問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~ 作:shin-Ex-
まあ、シリアスもありますけどね
それでは本編どうぞ
"ペルセウス"との決闘の前日。"ノーネーム"本拠地の中庭にて鉄同士が打ち付け合う音が響き渡っていた。シナナと飛鳥が剣を交えているからだ。
互いに太刀筋は鋭く、剣速は風を切るように速い。シナナはともかくとして飛鳥の剣技は身体的に普通の少女と変わらないとは思えないほどに素晴らしかった。
「・・・・・よし、十分だな。ここまでにしよう」
「はあはあ・・・・」
数分にて渡る剣戟はシナナの一言で終りを迎える。
数分とは言え激しい動きをしたからか、飛鳥は汗をかきながら息を切らせている。
「とりあえずこれだけできればこの間襲撃してきた"ペルセウス"の兵達程度なら問題なく対処できると思う」
「ありがとうシナナくん」
飛鳥は修行をつけてれたシナナに感謝の言葉を述べる。
「どういたしまして。ああ、それと一応念を押すが強くなったといっても飛鳥は基本的に前線に出て戦うタイプではない。だから・・・・わかってるな?」
「大丈夫よ。私は皆と比べて直接的な戦闘向きではないのはわかってる。シナナくんに鍛えてもらったのは最低限自分の身ぐらい自分で守れるようになるためだから」
「それをわかってるならいいさ。決して過信はするなよ?」
「ええ」
シナナに言われて、飛鳥は決して過信はしまいとしっかりと心に刻み込んだ。
「それにしても・・・・まさかたったの六日でここまでになるとはな」
「すごいね飛鳥」
二人の剣戟を近くの木陰で見ていた十六夜と耀が感嘆の声を上げる。
「二人共ありがとう。でも・・・・まさか私の威光にこんな使い方があったなんて思いもしなかったわ」
飛鳥はギフトカードを取り出し、そこに刻まれた自身のギフトを感慨深そうに眺めた。
身体的に普通の少女である飛鳥がなぜあのような動きができたのか・・・・それには飛鳥のギフト"威光"が一役買っていた。
対象を支配し、行動を強制する力を持つ"威光"・・・・・飛鳥はこの力を自分に向けて使用したのだ。自分を支配することによりポテンシャルを強引に引き出し、身体能力を高めたことによりあれほどの剣戟を可能にしたというわけだ。
もちろん最低限の剣技も必要なのだが、シナナ曰く飛鳥には剣術の才があったらしい。その指導に関しては一日目でほとんど終えてしまっていた。
「正直"威光"は使い方次第では利便性がかなり高い。どう使うかは飛鳥次第だからしっかりと考えるといいと思うぞ。ただまあ・・・・」
「欠点もある・・・・でしょ?大丈夫、それもわかってるわ」
「欠点?それって何?」
飛鳥の言う欠点とはなんなのか気になった耀は首をかしげて尋ねる。
「この力の使い方は私の体に結構な負荷をかけてしまって維持できる時間は今の私ではせいぜい10分程度なのよ」
ポテンシャルを強引に引き出しているのだ。それぞ長時間持続させるのが難しいのは仕方がないことだ。
「10分でもあれだけ動けりゃ十分だろ」
「確かにそうだけれど・・・・・・もう一つ欠点があるのよ。自分に命令をするのって結構集中力を使うから他の対象に命令を下せなくなるの」
これが二つ目の欠点。今の飛鳥では自身に命令を下している状況下で他の対象にも命令を下せるほどの集中力がないのだ。
「まあ、それに関しては飛鳥の集中力次第だから改善はできるさ」
「ええ。集中力については今後鍛えていくつもりよ。ギフトを洗練させるためにも必要だと思うし」
「日々昇進だな。ともかく今日はこれまでだ。明日はゲームだから今日はゆっくり休め」
「そうするわ。まずはお風呂に・・・・・・と、そういえば」
飛鳥は何かを思い出したかのように立ち止まった
「どうした飛鳥?」
「今回のお礼のことなのだけれど・・・・・どうすればいいかしら?」
飛鳥は恐る恐るとシナナに尋ねた。
飛鳥は六日間もの間、自身を鍛えてくれたシナナに感謝を抱いていた。だから、何かしらの形でその礼をしたいと思っているのだ。
「お礼ね・・・・・別にそんなの気にしなくてもいいんだが?」
「それじゃあ私の気がすまないの」
鍛えてもらって何の礼も返さないなど飛鳥のプライドが許さないのだろう。飛鳥は頑なに引こうとはしなかった。
(本当にいいんだけどな。個人的には飛鳥の力になれたこと自体が嬉しいし・・・・・・よし、ここは・・・・)
どうやらシナナは何を思いついたようだ。
「それじゃあ飛鳥・・・・・俺のほっぺにチュウしてくれない?ここにチュってな」
シナナはおどけた様な笑顔を浮かべ、自身の頬を指差しながら飛鳥に言う。
おおかた、このお願いなら『い、嫌よそんなこと!』と、飛鳥から拒否してくれると思ったのだろう。
だが・・・・・そんなシナナの期待は裏切られることとなる。
「・・・・・わかったわ」
「え?」
飛鳥の瑞々しい唇が・・・・・そっとシナナの頬に触れた。
「・・・・・・は?」
飛鳥の予想だにしない行動に、シナナは目をパチクリさせながら呆気にとられていた。
「こ、これでいいわね?それじゃあ私行くから」
恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めた飛鳥は、一言シナナに声をかけた後に足早にその場を去っていった。
「・・・・・マジかよおい」
シナナは先程飛鳥の唇に触れた頬に指を置く。
死物であるシナナには体温というものはない。にも関わらずそこは熱を持っているようにシナナには感じられた。
(・・・・・勘弁してくれ。まさかこんなにも・・・・・こんなにも心地いいなんて)
心が温まるような心地よさに、シナナは喜びと同時に悲しみを感じだ。
なぜなら、シナナはいずれ・・・・・いずれ・・・・・
「お~お~、随分と見せつけてくれるじゃねえか」
「!?」
シナナが物思いにふけっていると、からかうような声が耳に入った。
声のする方へと振り返ると・・・・・ニヤニヤと笑みを浮かべる十六夜と耀が居た。
(そ、そうだった・・・・・こいつらいたの忘れてた)
二人の存在をすっかりと忘れていたシナナは冷や汗を流す。
「あ~・・・・・二人共。あれはなんというか冗談のつもりで言ってな。まさか本当にしてくるとは思わなくて・・・・・」
「「大丈夫。わかってるから」」
「何が!?」
ニヤニヤ笑みを浮かべたまま言う二人に対して、シナナは珍しく取り乱した様子だ。
「それじゃあ私もお風呂行ってくるね。飛鳥とゆっくり話がしたいから」
「おう。のぼせるぐらい話し込んでこい」
「勘弁してやれよ!?」
シナナの突っ込みも虚しく、耀は飛鳥を追って風呂場へと向かっていった。
・・・・・もはや飛鳥が弄られることは確定的であろう。
「ヤハハ!!それにしても羨ましいことだなおい!」
「笑いすぎだ・・・・・さっきも言ったが俺は冗談のつもりだったんだ」
「お前がどんなつもりだろうが役得であることには変わりねえだろ」
「そりゃそうだが・・・・・ああ、もういい!この話はやめだ」
「強引だな。まあいい。俺もお前に聞きたいことがあるからな」
強引に話を切り上げようとするシナナに、意外にも十六夜は従った。というのも他にシナナに聞きたいことがあるかららしいのだ。
「聞きたいこと・・・・だと?」
「ああ。お前・・・・・なんでわざわざ決闘を仕掛けた?」
十六夜はやけに神妙な面持ちでシナナに尋ねた。
「なんでって・・・・言っただろ?俺達の得を増やしてなおかつ名を上げ、そしてルイオスをボコるためだよ」
「そいつは建前だろ?本当の理由は別にあるはずだ」
「・・・・・・」
十六夜のその言葉に、シナナは黙り込んでしまった。というのも・・・・・十六夜の言うことは事実だったからだ。
「・・・・・まったく、なんでわかったんだよ?」
シナナは観念したように額に手を当てながら十六夜に聞く。
「たとえどんな利益が得られるとしても自分以外の誰かがリスクを負うような事は避ける・・・・・お前はそういう奴だ。違うか?」
「・・・・・以心伝心でなによりだ。流石は十六夜ってところか?」
「お褒めに授かり光栄だな。それで?わざわざ決闘を仕掛けた理由はなんだ?」
「・・・・・"フォレス・ガロ"とのギフトゲーム」
「あ?」
「あの時・・・・・死物兵器にされた子供達が出てきた」
シナナはその時のことを思い返し、苦々しい表情を浮かべる。
「それは聞いた。それと"ペルセウス"に決闘を仕掛けたことと何の関係がある?」
「・・・・あの時、あの子達は明らかに俺を狙っていた。俺を狙って・・・・・襲いかかってきた。あの子達が死物兵器であることから間違いなく差し向けたのは俺と同じ世界の人間・・・・それも俺を知ってる奴だろう」
「・・・・・・なるほどな。つまり"ペルセウス"との決闘はそいつをおびき出すための餌か」
「そうだ。"ペルセウス"との決闘を組めば今度は直接仕掛けて来ると思ってな。長いこと放置するとなにかしでかしてくるかもしれないし」
相手は誰かはわからないが自分を狙っているのは明らか。ならば被害が出る前に早期に解決したほうがいいと判断したシナナは、おびき出すために"ペルセウス"に決闘を仕掛けたのだ。
「これが決闘を仕掛けた理由だよ。まあ・・・・・完全に俺の私的理由だ。巻き込んでしまってすまないと思う」
「それについてはまあいい。俺がお前でも同じことをしてただろうからな。ただ・・・・・巻き込んだからにはちゃんとケジメと責任は取れよ?」
「ああ。言われなくても・・・・・それくらいわかってる」
十六夜の問いかけに答えるシナナの目には、確かな決意が込められていた。
「それなら特に文句はねえよ。それじゃあ俺ももう部屋に戻るな。明日に備えて休ませてもらう。お前も・・・・っと、悪い。そういやお前には休息は必要ないんだったな」
「気にするな。別に今更なんとも思ってないさ」
「そうか。じゃあなシナナ」
十六夜はヒラヒラと手を振りながら自分の部屋へと戻っていった。
(明日のゲーム、鬼が出るか蛇が出るか・・・・・・まあ、どちらにせよ)
「・・・・・潰すだけだ」
一人になった中庭で、シナナは静かに呟いた。
「な、なんだ貴様は!?」
所変わってここは"ペルセウス"本拠地のルイオスの私室。そこで部屋の主ルイオスは突然押しかけてきた何者かに襲撃されていた。
「なんだねぇ・・・・・悪いがその質問には答えられねえな。一々説明するのが面倒なんでな」
「ふざけるな!何やってるんだお前達!こいつを追い出せ!」
ルイオスは男の背後に居る数人の兵達に命令を下す。
だが・・・・・兵達はピクリとも動こうとしなかった。
「どうした!僕の命令に従えないのか!」
「無駄無駄ァ。そいつらはもうお前の部下じゃない・・・・・俺の玩具だ」
男がパチンと指を鳴らす。すると兵士達は一斉に武器を取り、ルイオスに向かって突き立てた。
「馬鹿な!?どうなってる!?」
「あ~、クッソ・・・・・一々喚い面倒なやつだな。少し静かにしろ。でないと・・・・・・殺すぞォ?」
「ひっ!?」
男に殺すと脅されて、ルイオスはおとなしくなった。
「それでいいんだ。それじゃあここからはちゃんとオハナシしましょうかルイオスくん?」
「お、お前の目的は・・・・・・一体なんだ?」
「俺の目的?聞きたいか?なら教えてやるよ。俺はなぁ・・・・・・・ある男をもう一度ぶっ殺してえんだ。俺はそのために存在してるといっても過言じゃあない」
男はニヤリといやらしく笑みを浮かべながら言う。その笑顔からは異常なまでも狂気を感じる。
「ある男を・・・・・殺す?まさかそれは・・・・・」
その男がまさか自分ではないのかと思ってしまったルイオスは顔を青ざめさせる。
「あぁ、お前じゃねえから安心しろよ。俺が殺したいのは・・・・明日お前達とゲームする"ノーゲーム"にいる男だ」
「"名無し"にだと・・・・?」
「そうだ。そこでルイオスくんに提案があるんだけどよぉ」
「な、なんだ?」
「俺を・・・・・・明日のゲームに参加させろ」
今回はこれにて終わりです
それでは次回もまたお楽しみに!