問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~ 作:shin-Ex-
どこにあるかは実際に見てお確かめを
それでは本編どうぞ
「・・・・・」
「ん?どうした飛鳥?食べないのか?」
シナナは屋台で買ったクレープを中々食べようとしない飛鳥に尋ねる。
「その・・・・これすごく美味しそうなんだけど・・・・・どうしても口周りが汚れてしまいそうで」
飛鳥はクリームで口周り・・・・・どころか顔中を汚しているレティシアを見ながら言う。
「おおっと、私としたことが」
レティシアは顔に着いたクリームを拭き取った。
「・・・・いや、いくらなんでもこれはいきすぎだが」
クリームを拭き取るレティシアを見て、シナナは少し呆れたよう苦笑いを浮かべた。
「まあ箱庭の外から来た者のほとんどが飛鳥のような反応をするものだ。故郷とはかけ離れた食、文化、建築物、思想、種族・・・・だがそういったものを楽しんでこその箱庭だと私は思うがな」
「同感だな。それに、人に与えられた時間は有限なんだ。一生かけたって全ての娯楽を楽しむことは不可能・・・・・だったら、今目の前にある楽しみに臆していたら時間がもったいなくないか?」
「・・・・わ、わかったわ」
レティシアとシナナに諭され、飛鳥は納得する。
だが・・・・・
「なら、シナナくん・・・・・・・食べさせてくれる?」
「・・・・・・why?」
飛鳥のまさかの提案。思わず英語が出てしまったのは仕方がないことであろう。
「いやいやいや・・・・・なんでそうなるんだ飛鳥?」
「ダメなの?」
「ダメというか・・・・・手間だろ?」
「でも前はハンバーガー食べさせてくれたじゃない」
「たしかにそうだけど・・・・・・」
(・・・・・・ああ、ダメだこれ。絶対に退いてくれないパターンだ)
頑なに諦めようとはしない飛鳥に、シナナは何を言っても無駄だと判断した。
「仕方ない・・・・・ほら」
飛鳥からクレープを受け取り、そして飛鳥の口元にクレープを持っていく。
「あむ・・・・美味しいわ」
初めて食べるクレープの味に、飛鳥は頬を緩ませる。まあ、シナナから食べさせて貰っているという状況がクレープの美味しさをさらに引き立てているのだが・・・・・それは本人にもわかっていないであろう
そして・・・・・
(これは・・・・・・やはり私は邪魔者では?)
そんな光景を間近で目の当たりにしてしまったレティシアは若干居心地が悪くしていた。ちなみに、周りの者達も胸焼けのようなものを起こしている。
「シナナくん、もう一口・・・・・あら?」
「どうした飛鳥?」
「あれ・・・・」
シナナにもう一口貰おうとしたところで、何かに気がついた飛鳥。その指差すところには・・・・黄色い服と帽子を身に付け、黄色い髪をした小さな何かがいた。
「あれは・・・・精霊だな」
「流石は箱庭。あんなメルヘンチックな生き物もいるんだな」
「まあ存在自体箱庭では大して珍しくはないが・・・・あのサイズが一人でいるのは珍しい。"はぐれ"かな?」
「"はぐれ"?」
「伝承とかお話の中では小精霊ってのはだいたいが群体精霊・・・・つまり何体か固まって行動するんだよ。一人で行動することは滅多にないんだと思う」
シナナは小精霊の特徴をスラスラと述べた。流石に博識だ。
「へえ・・・・そうなの」
飛鳥は小精霊に近づいて覗き込んだ。すると・・・・
「!?ひゃ~~~~~!!」
小精霊は一目散に逃げていった。
「(逃げられると・・・・追いかけたくなるじゃない!)二人共、ちょっと行ってくる!」
「飛鳥!ああ、もうっ、仕方がない。レティシア、これあげる」
小妖精を追いかける飛鳥。そしてシナナはレティシアにクレープを押し付けて飛鳥のあとを追った。
「ちょ、待て二人共!」
レティシアはすぐさま二人を追いかけようとする。だが人ごみに阻まれてしまい追うことができず、二人の姿を見失ってしまった。
(まずいな・・・・この辺りは日が暮れると治安が悪くなる。シナナがいるから大丈夫だとは思うが・・・・・早く見つけないと)
レティシアは行ってしまった飛鳥とシナナに心配を抱いていた。
「やっと捕まえたわ・・・・」
「ひゃ~~」
時間が掛かりながらも飛鳥はどうにか小精霊を捕まえることができた。日が暮れて、明かりが太陽から街灯に切り替わりつつある。
「別にとって食べようってわけじゃないんだから逃げなくてもいいのに」
「だったら飛鳥だっておいてこうとすることないだろ」
「あら?」
声のする方へと振り返ると、そこにはむすっとした表情をしたシナナが居た。
「お痛くなる気持ちはわかるけど置いてくことないだろ」
「そうね。ごめんなさい」
「わかればいいさ。それよりも・・・・・・はい」
シナナはすぐそこの露店で買ったクッキーを割って小精霊に差し出した。
焼きたてのクッキーの香りに魅入られた小精霊はクッキーを受け取って齧る。
・・・・・どうやら餌付けは成功したようだ。
「可愛らしいわね。私は久遠飛鳥。言える?」
「・・・・あすかー?」
「飛鳥」
「あすか!」
飛鳥は小精霊に名前を教える。その光景は何とも微笑ましいものだ。
「そうよ。それでこっちはシナナくん」
「ななしー?」
「あ~・・・まあたしかにそこからとったけどシナナね。シナナ」
「しなな!」
「よし、それじゃあ君の名前は?」
今度はシナナが小精霊に名前を尋ねた。
「らってんふぇんがー!」
「らって・・・・見た目の割に随分といかつい・・・・それがあなたの名前?」
堂々とした態度で小精霊から語られる名があまりにも似つかわしくないものであったため飛鳥は動揺を隠せずにいた。
「んーんー。コミュ!」
「こみゅ?」
「コミュニティの名前ってことだろう。ラッテンフェンガーってのは元々童話に関連した名前だからな」
「そうなの・・・・・貴女に名前はないの?」
「?」
小精霊は首を傾げる。どうやら小精霊には名前はないらしい。
「そうだ。せっかくだから私が名前をつけてあげましょうか?」
「んーん」
飛鳥は名前をつけてあげようと提案するが小精霊は必要ないといった風にそっぽを向いた。
「もう・・・・」
「あすか!しなな!」
「何かしら?」
「あれは・・・・・」
飛鳥とシナナは小精霊の指差す方向に視線を向ける。そこには展覧会の会場があった。
「わあぁ・・・・・・素敵」
「へえ・・・・・」
飛鳥は会場に置かれた数々の出展物に目を奪われ、シナナは感嘆の声を漏らす。
数々の煌びやかな出展物は飛鳥が今までに見てきたどの美術品よりも美しく、綺麗だと思わせるに十分なものであった。
北側はとかく創作系のギフトが豊富だ。この展覧会の規模はそこまで大きくはないがそれでもその北側がいかに創作に力を入れているのかがうかがい知れる。
「それにすごい数・・・・こんなに多くのコミュ二ティが出展しているのね」
「きれー!」
飛鳥と小精霊は会場内の出展物を見て回る。
「確かに綺麗だな。でも・・・・・」
「でも?」
「・・・・・いや、なんでもない。気にするな」
シナナは一瞬思案顔になるが、飛鳥に声をかけられ何事もないと言ってように笑顔を浮かべた。
(どれもいいできだけど・・・・・・瑠々には敵わないな)
その内心では・・・・・・・かつて虚野十六夜であった時のパートナーとも言える人物、瑠々のことを考えていた。
彼女は優れた彫金師だった彼女の作品と、ここにある展示物とを比べていたようだ。
「まあそう言うなら気にしないけれど・・・・・それよりももっと奥があるようね。あっちが会場の中心かしら?」
「かもな。行ってみるか」
シナナと飛鳥は誘われるように会場の奥へと足を運ぶ。
会場の奥の開けた空間には・・・・・燃えるような紅で彩られた鋼の巨人がそびえ立っていた。
「紅い・・・・鋼の巨人?」
「おっき!」
「凄いわね・・・こんなの見たことないわ。一体どこのコミュニティが・・・・」
「らってんふぇんがー!」
巨人の制作コミュニティーの欄には"ラッテンフェンガー"の文字が彫られていた。
「まさかこれって君のコミュ二ティが作ったの?」
「えっへん!」
シナナの問いかけに小精霊は胸を張る。どうやらその通りのようだ。
「『ディーン』・・・・それがこの巨人の名前なのね。すごいわね。"ラッテンフェンガー"のコミュ二ティは」
飛鳥は素直に感心しているようだ。
「確かにな。こいつは大した・・・・!!」
飛鳥に同意するシナナであったが、ディーンの右脚を目にしたとき表情をこわばらせた。
(この紋章・・・・・なんでこれがここに?)
ディーンの脚には、わかりにくいが小さな紋章が刻まれており、その紋章はシナナにとっては見慣れたものであった。
「シナナくん?どうしたの?」
「・・・・・・」
「シナナくん?」
飛鳥の問いかけにも答えられないほどに食い入るように紋章をジッと見つめるシナナ。その目は、何かを懐かしむような・・・・・それでいて悲しそうな目であった。
だが・・・・・・それも長く続くことはなかった。
『・・・ッ』
『・・・・!』
「あら?何かしら?」
「・・・・・騒がしいな」
急に辺りが騒がしくなり、気になったふたりは辺りを見渡す。
すると・・・・会場内の明かりが突然消えてしまった。
『あ、明かりが・・・・』
『一体何なんだ!?』
突然のことに会場内にいた客は騒ぎ立て、我先にと出口に群がる。
「・・・・ミツケタ」
「!?」
「な、何・・・・!?」
シナナと飛鳥の背後から気味の悪い声が聞こえてくる。二人が後ろに振り向くとそこには・・・・・無数の小さな赤い光が蠢いていた。
「ヨウヤクミツケタ・・・・"ラッテンフェンガー"ノ名ヲ名乗ル不埒モノヲ!」
「ネ、ネズミ・・・・!?"ラッテンフェンガー"って・・・・・・この子を狙ってるの?」
「・・・・・のようだな」
無数の赤い光の正体は数多のネズミの目によるものであった。ネズミ達の言葉から、狙いが小妖精であると二人は察する。
そして・・・・・・ネズミたちは一斉に襲いかかってきた。
「ッ!!自分達の巣に帰りなさい!」
飛鳥はとっさに"威光"の力を使ってネズミ達の命じる。だが・・・・ネズミたちの進撃は止まることがなかった。
「飛鳥、その子を頼む!」
「わ、わかったわ」
「
止まらぬネズミ達を前にして、シナナは飛鳥に小妖精を任せる。そして飛鳥が小妖精をドレスの中にかくまっている間に、シナナは二丁の大きな拳銃を具現した。
「これが最終通告だ。止まらなければ撃つぞ」
シナナがネズミ達に促す。だが、ネズミ達が止まる様子は見られない。
「・・・・・仕方がないか」
シナナは両手の拳銃でネズミを撃ち抜く。デザートイーグルなど本来は片手で扱えるような銃ではないのだが・・・・・・そこはシナナだからとしか言えないであろう。
その威力は並みの拳銃とは比較にならないくらい強く、撃たれたネズミは木っ端微塵になって絶命する。
だが・・・・・
「ちっ、キリがないな」
ネズミの数はあまりのも多すぎた。どれだけ撃っても数が減っている気がしないほどに多いネズミ達に、シナナは舌打ちをする。
「この・・・!近寄らないで!」
再びネズミ達に飛鳥は"威光"による命令を試みる。だがやはりネズミ達は命令を聞き入れようとはしない。
(やはり効いてない!?どうして・・・・・)
ネズミに自身のギフトが通用しないことに飛鳥はショックを受ける。
(これじゃあ埒があかないな・・・・・一気に片付けるか)
銃で一体一体撃っていては埒があかないと、別の武器を具現しようとするシナナ。
その時・・・・・
「ネズミ風情が・・・・我が同胞に牙を突き立てるとは何事だ・・・・!」
ネズミ達は突然に鋭く突き出された影に貫かれる。その影は幼い少女から女性へと変貌を遂げたレティアシアよるものであった。
「術者は誰だ!出てこい!」
レティシアは激しい剣幕でネズミを操っていたであろう術者に命令する。
だが、誰かが出てくる気配は一切なかった。どうやらもう行ってしまったようだ
「貴女レティシアなの?」
飛鳥は変貌したレティシアに対して思わずそう聞いてしまった。
「ああ。それよりも二人共怪我はないか?」
「大丈夫だ」
「私も・・・・・・シナナくんのおかげで」
「そうか。怪我がないのならいい」
二人の無事がわかって、レティシアは安心したように笑みを浮かべる。
(でも・・・・・もしもシナナくんがいなかったら私・・・・・)
「あすか!あすかっ!」
もしもシナナがいなかったらと考え、落ち込んでいた飛鳥に、ドレスの中から這い出てきた小妖精は心配そうに声をかけた。
「私は大丈夫よ・・・・・大丈夫だから」
飛鳥は小精霊をギュッと抱きしめながらそう言う。
(・・・・私一人じゃきっと守れなかった。私一人じゃこの子を・・・・)
自分一人の力では守ることができなかったかもしれない。そんな自身の無力さに、飛鳥は胸を痛めた。
「飛鳥・・・・・ひとまず戻ろう。もうそろそろ日が暮れる」
飛鳥の心境を知ってか、シナナは飛鳥の頭を優しく撫でながらそう促した。
「・・・・・ええ、そうね」
シナナに力なく返事を返した後、一行はひとまず"サウザンドアイズ"の支店に戻ることにした。
ディーンに刻まれた紋章について
ディーンに刻まれた紋章はシナナ・・・・・というより虚野十六夜にとっては思い入れの深いものです
なにせ彼が普段身につけているものにも同じ紋章がついていますからね・・・・・
それでは今回はここまで
次回もまたお楽しみに!