問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~ 作:shin-Ex-
それでは本編どうぞ
『勝者!"ノーネーム"!!』
黒ウサギの口から"ノーネーム"の勝利が会場中に響き渡る。
「嘘だろおい・・・」
「"ウィル・オ・ウィスプ"が名無しごときに負けるなんて・・・・」
「あの二人一体何者なんだ?」
試合が決したにもかかわらず、会場内には歓声はほとんど聞かれず、代わりに困惑の声でざわめきたっていた。
それもそのはずだ。なぜならこの会場にいる多くの者が"ノーネーム"が勝つとは夢にも思わなかったであろうから。
「シナナ・・・・・・私やったよ」
ゲーム決着と同時に会場に戻って来た耀は、同じく戻って来たシナナのもとに駆け寄り誇らしげに言う。
「ああ、お疲れ様耀」
シナナはそんな耀に穏やかな笑みを浮かべながら労いの言葉をかける。その表情からは、先程までの悲痛さは感じ取れない・・・・・・・今度こそ普段通りのシナナのものであった。
どうやら、彼の中で答えは見つかり・・・・・・それは良い方向に作用しているようだ。
「くっそ・・・・・勝てなかった」
その一方で、ゲームに敗北したアーシャは悔しそうに唇を噛み締め、俯いていた。
「申し訳ありませんアーシャ。私が不甲斐ないばかりに・・・・」
「いや、ジャックさんのせいじゃ・・・・・って、ジャックさん!?何でそんなにボロボロに!?」
申し訳なさそうに謝罪するジャックの姿を目の当たりにして、アーシャは驚きを顕にする。
「まさか・・・・・・お前がジャックさんを?」
アーシャはジャックをボロボロにしたであろうシナナを睨みつけながら尋ねる。
「アーシャ、これは私の力不足が招いた結果です。そもそもゲーム上で起きたことでそのように恨みがましくするのは間違いですよ」
「でも・・・・・」
「でもではありません。それに彼のおかげで私もさらに研鑽を積まなければならないと気がつけたのですからむしろ感謝しているくらいなのです」
自惚れとまでいかないが自らの実力に自信を持っていたジャック。だが、今回シナナに圧倒されたことにより、もっと研鑽を積まなければならないと気がついたようだ。
「・・・・・・わかった。ジャックさんがそこまで言うならいい。でも・・・・・オマエ達名前はなんていうの?」
アーシャはシナナと耀の方へと向き直り名前を尋ねた。
二人に対してアーシャは名を尋ねる。
「・・・・最初の紹介にあった通りだけど?」
「うえっ!?」
アーシャの問いかけに耀は答えなかった。ゲーム開始前に紹介があったのに覚えてもらえなかったので不機嫌になっているのであろう。まさか答えてくれないとは思っていなかったアーシャは戸惑いの表情を浮かべる。
「耀・・・・そんな意地悪言わないでちゃんと名乗ってやれよ」
そんなアーシャを見て可哀想に思ったのであろう。シナナは苦笑いを浮かべながら耀を諭してやった。
「・・・・・"ノーネーム"の春日部耀」
シナナに諭されて、耀は名前を名乗る。もっとも、渋々といった様子でだが。
「・・・・・オマエは?」
今度はシナナに尋ねるアーシャ。
「シナナだ」
「耀にシナナだな・・・・私は六七九〇〇外門出身のアーシャ・イグニファトゥスだ!耀!次は絶対に私が勝つからな!覚えてろよ!」
アーシャは耀を指差しながら力強く宣言した。
「え?今度はって・・・・?」
「ヤホホ。どうやらアーシャはあなたに負けたことがよほど悔しかったようですね」
「それとシナナ!」
アーシャは次にシナナを指差し、言い放つ。
「いつか絶対に・・・・・絶対にジャックさんの仇をとってやるからな!覚悟しろよ!」
「アーシャ・・・・あなたは・・・・」
自身の仇をとると言うアーシャを見てジャックはどことなく嬉しそうな顔をした・・・・・・もっとも、表情は変わっていないが。だが、アーシャに思われているという事実が彼にとっては嬉しいことなのであろう。
(いつか絶対に・・・・・か)
一方で、シナナはというと複雑な心境を抱いていた。
シナナとしても別に仇をとられることに関して特に不満を抱いているわけではない。だが・・・・・・その時が訪れるとはシナナには思えないのだ。
「おい!返事しろよ!」
「・・・・・すまない。その時が来るのを楽しみにしているよ」
シナナは微笑みを浮かべながらアーシャにそう返した。その時が来ることはないと知りながら。
「さて、それじゃあ皆のところに戻ろうか耀」
「うん」
命は耀に声をかけて十六夜たちのいるところに戻ろうと歩き始める。そして耀がそのあとについて行く。
その時・・・・・
「お待ちなさい」
ジャックがシナナを引き止めた。
「・・・・・・なんだジャック?」
「もう二度と・・・・・違えてはなりませんよ?」
「「?」」
ただ一言そうシナナに告げるジャック。耀とアーシャはその言葉の意味が分からずに首を傾けていた。
「・・・・・・わかってる。ありがとうジャック」
ジャックに礼の言葉を述べ、シナナは再び歩み始める。
(まず飛鳥に謝らないとな。そしてちゃんと話を・・・・・・・・)
歩を進めながら、シナナはそんなことを考えていた。
「中々堂に入った良いゲームであった。"ウィル・オ・ウィスプ"は六桁の中でも最上位の一角。それを"ノーネーム"が破ったのであるから誰もが予想外であったであろうな」
貴賓席で、面白いゲームが見られたことに白夜叉は満足げな笑みを浮かべる。
「白夜叉様はこの結果を予想していたのですか?」
サンドラが白夜叉に尋ねる。
「まあの。シナナであればジャックを押さえ込めることはわかっておった。切り札を抑えられれば"ウィル・オ・ウィスプ"の勝率がかなり落ち込んでしまうことはわかりきっていたことであるからこの結果は予想できたのだ。まあ、シナナのあの戦い方については少々予想外であったがの」
白夜叉は先程までのシナナとジャックの戦いを思い返して表情を険しくする。自らの身を顧みず、ただ敵を打ち倒すだけの戦い方・・・・・・兵器としての戦い方。それはひどく悍ましいものであった。
「飛鳥、お前はあれ知ってたのか?」
「・・・・・・ええ。昨日の夜シナナくん自身が言っていたわ。自分は死物兵器・・・・・・兵器として立ちはだかる敵を倒す。そこに自分の感情も意思の関係ないって」
「それであの戦い方か・・・・・・あいつに何があったんだ?」
「それは・・・・・・私にもわからない。でも・・・・・もう大丈夫そうだわ」
飛鳥は会場のシナナを見つめながら言う。その目に映るシナナは、憑き物が落ちたような表情をしているように飛鳥には見えた。
「そうだな。ジャックには感謝しねえとな」
「ええ、本当に・・・・・・それと、昨日のことでシナナくんには説教してあげないと」
どこか意地の悪い笑みを浮かべながら、飛鳥は言う。
(こいつは覚悟しておいたほうが良さそうだぜシナナ)
心内でシナナに対して同情する十六夜。
そんな時・・・・・
(あ?なんだあれ?)
十六夜は会場の上空から降ってきた無数のある物体に気がついた。
「・・・・・おい白夜叉。あれはなんだ?」
「何?」
白夜叉は十六夜の指すものに目を向ける。
空から降ってきた物体は・・・・・漆黒の封書であった。
白夜叉は封書の一枚を手にとって開封する。
「黒く輝く"契約書類(ギアスロール)"・・・・これは!!」
笛を吹く道化師の印が入った封蝋を開封すると中には"契約書類(ギアスロール)"が入っており、こう綴られていた。
ギフトゲーム"The PIED PIPER of HAMELIM"
プレイヤー一覧
・現時点で三九九九九九九外門、四〇〇〇〇〇〇外門、境界壁の舞台区画に存在する参加者、主催者の全コミュニティ
・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター
・太陽の運行者、星霊 白夜叉
・ホストプレイヤー側 勝利条件
・全プレイヤーの屈服、及び殺害
・プレイヤー側 勝利条件
一、ゲームマスターの打倒
二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ
宣誓
上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
"グリムグリモワール・ハーメルン"印
"契約書類(ギアスロール)"が舞い落ちる中、会場内は静まり返っていた。
そんな中、一人の観客が弾けるような叫び声を上げる。
「魔王が・・・・魔王が現れたぞォォォォォォ!!」
魔王のギフトゲームが・・・・・始まった。
「・・・・・とうとう始まったか」
シナナは"契約書類(ギアスロール)"を握り締めながら呟く。
("グリムグリモワール・ハーメルン"・・・・・・そこにお前はいるのか?)
シナナは思い浮かべる・・・・・・かつて虚野十六夜であった時、もっとも大切に思っていた人物のことを。
(・・・・・・・兵器としては戦えない。それでもお前が敵だというなら・・・・・俺はシナナとして戦う)
兵器としてではない・・・・・・・・シナナとして戦おうと、シナナは強く決意を固めた。
今回は説明はありません
また、明日は投稿をお休みします
それでは次回もまたお楽しみに!