問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~ 作:shin-Ex-
それでは本編どうぞ
「・・・・・どうしよう」
飛鳥は自室でうなだれていた。その周りには、何着もの服が散乱している。
似たような状況が少し前、レティシアのメイド服選びの時にあったのだが・・・・・その時とは違い、表情はいやに神妙だ。
「・・・・・一体何を着ていけばいいのかしら?」
近くにあった服を手に取りながら呟く飛鳥。
事の発端は、数時間前に遡る。
「飛鳥・・・・・そろそろいいかな?」
談話室で飛鳥がシナナと過ごしているとき・・・・・唐突にシナナが切り出した。
「いいかなって・・・・・何がかしら?」
「デート・・・・・してくれるんだろ?」
「あ・・・・・」
(そ、そうだったわ・・・・・)
シナナが白夜叉と決闘したとき・・・・・・二人はデートすると約束していた。
「飛鳥・・・・・・もしかして忘れてた?」
「・・・・・・・・・ちゃんと覚えていたわ」
冷や汗を流しながら目をそらして答える飛鳥・・・・・・どうやら忘れてしまっていたらしい。
まあ、箱庭に来てから毎日がてんてこ舞いのようなものなのだから仕方がないといえば仕方がないのだが。
「今見逃しきれない間があったんだが・・・・・まあいいや。それじゃあデートしてくれるってことでいいんだな?」
「ええ・・・・・約束だもの、仕方ないわね」
口では仕方がないとは言いつつも、その表情は嬉しそうな飛鳥。
忘れていたとは言え、飛鳥にとってもシナナとのデートはまんざらでもないようだ。
「なら、明日デートっていうことで」
「あ、明日!?ちょっと待って!いくらなんでもそれは急すぎ・・・・」
「じゃあそういうわけでよろしくな」
飛鳥の言葉を最後まで聞くことなく、シナナはその場をあとにしてしまった。
「もうシナナくんったら急なんだから・・・・って、あ」
勝手にデートを明日することに決めてしまったシナナに愚痴を零す飛鳥は、あることに気がついてはっとした。
「明日・・・・・・何を着ていけばいいのかしら?」
そして、冒頭に戻るというわけだ。
「これ・・・・は少し子供っぽいし。かと言ってこっちは落ち着きすぎているし・・・・・ああ、もうっ!何を着ていけばいいのよ!」
服を手にしては首を横に振っては床に置く・・・・・先程からその動作を繰り返す飛鳥。デートに着ていく服をどうしようかと悩むその姿は・・・・・正しく恋する乙女と言っていいであろう。
もっとも、飛鳥自身はシナナへの恋心を自覚してはいないのだが。
「本当に・・・・・・どうしましょう?」
「飛鳥、ちょっといい・・・・ってうわぁ」
飛鳥がどうしようかと思い悩んでいると、耀が部屋に入ってきた。耀は部屋の惨状を見て苦笑いを浮かべている。
「どうしたの飛鳥?こんなに服散らかして・・・・」
「春日部さん・・・・?ちょうどいいわ!力を貸して!」
「え?どういうこと?」
「実は・・・・・」
飛鳥は明日、シナナとデートすることを耀に話した。
「そっか、明日シナナとデートするんだ」
「ええ・・・・でも何を着ていけばいいのか決まらなくて」
「いつもの服じゃダメなの?」
「え?」
耀が何気なく行ったその一言に、飛鳥はキョトンとした。
「で、でもデートのときはお洒落しないといけないでしょ?だったらいつもと同じじゃ・・・・・」
「私はそれでいいと思うよ。ここにある服もきれいだけど、飛鳥にはそれが一番似合ってるし。何より・・・・・シナナがそれを気に入ってるから」
「シナナくんが?」
「うん。初めて見てた時シナナすごく嬉しそうだった」
確かに、あの時のシナナは大変嬉しそうであった。ゲーム前だというのに若干はしゃいでいたようにも見えるほどに。
もっとも・・・・・・
「あれは・・・・・からかってただけでしょ?」
飛鳥はからかわれていたと思っているようだが。
「飛鳥・・・・・・それは重症だよ?」
「重症って何がかしら?」
「うん、もういいよ。とにかくシナナはその服気に入ってるから、デートの時もそれでいいと思うよ。飛鳥だってそれ好きなんでしょ?」
「ええ・・・・・わかったわ。春日部さんがそう言うなら明日もこれを着ていくわ。ありがとう春日部さん」
飛鳥はニコリと微笑みを浮かべ、春日部に感謝の言葉を述べた。
「どういたしまして、ところで飛鳥、聞きたいことがあるんだけどいい?」
「なにかしら?」
「明日のデート・・・・・・楽しみ?」
「それは・・・・・まあそうね。成り行きとはいえ、シナナくんと二人で出かけるのは少し楽しみだわ」
(あれ?でも私・・・・・・どうしてこんなに楽しみなのかしら?そもそも・・・・どうしてこんなに服を真剣に選んでいたのかしら?)
飛鳥は明日のシナナとのデートを楽しみにしている。だが・・・・・なぜ楽しみなのだろうか?
「じゃあ・・・・・飛鳥はどうしてシナナが飛鳥をデートに誘ったと思ってる?あの時、あの場には私や黒ウサギ、白夜叉もいたのに・・・・・どうしてだと思う?」
「それは・・・・・シナナくんにとって私が一番からかいがいがあるから?」
「・・・・・本当にそう思う?」
「?」
首を傾げる飛鳥。
シナナが飛鳥をデートに誘った理由・・・・・それはひとえにシナナが飛鳥に好意を抱いているからだ。
それは少し考えればわかること・・・・・・だが、飛鳥はそれに気がつけずにいた。
「・・・・・まあいいや。もう一つ聞きたいんだけどいい?」
「ええ」
「飛鳥は・・・・・・明日のデートでシナナとどうなりたいと思ってるの?」
「・・・・え?」
飛鳥は耀の言っている言葉の意味がわからなかった。
「どうなりたいって・・・・・・どういうこと?意味がわからないのだけれど?」
「意味がわからない・・・・・か。それじゃあ質問を変えるね。飛鳥はシナナの事をどう思ってるの?」
「それは・・・・・それ・・・・は」
飛鳥は答えることができなかった。それは決してシナナの事をなんとも思っていないというわけではない。ただ・・・・・飛鳥は自身の中にあるシナナへの想いをどう形容していいか・・・・・その想いの名がわからないのだ。
「・・・・・それもわからない?だったら・・・・・」
耀はそっと飛鳥の手をとる。
「春日部さん?」
「明日のシナナとのデートで・・・・・少し考えてみて。飛鳥がシナナのことをどう思ってるのか。そしてシナナとどうなりたいのか。そして・・・・・いつか答えを見つけて」
「答え?」
「そう。答えを見つけることはきっと・・・・・・シナナのためにもなるから」
耀は少なからずシナナに思いを寄せている。だが、シナナの想いが自身に向いていないことを・・・・・シナナの想いが飛鳥に向いていることを耀は知っている。
そして・・・・・・飛鳥もまた、無意識にだがシナナに好意を抱いていることを知っている。
それが叶わぬ想いならば・・・・・せめて二人の後押しをしよう。二人が結ばれて幸せになれるように手助けしよう。耀はそう決心していた。
なぜなら・・・・・飛鳥とシナナは、耀にとって初めての人間の友達なのだから。
「春日部さん・・・・・わかったわ。少し考えてみる。そして・・・・・いつか答えを見つけてみせるわ」
飛鳥は真剣な面持ちで、耀を真っ直ぐに見据えて返事を返した。
「約束だよ飛鳥。それじゃあ私はもう行くね。おやすみ飛鳥」
「おやすみなさい春日部さん」
挨拶交わした後、耀は部屋を出て行った。
(答え・・・・・私のこのシナナくんに対する気持ちってなんなのかしら?でもまあ今は・・・・・)
「・・・・・これを片付けないと」
飛鳥は部屋に散らばった服を見渡しながら、静かに呟いた。
今回は説明なしでございます
それでは次回もまたお楽しみに