問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~   作:shin-Ex-

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今回はとうとう飛鳥さんが・・・・・・

それでは本編どうぞ


気づいた想い

「なぜだぁぁぁぁぁぁ!!十六夜!十六夜ぃぃぃ!!」

 

「おいおい・・・・・・またやってんのかよ」

 

「ええ。よほど彼がいなくなったことがショックのようね。私もあの女の子がいなくなってショックだったのに・・・・・・アレを見てたら冷めちゃったわ」

 

展示物を狂ったように切りつけまくる蘭々を見ながら、ヴェーザーとラッテンは呆れたように言う。

 

「それほどあいつのことを愛していたってことか・・・・・・俺だったらあんな重たい愛受け止めきれねえがな。あの男もそう思ったから逃げ出したんじゃねえか?」

 

「それはないわ」

 

ヴェーザーの言葉に、ペストが忌々しげな表情を浮かべながら答える。

 

「あの偽りのハーメルンの鉄人形まで消えいた。つまりあの二人を連れ去ったのは・・・・・」

 

「奴らというわけね・・・・・・忌々しいわ」

 

「だな。だがまあ、過ぎたことをうだうだ言っても仕方ねえだろ。ゲーム再開したら出てくるかもしれねえんだからその時に叩けばいい」

 

「そうね。今度こそあの子を手中に収めてみせるわ」

 

ラッテンは飛鳥のことを思い浮かべてクスリと笑みを浮かべる。

 

「それよりも俺が心配なのは・・・・・・ゲーム再開まで生きていられるかどうかだな。あいつ下手すると俺達にも斬りかかってくるんじゃねえか?」

 

「否定できないわね。私たちじゃ彼女の足元にも及ばない・・・・・・攻撃してきたら殺されるでしょうね」

 

狂乱状態の蘭々がいつ自分達が殺されるかわからない。ヴェーザーとラッテンは不安に駆られた。

 

「確かにそうなったら面倒ね・・・・・でも大丈夫よ」

 

「なんでそんなこと言えんだマスター?」

 

「彼女・・・・・私達に近づかず、あの場からほとんど動いていない。狂ってるように見えるけど一応最低限の理性は保ってるのよ」

 

ペストの言うとおり、蘭々が剣で傷つけているのは自身の半径3m以内にあるものだけ。そこから外には出ようとしていない。一応はペスト達を傷つけないようにと気遣っているのだ。

 

「俺達気遣いながら狂ってるってことか・・・・・・器用なこった」

 

「そうね・・・・・・私達に剣を振るわないのならそれでいいけれど」

 

「まあ、好きにやらせておきなさい。ゲームが再開したら存分に働いてもらうんだから」

 

「だな」

 

3人は蘭々を一瞥すると、その場から離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあはあはあ・・・・・・」

 

何時間展示物を切りつけていただろうか、肩で息をする蘭々はようやく剣を鞘に収めた。

 

「なんでだ十六夜。なんでお前は私から離れる?」

 

ツーと、蘭々の頬に涙が流れる。

 

「やっぱり私よりもあの人が・・・・・・・姐さんを愛しているというのか?」

 

蘭々は自身のたった一人の肉親であった姉の姿を脳裏に浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう~・・・・・・・やっぱり外の空気は美味しいね~。飛鳥もそう思わない~?」

 

「そうね。夜風も気持ちいいし」

 

ゲームが休止期間に入って三日目の夜、飛鳥は蘭々に誘われて外に出てきていた。

 

なお、この場にシナナはいない。飛鳥は誘おうとしていたのだが、瑠々が女の子同士で話がしたいからと拒否したのだ。

 

試練(ゲーム)初めて三日たったけどどう~?順調?」

 

「ええ。あと少しでディーンを仲間にできそうだわ」

 

「それは何よりだね~」

 

「そういうそちらはどうかしら?」

 

「ほぼ完成してるよ~。あとちょっと仕上げするだけってところかな~」

 

互いに進捗を報告しあう飛鳥と蘭々。どうやら二人共順調すぎるほどに順調なようだ。

 

(たったの三日で後一歩のところまで来るなんて・・・・・飛鳥は本当に"奇跡の担い手"に相応しい子だね~。でもまあそれはともかくとして・・・・・・どう切り出したものかな~?)

 

瑠々はどう話を切り出そうかと考えを巡らせる。

 

瑠々が飛鳥を連れ出した理由・・・・・それはシナナの話をするためであった。

 

瑠々はシナナが飛鳥に好意を寄せているにもかかわらず関係を進展させようとしていないのを見かねて、ならば飛鳥の方の背を押してやろうと考えているのだ。なお、飛鳥がシナナの事を無意識ながら好いていることはすでに把握している。

 

「・・・・・ねえ瑠々。聞きたいことがあるのだけれどいい?」

 

どうしたものかと瑠々が考えていると、先に飛鳥が声をかけてきた。

 

「ん?なに~?ボクの答えられる範囲のことなら答えてあげるよ~」

 

「・・・・・・蘭々っていう人のことを教えて」

 

飛鳥は嫌に神妙な面持ちで瑠々に尋ねる。

 

「おや意外~。てっきり虚野十六夜の事を聞かれると思ったんだけどな~。シナナがいない今なら色々聞き放題だし~」

 

「確かに虚野十六夜のことも気になるといえば気になるけれど・・・・・・彼はシナナくんで虚野十六夜はもう存在しないのでしょ?だったらあまり聞いても意味はないと思って」

 

「ふうん・・・・・まあその通りだね~。あいつはもう虚野十六夜じゃない。雰囲気とか態度、性格には確かに二次通ったところはあるけどそれでもあいつはシナナだからね~。私もそれは実感してるよ~」

 

瑠々は誰よりも虚野十六夜に近しい存在だった。そんな彼女だからこそわかっているのだろう。シナナと虚野十六夜は別人であり・・・・・彼女の愛した虚野十六夜は存在しないということを。

 

「確かに面影はあるけどそれでも別人。ボクはそう割り切れてる。まあ・・・・・あの子は違うみたいだけど~」

 

「あの子?」

 

「私の妹・・・・・・・蘭々のことだよ」

 

瑠々は儚げな表情を浮かべながら蘭々の・・・・・自分の妹の名を口にした。

 

「妹?蘭々って人はあなたの妹なの?」

 

「うん。蘭々は私の4つ下の妹なんだよ~。可愛い娘でね~・・・・・昔から私と十六夜のあとをくっついてきてたんだ~」

 

「ということは虚野十六夜とも親交はあったということね」

 

「親交どころじゃないよ~。蘭々は十六夜の事を好いてたからね~。そしてだからこそあんな状況になっちゃったわけだけど」

 

「あんな・・・・・状況?」

 

シナナと蘭々の間にあったことを知らない飛鳥は、その状況というのも把握していないようだ。

 

「蘭々は今でもシナナを虚野十六夜だと思っていて、虚野十六夜を我が物にしようとしているっていう状況さ。だからこそ、シナナはシナナとして蘭々と戦う道を選んだんだ。シナナは蘭々の気持ちを受け取れないからね~」

 

「そう・・・・・なの」

 

飛鳥はどこか悲しげな表情を浮かべて俯いた。

 

「んにゃ~?なんでそんな悲しそうな顔してるの~?」

 

「・・・・・蘭々の気持ちを考えたらいたたまれなくなって。きっと彼女は虚野十六夜を失って酷く苦しい思いをした。そしてようやく虚野十六夜と再会できたのに・・・・・彼はもう虚野十六夜ではなくシナナくんだった。そしてそのシナナくんは蘭々と戦う道を選んで・・・・・どんな結果になったとしても蘭々が心から救われる事はない。そう思うと・・・・・」

 

「いたたまれないってこと~?」

 

「・・・・・・ええ」

 

どんな結果になろうとも、蘭々は求める者・・・・・虚野十六夜を手にすることができない。蘭々自身はシナナの事を今だに虚野十六夜だと思っているようだが・・・・・・それでも現実として彼はシナナであり、蘭々とていずれはその事を思い知らされるかもしれない。

 

そんな蘭々を思い・・・・・・飛鳥は同情しているのだ。

 

「飛鳥は優しいね~。敵である蘭々の事をそんなに思ってあげられるなんて。でも・・・・・こんなこと言うべきではないかもしれないけど君がそう思ったところで・・・・・何も変わりはしないよ。何も・・・・ね」

 

「・・・・・わかってるわ。そんなことぐらい私だって・・・・・わかってる」

 

「そっか・・・・・それならいいけどね~。さて、この話はここまでにしようか~。あんまり暗くなりすぎるのボクやだし~」

 

口ではそういう瑠々であったが、実際の理由は少し異なっていた。たとえ何があろうが蘭々は瑠々にとって大切な妹・・・・・だからこそ、これ以上彼女の話をしたくないのだ。

 

蘭々は・・・・・シナナの倒すべき敵となっているから。

 

「・・・・・そうね。この話はここまでにしましょう。聞かせてくれてありがとう瑠々」

 

「どういたしまして~。それにしても今日の月は綺麗だね~・・・・・あ、誤解しないでね~。これ告白とかそういうのじゃなくて純粋な感想だから~」

 

瑠々は空気を変えるために月を見上げながらおどけたようにそう言った。

 

ただ・・・・・・それが引き金になることは瑠々には知る由もなかった。

 

「告白?何を言っているの?」

 

飛鳥は瑠々の言っている告白というのがどういう意味なのかわからずに首を傾げる。

 

「飛鳥知らないんだ~。『月が綺麗』っていうのは愛の告白と同義なんだよ~」

 

「・・・・・・え?」

 

その時、飛鳥の脳裏にある出来事が思い返された。

 

『月が・・・・・綺麗ですね』

 

それは箱庭に召喚されたとき、シナナに言われた言葉だった。

 

「飛鳥~?どしたの~?」

 

「・・・・・・」

 

様子がおかしくなった飛鳥に瑠々が声をかけるが、それは飛鳥の耳には届いていない。今飛鳥の脳内ではあの時の出来事、あの時のシナナの言葉が何度も繰り返されていた。

 

そして数秒して・・・・・

 

「ッ~!!」

 

飛鳥は顔を真っ赤にさせた。

 

わかったのだ・・・・・・わかってしまったのだ。あの時なぜシナナが月も出ていないのにあんな言葉を自身に投げかけたのかを。

 

(ちょ、ちょっと待って。それじゃあ今までのシナナくん態度や言葉って・・・・)

 

そしてそれに連鎖するように、今まで疑問に思っていたことも全て理解してしまった。シナナが飛鳥に言った賛美の言葉やからかっているかのような態度を自分だけにしてきたのは全て好意からくるものであったということに。

 

(シナナくんが・・・・・シナナくんが私のことを!?)

 

「お~い飛鳥~?」

 

「う・・・・・」

 

「う?」

 

「ううぅ~・・・・・・」

 

全てを察した飛鳥は、頭を抱えてその場に蹲ってしまった。

 

「う、嘘でしょ?嘘でしょ?シナナくんが私のことをす、すすすす・・・・・」

 

「好きだなんて?」

 

「ッ~!?」

 

飛鳥の様子を見てある程度のことを把握した瑠々が一言確信に迫ることを言うと、飛鳥は悶絶してしまった。

 

「はは~ん、なるほどね~。だいたいわかったよ~。飛鳥はシナナに言われたことあるんだね~・・・・・『月が綺麗』だって」

 

「い、言わないで!思い出すだけで恥ずかしいんだから!」

 

からかうように言う瑠々に対して飛鳥が抗議するが、顔が羞恥で真っ赤なため恐ろしさよりも可愛らしさが目立ってしまっていた。

 

「まあまあ、そんなに恥ずかしがらないで~。というかさ・・・・・飛鳥嬉しくないの~?」

 

「・・・・・・え?」

 

「いや、だから~。シナナに告白されたって知って嬉しくないの~?」

 

「・・・・・・・」

 

瑠々に言われ、飛鳥は考えてみた。

 

あれが告白だと、そしてこれまでの行動や態度、言葉が好意からくるものだとわかって自分はどう思ったのか。

 

そしてその答えは、自分でも不思議なほど簡単に出てきた。

 

「嬉・・・・しいわ。すごく・・・・・すごく嬉しい」

 

喜び・・・・・・それが飛鳥の心を埋め尽くす感情であった。そしてその感情は、もう一つの事実も導き出した、

 

(まさかこんなところで・・・・・・・春日部さんの言っていた答えが見つかるなんて)

 

かつて飛鳥は耀に問われた。シナナの事をどう思っているのか・・・・・・シナナとどうなりたいか。

 

その時の飛鳥は答えることはできなかった・・・・・答えがわからなかったからだ。

 

だが今はその答えははっきりしている。

 

(私は・・・・・・シナナくんが好き。シナナくんと・・・・・恋人同士になりたい)

 

それが飛鳥の答えだった。

 

「・・・・・ねえ飛鳥~。飛鳥さぁ・・・・・・シナナのこと好き?」

 

飛鳥の心境を知ってか知らずか、瑠々がニコリと微笑みを浮かべながら尋ねた。

 

「ええ・・・・・好きよ。シナナくんのことが大好き」

 

飛鳥は取り乱すことなく、キッパリと答えた。

 

「そっか~・・・・・自分で気づいてくれて何よりだよ~」

 

「どういう意味?」

 

「もともとここに連れ出したのは飛鳥にそれを自覚してもらおうと思ったからでね~。両想いだっていうことはとっくにわかってたから~」

 

「そうなの・・・・・よくわかったわね」

 

「いや、あれは見てれば一目瞭然だよ~?今の今まで気づかなかったの飛鳥だけじゃない~?」

 

「・・・・・私鈍かったのね」

 

今更になってようやく自分が鈍かったのだと理解した飛鳥は、流石にショックだったのかわかりやすく落ち込んでいた。

 

「それはともかくとして・・・・・・ここからはボクのアドバイスだ」

 

「アドバイス?」

 

「そ・・・・・・後悔しない選択をしなよ~」

 

「え?」

 

「何が起きるかわからない・・・・・・・人生なんてそんなもんだからね~。それこそ・・・・・ボクみたいになんお前触れもなく死んじゃうことだってあるんだ」

 

瑠々は儚げな笑顔を浮かべてそう言う。

 

「・・・・・やっぱり貴女もう亡くなってたのね」

 

「あ、気づいてたんだ~」

 

「ええ。シナナくん・・・・・・貴女の話になったときいつも様子がおかしかったからもしかしたらって思って」

 

瑠々の話が出るとき、シナナの様子は明らかにおかしかった。今は虚野十六夜ではないとはいえ、それでも虚野十六夜の記憶や経験は継いでいるからでだろう。そんなシナナの様子から、飛鳥は瑠々が故人なのだと気がついていたのだ。

 

「そっか~」

 

(この様子じゃあボクが死んだ理由は知らないみたいだね~・・・・・・・ま、それは知らないほうがいいことだから教えないでおいたほうがいいか。今は関係ないし)

 

瑠々が死んだ理由というのは相当に酷いものであるのだが・・・・・それは知らなくてもいいと判断し、瑠々は話さないでおくことにした。

 

「とにかく、人間なんていつどこで死んじゃうかわからない。だから後悔はしない選択をしたほうがいい・・・・・・・わかった~?」

 

「ええ・・・・・肝に銘じておくわ」

 

飛鳥は瑠々の言葉をしっかりと刻み込んだ。そしてそれは・・・・・・飛鳥に一つの決意を固めさせることとなる。

 

ただ・・・・・

 

(まあ・・・・・飛鳥より先にシナナのほうが時間切れになっちゃうだろうけどね~)

 

先程の瑠々の言葉・・・・・・それに当てはまるのはどちらかというとシナナの方であった。

 

タイムリミットはもうあまり長くないシナナ・・・・・・飛鳥が死ぬよりも先に消滅することになるだろうことは明らか。

 

そしてその時に・・・・・シナナが何をするのか瑠々は察してしまっている。

 

(結局ボクのしたことは哀しみを助長させただけかもしれない・・・・・・だとしたら)

 

「我ながら・・・・・・業が深いね~」

 

「え?今なんて?」

 

瑠々がボソっと呟いたその言葉を聞き取れなかった飛鳥は聞き返した。

 

「・・・・・なんでもないよ~。それよりも話は終わったことだし戻ろっか~。ボクはともかく飛鳥はあまり身体を冷やさないほうがいいし~」

 

「そうね。戻りましょう」

 

瑠々に促され、飛鳥は中へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

シナナへの想いをとうとう自覚した飛鳥

 

果たして二人の関係はどうなるのであろうか・・・・?




今回は話の内容からして飛鳥の心情を語るべきかもしれませんがあえて瑠々の死因についてお話します

瑠々は事故に見せかけて軍に殺害されています

理由は虚野十六夜に必要以上に力を与えないためです

虚野十六夜があまりにも強くなりすぎると軍にとって都合が悪いと判断され、アクセサリーを作れる瑠々を事故に見せかけて殺害したということです

なお、このことは虚野十六夜は気がついていますが、復讐しても何も残せず、守るべきものも守れなくなってしまうと考えたため仕方がなく復讐を断念しております


それでは今回はここまで

次回もまたお楽しみに!
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