問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~   作:shin-Ex-

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今回で原作一巻の内容は終了です

ここで折り返しといったところですね

なお、本日は都合により投稿するのはこの話だけとなります

それでは本編どうぞ


その星に手を伸ばす

「「「「じゃあこれからよろしく、メイドさん」」」」

 

見事に"ペルセウス"とのゲームに勝利し、レティシアを連れ帰った途端、シナナ、十六夜、飛鳥、耀の4人は口を揃えて言い放った。

 

「え?」

 

「え?」

 

「・・・・・え?」

 

あまりにも唐突のできごとに黒ウサギ、ジン、そしてレティシアは呆気にとられてしまっている。

 

「え?じゃないわよ。だってこのゲームで活躍したのって私たちだけじゃない」

 

「・・・・黒ウサギとジンはほとんどくっついてきただけ」

 

「というわけでレティシアの所有権は俺たちで分配な」

 

「俺がルイオスを倒したんだ。配分は俺が2で他の奴らが1だな」

 

「何を言っちゃってんでございますか!?」

 

もはや、ツッコミの追いつかない事態に黒ウサギは混乱していた。ついでに言えばジンもである。

 

「ふふふッ・・・・そうだな。今回の件で私は君たちに恩義を感じている。君たちが家政婦をしろと言うなら喜んでやろうじゃないか」

 

だが、黒ウサギとジンが混乱している中レティシアは頬笑みを浮かべて彼らのメイドになることを了承した。特に異論はないらしい。

 

「レティシア様!?」

 

もちろんこのことに黒ウサギは大きく動揺する。まさか尊敬していた先輩をメイドとして扱わなければならないとは夢にも思っていなかったであろう。

 

「というわけで、これからよろしく・・・・・いや、主従なのだから『よろしくお願いします』の方がいいかな?」

 

「使い勝手がいいのを使えばいいよ」

 

頭を悩ませているレティシアに耀がアドバイスを出す。

 

「そ、そうか・・・・いや、そうですか?んん?そうでございますか?」

 

だが余計にわからなくなってしまったようだ。

 

「黒ウサギのマネはやめとけ」

 

「まあ立場はメイドになったが言葉遣いは変えなくてもいいんじゃないか?」

 

「そうね。私達は特に気にしないし」

 

「ああ、もう・・・・・・・どうしてこんなことに?」

 

なんとも和やかな5人の様子を見て、黒ウサギは力なく肩を落としていた。

 

 

 

 

 

 

「これがいいかしら?いえ、でもこっちも・・・・・」

 

"ノーネーム"本拠地の衣装部屋にて、飛鳥はレティシアに着せるメイド服を選んでいた。

 

「随分とまあ熱心だな」

 

その様子を壁に背を持たれながら見ていたシナナが、声をかける。

 

「ええ。だってうちにはあんな可愛らしいメイドなんていなかったもの。それにふさわしい服を選ばないとでしょ?」

 

「・・・・・そうだな」

 

いくつかの服を手に持ち、年相応な笑顔を浮かべながら答える飛鳥を見て、シナナは微笑ましそうにしている。

 

「ところでシナナくん、これとこれどっちがいいと思う?」

 

そう言いながら飛鳥は二つの服をシナナに見せながら尋ねる。

 

一着は白を基調とし、清楚ではあるがフリフリなメイド服。もう一着は黒を基調としたシックで落ち着いてメイド服だ。

 

「そうだな・・・・・そっちの黒い方かな?」

 

「こっち?私はこの白いほうがレティシアには似合うと思うけれど・・・・」

 

「レティシアにはそっちが似合うだろうな。それにするといいと思うぞ?」

 

「え?でもあなたさっきこっちの黒いほうがいいって・・・・・」

 

「ああ・・・・・飛鳥にはその黒いメイド服がよく似合うと思うよ」

 

「なっ!?」

 

シナナの発言に、飛鳥は顔を真っ赤にさせてしまった。

 

「あなたね!今私は関係ないでしょ!」

 

「いや、だってどっちがいいかとしか聞かれなかったからな。だから飛鳥に似合いそうなのを選んだんだが?」

 

さも当然のように首をかしげながら答えるシナナ。いや、この場面では普通レティシアに似合いそうなのを選ぶのだが・・・・・まあ、そこはシナナだから仕方がない。

 

「でもこのままじゃ飛鳥が着るには少しサイズが小さいな・・・・・箱庭ならサイズ調節できるギフトあるか?今度白夜叉に聞いてみるかな」

 

「・・・・・・あなたそんなに私をからかって楽しいの?」

 

飛鳥は呆れた表情でため息を吐く。

 

この箱庭に来て以来、似たような事は度々あった。その全てを飛鳥はシナナがからかっているからだと思っているのだ。

 

だが・・・・実際は・・・・

 

「・・・・・本当にそう思うか?」

 

「え?」

 

「俺は飛鳥をからかってなんていない。ただの一度も・・・・・今だってそうだよ」

 

真っ直ぐに飛鳥を正面から見据えるシナナ。その表情は真剣そのもので、飛鳥は顔をそらすことができなかった。

 

「シナナ・・・・くん?それってどういう・・・・・」

 

飛鳥がシナナの言うことがどう言う意味なのか聞こうとしたその瞬間・・・・

 

「飛鳥、服決まった?」

 

耀が部屋に入ってきた。

 

「か、春日部さん!?」

 

「どうしたの?」

 

慌てた様子を見せる飛鳥に、耀は不思議そうに尋ねた。

 

「な、なんでもないわ。それよりも服なら決まったわ。これよ」

 

「わあぁ・・・・・すごく可愛いね。レティシアに似合いそう」

 

「耀もそう思うか。なら速くその服をレティシアに持って行ってあげな。この部屋の片付けは俺がしておくから」

 

「そ、そうね・・・・それじゃあお願いシナナくん。行きましょ春日部さん」

 

部屋の片付けをシナナに任せ、耀と共にレティシアにメイド服を届けに部屋を出た。

 

「あの時耀が来なかったら・・・・・来てくれてよかったかもな」

 

どこか自嘲気味に笑いながら、シナナは服の片付けを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"ペルセウス"とのゲームから三日後、子供達を含めた"ノーネーム"一同は水樹の貯水池付近に集まっていた。

 

「え~それでは!新たな同士を迎えた"ノーネーム"の歓迎会を始めます!」

 

黒ウサギの号令によって歓迎会が始まり、子供たちがワッと歓声を上げた。周囲には運んできた長机の上に豪勢な料理が並んでいる。

 

以前の"ノーネーム"の財政であればもっと慎まやかになるのだが、"ペルセウス"とのゲームに勝利したことによって今はある程度潤っている。これもシナナの交渉のおかげである。

 

「だけどどうして屋外で歓迎会なのかしら?」

 

「うん、私も思った」

 

流石に夜ともなると少し肌寒いのだろう。身震いする飛鳥と耀はどうしてわざわざ外で歓迎会をするのかと疑問に思っているようだ。

 

「それはですね・・・・実は皆さんに見せたいものがありまして」

 

「「見せたいもの?」」

 

「YES!先日打倒した"ペルセウス"のコミュニティですが・・・・一連の騒動かの責任からあの空から旗を下ろすことになりました」

 

「空から・・・・旗?」

 

「それってどういう・・・・」

 

飛鳥と耀は黒ウサギの言っていることの意味が分からず首をかしげる。

 

「おい黒ウサギ・・・・」

 

「まさか・・・・」

 

ただ十六夜とシナナはどういうことなのかなんとなくだが察したようだ。

 

「フフフッ・・・・それでは本日のメインイベントが始まります!皆さん箱庭の天幕に注目してください!」

 

黒ウサギに言われてその場にいた全員が箱庭の天幕に視線を向ける。

 

彼らの目に映るのは満天の星空。そして連続して流れる星々・・・・流星群であった。

 

「・・・・すごい」

 

目の前の光景に感嘆の声をあげる耀。他の三人も目を奪われている。

 

「!?あれって・・・・」

 

次に彼らが目にしたのは空に輝く一つの星座・・・・ペルセウス座に光が満ち、消滅する光景であった。

 

「ペルセウス座が・・・消えた!?」

 

「この夜空って映像とかじゃないんだよね?」

 

「もちろんでございます♪箱庭の世界は天動説のように全てのルールが此処、箱庭の都市を中心に回っております。それはあの星々も例外ではありません」

 

「星座の存在まで思うがままか・・・・本当にこの箱庭はブッ飛んだ世界だな」

 

十六夜が呆れたように・・・・だが面白そうに笑みを浮かべる。

 

「驚いて頂けましたか?」

 

「ああ。今回ばかりはやられたと思ってる」

 

「それは良かったです」

 

黒ウサギは満足そうに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

流れる星々を見つめるシナナは、そこに向かって手を伸ばした。

 

「何をしているのシナナくん?」

 

そんなシナナに、飛鳥が声を掛ける。

 

「・・・・別に。あんだけ流れてるなら一つぐらい掴めるかなと思ってさ」

 

「あら?存外ロマンチストなのね」

 

「存外じゃないさ。ロマンチストなのは虚野十六夜だった時からの筋金入りさ」

 

「そう・・・・・ねえシナナくん」

 

「なんだ?」

 

「あなた・・・・・虚野十六夜に戻りたいって思ったりはしないの?」

 

それは飛鳥の素朴な疑問だった。死んで自分に死霊魔術を施して死物になって・・・・・そんなシナナが虚野十六夜に戻りたいと思っているのではないかと飛鳥は考えているようだ。

 

「・・・・ま、確かに死物になって失ったものは多いからな。人として当たり前にできたことがいくつもできなくなったわけだし虚野十六夜に戻りたいと思ったことはないわけではない」

 

「そう・・・・」

 

「でも・・・・シナナでいいよ」

 

「え?」

 

「俺は・・・・・シナナでいい。虚野十六夜に戻れなくても・・・・そもそも戻ることなんてできないしな。ならシナナとして今を楽しむだけさ」

 

(それが・・・・・いつ失われるとしてもな)

 

自分は今のままでいい・・・・・・それがシナナの答えであった。

 

ただ・・・・・そこに影が隠れてるのだが・・・・

 

「シナナくん・・・・だったら」

 

飛鳥はシナナの手を握る。

 

「私が楽しませてあげるわ。失ったものを忘れさせるぐらいに・・・・・私があなたを楽しませてあげる」

 

「飛鳥・・・・・・ああ。ありがとう」

 

互いに笑顔を浮かべるシナナと飛鳥。

 

そして再び、流れる星々に視線を戻す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

箱庭に来訪せし死物兵器、シナナ

 

彼はこの箱庭での時を謳歌する

 

やがて訪れる最期のその時まで

 

・・・・・すぐに訪れてしまう最期のその時まで




シナナのタイムリミットについて

シナナのタイムリミットはこの話の時点で残りおよそ2年となります

意外と長いと思われるかもしれませんが箱庭にきた当初はおよそ5年、そしてこの先さらに短くなっていきますので・・・・・・

シナナ消滅の時が来るのはそう遠くはありません


それではこれにて失礼します

次回もまたお楽しみに
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