問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~   作:shin-Ex-

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今回は飛鳥さん対ラッテンさんのお話がメインです

それでは本編どうぞ


飛鳥の"力"

「とうとうだな」

 

「ええ、そうね」

 

いよいよ訪れるゲーム再開の時。外に出たシナナと飛鳥は魔王達によって変割ってしまった町並みを目にする。

 

しかし・・・・それでは二人は微笑みを浮かべていた。

 

「これってやっぱり魔王の?」

 

「だろうな。こいつはハーメルンの街・・・・・つまり奴等の力が最も発揮できるフィールドってことだ」

 

「・・・・・手強そうね」

 

相手の力が増大している可能性があると知った飛鳥がそう呟く。

 

だが・・・・・

 

「不安か飛鳥?」

 

「・・・・・いいえ。むしろ望むところよ」

 

飛鳥は不安に陥ってなどいなかった。それだけディーンを・・・・・今の自分の力を信じているのだ。

 

迷いなどいらない・・・・・ただ戦う。今の飛鳥が抱く思いはそれだけだった。

 

「はははっ、頼もしいな。それじゃあ・・・・・行こう」

 

「ええ。あとでまた会いましょ」

 

そう言って二人は別々の場所を目指して行動を開始した。各々の戦うべき相手の下へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ・・・・・まさかあんな化け物が名無し(ノーネーム)風情のコミュニティに居るなんて・・・・・」

 

ラッテンは表情を曇らせながら壁に手をつく。

 

ラッテンは先程までレティシアと対峙していた。レティシア相手なら自分ひとりで事足りると侮っていたが彼女の持つ切り札、"龍の遺影"によって追い詰められてしまい、参加者を盾にしてどうにか逃げ出してきたのだ。

 

「ふふ・・・・・でもまだ勝算はある。シュトロムと操った参加者達を盾にしてタイムアップを狙えば・・・・・」

 

「随分と余裕がないわね」

 

「えっ?」

 

突然ラッテンに投げかけられる女性の声。

 

ラッテンが声のする方へとり向くとそこには・・・・・

 

「待っていたわ・・・・本物の"ネズミ捕り道化(ラッテンフェンガー)」

 

飛鳥の姿があった。

 

「貴女・・・・・今まで一体どこに?」

 

飛鳥の姿を目の当たりにしたラッテンは驚きを顕にしながら尋ねた。

 

「"ラッテンフェンガー"のコミュニティに匿われていたのよ・・・・・貴女を倒す力を手に入れるために」

 

「私を・・・・倒す?あなた一人で何ができると言うの!来なさいシュトロム!」

 

「BRUUUUM!!」

 

ラッテンが呼ぶと旋風を纏うシュトロムが二体出現した。

 

「・・・・・私は一人じゃない。支えてくれる仲間が・・・・シナナ君がいる。だから私は負けない!力を貸して"ラッテンフェンガー"!!」

 

祈るようにしばし目を閉じた後、飛鳥はギフトカードを翳す。

 

そして・・・・

 

「来なさいディーン!!」

 

"ラッテンフェンガー"が創りし最高傑作・・・・紅の巨人ディーンを召喚した。

 

「な・・・・・それは・・・・」

 

「さあ・・・・・格の違いを見せつけてあげなさい!」

 

ドゴン!!

 

ラッテンが驚愕し、硬直している隙に飛鳥はディーンに指示を出し、ディーンはその巨腕をもって身近にいたシュトロムの体を砕いた。

 

(なんて攻撃力・・・・・でも!)

 

体を砕かれてはいたがまだ動くことはできたようだ。シュトロムはがっしりとディーンの体を掴んだ。

 

「もらった!遠距離から押しつぶしてしまいなさい!」

 

動きを封じている隙にもう一体のシュトロムが跳躍し、風でディーンを押しつぶそうとするが・・・・・

 

「甘いわ!」

 

「なっ!?」

 

ディーンはその腕を伸ばし、逆にシュトロムを粉砕し、そしてそのシュトロムの破片がラッテンに降り注ぐ。

 

「ふふっ、これで敵の手に落ちただなんて恥は返せたわ」

 

「伸縮自在の腕・・・・ですって?」

 

降り注いだシュトロムの破片によって大怪我を負ってしまったラッテンはよろめきながら呟く。

 

「ディーンはね、質量を自由に増減することができる鉱物でできた鉄巨人・・・・・だそうよ。"ラッテンフェンガー"のギフトゲームに挑んで私が服従させたの」

 

「新珍鉄の魔神・・・・・支配のギフトで強化して操っているというわけね。シュトロム程度じゃ相手にならないわけだわ」

 

ラッテンは冷や汗を掻きながら苦笑いを浮かべる。

 

「そこで一つあなたに提案があるのだけれど・・・・・・一曲演奏していただけないかしら?」

 

「・・・・なに?」

 

突然の飛鳥の提案にラッテンは訳が分からずにキョトンとする。

 

「私達は以前にあなたに支配されたネズミに屈辱を味あわされているの。その貸しも返していただくわ」

 

「なるほど。私の力でその巨人の支配権を奪うことができれば私の勝ち。貴女の支配が上回れば貴女の勝ちということね」

 

「ええ。どうかしら?」

 

飛鳥は不敵な笑みを浮かべる。

 

「・・・・・いいでしょう。それでは奏でましょう。幻想曲"ハーメルンの笛吹き"・・・・・どうかご清聴のほどを」

 

ラッテンはフルートを咥え、曲を演奏し始めると、辺り一帯に美しい音色が響き渡った。

 

(・・・・・なんて美しい音色なのかしら)

 

飛鳥はその音色に思わず聞き惚れていた。

 

良家の生まれである飛鳥はこれまでに音楽を聞く機会はいくらでもあった。しかしラッテンの奏でるそれはこれまでに聞いたどの音楽よりも優美で感動的で、まるでこの世のものではないかとさえ思える程に素晴らしいものであった。

 

(私を支配する為の曲ではないはずなのに・・・・・こんなにも心に染み渡る。でも・・・・・それでも私は屈したりはしない)

 

音に流されそうになりながらも飛鳥は心を強く保った。

 

ここで屈してしまったら・・・・せっかく得た力をふいにしてしまう。そしてなにより・・・・自分を信じてくれた仲間であり最愛のシナナに会わす顔がない。

 

故に飛鳥は・・・・・決して美しき調べに屈することはなかった。

 

そして・・・・・・

 

「・・・・あ~あ。私の演奏の負けね」

 

数分ほどして、ラッテンは演奏は終わりを迎えた。

 

「まさか微動だにしないなんて・・・・・自信はあったのだけれど」

 

笛がラッテンの手から滑り落ち、ラッテンは崩れ落ちるように地面に座り込んでしまった。

 

「・・・・いいえ、とてもいい演奏だったわよ」

 

飛鳥はあまりの感動から数滴の涙を流していた。

 

「ありがとう。ご清聴感謝します・・・・・・申し訳ありませんマスター。私はここまでのようです」

 

飛鳥に感謝を述べたあと、ラッテンは悲しそうに自らの主に対して謝罪の言葉を口にする。

 

そして・・・・・先ほどの演奏で力を使い果たしてしまったためにか、ラッテンの身体は消え始めていた。

 

「最期に聞きたいことがあるのだけれどいいかしら?」

 

「なに?」

 

「あなたと一緒にいなくなったあの子はどうしてるのかしら?」

 

ラッテンは最期に興味本位でシナナのことを飛鳥に尋ねてみた。

 

「シナナくんも私とと共に"ラッテンフェンガー"のコミュニティに匿われていたわ。そして今は・・・・・蘭々と戦っているところでしょうね」

 

「そう・・・・・・こんなことを言うのは気が引けるのだけれど彼は蘭々には勝てないわよ。蘭は私はおろかマスターの力をも遥かに上回っている。彼女に勝てる存在はこの箱庭においてもほんのひと握りしか存在しないわ」

 

ラッテンは万に一つもシナナが勝つことはありえないと思っていた。それほどまでに蘭々の実力は高いということであろう。

 

「・・・・・蘭々が強いということは知っているわ。シナナくんに聞いたもの。でも・・・・・・それでも私は確信している。シナナくんは・・・・・絶対に勝つわ」

 

「・・・・・なぜそんなことが言い切れるのかしら?」

 

「だって・・・・・・約束したもの。絶対に勝つって。だから・・・・・シナナくんは勝つに決まっているわ」

 

飛鳥は信じていた。たとえ蘭々がどれほど強大な力を持っていようともシナナが負けることはないと。シナナは必ず勝利をその手にしてみせると・・・・・・・ただ信じていた。

 

「・・・・・・ふふふっ、随分と彼を信頼しているのね」

 

「当然よ。私は・・・・・シナナくんを愛しているもの」

 

(愛している・・・・・ね。可哀相に。蘭々に勝てたとしてもそう遠くない未来に別れが来るというのに)

 

シナナを愛していると、穏やかな表情で言う飛鳥を見て、ラッテンは少し同情していた。

 

ラッテンは蘭々から聞かされていた・・・・・・シナナにはタイムリミットが存在することに。それ故に、二人の別れが近いことを察していた。

 

(まあいいわ。共にいられる時間が少ないというのなら・・・・・・)

 

「・・・・・・せいぜい、幸せになりなさい」

 

ラッテンは笑みを浮かべながら飛鳥にそう告げると同時に、完全に消滅してしまった。

 

「・・・・・・ありがとう。そしてさようならラッテン」

 

飛鳥はラッテンに別れの言葉を述べた後、その場をあとにした。




今回も説明は特にありません

それでは次回もまたお楽しみに!
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