問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~   作:shin-Ex-

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今回はシナナのギフトの一部について解説いたします

それでは本編どうぞ


具現

紆余曲折を経て、箱庭についての説明を一通り終えた黒ウサギは問題児三名を彼女の所属するコミュニティのある箱庭二一〇五三八〇外門に連れてきた。

 

「ジン坊っちゃーん!新しい方を連れてきましたよー!」

 

黒ウサギはベンチに座る少年・・・・ジンに呼びかけた。その呼びかけに反応してジンは立ち上がる。

 

「お帰り黒ウサギ。そちらの三人が?」

 

「はい!こちらの御四人様が」

 

振り返った瞬間、黒ウサギは石のように固まってしまった。気がついてしまったのだ・・・・・・十六夜がついてきていないことに。

 

「・・・・え?私の記憶が確かならもう御一人いませんでしたっけ?全身から"俺問題児!"ってオーラを放っているヘッドホンをつけた方は?」

 

知らない人が聞いたら誤解しそうな言い方である・・・・まあ実際は正しくその通りなのだが。

 

「ああ、十六夜くんなら『ちょっと世界の果てを見てくるぜ!』って言って駆け出していったわ」

 

「・・・・・え?」

 

・・・・・一瞬飛鳥の言っていることが理解できずに黒ウサギの思考は停止してしまった。

 

「な、なんで止めてくれなかったんですか!」

 

10秒ほど経ってようやく頭が回りだした黒ウサギは止めてくれなかった飛鳥と耀を怒鳴りつけた。

 

「『止めてくれるなよ』と言われたもの」

 

「ならどうして黒ウサギに一言・・・・」

 

「『黒ウサギには言うなよ』と言われたから」

 

「嘘です!絶対に嘘です!実は面倒くさかっただけでしょう!」

 

「「うん」」

 

・・・・・やはりこの二人も問題児のようである。

 

ちなみにシナナはというと・・・・・

 

(ふむ・・・・・やはり黒ウサギにはツッコミの素質があるな)

 

完全に傍観を決め込んでおり、挙句に黒ウサギに対して少々失礼な評価を下していた。

 

「た、大変です!"世界の果て"には野放しにされている幻獣がいるんです!」

 

「「幻獣?」」

 

「ギフトを持った獣を指す言葉で、特に"世界の果て"付近には強力なギフトを持ったものがたくさんいるんですいます!場所によっては神格を持ったものも!出くわせば最後、とても人間では太刀打ち出来ません!」

 

ジンは焦った様子で言う。その様子が事態の重大さを物語っている。

 

「それは残念ね。もう十六夜くんは・・・・・」

 

「ゲーム参加前にゲームオーバー?・・・・・斬新」

 

「冗談を言っている場合じゃありません!」

 

「というかそんな珍しい生物がいるなら俺も十六夜についていけばよかったか」

 

「冗談でもそれは勘弁してくださいよ!!」

 

こんな時にも平常運転の飛鳥と耀、シナナの三人。十六夜を心配する様子は一切見られない。

 

シナナに至っては自分も行けばよかったと少々後悔しているほどだ。

 

「全く・・・・・ジン坊っちゃん。申し訳ありませんが御三方のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

「黒ウサギ?」

 

「黒ウサギは問題児を捕まえに参ります。そして・・・・・“箱庭の貴族”と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります!」

 

怒りに震える黒ウサギ。艶やかな黒髪と耳が桜色へと変化し、そして・・・・

 

「一刻程で戻ります!皆さんはゆっくりと箱庭ライフを御堪能ございませ!」

 

そう言い残して黒ウサギは世界の果てに向かって飛び立った。

 

「箱庭のウサギは随分速く跳べるのね」

 

黒ウサギの跳躍力を見て飛鳥は素直に感心した。

 

「ウサギ達は箱庭の創始者の眷属ですからね。力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思いますが・・・・いなくなってしまった方が心配です」

 

ジンは十六夜のことを心配して顔を伏せた。

 

だが・・・・・

 

「別に心配なんてする必要はないさ」

 

そんなジンに、心配など無用だとシナナはキッパリと言い放つ。

 

「どうしてそんなことが・・・・」

 

「どうして?そんなの決まっている・・・・・・あいつが逆廻十六夜だからだ」

 

「・・・・え?」

 

ニヤリと笑みを浮かべながら言うシナナ。

 

そんなシナナの態度から、ジンにとって何の根拠もないはずのその言葉は・・・・・・なぜか妙に納得させるに至るものであった。

 

「それよりも、黒ウサギに任されたんだろ?だったら俺達を案内してくれ。俺はともかくとしてレディが二人もいるんだから丁重にな」

 

「あら?私達に気を遣ってくれてるのかしら?」

 

「それはもう・・・・それが紳士の努めですので。いずれは私がエスコートして差し上げますよ?」

 

気品ある笑みを浮かべ、丁寧な言葉遣いでシナナは飛鳥に対して頭を下げる。

 

「考えておくわ」

 

「・・・・私にはエスコートしてくれないの?」

 

「もちろん、私でよければ喜んで」

 

「・・・・それじゃあ私も考えておく」

 

「了解。それじゃあジン、ここからはよろしく。簡単に自己紹介も頼むな」

 

「あ、はい。わかりました」

 

シナナに促され、ジンは三人に向き合い自己紹介を始める。

 

「コミュニティのリーダーをしているジン・ラッセルです。齢11になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。御三方のお名前は?」

 

「久遠飛鳥よ」

 

「・・・・・春日部耀」

 

「シナナだ。それで?さっそくコミュニティの施設に案内しているのかな?」

 

「いえ、まずは簡単に食事をしながら話をしようと思います。ただ全て黒ウサギに任せてしまっていたので・・・・・」

 

どうやらほとんどの段取りは黒ウサギが任されていたようで、ジンはどうしようかと少々戸惑ってしまっている。

 

「だったらこちらでお店は決めさせてもらってもいいかしら?」

 

「はい。構いません」

 

「そう、なら行きましょ」

 

4人は軽食の取れる店を探して移動し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ、オーダーはお決まりですか?」

 

5分ほど歩いてよさげな店を見つけた一行がテーブルに着くと、猫耳を付けたウェイトレスがオーダーを取りに来た。

 

「ねえシナナくん。あの猫耳って・・・・本物?」

 

飛鳥はちゃっかりとなりの席に陣取っていたシナナに小声で尋ねる。

 

「まあそうだろ。ピコピコ動いてるし。まあ黒ウサギみたいなのもいるんだからこっちではそう珍しくないのかもしれない?」

 

「そう・・・・・本当にすごいところねここは」

 

「そうだな。しかし・・・・ふむ」

 

シナナは何か考え込む仕草をとる。

 

「あら?どうしたの?」

 

「ああ、猫耳も・・・・いや、やっぱりなんでもない。気にするな」

 

「?そう・・・・・」

 

飛鳥はシナナの煮え切らない態度を気にしながらも、それ以上言及することはなかった。

 

なおシナナは・・・・

 

(・・・・ここで猫耳も似合いそうだって言ったら流石にオーダーどころじゃなくなりすだしな)

 

・・・・・こんなことを考えていたりする。

 

一応空気を読んで聞くことはなかったが・・・・・

 

「えっと・・・・紅茶3つと緑茶1つ」

 

「ご注文は以上でよろしいですか?」

 

ジンが注文を言うと、猫耳ウェイトレスが聞き返してくる。

 

「あ、あと軽食にこれとこれと・・・・・・シナナくんはいいのよね?」

 

「ああ。紅茶だけでいい」

 

(まあ・・・・・食べれないからな)

 

どうやらシナナだけは食べ物を頼まないらしい。まあ・・・・・彼の今の体では飲み物はともかくとして、食べ物は受け入れることができないのだから仕方がない。

 

「わかったわ。それじゃあ今選んだのをお願いするわ」

 

「にゃあっ!」

 

「はい。ティーセット3つとネコマンマと紅茶お一つですね」

 

「え?ネコマンマなんて頼んでない・・・・」

 

飛鳥は猫耳ウェイトレスの口から出た頼んだ覚えのないメニューに首を傾げる。

 

「いえいえ、確かに頼まれましたよ。そちらの毛並みの綺麗な旦那さんが」

 

猫耳ウェイトレスは耀が抱きかかえる三毛猫に目配せをしながら言う。

 

「三毛猫の言葉がわかるの?」

 

「はい。私も猫族ですからね」

 

その後、猫耳ウェイトレスは三毛猫と一言二言話をしてから、厨房へと向かっていった。

 

「・・・・・箱庭ってすごいね。私以外にも三毛猫の言葉がわかる人がいるなんて」

 

「え、ちょっと待って!?春日部さんって猫と会話ができるの!?」

 

飛鳥は机から大きく身を乗り出しながら耀に尋ねた。

 

「できるよ」

 

「あの・・・・もしかして猫以外にも?」

 

「う、うん。ペンギンがいけたからきっと誰でも・・・・」

 

「「ペンギン!?」」

 

「二人共落ち着け。耀が戸惑ってるぞ」

 

興奮気味の飛鳥とジンを、シナナは冷静に宥めた。

 

「あ・・・・・ごめんなさい春日部さん。でもどうやってペンギンと?」

 

「水族館で知り合った。他にもイルカ達とも友達」

 

「すべての種と会話が可能だとしたら心強いですね」

 

「さっき幻獣と言っていたが、箱庭には多くの種族が存在しているのか?」

 

シナナは興味本位でジンを尋ねた。

 

「ええ。ただ言葉が通じるのものは限られていて、それ故に耀さんのような意思の疎通が取れる力は稀少ですから」

 

「春日部さんには素敵な力があるのね・・・・・羨ましいわ」

 

飛鳥は羨望の眼差しを耀に向ける。

 

「久遠さんは・・・・」

 

「飛鳥でいいわ。よろしくね春日部さん」

 

「うん。飛鳥はどんな力を持ってるの?」

 

「私?私は・・・・・酷いものよ」

 

飛鳥は自嘲気味に苦笑いを浮かべてそう答える。

 

「そっか・・・・それじゃあシナナは?」

 

飛鳥の態度を見て気を遣った耀はそれ以上の言及はせずに、今度はシナナに尋ねた。

 

「俺は・・・・・・さっき見た感じだが説明はいるか?」

 

「うん」

 

「そうね。あなたの口から聞かせて欲しいわ」

 

「僕も知りたいです」

 

「そうか・・・・それじゃあ僭越ながら説明させていただきましょう」

 

シナナはおどけたように笑みを浮かべて説明を始めた。

 

「俺の力は『具現(リアライズ)』。一言で言えばアクセサリーで象ったものを具現させる力だ。例えば・・・・・こいつとか」

 

シナナは懐からナイフを象ったアクセサリーを取り出す。

 

具現(リアライズ)『バトルナイフ』」

 

シナナが唱えるとアクセサリーが光り輝き、そしてナイフが現れた。

 

「何度見てもこれは慣れないわね」

 

「何度って・・・・まだ3回目だろ?そりゃ慣れないって」

 

「ですがアクセサリーを具現させる力・・・・・物凄く使い勝手が良さそうですね」

 

「うん。すごいねシナナ」

 

シナナの能力に感心するジンと耀。

 

「ありがとう。でも・・・・・制約もあるんだよ」

 

「制約?」

 

「そ。まず一つに具現できるのは俺がちゃんと認識できていなければならない。例えば今このナイフを具現できているのはアクセサリーがちゃんと正確にナイフを象っていると俺が認識できているからなんだが・・・・・この制約がまた厄介でな」

 

シナナは肩を竦めながら言う。

 

「厄介って言うと?」

 

「なんというか・・・・・俺はどうにも完璧主義なところがあってな。少しでも違うと思うところがあると具現できないんだ。そのおかげでこのアクセを作れるのはたったの一人しかいなかった」

 

『はいは~い。新作作ってあげたわよ~。感謝しろよコノヤロー』

 

シナナは自身が持つアクセサリーを作ってくれた彫金師のことを思い返す。

 

それは彼にとっては生前の大切な友人の一人であるが・・・・・・現在は故人だ。

 

「・・・・・シナナくん?」

 

「ん?どうした飛鳥?」

 

「いえ、その・・・・悲しそうな顔していたから」

 

「・・・・・え?」

 

飛鳥に言われてシナナは気がついた・・・・・確かに自分の胸中が悲しみで埋め尽くされていることに。

 

(どうして?死物になってからこんな感情に囚われることなかったのに・・・・・もしかしてシナナだから?)

 

死物となってから十数年、決して抱くことのなかった悲しみの感情・・・・それに囚われたというのは彼が名無しであった死物でなくなったから・・・・・『シナナ』という人格が芽生えたからだ。

 

「・・・・・シナナくん」

 

飛鳥はシナナの頬に手を当てる。

 

「どうしてそんな顔をしているのか私にはわからないけれど・・・・・あなたにそんな顔は似合わないわよ」

 

穏やかな笑顔を浮かべながら飛鳥は言う。

 

(・・・・・・おかしな子だ。散々俺にからかわれたと思っているくせに・・・・・どうして俺にそんな顔を向ける?どうして俺を?)

 

シナナはわからなかった。箱庭に来てから散々からかって・・・・・まあシナナからすればどれも本気なのだが。ともかくそんな自分にこのように気を遣う理由がシナナには理解できなかったのだ。

 

(私どうしてシナナくんに・・・・・あんなにからかわれたのに?)

 

そしてそれはまた・・・・・飛鳥も同じであった。あれほどからかった相手にどうしてこんなことをするのか・・・・自分のことなのに理解できなかった。

 

ただ・・・・それでもせざるをえなかった。それは飛鳥の心が命じたことだから・・・・・

 

「飛鳥・・・・それ、普通いうの男女逆じゃないか?」

 

「・・・・ふふっ。そうね」

 

おどけた風にシナナが笑っていうと、飛鳥も同じように笑う。

 

今はまだお互いそれにお互い理解できないそれを誤魔化すかのように・・・・

 

果たしてお互いにそれを理解出来る時は来るのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの・・・・耀さん?なんか僕達空気になってるような・・・・」

 

「・・・・・多分気のせいじゃないよジン」




具現について

シナナのギフト、具現は本編でも言ったようにアクセサリーで象ったものを具現化させるというものです

いくつか厄介な制約もがありますがそれでも使いやすい部類に入ると思われます

本編では語られていないこととしてはアクセサリーの数が100以上あることと、アクセサリーは特殊な素材からしか作ることができず、作れる彫金師はたった一人だけだったということですね

素材と彫金師についてはいずれまた触れますのでそのときを待っていてください


それでは今回はここまでです

次回もお楽しみに
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