問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~ 作:shin-Ex-
やはり少しモノ悲しくなりますね・・・・・・
それでは本編どうぞ!
「来たか蘭々」
「十六夜・・・・・」
蘭々と戦った場所でシナナが佇んでいると、蘭々が姿を現した。
「ここで待っていれば来ると思ったよ」
「十六夜・・・・・・・なんでだ?どうして私を拒絶する?」
蘭々は泣き出しそうなほど悲しい表情でシナナに尋ねた。
「私の何がいけない?何が悪い?やっぱり私よりも姉さんのほうがいいのか?姉さんのほうが好きなのか?」
「蘭々・・・・・」
「私じゃダメなのか?私じゃ・・・・・・姉さんの代わりにはなれないのか?答えてくれ十六夜」
「・・・・・・答えならもう何度も言っている。俺はシナナでお前の愛する虚野十六夜じゃあない。虚野十六夜はもうどこにも存在しない・・・・・・それが答えだよ」
あくまでも自分は虚野十六夜ではないと、虚野十六夜はもうどこにも存在しないと言うシナナ。
「また・・・・・・それか」
何度も何度も同じことを言われ、その度にそれを否定してきた蘭々。
だが・・・・・とうとう蘭々はそれを認めた。
「わかった・・・・・・よくわかった。お前は既に十六夜でないのだな」
「そうだ。だから・・・・」
「だが!その身体は・・・・・・虚野十六夜のものだ!だったら私は・・・・・ここでお前を倒し!拘束し!魂眠剤を飲ませ眠らせ続ける!そうすれば私はずっと一緒に・・・・ずっと・・・・・!!」
シナナがもう虚野十六夜でないと認めつつも、それでもシナナの身体が虚野十六夜であるというのは事実。
魂眠剤で眠らせ続けることでずっと虚野十六夜と共にあろうと考えた蘭々は、そのためにこの場でシナナを倒そうと剣を抜いた。
「やはり戦いは避けられないか・・・・・・・悪いがお前の思い通りになるわけにはいかないんだ。だから俺は・・・・・お前を殺す」
シナナは決意を秘めた目で蘭々を見つめ、そしてアクセサリーを取り出し・・・・・・それを具現させる。
「
現れるは蘭々を殺すために作られし剣。蘭々の想いを砕き、滅する・・・・・・・想滅の剣。
「な、なんだ・・・・それは?そんな武器・・・・・私は知らない」
シナナが手にした剣を見て、蘭々はその表情を驚愕に染める。
一見するとなんの変哲もない、オーソドックスな形の剣だ。だが、蘭々は戦いの中に身を置くがゆえに気がついていた。
その武器の異様さ・・・・・・秘められたあまりにも強大な力に。
「これはお前を倒すために俺のすべてのアクセサリーを使って・・・・・・・瑠々に作ってもらった剣だ」
「瑠々・・・・・だと!?馬鹿な!ありえない!だって姉さんは死んで・・・・・」
「それはお前や俺も同じだ。瑠々は亡霊となってこの箱庭にいる・・・・・・お前が協力している"グリムグリモワールハーメルン"の敵、"ラッテンフェンガー"の一員としてな」
「"ラッテンフェンガー"の・・・・・?」
「あの紅の巨人だって瑠々が製作に関わっていたんだ。その証拠に瑠々が使っていた紋章があったんだが・・・・・それに気がつかないほどお前には余裕がなかったんだな」
瑠々の妹である蘭々は当然彼女が使っていた紋章のことは知っている。だが、その紋章がディーンに刻まれていたにも関わらず、それに気がつかなかったのは・・・・・・それだけ今の蘭々の視野は狭まってしまっているということにほかならない。
「姉さんが作った武器・・・・・・姉さんも私の敵となるというのか?姉さんも十六夜を求めているのか?」
「そうじゃない。瑠々が俺を求めないのは俺がもう虚野十六夜でないことを、そして虚野十六夜がどこにも存在しないことも認めているからだ。そしてお前を倒すための武器を作ったのは・・・・・姉としてお前を憂い、お前を止めたいと願っているからだ」
「私を・・・・・止めるだと?」
「・・・・・今のままでは蘭々に救いはない。蘭々を救うには・・・・・殺すしかない。だから瑠々は俺に武器を作ってくれた。本当はあいつだって苦しいはずなのに・・・・・それでもだ。だから俺は・・・・・瑠々の思いのためにもここでお前を殺す」
シナナは剣の切っ先を蘭々へと向ける。
「いくぞ蘭々・・・・・・これで終わらせる」
この武器が使えるのは一度きり。つまり蘭々を倒せる機会はこの場きりということだ。
そして武器があったとしても蘭々との力の差はあまりにも大きい・・・・・ゆえにシナナがとった策は一撃必殺であった。
長引かせれば蘭々よりも弱いシナナでは勝ち目など一切ない。勝つためには一撃に全てを込める以外シナナにはあんが得られないのだ。
「十六夜・・・・・そうだな。これで終わらせる・・・・・そして二人だけの時間の始まりだ十六夜!」
「蘭々!」
蘭々は剣を抜き、シナナへと振りかざす。それとほぼ同時に、シナナも剣を振るう。
交差する二人の剣。超高速で繰り出される斬撃が炸裂する。
「・・・・・・やっぱり強いな蘭々」
ボトリという音がして、剣を握ったシナナの右腕が地面に落ちる。握られた剣は刀身がボロボロとなり、二度と使うことはできないことは明白だった。
そして・・・・・シナナの右腕が落ちたその直後。
「・・・・・・なんでだ?どうして・・・・・私は・・・・・」
蘭々の身体は・・・・・空を仰ぐように倒れ伏した。その身体には鋭い裂傷が刻まれ、鮮やかとさえ思わせるほどの鮮血が流れる。
「俺の・・・・・勝ちだ」
シナナは落ちた右腕を拾い上げ、それを切断部につける。死物の持つ絶大な治癒能力で腕は何の違和感なく接合された。
「いざ・・・・よい。いざよ・・・・い・・・・」
蘭々は十六夜の名を口にしながら、シナナに向かって手を伸ばす。即死には至らなかったものの、蘭々の命は風前の灯。尽きてしまうのも時間の問題であろう。
「蘭々・・・・・・・最期に話しておきたいことがある。よく聞いてくれ」
シナナは表情を哀しみに染め・・・・・・語り始めた。
「虚野十六夜は・・・・・・お前を愛していたよ」
「・・・・え?」
「瑠々の妹だからじゃない。瑠々の代わりとしてじゃない・・・・・・蘭々という一人の女を虚野十六夜は愛していた」
それは間違いなく事実であった。生前虚野十六夜であり、その記憶と経験を継いだシナナはそれを知っていたのだ。
「だったら・・・・・だったらどうして?どうして私を求めて・・・・・くれなかった?」
「・・・・・・虚野十六夜はお前に想いを告げようとは思っていた。そのタイミングを図っていたんだが・・・・・想いを告げる前に戦死し、そして自身を死物兵器に変えた。その時虚野十六夜がその人格を抹消し、お前への想いをも断ち切ってしまったのは・・・・・お前の為だった」
「私の・・・・・為?」
「死んでしまった人間を好きになってはならない。愛してはならない。蘭々は生きているのだから・・・・・生きている人間を愛して欲しい。そう願ったからだ。だが結局・・・・・・それがこの事態を引き起こしてしまった」
もしも彼が虚野十六夜の人格を捨てず、蘭々を愛し続けていたのならこのような悲劇は起きなかったであろう。
それはもはや仮定の話だが・・・・・・それでもそれが現実であった可能性も確かにあったのだ。
「ふざ・・けるな。私の気も知らない・・・・で、勝手になに・・・・を・・・・」
「そうだな・・・・・・勝手だった。そのせいでこんなことになってしまったんだ。許してもらえないのはわかってるけど・・・・・・ごめんな蘭々。本当に・・・・・・すまなかった」
「い・・・・・ざよい」
涙を流しながらシナナに向かって手を伸ばし続ける蘭々。
だが、シナナはそれを手にすることはない。そんな資格は・・・・・・シナナにはない。
彼は・・・・・・虚野十六夜ではないのだから。
「・・・・・・さようなら蘭々。せめて黄泉への良き旅路を」
最期にシナナは蘭々を一瞥し、その場を去っていった。
薄れゆく蘭々の意識。既に目も見えず、かろうじて音が聞こえるだけ・・・・・もう間もなく命が尽きるであろう。
そんな蘭々の前に、一人の少女が現れる。少女は蘭々の頭を自身の膝の上に乗せる。
「・・・・姉・・・・さん」
蘭々はか細い声で呟く。
「・・・・わかるの~?」
少女・・・・・瑠々は少々驚いた様子だ。今の蘭々の状態では気がつかないと思ったようだ。
「わかる・・・・・よ。だって・・・・・姉さん・・・・・だから」
「ふふっ、何それ~」
クスリと微笑みを浮かべ合う蘭々と瑠々。その微笑みは、とても穏やかだ。
「姉さん・・・・・・ごめん」
「何が~?」
「私・・・・・・十六夜が好き。姉さんと十六夜は・・・・・・夫婦なのに私・・・・」
「謝ることないよ~。人を好きになる気持ちは仕方ないからね~・・・・・・むしろ謝るのはボクの方だよ~。蘭々の気持ちを知っていながらボク・・・・・・十六夜と結婚しちゃったから~」
「姉さんも・・・・・謝る必要ない。十六夜と同じくらい・・・・・・姉さんも好き。だから姉さんが幸せなら・・・・・それでよかった」
「・・・・・そっか~」
瑠々は蘭々の頭を優しく撫ではじめる。慈しむように優しく。
「姉さん・・・・・・私・・・・間違ってたの・・・・かな?」
「・・・・・ごめんね~。それはボクにもわからないんだ~」
蘭々のしたことが間違っているかは瑠々にはわからない。そもそも瑠々が蘭々を止めようとしたのは、間違っていると思ったからではなく、あのままでは救いがなかったと思ったからなのだ。
「姉さんでも・・・・・わからないことあるんだ。少し・・・・・・ホッとした」
「・・・・・・・実は私ボクも~。自分がわからないことがあるって結構ホッとするんだ~」
「変な・・・・・姉さん」
「そうだね~。変だね~」
「ふふっ・・・・・・姉さん。私・・・・・もう限界・・・・・みたい」
蘭々の声がさらにか細くなる。いよいよその時がきたのだ。
「蘭々・・・・・・もう眠りな~。ボクも少ししたらそっちに行くから・・・・・・待っててね~」
「う・・・・ん。待って・・・・るよ。姉・・・・さん」
最期の力を振り絞り、瑠々の頬に触れる蘭々。
そしてそれと同時に・・・・・・蘭々は息を引き取る。
「・・・・・おやすみ蘭々」
安らかに眠る蘭々の顔に、瑠々の涙の雫が数滴落ちた。
ソウメツノツルギについて
ソウメツノツルギは瑠々がシナナの持っていた全てのアクセサリーを使って作った最強の武器です
絶大な攻撃力を秘めていますがその代償にかなり脆く、たったの一度しか使うことができません
なお、漢字で書くと『想滅の剣』となり、これは蘭々の思いを滅するという意味です
それではこれにて失礼
次回もまたお楽しみに!