問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~ 作:shin-Ex-
それでは本編どうぞ
「はあ・・・・・」
壁に寄りかかりながら腰を下ろす飛鳥は、深い溜息を吐いた。
「・・・・・・上手くいかないわね」
飛鳥は目の前のディーンの巨体を眺める。
「どうすればいいの?私は・・・・・・私には力が必要なのに」
「切羽詰まりすぎ」
どうすればいいのか思い悩む飛鳥に、シナナは紅茶の入ったカップを差し出した。
「シナナくん」
「心配してなかったんだけど・・・・・・ごめん。さすがに見てられなかった」
「見て・・・・・られない?」
「さっきも言ったけど切羽詰まりすぎだよ。少し落ち着け」
「そんなに余裕がなさそうに見えたかしら?」
「それはもう」
先程までの飛鳥はシナナでなくても焦っているように見えた。そんなでは何事も上手くいかないであろうことは容易に想像できる。
「とにかくこれ飲んで一息つけ」
「そうするわ。ありがとう」
飛鳥はシナナからカップを受け取り、紅茶を口に含む。
「美味しい・・・・・これシナナくんが淹れたの?」
「いいや、淹れたのは瑠々だよ」
「彼女が?」
まさか瑠々が淹れたものだとは思わなかったようで、飛鳥は驚いてみせた。
「ああ。そろそろ休憩が必要かなと思って頼んで淹れてもらってな。あれでもあいつ紅茶淹れるの上手いんだよ。紅茶だけじゃなくてコーヒーも緑茶も淹れるの上手いんだぞ?」
「器用なのね」
「腹立たしいほどにな。器用さ故になんでもできて・・・・・だから聖錬銀の加工もできるんだけど」
「聖錬銀っていうのはそんなに加工が難しいの?」
「難しいなんてものじゃない。気まぐれって言えばいいのかな・・・・・・加工するには時に1000℃近くに熱したり時に―100℃近くに冷やしたり、叩いたり撫でたり伸ばしたり縮めたり・・・・・しかもあれ気体になったり液体になったり、体積が膨張したり縮小したりもするからとにかく大変なんだよ」
「それ本当に金属なの?」
聖錬銀の奇想天外な加工方法や特性を聞いた飛鳥は本当に金属なのかと疑ってしまった。
「気持ちはわかるよ。まあそんな厄介な特性を備えた金属を加工してアクセサリーの形に留めることができるのは瑠々だけなんだよ。今も俺が持ってたアクセサリー全部を使って新しいのに作り替えてるけど・・・・・あれはもう人間業じゃないな」
(一体何を見たの?)
どこか遠くを見るかのような目で苦笑いを浮かべルシナナを目の当たりにした飛鳥は、シナナが何を見たのかが気になった。
「ついでに言うと、このディーンの素材になった神珍鉄っていうのも扱いが面倒だったらしい。小精霊達に手伝ってもらったとは言え結構苦労したそうだ」
「そう・・・・・・それだけ苦労したってことはやっぱりすごい力なんでしょうね」
「力・・・・・か」
シナナは飛鳥の言葉を聞いて、意味ありげに呟いた。
「どうしたのシナナくん?」
「・・・・・・俺にとってあのアクセサリーで具現した武器はただの兵器に過ぎない」
「え?」
「それは死物兵器であった俺が戦争という環境で戦ってきたからだろう。武器に思いを託さない・・・・・武器はただ敵を倒す力でしかないから。でも・・・・・・こいつは違うんじゃないのか?」
シナナはディーンを見上げながら言う。
「こいつには小精霊達・・・・・・"ラッテンフェンガー"の思いと願いが宿っている。こいつを従え、動かすことができるのは"奇跡の担い手"でなければならない」
「"奇跡の担い手"・・・・・」
それはこの
「私はこれを・・・・・・ディーンをただの力として捉えていた。だから・・・・・ダメだった?」
「確かにディーンを従えることができれば力を手にしたと言えるだろう。だがそれはあくまでも結果論。こいつが望んでるものはなんなのか・・・・・飛鳥ならもうわかってるんじゃないのか?」
「ディーンが望むもの・・・・・・私に欠けていたものは『思い』?」
「それがわかってるなら・・・・・・もう大丈夫だろ?」
シナナはニコリと微笑みを浮かべながら飛鳥に尋ねる。
「ええ。"ラッテンフェンガー"の小精霊達がそうしたように、私もディーンに『思い』を捧げる。ただの力でなく、私の新しい仲間になってもらえるように。私はディーンを理解し、ディーンに理解されるようになってみせる」
飛鳥は再びディーンに視線を向ける。先程までとは違い、その瞳には慈しみが感じ取れる。
「ありがとうシナナくん。おかげで前に進めそうだわ」
「どういたしまして。それじゃあ俺瑠々の様子見に戻る・・・・・頑張れよ飛鳥」
最後に飛鳥に激励の言葉を送り、シナナは瑠々の下へと向かった。
(本当にありがとうシナナくん・・・・・・さて、それじゃあ再開しましょう)
立ち上がった飛鳥は、そっとディーンに手を触れる。
「ディーン・・・・・・私にあなたのことを教えて頂戴」
「瑠々、作業の方はどうだ?」
「ん~・・・・・三分の一ぐらいは進んだかな~?」
シナナの問いかけに答える瑠々。ちなみに今は液体状になった聖錬銀に妙な機械で高圧電流電気を流しているところであった。
「・・・・・化学の実験でもしてるんじゃないかって光景だな」
「いやいや、これぐらいならまだ手ぬるいよ~?さっきは爆発しそうだったしその前にはなんか硫酸放出してたし~」
「・・・・・その時に居なくてよかった」
もはや奇想天外というレベルではない聖錬銀の特性に、シナナは頭を抱えたくなった。
「ところで飛鳥の方はどうだった~?」
「ああ・・・・・・もう大丈夫そうだよ」
「そっか~。それもこれもボクのデリシャス美味い紅茶飲んだからだな~」
「それ意味重複してるからな。まあ確かに気分を変えるにはよかったみたいだが・・・・・その妙な自信はどこから出るんだ?」
「そりゃまあボク天才だし~?」
「・・・・・・否定できないからタチが悪い」
瑠々の破天荒さにシナナは思わず頭を抱える。
「その反応・・・・・・やっぱ十六夜じゃねえな~。あいつだったら同意するか逆に天才自慢ずるし~」
「当然だ。俺は・・・・・シナナだからな。『虚野十六夜』はもうどこにも存在しない故人だ」
「そか~・・・・・・ま、しょうがねえよな~」
しょうがないと言いつつもどこか寂しそうにする瑠々。瑠々にとって『虚野十六夜』はそれほどまでに大切な夫であったということであろう。
「そういやシナナに聞きたいことがあんだけど~?」
「なんだ?」
「飛鳥のこと好き~?愛してる~?」
「・・・・・・直球だなおい」
「ボクは言いたいことははっきり言うタイプだからな~。それでどうなの~?」
「・・・・・・・好きだよ。愛してる」
シナナははっきりと自身の飛鳥に対する気持ちを口に出した。
「まああんだけ気をかけてりゃ当然か~。飛鳥いい子そうだし可愛いし年の割にはおっぱい大きいし~。げへへへへ~」
「その発言おっさんぽいぞ・・・・・」
「わざとわざと~。それよりも・・・・・告白しないの~?」
瑠々はシナナに尋ねる。口調は変わらないが表情は真剣そのものだ。
「・・・・・・できるわけないだろ。俺はいずれ消えるんだからな」
「その調子じゃあタイムリミットは短そうだね~。どれくらい~?」
「1年切ってる」
創造主の決闘において全ての攻撃を受け、さらに蘭々からの殴打と蹴り・・・・・それで残りのタイムリミットは1年を切ってしまったのだ。
「短か~。そうなると次蘭々と対峙するとさらに縮むだろうな~。ゲーム終わる頃には残り数日ってことも・・・・・いや、それはまだいいほうか。ゲーム中にタイムアップてことも考えられるね~」
「・・・・・・そんなことわかってるさ」
「だから告白しない?臆病だね~・・・・・それって飛鳥のためじゃなくて自分のためじゃん」
「・・・・・・・」
瑠々の言葉に返事を返さないシナナ。それは図星であるからだろう。
「まあ、そのへんのことは私は部外者だからあんまり口出ししないけど~」
(あんまり・・・・・・ね)
瑠々はシナナに見られぬよう、何かを企むかのような笑みを浮かべた。
今回は説明なしです
次回もまたお楽しみに!