問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~ 作:shin-Ex-
既にこれまでに名前だけは出ているキャラです
それでは本編どうぞ
(ここは・・・・・・昨日の?)
蘭々とラッテンによって連れてこられたのは昨日訪れた展示会の会場であった。そしてそこには、斑模様の服を着た少女と軍服のような服を着た男性がいた。
「二人共遅いぜ」
「ごめんなさいヴェーザー。連れがいたから」
悪態をつくように言う男、ヴェーザーにラッテンがクスリと笑みを浮かべ、チラリと飛鳥の方を見ながら言う。
「その男・・・・・・それがあなたが言っていた奴なの?」
今度は少女がシナナに視線を向けながら蘭々に尋ねる。
「ああ。私の最愛だ」
蘭々は慈しむような目でシナナを見て、シナナの腕に自身の腕を絡めながら言う。
「そう・・・・・・確かにあなたが惚れこむのもよくわかるわね。私の目から見ても素敵だわ」
「ペスト、いくらお前でも私の十六夜に色目を使うことは許さない」
蘭々はキッと少女・・・・・魔王・ペストを睨めつける。
「ほんの冗談よ。気にしないで」
「おい蘭々、お前は俺達に従う立場なんだぜ?あまりマスターに牙向くなよ」
「・・・・・・わかっている。だが十六夜のことは別だ」
「よほどぞっこんなようね・・・・・・少し羨ましいわ」
「・・・・・・それよりもこんな無駄話している暇はあるのか?審議決議があるのだろう?」
蘭々は3人にそう促す。
審議決議とは、ゲームに不正があるかどうかを確認するためのものである。ジャッジマスターの黒ウサギによって発令され、これからペストをはじめとする4人はそれに参加することになっているようだ。
「わかってるわ。3人とも行くわよ」
「おう」
「ふふっ。それじゃあここで少し待っていてね」
ラッテンは飛鳥を下ろしながら言う。
「十六夜、私はこれから審議決議に行くがその前に・・・・・これを飲んでもらう」
蘭々は懐から瓶を取り出し、その中に入っていた錠剤を1錠シナナに渡した。
「こいつは?」
「これは『魂眠薬』。いわば死物専用の睡眠薬だ」
「死物専用の?死物を眠らせることができるのか?」
死物は肉体的な疲労を蓄積しないため睡眠を必要とせず、そもそも眠ることさえできない。そんな死物を眠らせる薬があるとはシナナは思っていなかったようで驚いた様子を見せた。
「ああ。死物の魂を眠らせ、タイムリミットを無闇に削らないようにと開発された薬だ」
「そんな薬があったのか・・・・・・」
「お前が箱庭に旅立ったあとに完成したものだからな。知らないのも無理はない。それよりも早く飲め」
「・・・・・俺が飛鳥を連れて逃げ出さないようにするためか?」
「そうだ。せっかく再会できたというのにまた離れるなど嫌だからな。さあ、飲め」
「・・・・・わかったよ」
シナナは大人しく蘭々から薬を受け取り、飲み込んだ。
「うっ・・・・・」
薬を飲んだシナナの意識はおぼろげになり、すぐに眠りについてしまった。
「蘭々、早く来なさい」
「わかっている・・・・・行ってくるぞ十六夜」
蘭々はシナナに口付けを落とした後、ペスト達についていった。
審議決議の結果、ペスト達魔王側に一切不正がなかったことが判明される。そしてゲームを中断したペナルティとしてゲームの再開は1週間後、再開から24時間以内に攻略されなければ魔王側の勝利となることが決定した。
「それじゃあ帰りましょ」
「ええ」
「ちょっと待てよ」
審議決議が終わり戻ろうとするペスト達であったが、それを十六夜が阻む。
「なにかしら?もう話すことはないわよ?」
「すぐに済ます。それとも魔王ってのは少しくらいおおめに見る度量はないのか?」
「・・・・・・少しだけよ」
十六夜の挑発に乗ったペストは、少しだけならと受け入れた。
「サンキュ。といっても、用があるのはそっちの銀髪の女にだがな」
十六夜は蘭々に視線を向ける。
「私にだと?一体なんの用だ?早く帰りたいから手短にしろ」
一刻も早く『虚野十六夜』の下に戻りたい蘭々は苛立ちを顕にする。
「お前がシナナ連れてったんだよな?」
「シナナじゃない。あいつは虚野十六夜だ」
「・・・・・その呼び方じゃ色々とややこしくなるからやめてほしいんだが?」
十六夜はしかめっ面で言う。確かに十六夜がこの場にいながら『虚野十六夜』の名が出るのはややこしいといえばややこしい。
「それはお前がオリジナルの十六夜だからか?」
「あ?知ってんのかよ」
「まあな。もっとも、私にとっての十六夜はあいつだけだ。お前などどうでもいいから私はあいつを十六夜と呼び続ける」
「そうかよ・・・・・まあ、お前がそれでいいならいいけどよ。それよりシナナの生前の名前を知ってるってことはあんたはあいつと同じ世界の人間ってことか?」
「ああ。私は十六夜と同じ世界・・・・・・同じ国で幼い時から共に過ごした仲だ」
蘭々は『虚野十六夜』と共に過ごした日々の事を思い返し、表情を綻ばせる。
「つまり幼馴染ってことか・・・・・・それなのにどうしてあいつと敵対するんだよ?」
「敵対などしていない。ただ私は十六夜と共に居たいだけだ。あいつは私の最愛だからな」
「最愛・・・・・ねぇ」
「なんだ?」
十六夜の態度が気に食わないのか、蘭々はムッとした表情で十六夜に尋ねる。
「別に。ただ・・・・・ひとつ言わせてもらうぜ。お前の最愛の虚野十六夜はもう存在しない」
「・・・・・なんだと?」
「あいつはもうシナナとして存在すると決めているんだ。お前の知る虚野十六夜とは別もの・・・・・お前が追い求め、愛してるのは文字通り虚なんだよ。それを受け入れたほうがいいんじゃないか?」
十六夜はシナナと『虚野十六夜』を同一の存在とは考えていない。それは十六夜が『虚野十六夜』を知らないからというわけではない。ただわかっているのだ・・・・・彼がもう『シナナ』としてしかあろうとしていないことを。
「ふざけたことを言うな!あいつは十六夜だ!私の愛おしい十六夜なんだ!それを否定するというなら・・・・・・貴様を切り刻む!」
蘭々は十六夜斬ろうと剣を引き抜こうとする。
だが・・・・・
「やめなさい蘭々」
それをペストが制した。
「ここで手を出せば台無しになるのよ?まさかそんなこともわからないんじゃないでしょうね?」
「くっ・・・・・・わかった」
ペストに諭され、蘭々は仕方ないといった様子で剣を鞘に収めた。
「おい坊主、あんまり舐めた挑発しないでくれるか?」
「挑発したつもりはねえよ。ただ事実を言っただけだ」
ヴェーザーが睨みつけながら言うが、十六夜は一切怯むことはなかった。
「全く・・・・・もう用は終わったんでしょ?だったら帰らせてもらうわよ?」
「ああ。引き止めて悪かったな」
「本当にね。行くわよ」
ペストは3人を引き連れ、その場を去っていった。
(十六夜が存在していないだと・・・・・?馬鹿馬鹿しい。早く帰ろう。早く帰って十六夜と語り合おう。触れ合おう。それが私にとって何よりの・・・・・)
戻ったら十六夜と時を共にしようと心を弾ませる蘭々。
だが、この時の彼女は知る由もなかったであろう。
シナナが・・・・・・あの場から姿を消していることに。
『新しいの作ってやったぞ~。感謝しろよコノヤロー』
(これは・・・・・夢?)
シナナは夢を見ていた、かつて虚野十六夜であった時の夢を。
『あんまり無理すんなよ~。あんまり無理するとボク嫌なんだからな~』
その少女はいつも気の抜けた口調で話していた。だがその実、少女は虚野十六夜の事を誰よりも気遣い、誰よりも理解しようとしていた。
『十六夜~。ボクやっぱり君のことが・・・・・・』
(ああ。虚野十六夜もお前の事を・・・・・・)
「シナナくん!起きてシナナくん!」
「ん・・・・・あす・・・か?」
シナナが目を覚ますと、真っ先に涙を流す飛鳥の顔が目に映った。
「シナナくん!良かった・・・・・気がついたのね!」
シナナが目を覚ましたことに喜びを顕にする飛鳥は、シナナを身体を抱きしめた。
「え?あす・・・・か?なんで・・・・え?」
突然のことに混乱するシナナ。状況を整理しようにも寝起きで頭が回らないせいでうまくまとまらない。
「もう・・・・・目を覚まさないかと思った。すごく心配したんだから」
「目を覚まさないって・・・・・なんでそんな?」
「だって・・・・・シナナくん死物は眠らないって言ってたじゃない。それなのにあんなふうに眠っていたから・・・・・・」
睡眠を取らないはずのシナナが眠っていたという事実は飛鳥にとって異常事態に思えたのであろう。それ故にもう二度と目を覚まさないのではないかと怖くなってしまったのであろう。
「そうか・・・・・・心配をかけてしまったようだな。ごめんな飛鳥」
シナナは飛鳥の背に手をまわし、優しく撫でながら言う。
その時・・・・・・・
「お~、ようやく目を覚ましたか~」
「「!?」」
シナナと飛鳥の耳に気の抜けたような声が聞こえてくる。その声はシナナの知った声だった。
声のする方に振り向くとそこには・・・・・・
「目が覚めたようでなによりだぞ十六夜~。いや、今はシナナだったか~」
「・・・・・瑠々?」
『虚野十六夜』のパートナーにしてもっとも大切な存在である少女・・・・・・瑠々の姿があった。
今回は説明なしです
それでは次回もまたお楽しみに!