問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~   作:shin-Ex-

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サブタイからわかるようにガルドが登場します

そしてシナナ・・・・・少し恐いです

それでは本編どうぞ


虎の威を狩る死物

 

「おんやぁ?誰かと思えば東地区最底辺のコミュニティ、"名無しの権兵衛"のリーダー、ジンくんじゃないですか。今日はお守りの黒ウサギは一緒ではないのですか?」

 

シナナ達が紅茶を飲みながら会話を交えていると、一人の男が乱入してきた。

 

(・・・・・なんだこの似合いもしねえエセ紳士?)

 

シナナは男に対して不快感を顕にする。

 

男は紳士のようなスーツを着ているものの全く着こなせておらず、全身からは人格の悪さがにじみ出ている。

 

シナナが不快感を抱くのは仕方がないであろう。

 

「・・・・・僕達のコミュニティは"ノーネーム"です。"フォレスガロ"のガルド・ガスパー」

 

「はっ、黙れこの名無し」

 

「・・・・・・」

 

ムッとした表情で言い返すジンであるが、ガルドは冷酷に鼻で笑った。

 

そんなガルドを、シナナはつまらなそうな目で見ている。

 

「聞けば新しい人材を呼び寄せたらしいじゃないか。よくもまだ未練がましくコミュニティを存続させるものだ」

 

そう言いながら、ガルドはシナナのとなりの空いた席に腰下ろそうとする。

 

が・・・・・・

 

「うおっ!?」

 

腰がつく瞬間に、シナナは椅子を引っ張る。するとガルドは尻餅をついてしまった。

 

その光景を見て飛鳥、耀、ジンの三人は笑いを堪えている。

 

「この・・・・・何しやがる!」

 

「申し訳ありませんね。失礼とは思いましたが同席を許した覚えはないので」

 

シナナを睨みながら怒号を放つガルドであったが、そんなものシナナにとっては暖簾に腕押し。全く意に介さずに、柔かな笑顔を浮かべながら返事を返した。

 

「シナナくんの言うとおりね。同席を求めるのならば氏名を名乗った後に一言添えるのが常識ではないかしら?」

 

「ぐっ・・・・・これは失礼いたしました」

 

飛鳥に言われ、ガルドは青筋をピクピクとさせながらも無理矢理に笑みを浮かべて謝罪した。

 

おそらくはらわたが煮えくり返りそうになっているだろう。

 

「私は箱庭上層に陣取るコミュニティ、"六百六十六の獣"の傘下である「烏合の衆」コミュニティのリーダーをしている・・・・って、誰が烏合の衆だ小僧!」

 

ガルドは自己紹介に割って入ったジンに怒りを顕にする。

 

「口を慎め・・・・・紳士の俺にも聞き逃せねえ言葉はあるんだぜ?」

 

「街を荒らす獣に返す礼儀などありません!」

 

(へえ・・・・・結構度胸あるじゃん)

 

ガルドに物怖じせずに、反論を返すジンにシナナ感心した。

 

「そういう貴様は自分のコミュニティがどういう状況か理解できてんのか!」

 

「はいちょっとストップ」

 

ジンとガルドの口論に、飛鳥が割って入る。

 

「貴方達の仲が悪いことは承知したわ。だからこそガルドさんが指摘する私達のコミュニティが置かれている状況・・・・・リーダーとして説明していただけるかしらジンくん?」

 

「そ、それは・・・・・」

 

飛鳥に説明を促されるジンであるが、言い淀んで説明しようとしない。

 

「くくっ・・・・・レディ、貴女の言うとおりだ。しかし彼はそれをしたがらないでしょう。よろしければ私が客観的に説明させていただきますが?」

 

「そうね・・・・・」

 

飛鳥はチラリとジンの様子を伺うと、ジンは顔を伏せており、ガルドの言うとおり説明したくなさそうにしていた。

 

その後、近くにいたシナナに目線を配らせると、シナナは察したようにコクりと小さく頷いてみせた。

 

「お願いするわガルドさん」

 

「それではお話しましょう。まず・・・・」

 

ガルドはジンのコミュニティの置かれた状況を説明し始めた。

 

以前ジンの所属するコミュニティは東区画で最大手の一大コミュニティだったが、3年前に箱庭最大の災厄『魔王』に敗北したことで、コミュニティは名乗るべき"名"とテリトリーを示す"旗印"を失いその他大勢を意味する蔑称・・・・・・・・"ノーネーム"と称されるようになってしまった。

 

さらにコミュニティの中核を担う主力メンバーは誰一人としてコミュニティに残っておらず、今のコミュニティの構成メンバーはコミュニティのリーダーであるジン・ラッセルと黒ウサギ、それ以外は10歳以下の子供ばかりだという。

 

そしてそんなコミュニティを箱庭において貴種である黒ウサギが一人奔走してかろうじて支えているという状況にある。

 

このようにかつての栄華を魔王によって奪われてしまったコミュニティは衰退の一途をたどり、地位も名誉も失墜してしまっているのだ。

 

「なるほど、事情はよくわかったわ。それで?ガルドさんはどうして私達に丁寧に説明してくれたのかしら?」

 

飛鳥はわざわざ懇切丁寧に説明してくれた理由をガルドに尋ねる。

 

「もしよろしければ黒ウサギ共々私のコミュニティに入りませんか?待遇はお約束しますよ?」

 

「なっ!?何を言って・・・・」

 

ガルドの一言に、同様を隠せずにいるジン。

 

無理もない。ガルドはせっかく呼び寄せた希望とも言える者達、さらにはコミュニティの支えである黒ウサギを寄越せて言っているのだから。

 

だが・・・・・

 

「結構よ」

 

ガルドの誘いを、飛鳥はものの見事に一蹴した。

 

「私はジンくんのコミュニティで間に合っているもの。けどそうね・・・・・春日部さんは今の話どう思う?」

 

「別にどっちでも。私はこの世界に友達を作りに来ただけだから」

 

「あら?じゃあ私が立候補してもいいかしら?」

 

「俺も。立候補させていただいても?」

 

「・・・・・うん。二人は私の知ってる人達とちょっと違うから大丈夫かも」

 

耀は友人に立候補した飛鳥とシナナに笑顔でそう返した。

 

「あ、あの・・・・お嬢さん?理由を教えてもらっても?」

 

ビキビキと青筋を立てさせ、さらには表情をヒクつかせながら飛鳥に尋ねる。

 

「だから間に合ってるのよ。私は裕福だった家も、約束された将来も、おおよそ人が望みうる全てを支払ってこの箱庭に来たのよ。小さな一地区を支配しているだけの組織の末端として迎え入れてやる・・・・・などと言われて魅力を感じるとでも思ったの?」

 

ガルドに向かってキッパリと言い放つ飛鳥。

 

「くくくっ!いいねそれ、流石は飛鳥。惚れ直した」

 

「惚れ!?こんな時にまでからかわないでシナナくん!」

 

顔を真っ赤にさせながらシナナに怒鳴る飛鳥。もちろんシナナはからかった訳ではなく、本気なのであるが・・・・・伝わらないものである。

 

「そ、そちらの貴方はどうですか?」

 

今度はシナナに尋ねるガルド。

 

「そうだな・・・・・確かにリーダーであるにも関わらず肝心な説明を怠ったことに対しては正直呆れている」

 

「うっ・・・・・」

 

シナナのこの一言に、ジンは申し訳なさそうに顔を伏せる。

 

「でしたら・・・・「だがそれだけだ」・・・・え?」

 

「それだけでジンのコミュニティを拒否する理由にはならない。ガルド、お前はさっきジンのコミュニティは黒ウサギに頼りきっていると言ったな?」

 

「え、ええ。貴方は最低だと思わないのですか?」

 

「思わないね。というより・・・・・それの何が悪い?」

 

「え?」

 

「ジンはまだ11歳の子供だ。力が無いのは当たり前。だからこそ力のあるものに頼る。だから力のある者に助けを求める。それの何が悪い?俺はそれを罪だとは思わない。当然の願いだと思っている。むしろ力がないのを自覚しながら誰にも頼ろうとしないほうがよほど愚かだ」

 

力が無いからこそ力を持つものに頼る・・・・・シナナはそんな考えを否定しない。

 

むしろ力なき者の蛮行こそ悪だと認識しているのだ。

 

「だ、だから名無しのコミュニティに入るというのですか?」

 

「ああ。もっとも・・・・それ以上の理由もあるがな」

 

「それ以上の理由?それはなにかしらシナナくん?」

 

「・・・・・ロマンさ」

 

ニヤリとシナナは不敵な笑みを浮かべる。

 

「ロマン・・・・・だと?」

 

「そうさ。魔王によって失墜し、今にも崩壊しかかったコミュニティ・・・・・俺達はそれを復興させるために呼ばれたんだろ?そんなの最高にロマンがあるじゃねえか!だったら乗らなきゃ損だ!」

 

まるで無邪気な子供のように楽しそうに言い放つシナナ。

 

ロマンと快楽を追い求め、その為の選択を躊躇わない。

 

それこそがシナナの・・・・・・否、十六夜の因子を持つ彼の生き様である。

 

「ロマン・・・・・そんなもののために・・・・・!」

 

ギリっと歯ぎしりさせながら怒りを顕にするガルド。もはや爆発する寸前といっていい。

 

だが・・・・・シナナの話はまだ終わっていなかった。

 

「ああ、それとなガルド。ジンのコミュニティに入りたい理由があるように・・・・・・お前のコミュニティに入りたくないはっきりとした理由もあるんだよ」

 

「なに?」

 

「俺には見えるんだよ・・・・・・・お前にまとわりつく幼き死霊達が。そして聞こえるんだよ・・・・・死霊達の怨嗟の声が」

 

(!?ば、ばかな。こいつまさか知っている・・・・のか!?)

 

シナナの発言を聞いたガルドは顔を青ざめさせながらギクリと動揺をあらわにした。

 

普通に考えればシナナのこの発言は戯言だと思われても仕方がないほどに唐突で突飛なものだ。

 

しかし、シナナの冷酷なまでに鋭い視線が・・・・・シナナの発言に妙な信憑性と確信めいたものを感じさせ、さらにガルドの後ろめたさがそれを助長せたために動揺したのだ。

 

「その態度からして心当たりがあるようね。その上で聞くけれど、貴方は先程この地域のコミュニティに両者合意で勝負を挑み、勝利したと言っていたけれど・・・・・私には腑に落ちないわ」

 

「ど、どういうことだ・・・・・」

 

動揺しきっているガルドは余裕がないのだろう。言葉遣いが荒れ始めている。

 

「ねえジンくん、コミュニティそのものをチップにするゲームはそうあることなの?」

 

「い、いいえ。かなりのレアケースです」

 

「まあ当然よね。では貴方はなぜコミュニティを賭けあうような大勝負を強制的に続けることができるのかしら?教えてくださる?」

 

「!?」

 

飛鳥に問われた瞬間、ガルドは何かに支配されるような感覚に陥った。

 

そして自らの意思に反して、その口が言葉を紡ぎ始める。

 

「あ、相手コミュニティの女子供を攫って脅迫し、ゲームに乗らざる得ない状況に圧迫した」

 

(これは・・・・・ガルドの意思ではないな。なるほど、飛鳥の能力は『支配』か。確かにこれは自己嫌悪に陥いるのも無理はない)

 

シナナは飛鳥に視線を向けながら思う。

 

「・・・・それはコミュニティを吸収した後もかしら?」

 

「・・・・ああ。数人ずつ子供を人質にしてある」

 

「人質ね・・・・じゃあその人質は今どうしている?」

 

「・・・・・・」

 

「シナナくんの質問に答えなさい」

 

「・・・・・もう殺した。うるさいし鬱陶しかったからな」

 

飛鳥命じると、ガルドは答えた・・・・・最悪の返答を。

 

「・・・・酷い」

 

「ガルド・・・・・貴方はなんてことを」

 

「・・・・とんだ外道ね」

 

「そうだな俺の居た世界も大概だが、流石は人外魔境の箱庭といったところか?」

 

ガルドの外道さに不快感を顕にする一同。ガルドはそれほどのことをしたのだから当然の反応であろう。

 

「ジンくん、今の証言で箱庭の法がこの外道を裁くことはできるかしら?」

 

「・・・・・難しいですね。箱庭でもガルドほどの違法を働いた悪党はそうはいませんが・・・・・裁かれるまでに箱庭の外に逃げてしまえばそれまでです」

 

「そう。なら仕方ないわ」

 

パチンと飛鳥が指を鳴らすと、ガルドの支配は解かれた。

 

「貴様・・・・よくも!覚悟しろ小娘がァァァァァ!!」

 

支配が解かれたガルドはワータイガーと化し、怒りのままにその鋭い爪を飛鳥に対して振りかざした。

 

だが・・・・・

 

「・・・・・煩い。喚くな」

 

「!?」

 

シナナの言ったこの一言が、ガルドの動きを封じ込めた。

 

聞いただけで凍りつくかのように冷たく、悍ましいほどの残酷さの篭ったその一声による支配。

 

それは先程の飛鳥の能力による支配とは違う・・・・・・ガルドを支配し、縛り付けたのは圧倒的なまでの恐怖による支配だ。

 

(シナナ・・・・さん?)

 

(なにこれ・・・・・恐い)

 

(彼は・・・・・・本当にシナナくんなの)

 

そしてその恐怖は、直接向けられていない飛鳥達三人をも蝕んでいた。

 

「虎風情が自分のしたことを棚に上げて粋がりやがって・・・・・・永久に黙らせれたくなければ喚くな」

 

「う・・・・があ・・・・」

 

あまりの恐怖から上手く言葉を発することができないガルド。

 

「それでいい。さて・・・・俺個人としてはどうしてもお前のしたことが許せないのでな。皆に一つ提案がある」

 

シナナは飛鳥達の方へと向き直りながら言う。

 

「箱庭の流儀に則り、ギフトゲームで決めるというのはどうだろうか?"フォレスガロ"の存続と"ノーネーム"の誇りをかけたな」

 

かくして、シナナ達が箱庭に来て初めてのギフトゲームの開催が決定された。

 




今回は特に解説することはないのでここまでです

それでは次回もお楽しみに
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