問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~ 作:shin-Ex-
今回はサブタイトルのとおり、飛鳥さんの覚悟についてです
それでは本編どうぞ
死物兵器となった子供達の対処を終えたシナナは飛鳥、ジンと合流した。
合流したのだが・・・・・・
「・・・・・・」
・・・・・シナナはやたらと不機嫌そうな表情を浮かべてジンにジト目を向けていた。
「シ、シナナさん。あれはその・・・・飛鳥さんのギフトの力でやったことであって僕の意思じゃ・・・・」
「わかってる」
「で、でしたら・・・・そんなに不機嫌そうにしないで欲しいんですけど」
「不機嫌そうなのは生まれつきだ」
弁明するジンであったが、全く取り付く島なしであった。
まあ無理もない。皆を探し回っていた時に飛鳥をお姫様抱っこしながら走り抜けていくジンの姿を目撃してしまったのだから。飛鳥に好意を寄せているシナナからすれば理由はどうあれ不機嫌にならざるを得ないのだろう。
もっとも・・・・
「シナナくん・・・・どうしてそんなに不機嫌そうにしているの?」
・・・・・とうの飛鳥にはどうしてシナナが不機嫌になっているのか皆目見当もつかないようだ。
「・・・・はあ、それはともかくとして随分と焦っていたようだがなにがあった?耀もいないみたいだし」
シナナは現状を把握するため、何があったのかを飛鳥に尋ねた。
「え、ええ。わかったわ」
シナナに促され、飛鳥は説明を始めた。
「白銀の十字剣を守る虎か・・・・耀はそいつから飛鳥とジンを逃がす時間を稼ぐためにその場に残ったんだな」
「ええ。無事に逃げてくれるといいのだけれど・・・・」
飛鳥は自分達を逃がす為に時間を稼いでくれた耀の無事を願う。
「それにしてもあの虎は一体なんだったのかしら?」
「・・・・なあジン。まさかとは思うがその虎・・・・」
「ええ・・・・おそらくその虎がガルドです」
どうやらシナナは飛鳥達を襲った虎がガルドだと想定したようで、ジンはそれを肯定した。
「え?どういうこと?」
「彼は元々人・虎・悪魔から得た霊格・・・・三つのギフトからなるワータイガーです。しかし、その人を司る部分を鬼種に変質されたのでしょう・・・・吸血鬼によって」
「・・・・吸血鬼だと?」
「はい。これを見てください」
ジンは近くの植物を手にした。その植物は不自然にドクドクと脈打っている。
「この植物にも鬼種が宿っています。おそらくこの舞台を作り上げた人物とガルドを変質させた人物は同一でしょう。そう考えればすべての説明が付きます」
「その吸血鬼が誰なのかは知らないけれど生意気なことをしてくれたものだわ」
「だがそうなると指定武器っていうのは・・・・・」
「ええ。飛鳥さんが見たという白銀の十字剣でしょう」
銀と十字は吸血鬼の弱点だ。ジンの推測はまず間違いないと見ていいだろう。
「へえ、ジンくんって意外と博識なのね」
「確かに。その歳でそれだけの知識があるのは大したものだよ」
「い、いえそんな・・・・実はその吸血鬼には心当たりが・・・・」
ジンが吸血鬼のことを語ろうとしたその時・・・・・近くの草むらからガサッという物音が聞こえてきた。
音のした方向に振り向くとそこには・・・・腕から大量の血を流し、十字剣を持つ耀が居た。
「耀!?」
「か、春日部さん!大丈夫!?」
傷ついた耀を目にしてすぐ傍まで駆け寄る三人。
「失敗した・・・・ちょっと本気で泣きそうかも」
「・・・・一人でやろうとしたのか?」
シナナは十字剣に付着した血を見ながら尋ねる。
「うん。飛鳥のギフトはガルドに効かないし、シナナはあの子達の相手をしていたから私がやらなきゃって。でも・・・ごめん」
ガルドを仕留めることができなかったことに対して、申し訳なさそうに顔を伏せる。
「これは・・・・まずいです。傷そのものよりも出血が・・・・このままだと危険です」
耀の傷を看たジンは、危険な状態だと判断し焦りを見せる。
「ジンくん、これで出血を止めておいて」
飛鳥は自身のリボンを一つ解き、ジンに渡す。
そして地面に転がっていた十字剣を手にとり、拾い上げようとするが・・・・
「待て」
シナナに腕を掴まれて阻まれてしまった。
「離してシナナくん。ガルドは・・・・私が倒すわ」
「やぱりそのつもりだったのか。悪いがそれは認めない。ガルドは・・・・俺がやる」
飛鳥の意思を却下し、自らがガルドを倒すと言い放つシナナ。
「シナナくんまで私ではガルドに勝てないというの?私を見くびらないで。たとえどんなに強くても知性のない獣になんて・・・・」
「わかってるさ。別に飛鳥のことを見くびってなんかいない。飛鳥なら上手くやってガルドを倒せるだろう」
「だったらなんで・・・・止めるの?」
「・・・・・業を背負わせたくないからだ」
シナナは飛鳥の手から剣を奪い取り・・・・・飛鳥の首元に刃を添えた。
「シ、シナナさん!?何を・・・・」
シナナの突然の行動に驚きを顕にするジン。
ただ飛鳥は・・・・・・臆さずにシナナの目を真っ直ぐに見据えていた。
「いい剣だ。このまま俺が少しでも手を動かせば飛鳥の首を容易に刎ねることができる」
「・・・・・何が言いたいの?」
「剣を向けられるのは怖いだろう?下手すれば命を落とすことにもなるからな。その恐怖・・・・・・お前が戦うというのならガルドに与えることになる」
「・・・・・」
シナナの脅すかのような言い方に、飛鳥は言葉を返すことができずに息を飲む。
「それどころか『ガルドを殺した』をいう業をも背負うことになるんだ。経験者から言わせてもらえば・・・・・それは飛鳥が思っている以上に重く、苦しく、悍ましい。俺は・・・・・そんなものを飛鳥に背負わせたくない」
そう言いながら、シナナは剣を下ろした。
「ガルドは俺が倒す。俺はもう業と血に染まってるんだ。今更一人殺したところで・・・・・・なにも変わらない。俺ならガルド程度容易に葬ることができるしな」
ギュッと剣を固く握り締めるシナナ。今更一人殺してもなにも変わらないというが・・・・・その表情はどこか憂いを帯びているように感じられた。
「・・・・それじゃあ行ってくるよ」
飛鳥達に背を向け、ガルドの下に向かおうとするシナナ。
だが・・・・・
「待ってシナナくん」
飛鳥は・・・・・シナナを引き止めた。
「黙っていれば随分と勝手なことを言ってくれたわね・・・・・言ったはずよ。私を見くびらないでって」
「あす・・・・か?」
「私がなんの覚悟もなしにガルドを倒そうとしたと本気で思っているの?覚悟ならできているわ。私は業を・・・・・ガルドの命を背負うわ」
シナナの目に映る飛鳥には・・・・・確かな決意が秘められていた。
本気なのだろう。本気で・・・・・『ガルドを殺す』という業を背負うつもりなのだ。
「・・・・・正直シナナくんが私の心配をしてくれたのは嬉しいわ。でもね、ここで臆するわけにはいかない。これからこの箱庭で生きていくというのなら、遅かれ早かれその業を背負う時は必ずやってくる。業からは逃げられない・・・・違うかしら?」
「・・・・・」
飛鳥の問いかけにシナナは答えない。
だが・・・・・だからこそ、それは肯定ともいえるのだ。
「私は臆したりしないわ。背負うべき業がどれだけ重く、どれだけ苦しく、どれだけ悍ましいものであったとしても。もしもここでシナナくんに業を押し付けてしまえばこれから先もずっと押し付け続けてしまうかもしれない。あなたに・・・・シナナくんの優しさに甘えてしまうかもしれない。私は・・・・・・そんなの嫌なの」
飛鳥はシナナの優しさを知っている。知っているからこそ、そんな優しさに甘えるわけにはいかないのだと考えているのだ。
優しさに甘えず・・・・・・目を背けずに自ら業を背負う。そんな覚悟が、飛鳥の中で確かに存在していた。
「シナナくん・・・・剣を渡して。ガルドは私が倒す」
シナナに向けて手を伸ばす飛鳥。もはや・・・・誰にも彼女を止めることはできない。
「・・・・・どうやら本当に俺は飛鳥を見くびっていたようだな。わかったよ。行ってこい」
飛鳥の覚悟を目の当たりにしたシナナは観念したように飛鳥に剣を渡した。
「ありがとう。それじゃあ・・・・行ってくるわ。シナナくんはジンくんと春日部さんの応急処置をお願い」
シナナから剣を受け取り、飛鳥はガルドのいる屋敷へと向かっていった。
「さて・・・・と。耀、大丈夫か」
飛鳥を見送った後、シナナはすぐさま耀の応急処置に取り掛かった。
「シナ・・・ナ。飛鳥を行かせて・・・・よかったの?」
傷が痛むのをこらえながら、耀はシナナに尋ねる。
「・・・・・飛鳥の覚悟は本物だった。その覚悟を無下にするのは飛鳥を侮辱するのと同じだ。だったら・・・・・尊重するしかないだろ」
応急手当をしながら言うシナナ。
「それに・・・・飛鳥の言うことはもっともだ。俺も・・・・いつまでも一緒にいられるわけじゃないしな」
「「え?」」
最後にポソリと言ったその一言に、耀とジンが反応する。
「なんでもない。それよりも耀はもう喋るな。傷に障る」
「・・・・うん」
耀はシナナに言われた通りに黙って応急処置を受ける。
(飛鳥・・・・・)
応急処置を行いながら、シナナは戦いに赴く飛鳥へと思いを馳せるのであった。
今回は説明については無しです
それでは次回もまたお楽しみに