問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~ 作:shin-Ex-
そしてジャックさんの見せ場でもありますね
それでは本編どうぞ
"ウィル・オ・ウィスプ"のジャック・オー・ランタン彼はコミュニティのリーダー、ウィラ・ザ・イグニファトゥスが制作した悪魔である。
子供を愛し、子供に愛される大悪魔であり、高い知恵と戦闘力を有している彼のことを知っている者は、箱庭において決して少なくはない。
だからこそであろう・・・・・・観客たちは自身の目を疑うことになったのは。
「ま、まさか・・・・・これほどとは」
シナナの攻撃によってボロボロとなったジャックはそう呟やいた。
「どうしたジャック・オー・ランタン?貴様の力はその程度か?」
「くっ・・・・・・いいえ!まだこれからです!」
ジャックはシナナに向かって炎塊を放つ。アーシャのものとは比べ物にならぬ熱量を秘めたそれを・・・・・シナナは躱すことなく直撃した。
「無駄だよジャック。こんなの・・・・・・俺にとっては熱くもなんともない」
自らの体が焼かれるのも一切気に止めることなく、シナナはジャックに接近して攻撃を仕掛けた。繰り出される殴打と蹴撃の乱舞。
「ぐう・・・・・」
見かけからは判断できないが、シナナは鉄の錠を引きちぎるほどの怪力を秘めている。ジャックは回避行動をとってはいるが、その全てを躱すのは難しいようで何発か凄まじい威力の攻撃を受けてしまう。
(このままではいいようにやられてしまう・・・・・・・致し方ありません。多少のダメージは覚悟しましょう!)
このまま防戦一方では好転しないと判断し、ジャックは回避をやめて攻撃を受けながらも自身もシナナを殴りつけた。
攻撃に集中しているシナナにそれを回避することは不可能で直撃してしまうが・・・・・
「無意味だな・・・・・・・俺には効かない」
「なに!?」
僅かに動きを鈍らせることはできたがそれだけだった。たとえ殴られようともシナナは攻撃をやめようとはしない。
これこそが死物兵器の戦いの真骨頂。死物には痛覚はなく、タイムリミットを削る代わりに傷はすぐに再生してしまう。それは即ち肉体的なダメージのないということだ。一切の防御を放棄し、捨て身で攻撃を仕掛ける・・・・・・・死物兵器だからこその戦闘スタイルだ。
(これはあまりにも厄介すぎます・・・・・・一時離脱しましょう)
ジャックはシナナを目一杯に殴りつける。そうして一瞬でも隙を作ると、離脱するために上空に飛んだ。
だが・・・・・・
「
シナナはジャックを逃がすつもりなど毛頭ない。自身も
「ぐうっ!」
叩きつけられたジャックは、そのカボチャの頭部にヒビが生じてしまった。
「はあはあ・・・・・・」
「・・・・・もう立つなよジャック。お前では俺に勝てはしない」
起き上がろうとするジャックに、シナナはそう言い放つ。
確かにこのままではジャックに勝ち目はないであろう。確かにジャックは強いが・・・・・・シナナには敵わない。自らの身を顧みず、ただ敵を倒すことだけに固執するシナナには。
だが・・・・・・それでもジャックは立ち上がった。
「・・・・・・見上げた根性だな。そんなにあのアーシャって子が大事なのか?」
「それもあります。ですがそれだけではありません。あなたを・・・・・・放っておくことができないのですよ」
「なんだと?」
ジャックの発言に、シナナはピクリと反応を示す。
「あなたは自身が死物兵器だと言いましたね。それがどのようなものかは私にはわかりませんが・・・・・自らを『兵器』として扱う子供を私は放っておけないのです」
「何を言うかと思えば・・・・・・くだらない。お前には関係のないことだ」
「関係あります。私はこれでも子供好きなので」
「死物兵器である俺は子供なんかじゃない」
「いいえ・・・・・私に言わせればあなたは子供ですよ」
穏やかな声色で言うジャック。子供好きなジャック・・・・・・彼に言わせれば、シナナとて子供なのだ。
「あなたとて子供・・・・・・それ故に、私は耐えられないのですよ。そんな辛そうな表情で戦うあなたを見るのが」
シナナの顔を真っ直ぐに見据えるジャック。シナナの表情は・・・・・・ひどく悲痛で、どこか悲しそうにも見えた。
「そんなに苦しそうなのは先程のように自らを顧みず、ただ敵を倒すだけの『兵器』であることが辛いからではないのですか?本当はそんな風に戦いたくはないのではありませんか?」
「・・・・・・口を閉じろ。戦いの場で無駄な対話など必要ない」
「なぜあなたはそんな風に戦うのですか?コミュニティの仲間に強要されたからですか?」
「ふざけるな!俺の仲間を・・・・・・皆を侮辱するな!」
ジャックの言葉にシナナは怒りをあらわにして怒鳴りつける。
「ヤホホ・・・・・・やはりあなたは仲間を思いやれる優しい方のようですね」
怒りを・・・・・・感情をあらわにしたシナナを目の当たりにし、ジャックは笑い声をあげる。どうやらそれを確かめるためにかまをかけていたようだ。
「あなたは・・・・・・仲間の為にそのような戦い方をしている。そこに行き着くまでにどのような経緯があったかは知りませんがあなたは仲間を守るための非情な選択をした。それが間違いなどと言うつもりはありませんよ。ですが・・・・・・あなたのそんな戦い方を見た仲間達、そしてあなたにこの場を任せてゴールを目指すあの子はどう思うでしょうか?」
「黙れ!何も知らないくせに・・・・・・敵のくせにうるさいんだよ!」
珍しく平静を崩すシナナ。それはジャックの言葉が響いているからこそ。そして・・・・・・シナナが箱庭に来る前の兵器になりきることができなくなっているからこそだった。
「もうあんなふうに戦うのはおやめなさい。このままではあなたの心が耐え切れない。このままでは・・・・・・大切な仲間を泣かせることになりますよ?」
「うるせえ!俺は兵器だ!俺の感情も意思も関係ない!あいつらにどう思われたとしても俺は敵を倒すだけだ!」
「それはつまり・・・・・自らの感情と意思に反していて、仲間を悲しませる自覚があるということですね?」
「黙れぇぇぇぇぇ!!
激情任せにシナナが具現させたのはケルト神話に登場する槍。放てば30本もの鏃となり標的に降り注ぐ戦略兵器。
シナナはその槍を大きく振りかぶる。これが放たれればジャックの体はひとたまりもないであろう。
「ジャックゥゥゥゥゥ!!」
そしてシナナは槍を振るう。
だが・・・・・ゲイボルグはジャックの頭上に放たれてはいない。ゲイボルグは・・・・・・シナナの足元に深く突き刺さっていた。
「くっ・・・・・・うぅ・・・・・」
突き刺した槍を握ったまま、シナナはその場で膝をつく。
「なん・・・・・でだよ。俺は・・・・・兵器なのに。敵を倒さなきゃいけないのに。そうしないと守れないのに・・・・・・どうして?」
悲痛な面持ちを浮かべるシナナ。死物でなかったのなら涙を流していたであろう。
「それでいいのですよ。死物・・・・・その言葉からしてあなたはもう生きている人間ではないのでしょう。ですが・・・・・・それでも私は敢えて断言しましょう。あなたは誰よりも人間らしい人間です。ですからもう兵器になどなろうとしないでください。それで悲しむ人があなたにはいるのですから」
(悲しむ人・・・・・・皆・・・・・飛鳥)
ジャックの言葉で、シナナは飛鳥のことを思う。
昨晩、自分のことを兵器ではないと涙を溢れさせながら訴えた飛鳥の姿が脳裏に蘇り・・・・・・シナナの心に重い痛みを与える。
「・・・・・・・今から追ってもお互い追いつくことはできないでしょうね。ゲームが終わるまでここで待ちましょう。その間・・・・・・今後の在り方を考えておきなさい」
(今後の・・・・・・・俺の在り方)
ジャックに言われ、今後どうするべきかを考え始めるシナナ。
そのおよそ5分後に、黒ウサギによって耀が先にゴールしたことが発表された。
ゲイボルグについて
ゲイボルグはケルト神話に登場する槍です
クー・フーリンが所持しており、投げれば30の鏃となって降り注ぎ、突けば30の棘となって破裂する戦略兵器
名前は実は槍ではなく投擲法であるという説もあり、また相当な重量も持っているらしい
それでは今回はここまで
次回もまたお楽しみに!