問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~   作:shin-Ex-

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今回から本格的にお話が進んでいきます

まあ・・・・・いきなりシナナがやらかすのですが

それでは本編どうぞ


月が綺麗ですね

バシャンと、大きな音と水しぶきを上げながら、4人は湖に落ちた。

 

「信じられないわ!引きずり込んだ挙句に空に放り出すなんて!!」

 

「右に同じだクソッタレ」

 

「・・・・大丈夫?」

 

湖から浮かび上がってきた4人のうち、上品な黒髪の少女とヤンキー風の金髪の少年は文句を言い、栗色の髪の大人しそうな少女は自身が連れ添っていた猫に心配そうに声をかけていた。

 

「石の中に呼び出された方がまだ親切だな」

 

「え・・・・・?石の中も十分に危ないわよ?」

 

「俺は問題無い」

 

「あらそう。身勝手なのね」

 

ヤンキー少年の言動に、黒髪少女は呆れた声を出した。

 

「だがまあ俺も同感だな・・・・・石の中のほうがまだ湖よりもましだ。これ下手すると俺溺れてたし」

 

シナナはため息を吐きながらヤンキー少年に同意する。

 

その雰囲気は先程までの不気味で狂気じみたものではなかった。これが彼がシナナの為に作り上げた人格ということなのであろう。

 

ちなみに・・・・

 

「「「・・・・・・」」」

 

3人はシナナの事をじっと見つめていた。

 

「ん?どうした少年少女?なぜ俺をそんなに見つめている?」

 

「いや、だって・・・・そんなものつけてたらね?」

 

「・・・・・なんで手錠なんて付けてるの?」

 

「お前、犯罪者かなにかなのか?」

 

3人はシナナの手に掛けられた頑丈そうな手錠を見ながら言う。

 

「ああ、これか。これは・・・・・と、話す前にあがろうか。このままじゃ風邪をひきかねない。自己紹介もしておかないとだしな」

 

「まあ、そうだな」

 

シナナが提案すると、皆湖から上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても・・・・ここどこだろう?」

 

「さあな。世界の果てっぽいのが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃぁねえか?」

 

猫を抱えた少女の問いかけに先程まで濡れた服を絞っていたヤンキー少年が髪をかき上げながら答えた。

 

「さて、まず間違いないだろうが一応確認しておくぞ。お前達にも変な手紙が?」

 

「そうだけど・・・・そのお前って呼び方訂正して。私は久遠飛鳥よ。そこの猫を抱えたあなたは?」

 

黒髪少女・・・・飛鳥は尋ねたもう一人の少女に尋ねた。

 

「・・・・春日部耀。以下同文」

 

猫を抱えた少女・・・・耀はそっけなく答える。

 

「そう。よろしく春日部さん。野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」

 

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれ」

 

ヘッドホンの少年・・・・十六夜はにやりと笑みを浮かべて答える。

 

「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ十六夜君」

 

「マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけお嬢様」

 

十六夜と飛鳥・・・・・二人の間に火花が飛ぶ。

 

そんな中・・・・・

 

(・・・・・逆廻十六夜。なるほど。もしやとは思ったが・・・・・・やはりこいつが()()()()()か)

 

十六夜の自己紹介を聞いて、シナナはニヤリと笑みを浮かべながらそんなことを考えていた。

 

「あ?何笑ってるんだよお前?」

 

十六夜はシナナが笑みを浮かべていることに気がつき、尋ねた。

 

「いや、賑やかだなと思っただけだ」

 

「そうかよ」

 

「それで?あなたは一体誰なのかしら?」

 

飛鳥がシナナに尋ねた。

 

「俺は・・・・・シナナというものだ。以後お見知りおきを」

 

シナナ礼儀正しく3人にと頭を下げながら自己紹介をした。

 

「シナナ?随分と個性的で変わった名前じゃねえか」

 

「私もそう思う」

 

「そうね。しかも特に面白くもないわ」

 

シナナの名前を聞いた3人は思い思いの事を口にする。傍から聞くと酷いいいようであるが、シナナは特に気にした様子もない。

 

先程適当に決めた名前だから特に思い入れもないためだろう。

 

「まあ自覚はしているよ。それよりも・・・・・」

 

シナナは飛鳥の事をじっと見つめた。

 

「あら?どうしたのかしら?」

 

「・・・・・月」

 

「え?」

 

「月が・・・・・綺麗ですね」

 

シナナが飛鳥に言った一言・・・・・・・それは遠まわしであるがいわば愛の告白。どうやらシナナとしては飛鳥に惹かれるものがあったようだ。

 

しかし・・・・・

 

「・・・・・は?」

 

「・・・・?」

 

「・・・・へえ」

 

どうやらシナナのそれは飛鳥にとっては意味が全くわからないものであったらしく、呆れ顔で素っ頓狂な声を上げた。耀も同じらしく首をかしげている。

 

ただ、十六夜だけは意味がわかっているらしく面白そうに笑みを浮かべていた。

 

「えっと・・・・シナナくん?今は月が出ていないわよ?」

 

飛鳥は知らないのならある意味当然の疑問を口にする。

 

「・・・・・残念、通じなかったか」

 

「ヤハハ!残念だったな!でも月も出てないのにそれは邪道だと俺は思うぜ?」

 

「それもそうだな。ふむ・・・・・だったら」

 

十六夜にからかわれてシナナは、手錠のついたままの手で器用に服の懐から月を象ったシルバー製のアクセサリーと取り出した。

 

「・・・・それなに?」

 

「ああ、ただのアクセだよ・・・・・お前達にしたらの話だが」

 

耀の問いかけにそう答えたシナナは、アクセをギュッと握・・・・・唱える。

 

具現(リアライズ)(ムーン)』」

 

シナナが唱えるとアクセは光り輝き、その光が天へと登っていく。

 

そして・・・・・・光が晴れると空に月が出現した。

 

「「「なっ!?」」」

 

突然現れた月に3人は動揺を隠せずにいる。当然だ。太陽が支配する時間帯に、突然夜の象徴たる月が堂々と存在しているのだから。その自体には十六夜でさえ驚かざるを得ない。

 

「それじゃあ改めて・・・・・月が綺麗ですね」

 

3人の驚いなど全く意に介していないといった様子のシナナが、改めて笑顔を浮かべながら飛鳥に対していう。

 

「え、ええ・・・・そうね。綺麗だわ」

 

飛鳥は思わず釣られて笑みを浮かべながらその言葉の本当に意味を理解しないままにそう答えてた。

 

「これまたとんでもねえな・・・・・・その手錠といいお前マジに何者だよ?」

 

冷や汗を流しながら、十六夜はシナナに尋ねる。

 

「そうだな・・・・・・まあ只者じゃないとだけ答えておく」

 

シナナは適当にそう答えておいた。

 

「それじゃわからないんだけど・・・・・まあいいわ。でもせめて手錠をつけている理由だけは教えてくれないかしら?何か犯罪を犯したの?」

 

ひとまずシナナが何者かは置いておくことにはしたが、やはり手錠のことは気になったようで飛鳥が尋ねる。

 

「別に犯罪なんて犯してない。もっと言えば手錠をかけられるような事をしたわけでもないしな」

 

「なんだ?じゃあそれは趣味ってことか?」

 

「・・・・・随分と特殊な趣味だね」

 

十六夜と耀は少々シナナから距離を取りながら言う。

 

「・・・・趣味じゃないからそんなに遠ざかるな。結構ショックだぞ?」

 

「それじゃあどうして付けているっていうのかしら?」

 

「それは・・・・・なにかされると困る者がいたから手錠をかけられてるんだよ」

 

シナナはどこかうんざりしたような表情で言う。

 

「ああ・・・・・そういうことか」

 

「・・・・・シナナくんも大変だったのね」

 

「・・・・・元気出して」

 

今のシナナの説明で、3人は理解できたようだ。それはおそらく3人も特異な力を持つが故だからだろう。

 

「いや、まあ別にそんなに暗くなる必要はないぞ?だって・・・・・こんなのあってないようなものだからな」

 

バキンと、音を立ててシナナは手錠を引きちぎった。

 

「「・・・・・え?」」

 

「まあそれくらいはできるよな」

 

その光景にまたも呆気にとられる飛鳥と耀。対して十六夜はそれぐらいできて当然だと思っていたらしく対してリアクションはない。

 

「ふう・・・・・こいつをとるのも10年ぶりか?やっぱりこっちの方が楽でいいや」

 

シナナは手錠の残骸を放り捨てながら、どこか満足げに言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんなんですか彼は・・・・・?」

 

4人の様子を、少し離れた草むらから伺っていた兎耳をつけた少女は困惑していた。

 

まあシナナの一連の行動を見てしまえばそう思うのは仕方がないであろう。

 

「な、なんてデタラメな・・・・・それに他の方たちも厄介そうですし・・・・・・これは大丈夫なんでしょうか?」

 

ウサ耳少女は不安から大きな溜息を吐くのであった。

 

 




『月が綺麗ですね』について

この言葉は夏目漱石が英語教師をしていたとき、生徒が 『I love you』の一文を「我君を愛す」と訳したのを聞いて、日本人はそんなことを言わない。月が綺麗ですね、とでもしておきなさいと言ったとされる逸話からくるものです

即ち遠まわしな告白ということです

考えようによってはロマンチックですが本編の飛鳥のように知らない人にするとチンプンカンプンとなるのでおすすめはしません

なお、返事としては「死んでもいいわ」が王道とされており、他には「私もそう思っていたところです」「ずっと前から月は綺麗でしたよ」「でも、太陽がないと輝けません」等があります

いずれも返事としても遠まわしなのでわかる人どうしでないとやはり通じないものとなります


それでは今回はこのあたりで

次回もまたお楽しみに

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