問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~   作:shin-Ex-

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今回はシナナさん対狂治がメインです

それでは本編どうぞ


死物の鉄槌

「オラオラオラァ!どうしたシナナさんよぉ!その程度かぁ!!」

 

「・・・・・」

 

シナナと狂治の戦いは、シナナが防戦一方となっていた。

 

高速で振り回される狂治の爪を、シナナが剣でガードする。先程からそれの繰り返しで、シナナは攻撃に移ることはない。ただただ狂治の攻撃を受け流し続けていた。

 

「なんだよおい、随分と張り合いねえじゃねえか。そんなに弱かったか?あぁ、それともあれか?俺が強すぎるってか?」

 

「ぬかせ馬鹿。そういうお前こそ随分と攻めあぐねているじゃあないか。慣れない戦い方をしているせいか?」

 

狂治の攻撃をガードしながら、憎まれ口を叩く。

 

ただ、シナナの言うとおり、狂治は今慣れない戦い方をしていた。普段彼は・・・・相手の心臓を執拗に狙い、心臓を抉りとって殺す戦い方を好んで行っている。しかし、死物兵器であるシナナは心臓を抉っても倒せないため、首を刎ねるための戦いをしているのだ。

 

まあ、シナナの心臓は虚野十六夜であった時に狂治自身が抉っているのだが・・・・・

 

「まあ確かに慣れないってのは否定しないぜぇ。ただ・・・・・たまには趣向を変えて首を刎ねるってのも悪くねえよなぁ!!」

 

「ちっ・・・・・」

 

狂喜の笑みを浮かべ、叫びながら一際大きく爪を振りかざす狂治。その一激を剣で防ごうとするが、剣は衝撃に耐えられず砕けてしまう。緊急回避で首は避けたが、代わりに胸部を切り裂かれてしまった。

 

「「シナナ(くん)!!」」

 

「大丈夫だよ二人共・・・・・・この程度なんでもない」

 

シナナが切られる姿を目の当たりにした飛鳥と耀は、不安そうな表情を浮かべながらシナナの名を叫ぶ。だが、当のシナナはというとなんでもないと軽く手を振る。

 

「大丈夫って、そんなはず・・・・・え?」

 

「どうし・・・・て?」

 

飛鳥は我が目を疑った。確かにシナナの体は切り裂かれてしまった。にも関わらず・・・・・・その傷跡が胸になかったのだ。

 

「心配する必要などないぞ娘よ。死物兵器の身体は常に活性状態にある。受けた傷は瞬く間に治癒されるのだ。死物になる前の傷は戻らんがな」

 

(ただまあ・・・・・その度にタイムリミットを縮めてしまうが)

 

シナナの傷が瞬時に癒えた理由を二人に説明して聞かせるペルセウス。もっとも、肝心なことは心の中に留めてしまったが。

 

「ほんっとうに厄介な体してるよなぁ死物ってのはよぉ。痛覚だってほとんどねえんだろ?どうせなら俺も死物になりたかったものだぁ」

 

「死物になりたかった・・・・か。ということはお前は死物ではないのか?」

 

「ああ、そうだよ。残念ながら俺はお前と違って死物じゃあねえんだよ」

 

「・・・・・なら貴様はなぜここにいる?」

 

シナナのその問いかけはもっともであった。狂治は彼が死物兵器になったその瞬間に殺されてしまっていた・・・・・にも関わらず狂治が今この場にいるのは普通に考えればおかしい。

 

考えられる可能性として、狂治もまたシナナと同じ死物だからなのだが・・・・・どうやら狂治は死物ではないらしい。

 

「・・・・まあ、地獄への運賃代わりに特別に教えてやるよ。俺はなぁ、貴様に殺されたあの瞬間すっげえ憎んだんだよ。憎んで憎んで憎んで・・・・・その憎しみのおかげで俺の魂は成仏せずに悪霊になった」

 

「悪霊か・・・・・貴様らしいな」

 

「アヒャヒャヒャヒャ!!褒め言葉として受け取ってやるよぉ!!それはそうと話は戻すが、悪霊となった俺は晴れぬ憎しみを抱きながらあの世界を・・・・俺達の元いた世界を彷徨いまくった。あの時は歯痒かったぜぇ・・・・・・憎しみを抱きながら何もできなかったんだからよぉ」

 

魂を埋め尽くしていた行き場のない憎しみ。それは日増しに狂治の悪意を増長させていっていた。

 

何もできずに、何にも干渉できずにただ悪意と憎しみだけが募る日々・・・・・

 

「だが・・・・・そんなふうにくすぶっていたある日だ。俺の憎しみ、悪意を大層気に入ってくれた奴がこの箱庭に居てなぁ。俺はそいつによって箱庭に召喚されたんだよ。そいつは親切にも俺に自由な体を提供してくれてなぁ!!嬉しかったぜぇ・・・・・ようやく溜まってた感情を爆発させ、好き勝手に殺しを楽しめるようになったんだからなぁ!!」

 

大層嬉しそうに語る狂治。もはや狂っているとしか言えない・・・・・・それほどまでに嬉しそうにだ。

 

「殺しまくってやったぁ!!気に入らない奴は心臓を抉りまくってぶっ殺し、見よう見まねだがどうにか習得できた死霊魔術で俺のおもちゃにしていたぶって苦しめて・・・・・・楽しい!あぁ本当に最っ高だぁ!!アヒャ!アヒャヒャヒャヒャ!!」

 

「・・・・・どこまでも狂った奴だ」

 

狂治に対して、これ以上ないほどの不快感を感じるシナナ。シナナだけではない。彼の話を聞いていたその場にいた誰も彼もが狂治に対して憎悪にも等しい感情を抱いていた。

 

「そしてお前が!虚野十六夜が現れたんだ!俺をぶっ殺してくれた虚野十六夜がこの箱庭に!嬉しかったぜぇ・・・・・お前をこの手で葬れるんだって思ってテンションが超超超ハイになったぁ!!その時ばかりは神を信じたねぇ!!この再会を仕組んでくれた神様にさぁ!だって・・・・だって俺を殺した奴を葬れるなんて最高だろ!あの虚野十六夜を二度も葬れるなんて最高だろ!俺は・・・・俺は最高に運が良いぃぃぃぃぃぃ!!アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

 

興奮のあまり、シナナの呼び方が『虚野十六夜』に戻る狂治。

 

自分を殺した虚野十六夜を葬れる・・・・・その快楽にただひたすらに酔いしれる狂治は、もはやまともに正気を保っているとも思えなかった。

 

「さっきも言ったはずだ。今の俺は虚野十六夜じゃない。俺は・・・・・シナナだ」

 

狂喜に震える狂治に、シナナはそう言い放つ・・・・・ドスっと狂治の鳩尾に拳を叩き込みながら。

 

「ぐっ!?ガ・・・・ハァ!!」

 

鳩尾に甚大なダメージを受けた狂治は、苦悶の表情を浮かべながらその場に蹲る。

 

「悪いな狂治。必要なことは全て聞かせてもらった。だから・・・・・・ここからは俺の虐殺タイムだ」

 

「グガッ!?」

 

シナナは狂治の顎を容赦なく蹴り上げる。その鈍い音は、顎の骨が割れた音なのだということが容易に想像できた。

 

だがシナナの攻撃はそれだけにはとどまらない。狂治の頭に、首に、腕に、足に、腹に、背に・・・・・一切加減することなく殴打と蹴激を浴びせる。

 

「グォォォ・・・・このぉぉぉぉぉ!!」

 

怒りで頭に血が昇った狂治は、防御も回避もせずに爪で引き裂こうとする。だが・・・・力任せに振るわれたそれはシナナにことごとく体を軽く捻るだけで躱され、かすりもしない。

 

「ば、馬鹿なぁぁぁぁ!!なんで当たらねえ!俺の方が強いはずだ!現にさっきまでは俺が押していたァァァ!!」

 

全く攻撃が当たらないことに腹を立てた狂治は騒ぎ立てる。顎の骨が砕けているのだから本来は言葉を発するだけでも激痛が走るはずなのだが、怒りでそんなことなど気にもしていないのだろう。

 

「さっきまでは・・・・加減してやったに過ぎないんだよ。お前に屈辱を与えるためにな」

 

「屈辱だとぉ!?」

 

先程まで・・・・・剣が砕かれ、体を引き裂かれるまでシナナは手加減していた。ただ・・・・・狂治に屈辱を与えるために。

 

さっきまで余裕で追い詰めることができた相手に、逆に追い詰められていいようにされる・・・・・それは確かに狂治にとってはこの上ない屈辱であった。

 

シナナがこのような戦法を取り、狂治に屈辱を与えようとするのには理由がある。

 

それは・・・・・・憎しみ故だった。

 

「俺はな狂治・・・・・虚野十六夜が殺されたことについてはなんの憎しみを抱いていない。あれはいつどこで誰に殺されるともしれない戦場で起こったことだからな・・・・・責任は殺された虚野十六夜にある。それにその後すぐに死物になった俺がお前を殺したわけだしな。だが・・・・・それとは関係なしに俺はお前が憎い!」

 

「グギィッ!?」

 

狂治の脳天にかかと落としを食らわせ、シナナは声を荒げて言う。

 

「フォレス・ガロの子供達を死物に変えて弄んだお前を!罪のない人達を死物に変えて玩具扱いしたお前を!俺は・・・・・憎くてたまらない!俺は・・・・・お前を許すことができない!」

 

「ブヘッ!?」

 

これまで以上の勢いで狂治の顔面を殴りつけると、バキッと音を立てて狂治の体は大きく吹き飛ばされた。

 

死者となった罪のない人々を・・・・・子供達を愚弄し、弄び、苦しめた。そんな狂治を、シナナは決して許すことができなかった。

 

たとえどんなに外道だと、クズだと言われようとも・・・・・狂治だけは決して許さず、容赦なく叩きのめす。

 

「はあ・・・・・はあ・・・・・クソッ。この・・・・・化物がァ」

 

あまりのダメージで起き上がれずにいる狂治は、忌々しげにシナナを睨む。

 

「・・・・・化物で結構だ。もとより俺は死物・・・・・化物と変わりないからな。そろそろ終わりにしてやる。具現『ミョルニル』」

 

最後の一撃を放つべく、シナナはアクセサリーから武器を具現する。

 

現れたのは柄の短い巨大なウォーハンマー。北欧神話において最強格の神、トールが振るったとされる武具『ミョルニル』であった。

 

「ミョルニルはあらゆるものを粉砕する力を持つ・・・・・二度と顕現できないようにこいつで貴様を魂ごと消滅させてやるよ」

 

凍てつくほどに冷たい視線を倒れている狂治に向けながら、シナナはミョルニルを大きく振り上げる。

 

「最後に言い残すことはあるか?」

 

「・・・・・アヒャ!アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

 

言い残す言葉はあるかと問われ、狂治は再び狂った笑い声を上げた。

 

「アヒャヒャヒャヒャ・・・・・・残念だァ。俺の手でお前を葬れなくて本当に・・・・・お互いにとって残念だァ!」

 

「・・・・どういう意味だ?」

 

「いずれわかるさぁ!お前はいずれいっそここで俺に葬られた方がよかったと思う時が来る!なにせ・・・・箱庭に来たのは俺やお前だけじゃあないんだからよぉ!!」

 

「なに?」

 

狂治の一言に、シナナは僅かに表情をこわばらせる。

 

狂治の言っている事をそのまま捉えると・・・・・二人の他にもあの世界から箱庭に来訪したものがいるということ、そして・・・・その者はシナナの敵である可能性が高いことを示していた。

 

「知りたいかぁ?それが誰か知りたいかぁ・・・・・・・・でも教えてやらねえよ!!せいぜいそれが誰なのか考えを巡らせるんだなぁ!!アヒャヒャヒャヒャ!!」

 

「・・・・・そうだな。ならせいぜい考えさせてもらおう。それじゃあ・・・・・さようなら」

 

・・・・・ドスンと、重厚な音を立てながら振り下ろされたミョルニル。

 

狂治は・・・・・魂ごと砕かれ、完全に消滅してしまった。

 

「・・・・・じゃあな狂治。せめて地獄への良き旅路を」

 

ミョルニルをアクセサリーに戻し、悼むように手を合わせながらそう呟くシナナ。

 

その表情は・・・・・・どこか悲しげであった。




ミョルニルについて

ミョルニルとは北欧神話の神、トールが用いるウォーハンマーです

粉砕するものという意味があり、その攻撃力は絶大

本来はヤールングレイプルという手袋がなければ熱くて使えたものではないが死物であるシナナはそれを無視して使うことができる


それでは今回はここまで

次回もまたお楽しみに
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