問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~ 作:shin-Ex-
それでは本編どうぞ
"サウザンドアイズ"支店の中庭で、シナナは夜空を眺めていた。その表情はどこか物憂げだ。
そんなシナナに・・・・・飛鳥が声をかける。
「シナナくん」
「ん?どうした飛鳥?」
声をかけられ、シナナは飛鳥の方へと視線を移す。
「少しシナナくんと話がしたくて」
「話?」
「ええ。さっきの作戦会議中ずっと様子がおかしかったから」
「・・・・・そうか」
(気づかれる程今の俺は余裕がないっってことか・・・・・・ちっ)
自分が平静を保てていたいなかったことを知ったシナナは、内心で舌打ちを打つ。
「シナナくん・・・・・・どうかしたの?」
「少し・・・・な。でも飛鳥には関係ないことだから。気にする必用はないよ」
「・・・・・・あの紅い巨人の右脚」
「!?」
飛鳥の言ったその一言にシナナは表情をこわばらせ、大きく反応を示した。
「やっぱりそうなのね。あの時シナナくん驚いた顔していたからもしかしてと思っていたけれど・・・・・・」
「・・・・・・・」
「あの巨人の右脚に紋章がついていた。あの紋章・・・・・もしかして見覚えがあるの?」
「・・・・・・飛鳥には関係ない」
「でも・・・・」
「関係ないって言ってるだろ!!」
「!?」
シナナは声を荒げて飛鳥を怒鳴りつけた。今までシナナからそんな対応されたことなかった飛鳥は、思わず怯んでしまった。
「・・・・・ごめん。でも本当に飛鳥に関係ない・・・・・これは俺の問題だから。だから・・・・・なにも聞かないでくれ」
申し訳なさそうに顔を伏せながら言うシナナ。だが、それでもはっきりと何も聞くなと、拒絶の言葉を口にする。
「・・・・わかったわ。私こそしつこく聞いてごめんなさい」
(・・・・・結局わからずじまいね)
これ以上は何を言っても無駄だと判断した飛鳥は、謝罪の言葉を口にした。しかし、その内心ではやはりシナナが何を思っていたのかが気になっていたようで、知れなかったことに対して悔しいようだ。
「・・・・・・もう寝ろよ。明日魔王が襲撃してくる可能性も十分にあるんだ。しっかり身体を休めろ」
「そうするわ。でも・・・・・その前にもう一つだけいいかしら?」
「・・・・・なんだ?」
「・・・・・この子のこと」
飛鳥は連れてきた小精霊を手のひらの上に乗せながら言う。その小精霊はすやすやと気持ちよさそうに眠っていた。
「"ラッテンフェンガー"・・・・・・この子のコミュニティが魔王かその参加のコミュニティかもしれないって皆は言っていたわ。でも私は・・・・・・私にはそうは思えないの。この子が魔王の配下だなんて私には・・・・・」
この小精霊からは全くといっていいほど悪意を感じられない。この子が魔王の配下などと飛鳥はとても信じられなかった。
「シナナくんは・・・・・・どう思う?」
「ネズミ達が襲ってきた時・・・・・ネズミ達はその子を狙っていた。そしてあのネズミ達は"ラッテンフェンガー"を騙る不埒もの"と言っていた」
「ええ。私も覚えているわ」
「その言葉から推理するに、その子の居る"ラッテンフェンガー"のコミュニティは魔王とは関係なくて、ネズミを操っていた奴こそ魔王に関連した"ラッテンフェンガー"である可能性がある」
「それじゃあこの子は魔王とは何も関係ないのね!」
シナナの推理を聞いて、飛鳥は小精霊が潔白だと知り安堵する。
だが・・・・・
「喜ぶには早い。今言ったのは悪魔でも推理に過ぎないんだからな。決定づけるだけの確証はないんだからな」
「そ、そうなの・・・・・・?」
「ああ。さっきの推理は飛鳥にとって都合が良さそうなのを言ったに過ぎない。仲間割れしているのか、はたまた俺達を騙すための演技か、あるいは魔王なんて何も関係ないのか・・・・・考えられる可能性なんていくらでもある」
「わからずじまいっていうことね・・・・・・」
結局結論は出ず、飛鳥は落胆して肩を落とす。
「ねえ、シナナくんはどれが一番有力だと思う?」
「さあな。でも・・・・・関係ない」
「え?」
「関係ないんだよ。もしも"ラッテンフェンガー"が・・・・・その子が魔王側だと言うなら・・・・・敵として排除するだけだ」
「排・・・・除?」
一瞬、飛鳥はシナナの言っている事の意味が分からずに戸惑う。だが、少ししてすぐにその意味を理解し・・・・・・さらに戸惑いが深まってしまった。
「排除って・・・・何を言っているのシナナくん?冗談・・・・よね?」
「冗談なんかじゃない」
「なんで?この子は・・・・・」
「悪い子じゃないっていうのはわかっている。だけど・・・・・それでも俺は敵を排除する。それが俺の存在理由だ」
無表情且つ冷酷に・・・・・そして淡々とまるで機械のように抑揚のない声で言い放つ。
「存在理由って・・・・・・どういうこと?」
「俺は死物兵器だ。戦い、敵を殲滅するために存在する外道。誰が相手だろうと俺は俺の成すべきことをなす。兵器である俺の感情や思いなど・・・・・・・関係ない」
「そんな・・・・・違う!シナナくんは兵器なんかじゃない!シナナくんは・・・・・」
「違わない!俺は兵器だ!兵器として何人もの敵をこの手で殺めてきた!」
「で、でもそれは箱庭に来る前の・・・・」
「今だって・・・・これからだって変わらない!俺は死物兵器だ!」
「や、やめてシナナくん・・・・・・」
「立ちはだかるのなら俺は・・・・・・誰であろうと敵として殺す!」
「やめて・・・・・・」
「その子も例外じゃない!敵になるなら俺は・・・・・」
「やめて!」
パシンっと、乾いた音が響き渡る。飛鳥がシナナの頬を叩いたのだ。
「そんなこと・・・・・・そんな哀しいこと言わないで!あなたはそんな人じゃない!私に命の尊さを・・・・・殺めることの業を教えてくれたあなたはそんな人なんかじゃない!」
必死に訴え掛ける飛鳥。その目からは涙が溢れ、頬を伝っている。
彼女は・・・・・・この箱庭で誰よりもシナナと親交が深い。だからこそシナナがどういう人物かはある程度理解しているし、実際彼女の言うことは間違っていない。
確かにシナナは死物兵器だ。だが・・・・・それでも命は決して非道なものなどではない。
だが・・・・・
「・・・・・意味のないことをするなよ。とうに痛覚をなくした俺に平手打ちなんて無意味だ」
だが・・・・・シナナは飛鳥の言葉をはねのける。まるで自らに暗示をかけるかのように・・・・・・死物兵器でなければならないと言い聞かせるかのように。
「ッ!!」
とうとう耐え切れなくなったのだろう。今のシナナは見ていられないとばかりに・・・・・その場から走り去っていってしまった。
「・・・・・はじめからこうしておけば良かったのかもな」
シナナは飛鳥にぶたれた頬に触れながら、悲しげに言う。
「はじめからこうしておけば・・・・・・・飛鳥と必要以上に関わることなんてなかった。はじめからこうしていれば・・・・・」
死物故に頬に痛みなど感じてはいなかった。だが・・・・・・彼の心には鈍い痛みが広がっていた。
「ごめん飛鳥。でも・・・・・・戦わなければならないんだ。誰が相手だろうと俺は戦わなければならないんだ。だから・・・・・」
敵は誰であろうと倒す。そのためにシナナは自らが死物兵器であると強く言い聞かせる。
「たとえあの小精霊であろうと・・・・・・お前であろうとも俺は!」
シナナは懐からアクセサリーを取り出し、強く握り締める。
彼が戦闘のときに用いる銀色のアクセサリー・・・・・・・それにはディーンの右脚に刻まれていたものと同じ紋章がついていた。
シナナの思いについて
シナナは今、かつて戦争で多くの者を殺めた死物兵器に立ち返ってしまっています
それは敵である可能性があるコミュニティ、"ラッテンフェンガー"に彼のよく知る人物がいるかもしれないからです
その人物が敵であるなら、感情のない兵器として倒す覚悟を固めたが故に、彼は死物兵器に戻ろうとしているのです
それでは今回はここまで
次回もまたお楽しみに!