問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~   作:shin-Ex-

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今回は特に大きな動きはありません

それでは本編どうぞ


浴場にて

「・・・・はあ」

 

サウザンドアイズの支店に帰ってきた飛鳥は、詳しい話をする前にとひとまず浴場に通される。だが、飛鳥は湯船につかりながら溜息をついていた。

 

(あのネズミの群れ・・・・私の"威光"が通じなかった。シナナくんがいなかったら・・・・レティシアが来てくれなかったら私は・・・・それにこの子は・・・・)

 

飛鳥は近くにいる小精霊を見つめながら自分の非力さを嘆いていた。

 

もしあの時シナナがいなかったら、レティシアが来てくれなかったら小精霊を守れず、自分もどうなっていたかわからない。それはひとえに自分に守るだけの"力"がなかったことが原因だ。

 

シナナによって戦うすべは身につけてはいるが、それはあくまでも対人戦闘を想定したものだ。人相手ならともかくネズミのような小さい生物、それも複数を相手にすることは難しいと言わざるを得ない。

 

(私は・・・・弱いわね。"威光"の力が通じなければあんなネズミ程度に遅れを取ってしまうなんて・・・・)

 

飛鳥は"威光"で他者を支配することを嫌っている。だがそれでも必要に迫られれば使わざるをえない。

 

しかしその"威光"が通じなかったら・・・・・飛鳥の取れる手段は限られてしまう。

 

(今の私では・・・・この子を守ることができないの?)

 

「飛鳥さん!」

 

飛鳥が意気消沈していると、黒ウサギが浴場に突入してきた。

 

「飛鳥さん!襲われたと聞きましたが大丈夫ですか?怪我はありませんか?」

 

「お、落ち着いて黒ウサギ。私は大丈夫だから」

 

物凄い勢いで飛鳥に詰め寄る黒ウサギ。そんな黒ウサギに戸惑いながらも、飛鳥は自分は大丈夫だと伝えた。

 

「で、でしたらいいのですが・・・・・・飛鳥さんが無事で何よりです」

 

「心配してくれてありがとう黒ウサギ」

 

「いえいえ、仲間を心配するのは当然のことです」

 

「そう・・・・・だったら私もあなたのこと心配しないとね」

 

「へ?」

 

黒ウサギは飛鳥の言っている事の意味がよくわからずに、頭に『?』を浮かべながら首を傾げた。

 

「あの~・・・・・飛鳥さん?それはどう言う意味でしょうか?」

 

「シナナくん・・・・・・祭りのことを内緒にしてた件でお説教するそうよ。覚悟しておいたほうがいいわ」

 

「・・・・・・あはははは」

 

飛鳥から宣告され、黒ウサギは力なく笑う。あのシナナの説教・・・・・これは飛鳥の言うとおり本当に覚悟しておいたほうがいいであろう。

 

その後、耀とレティシアそして白夜叉も浴場にやってきた。

 

その時白夜叉がまた暴走したのだが・・・・・・それは敢えて語るまい。

 

(もっと強くならないと・・・・・・仲間を守れるくらいに。もう非力なのは懲り懲りだわ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

湯船に浸かっていたシナナは、何かを思案しているようで黙り込んでいた。

 

「どうしましたシナナさん?」

 

「随分静かだが・・・・・考え事か?」

 

そんなシナナに、同じく湯に浸かっている十六夜とジンが声を掛ける。

 

「ちょっとな・・・・・ま、お前達には関係ないことだから気にするな」

 

「関係ない・・・・・ですか」

 

関係ないと言われ、ジンは少し落ち込んだ。仲間であるのに、その言葉は少々辛いものがあるのだろう。

 

「御チビ、誰にだって触れて欲しくないことの一つや二つあるだろ。仲間だっていう理由でそいつを詮索するのは野暮だぜ」

 

そんなジンの心境を察して、十六夜がフォローを入れる。

 

「・・・・そうですね。すみませんシナナさん」

 

「こっちこそ・・・・・・言い方が悪かった。すまない」

 

互いに謝り合うシナナとジン。

 

「んじゃあこの話はここまでだな。それにしても・・・・・やっぱりそいつは見慣れねえな」

 

十六夜はシナナの胸の穴を指差しながら言う。

 

「十六夜さん!不謹慎ですよ!」

 

「いや、構わないさ。知られてしまったからには取立て気にするようなものでもない。十六夜だってそれわかってて言ったんだろ?」

 

「まあ、お前の性格上気にするようなことはないとは思ったぜ」

 

「以心伝心何よりだ。というかこれ見てて気持ちのいいものじゃないよな?こんなもの見せちまってごめんな」

 

シナナは苦笑いを浮かべ、申し訳なさそうに謝罪する。確かに、胸に穴があいているというのは見ていて痛々しく感じてしまっても仕方がない。

 

「ん?別に俺はそんなの気にしないぞ?」

 

「僕も・・・・・・気にしていません」

 

(無理しなくてもいいってのにこいつらは・・・・・・)

 

別に十六夜もジンも見ていて何も感じないわけではない。だが、二人はシナナに気を遣って気にしていないと言ってるのだ。そしてシナナはそれを察していた。

 

「さて、それじゃあそろそろ出るか?これ以上は逆上せちまいそうだし」

 

「そうですね」

 

「あ、俺はもうちょいここに居る」

 

そろそろ出ようと立ち上がる十六夜とジンだが、シナナはまだ残るという。

 

「あまり長くいると逆上せてしまいますよ?」

 

「死物は逆上せないから大丈夫だよ」

 

「たまにそれ羨ましく感じるな・・・・・・残るのはいいがあんまり待たせるなよ?後で今後のことで話合うんだからな」

 

「わかってるよ」

 

「それではお先に失礼します」

 

十六夜とジンは、シナナを残して浴場をあとにした。

 

「・・・・・・・」

 

二人が去った後、シナナは頭を湯船に突っ込みんだ。しばらくして顔をあげると、髪は濡れて下に降り、ポタポタと雫を零す。

 

(あのディーンとかいう巨人についていた紋章・・・・・・あれは間違いなくあいつのだ)

 

シナナはディーンの脚についていた紋章を思い返す。あの紋章はシナナにとって・・・・・いや、虚野十六夜にとって懐かしく、思い入れのある紋章だった。

 

なぜなら、あの紋章は虚野十六夜の・・・・・・伴侶が好んで使っていた紋章だからだ。

 

(箱庭にいる?あいつが・・・・・・"ラッテンフェンガー"のコミュニティに?だとしたら俺は・・・・・・)

 

シナナは表情を険しくし、拳を強く握った。




今回は説明は特になしです

それでは次回もまたお楽しみに!
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