蘇らせることが難しいと言った理由には三つ目の制約が関係していた。

 

「その三つ目の制約っていうのは?」

 

「時間制限だよ。俺が創った(ルール)には有効となる時間には限りがある。具体的に言えば・・・・・・・最大30分だ」

 

「たったの・・・・30分?」

 

「おいおい、たったのはないだろう。30分もだ」

 

シナナの理の強制執行(ルールメイカー)はあらゆる世界全体に及ぼすギフト。限られた時間とは言え30分もの時間自身の作った(ルール)を文字通り強制的に執行させるのだから十分すぎるほどにおぞましいと言える。

 

「30分・・・・ですか。確かにそれではこの土地を完全に蘇らせることはできませんね」

 

蘇ったとしても30分・・・・・・シナナに言わせれば30分もだが当然ながらそれでは意味がない。

 

30分すれば・・・・・また死の土地へと逆戻りなのだから。

 

「・・・・・すまないな黒ウサギ。力になれなくて」

 

「いえ、シナナさんが気にする必用はありません。どうにかする方法は今後地道に考えていきましょう」

 

ニコリと微笑みを浮かべながら言う黒ウサギ。だがその笑顔からは儚さと落胆の色が確かに見て取れる。

 

「さあ、ジン坊ちゃん達が居るのはこの先です!ついてきてください!」

 

黒ウサギは多少強引にでも明るく振舞い、皆をジン達の居るところへと案内し始めた。

 

「・・・・・・」

 

「シナナくん」

 

飛鳥は黙りこんでその場から動こうとしないシナナの手を優しく掴んだ。

 

「行きましょ。置いていかれちゃうわよ?」

 

「・・・・・ああ。そうだな」

 

飛鳥に連れられ、シナナは歩み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・・・ごめん黒ウサギ)

 

シナナは心の中で黒ウサギに謝罪する。

 

先程の理の強制執行(ルールメイカー)の説明には・・・・・・完全ではないのだ。

 

実は、創ったルールを30分どころか、永遠に有効にする手段が一つだけ存在する。

 

だが・・・・・・それは今のシナナには選ぶことができない選択肢。

 

(今はまだ・・・・・・魂を失うわけにはいかない)

 

その魂さえ捧げれば・・・・・・・・(ルール)は永遠のものとなる。

 

だが・・・・・・まだそれを選ぶことはできない。

 

彼はまだ・・・・・・この箱庭で何事もなしていないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




理の強制執行の制約について

理の強制執行の制約をまとめると以下のようになります

①一度使うと一週間使うことができない
②関連付けできない理は創ることができない
③創った理は30分のみ有効(ただし魂を犠牲にすれば永久となる)

以上の制約によって使い勝手はあまりいいとはいえません

なお、今後理の強制執行を使う機会は一度だけです

いつ使うかは・・・・・お楽しみということで


それでが今回はここまで

次回もまたお楽しみに
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