問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~ 作:shin-Ex-
メインはシナナと飛鳥となります
それでは本編どうぞ
飛鳥がガルドのもとへ向かった数分後、鬱蒼と生い茂っていた木々が霧散していった。
「これは・・・・・」
「どうやら終わったようだな」
「飛鳥・・・・・勝ったんだね」
シナナ達3人はその光景から飛鳥の勝利を確信する。
「終わったなら耀さんを早く黒ウサギ達のところに連れていかないと・・・・・」
「いや、その必要はなさそうだぞジン」
「え?それってどういう・・・・」
「皆さん!!」
ジンの声を遮るようにして、慌てた様子の黒ウサギが叫びながら近づいてきた。そのすぐ傍には十六夜もいる
ゲーム終了からまだそれほどまで経っていないというのに・・・・二人の走力はかなりのものである。
「黒ウサギ!耀さんが・・・・!」
「わかっています!すぐに本拠地に戻って治療を施します!」
「お願い!」
黒ウサギは耀を抱きかかえながら、全速力で"ノーネーム"の本拠地へと向かった。
「とりあえず春日部は黒ウサギに任せておけば大丈夫そうだな」
「ああ」
「・・・・・・」
「ん?どうしたジン?」
表情を暗くさせながら項垂れていたジンに、シナナが声を掛ける。
「僕・・・・・・なんの役にも立ちませんでした。コミュニティのリーダーなのに・・・・何もできませんでした」
ジンは悔しそうに俯き、唇を噛み締めた。
その胸中は己の無力さに対する罪悪感で埋め尽くされていることであろう。
「・・・・でもお前達は勝ったじゃねえか」
意外にも・・・・いや、当然のように十六夜はそんなジンに励ますように声をかけた。
「え?」
「お前達が勝った。なら御チビにも何か要因があったってことじゃねえのか?」
「十六夜の言うとおりだな。少なくとも致命傷を負った耀の応急手当をしたし、吸血鬼のことやガルドの今の状態にだって気がついてただろ?」
「で、でも耀さんの応急手当は僕がいなくてもシナナさんがやっていたでしょうし・・・・・吸血鬼のこともガルドのことも重要な情報では・・・・・」
二人に励まされるも、それでもジンは自分を卑下する。
「確かに応急処置は俺一人でもやっていたがジンがいたからはかどったんだ。吸血鬼やガルドのことだって今回は確かに直接ゲームクリアには関わらなかったが状況が違えば必要になる情報だった可能性もあった。結果として何もなすことができなかったかもしれないが、それでも役立たずとは言えないだろ」
「そう・・・・・でしょうか?」
「シナナの言ってる事は間違ってないと思うぞ?お前にはシナナ達3人にはない技能があった。今回それがたまたま活かせなかったってだけでそいつが役立たずの証明になるわけじゃねえ」
確かに今回のゲームにおいてジンの能力は活かすことができなかったかもしれない。それでもジンにだって問題児4人や黒ウサギにはない秀でた能力は確かに備わっているのだ。
故に、今回のゲームでジンが役立たずであるとは言い切ることはできない。
「いつかお前の技能・・・・ギフトが役に立つ時が来るかもしれねえ。その時にちゃんと結果を残して・・・・・自分がコミュニティのリーダだって俺に証明してみせろよ御チビ」
「十六夜さん・・・・・はい!いつか必ず僕は・・・・僕の力が皆の役に立つんだってことを証明してみせます!」
十六夜の言葉を受け、元気を取り戻したジンは意気揚々に宣言してみせた。
「ああ。せいぜいその時を楽しみにさせてもらうぜ」
(・・・・・これならもう大丈夫そうだな。結局十六夜に持って行かれてしまったが・・・・これでいいのかもしれない。いつか消えてしまう俺なんかが言うよりもずっと・・・・・)
十六夜の激励によってコミュニティのリーダーとしての確かな一歩を踏み出すことができたジンを見て、シナナは安堵する。
「さて・・・・・ゲームも終わったことだ、もう一仕事しにいくぜ御チビ」
「もう一仕事?」
「昨日の連中に言うこと色々あるだろ」
「と、そうでした」
ジンは昨日本拠地にやってきた"フォレス・ガロ"の人間のことを思い出す。
「昨日の連中ね・・・・・やっぱりなんかあったんだな」
「なんだ、察してたのかよ」
「まあなんとなくでだがな。それじゃあそっちは二人に任せる」
「任せるって・・・・・シナナさんはどうするんですか?」
「俺は・・・・飛鳥を迎えに行く」
(多分今頃飛鳥は・・・・・)
シナナは未だに戻ってこない飛鳥のことを思う。
「・・・・わかりました。飛鳥さんのことよろしくお願いします」
「ああ。それじゃあまた後でな」
シナナは十六夜とジンにヒラヒラと手を振りながら、飛鳥のもとへと向かった。
「・・・・・・」
"フォレス・ガロ"居住区の奥にある屋敷の近くで・・・・・飛鳥は立ち尽くしていた。
その手にはいまだに銀の十字剣が握り締められている。
「飛鳥」
そんな飛鳥に、シナナが声を掛ける。
「シナナ・・・・くん」
声に気がついた飛鳥は振り返る。その表情は悲痛なものであり、顔色は青ざめている。
「・・・・・・あなたの言うとおりだったわ。覚悟していたけれど・・・・・思った以上だった。思った以上に重たい。思った以上に苦しい。思った以上に・・・・・悍ましかった」
カランと音を立てながら、剣が飛鳥の手から地面に滑り落ちた。
「離れないの。ガルドの断末魔の叫びが耳について離れない。ガルドの苦痛に歪む姿が脳裏に焼きついて離れない。ガルドを・・・・・切り裂いた感触が手から離れないの」
ガタガタと体を小刻みに震わせながら、飛鳥は自身の体をギュッと抱きしめる。
「それが業を・・・・命を背負うということだ。『殺した』という事実は永遠に飛鳥にまとわり続け縛り続ける。その業から逃れるには・・・・・命を命と思わぬ外道に成り下がるしかない。ガルドのようなな」
「ガルドのような・・・・・外道に」
「・・・・・だが俺はそれを許さない。外道に成り下がり、業から逃れるなんて・・・・俺は絶対に許さない。覚悟をもって選んだというなら、たとえそれが想像以上だったとしても・・・・・業を背負え飛鳥」
厳しい口調、声色ではっきりと飛鳥に言い放つシナナ。
それはいたいけな少女に対してあまりにも残酷な物言いだ。
だがそれでもシナナは言い放った。それはひとえに・・・・・飛鳥に外道に成り下がって欲しくないから、どんなに辛くとも・・・・業から逃げて欲しくないからだ。
「・・・・・あなたもそうなの?」
「え?」
「あなたも・・・・・・業を背負い続けているの?」
「・・・・・ああ。それぐらいしか・・・・・今まで手にかけてきた者達に報いることができないからな」
儚げな表情を浮かべながら言うシナナ。その脳裏には、今までに手をかけてきた者達の最期が姿が映し出されている。
「シナナくん・・・・・」
そんなシナナを、悲痛な面持ちで見つめる飛鳥。
やがて・・・・・意を決したように、手をぎゅっと握り締める。
「私・・・・逃げないわ。私は業から逃げない。生きている限り永遠に・・・・・この業を背負い続ける」
飛鳥は・・・・・業を背負う覚悟を固めた。
「そうか。なら・・・・・・」
シナナは飛鳥の手をとり、その手のひらを合わせる。
「死者を・・・・・弔うことも忘れるな。たとえどんな外道であっても・・・・・それはしなければならない」
「・・・・ええ。わかったわ」
シナナに言われ、飛鳥は自らが手をかけたガルドに対して手を合わせた。
「ガルド・・・・・私はあなたを忘れない。あなたを殺したという業から・・・・・絶対に逃げない」
死したガルドに飛鳥は誓う。その誓いさえもまた業の一つ・・・・・・
飛鳥は永遠に業を背負い続けることになるだろう。
飛鳥の心情について
原作では特に触れられていませんでしたが、ガルドを手にかけた飛鳥の心情は酷く暗くなっていたと私は思います
飛鳥の年齢で『殺した』という業を背負うのは相当苦しいのではという考えからこのような話となりました
それでは今回はここまで
次回もまたお楽しみに