問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~ 作:shin-Ex-
それでは本編どうぞ
水樹を設置し、これから生活する屋敷を案内された後、飛鳥、耀、黒ウサギの三人は屋敷にある大浴場を満喫していた。浴槽一面には水樹から引いた水が適温に沸かされている。
「凄く落ち着く」
「ですね・・・・一日の疲れが取れます」
耀と黒ウサギはのほほんとした顔で幸せそうに言う。
ただ、そんな中・・・・・・
「・・・・・はあ」
飛鳥だけが物憂げな表情で溜息を吐いていた。
「飛鳥?」
「どうなさいましたか?」
そんな飛鳥のことが気にならないはずなく、耀と黒ウサギが声をかける。
「いえ・・・・・少し考え事をしていただけよ」
「・・・・・シナナのこと?」
「ッ!?」
耀が尋ねると、飛鳥は表情をこわばらせる。どうやら図星であるようだ。
「・・・・・よくわかったわね春日部さん」
「うん、なんとなくそうなんじゃないかと思って」
「それで飛鳥さん、シナナさんがどうかなさったのですか?」
「ええ・・・・・シナナくんってその・・・・・・本当にもう死んでしまっているのかなと思って」
飛鳥は表情を暗くさせながらポツリと呟いた。
「シナナくんが死物だという事実は話を聞いて受け入れたけれど・・・・・・彼を見ていると本当にそうなのかわからなくなってしまうの」
どうやら飛鳥はシナナが本当に死物であるのかどうか疑いを抱いているらしい。
だがそれも無理もない話。飛鳥から見たシナナは生きている人間となんら遜色がないのだから。
「・・・・・・私はむしろ納得した」
「え?」
「シナナがもう死んでるって聞いて・・・・・・納得したよ」
耀はどこか儚げな表情を浮かべながら言う。
「どう・・・・して?」
「シナナから・・・・・感じなかったから。生きてる生物の持つ気配のようなものが・・・・・何も感じられなかったから」
耀はギフトにより感覚や直感が常人に比べ非常に発達している。それ故にシナナから生物ならばあるべきはずの気配が存在していないことに気がついていたのだ。
「・・・・・それは私もです」
「黒ウサギも?」
「YES。耀さんほどはっきりしたものではありませんが、シナナさんを初めて見た時からなにか違和感のようなものを感じていました。だからシナナさんが死物と聞いたとき、あまり驚きはありませんでした」
「・・・・・・この分だときっと十六夜くんも何かしらには気がついていたでしょうね。つまり何も気がついていなかったのは私だけだったというわけ」
飛鳥は悲しそうに顔伏せた。
(どうして・・・・・どうしてこんなにも私は・・・・・・)
シナナのことを何も気がつくことができなかった・・・・・その事実に飛鳥は自分でも理解のできない悲しみを抱いていた。
「・・・・・飛鳥さん、耀さん。実はシナナさんのことで話しておきたいことがあります」
黒ウサギはいやに神妙な面持ちで話し始める。
「これは推測なのですが・・・・・おそらくシナナさんは人としての機能をいくつか失っています」
「人としての機能を・・・・」
「失ってる?」
「本来心臓を失えば身体機能に障害が出るはずです。ですがシナナさんは・・・・・あまりにも平然としすぎています」
心臓とは血を体中に巡らせるポンプの役割を果たしている。その心臓がなければ当然身体機能に異常をきたすに決まっているというのに・・・・シナナはというとそんなこと意にも介していない。
「だから人としての機能を失っているというの?」
「はい。おそらくそれだけではなく、生きている人間なら当然のように持ち合わせているものをシナナさんは失っていると思われます」
「・・・・あ」
飛鳥は何かを気づいたように声を上げる。
「どうしたの飛鳥?」
「シナナくん・・・・・・昼間カフェで何も食べ物を頼まなかったわ。それってもしかして・・・・・」
「おそらく・・・・・食べなかったのではなく食べられないのでしょう。消化機能を失っているかもしれません」
「シナナくん・・・・・」
生きているのなら持っているはずのものを一体いくつ失っているのであろうか・・・・・・・そう思うと、飛鳥はシナナに同情せずにはいられなかった。
そして同時に・・・・・飛鳥の中になにか重たい感情が芽生えた。
「・・・・・飛鳥、シナナのことが心配?」
「え?」
「そんな顔してたから」
「・・・・・心配とは少し違うわ。なんていうか・・・・・・苦しいの」
「苦しい・・・・ですか?」
「ええ。シナナくんが生きていれば持っているはずのものを失っているっていうことは・・・・・シナナくんはそれだけ辛い思いをしてると思うの。そう思うと・・・・・胸が締め付けられるように苦しくなるの。どうしてだかわからないけれど・・・・・・・私・・・・・」
今にも泣き出しそうになってる飛鳥。
飛鳥にとっては初めてだった。特定の個人のために・・・・・・ここまで感情を溢れさせるのは。
「飛鳥・・・・・・・・苦しいならシナナの傍にいてあげて」
「春日部さん?」
「シナナの傍にいれば・・・・・きっとその苦しみは和らぐ。それにシナナだって飛鳥が傍に居ればきっと・・・・・喜ぶと思うから」
「シナナくんが喜ぶ?どうして・・・・?」
飛鳥は耀の言っている事の意味が分からずに居た。
「それは・・・・・・飛鳥だからだよ」
(シナナにとって飛鳥は特別だから・・・・・・私じゃ特別にはなれないから)
耀は自身ではシナナの特別となれない事を察し・・・・・心内を悲しみに染める。
耀は・・・・・・シナナに対して特別な感情を抱いていたようだ。
「えっと・・・・・意味がわからないのだけれど?」
「いいから、とにかく飛鳥はシナナの傍にいればいいの」
「黒ウサギもそう思います」
黒ウサギもまた、耀の言うことに同意する。
「そ、そう。わかったわ」
結局耀の言っていることの意味がわからないまま、飛鳥は返事を返した。
(シナナのことお願いだよ・・・・・・飛鳥)
耀の心情について
実は耀はシナナに一目惚れしていました
しかし、一日シナナの飛鳥に対する態度を目の当たりにして自分の付け入る隙はないと判断して諦めてしまっています
たった一日でそこまでと思われるかもしれませんが、決してありえないことではないと私は思っております
それでは今回はここまで
次回もまたお楽しみに