問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~ 作:shin-Ex-
それでは本編どうぞ
「!?そう・・・・・二人共ありがとう」
黒ウサギ、サンドラと対峙していたペストは突然戦いの手を止めてしまった。
なぜなら・・・・・・感じ取ってしまったからだ。仲間であるラッテンとヴェーザーが倒されてしまったことを。
(切り札の神格を切ったというのに・・・・・失策だったわ。最初から時間稼ぎなんてせずに攻めに転じていれば各個撃破なんて許さなかった。こうなったら仕方がないわね)
「・・・・油断しているつもりはなかったのだけれど、どうやら私はあなた達を甘く見ていたようね。仕方がないけれど・・・・・時間稼ぎはやめた。白夜叉だけを手に入れて後は全部・・・・皆殺しよ」
ゴオオォォォォ!!
突如として、ペストを中心にどす黒い風が巻き起こった。
「さっきまでの余興とは違う・・・・・これは触れただけでイノチを奪う死の風よ!皆・・・・・死んでしまいなさい!」
「しまった!」
ペストから放たれるシの風を目の当たりにした黒ウサギは叫び声をあげる。
死の風は街中に広がれば。ゲームの参加者たちを次々と飲み込み、死に至らしめてしまうだろう。
そう・・・・・・あくまでも街に広がれば。
「悪いけどさせないよ」
「なにっ!?」
死の風が街に降りるその前にシナナが割り込み、風を振り払ってしまった。既に死んでいるシナナにとって、死の風は恐るるに足らない。
「シナナさん!無事だったのですね!」
「まあなんとかな」
(本当は無事とはいかないのだが。今言うべきではないだろう)
蘭々との戦闘で相応タイムリミットを縮めてしまったのだが・・・・・それを今言ってしまえば戦闘に支障が出ると判断したシナナはこの場では隠すことにした。
「あなた・・・・・蘭々はどうしたの?」
ペストはキッとシナナを睨みつけながら尋ねる。
「俺が今この場にいるんだ・・・・・・答えは決まっているだろ?」
「・・・・・・彼女はあなたを本気で愛していたのよ?それなのに・・・・・・殺したの?」
「ああ、殺した」
ペストの問いかけに冷酷に答えるシナナ。だが、その目には悲しみが宿っていた。
「そう・・・・・・わかったわ。たとえ一時であっても彼女も仲間だった・・・・・仇を取らせてもらう!」
激昂を顕にしてシナナに攻撃を仕掛けようとするペスト。
だが・・・・・
「「させるか(ない)!!」
「ッ!?」
シナナに攻撃が届く前に、十六夜とデイーンを従えた飛鳥が乱入して妨げる。
「飛鳥!」
「ごめんなさいシナナくん。待たせてしまったかしら?」
「いいや・・・・ベストタイミングだよ」
互いに微笑みを向け合うシナナと飛鳥。
戦闘中だというのに・・・・・・そこだけどこか空気の色が違っていた。
「おい、黒ウサギ・・・・・・シナナの目には俺は映ってねえのか?おもいっきしスルーされたぞ?」
「あ、あはははは・・・・・ドンマイです」
一切触れられなかった十六夜の愚痴に、黒ウサギは乾いた笑い声をあげる。
「まあいいか。ともかく・・・・・・追い詰めたぜ魔王様」
十六夜をはじめとして、その場にいた全員がペストを見据える。
残る敵はペストだけ・・・・・・これこそが最後の戦いだ。
「追い詰めた?本当にそう思っているのかしら?さっきは防がれてしまったけれど死の風が街を包み、参加者が全滅する前に神霊であるこの私を討ち取れると思っているの?」
しかし、ペストは余裕を崩さなかった。この状況においてもまだ自身の方が優勢だと思っているようだ。
そんなペストに・・・・・黒ウサギが言い放つ。
「大丈夫ですよ。こちらには切り札があります。皆さんが居ればこのゲーム勝利できる・・・・・そう信じているからこそ私はこの切り札を切らせてもらいます!」
黒ウサギがギフトカードをかざすと、その場にいた一同が光に包まれる。
そして・・・・次の瞬間には彼等は月面にいた。
「な!?これって・・・・・」
「これぞ我々"月の兎"が招かれた神殿、"月界神殿チャンドラマハール"!!さあ、ここからは私達のステージでございます!」
「月ですって・・・・ありえない!ゲーム盤から出ることはルール違反のはずよ!」
思わぬ自体に声を荒げるペスト。そんなペストにシナナが冷静に語りかけた。
「ここは間違いなくお前のゲーム盤の枠内だよ。ただ・・・・・・少々高度が高すぎるようだがな。そうだろ黒ウサギ?」
「シナナさんのおっしゃるとおりです。私はただハーメルンの街の頭上まで天体を移動させただけでございますよ」
「ぐっ・・・・・そう。これがあなた達の切り札っていうわけね。でも・・・・構わないわ!ステンドグラスがすべて破壊される前にあなた達全員戦闘不能にしてしまえばいいだけよ!」
「「やってみな!!」」
迫り来るペストの猛攻を的確に捌き、隙を見て反撃するシナナと十六夜。戦局は互角のように見えるが・・・・・実際は二人の方が不利であった。
確かにハーメルンの街から離れたことによってペストの力は先程よりは弱体化している。しかしそれでも相手は神霊。二人の攻撃はいくつかペストにヒットするがほとんどダメージを与えられない。
「おいシナナ、お前武器どうした!」
普段は武器を具現して戦うにもかかわらず素手で戦うシナナに向かって十六夜が叫ぶ。
「話すと長くなる事情があってな・・・・・・全ロストしたんだよ」
「マジかよ!?それじゃあお前居ても居なくても同じじゃねえか!」
「事実かもしれないが言うな」
戦闘技術は高いといってもシナナの腕力は十六夜に大きく劣ってしまっている。そんな状態ではペストにまともなダメージを与えることはできず、はっきり言ってしまうと役立たずである。
「だったらこれなら!」
サンドラも炎を放って二人を援護する。援護が功を奏したのか、ペストにいくらか攻撃がヒットするが・・・・・
「無駄よ!確かにダメージは受けるけれど私は神霊よ!私を倒したいのなら星を砕く程の一撃を用意しなさい!」
ダメージこそ与えられるが致命傷には至れない。成り上がりとはいえ相手は神霊だ。その耐久力を考えればそれは致し方のないことであった。
(このままじゃジリ貧か・・・・ん?)
どうしたものかと思案するシナナは、飛鳥と黒ウサギが何か話をしているのを視界に捉える。
(あの二人・・・・何か策があるのか?)
「・・・・・おいシナナ。お前お嬢様のところに行ってこい」
シナナが二人のことを気にかけていると、十六夜がそう告げた。
「いいのか?」
「ああ。そっちのほうがお前は役に立ちそうだからな」
「はっきり言ってくれる・・・・・・わかった。任せたぞ」
シナナはその場を十六夜に任せ、飛鳥の下へと向かった。
「これを決めれば勝てる・・・・・でもチャンスは一度きり」
黒ウサギから託された切り札を手にした飛鳥は、その重圧に飲まれかけていた。黒ウサギは飛鳥ならできると言われたが・・・・・それでも不安なのだろう。
緊張から身体を震わせる飛鳥・・・・・・そんな飛鳥の手をシナナが優しく包んだ。
「シナナ・・・・くん?」
「ごめんな飛鳥。本当なら体温があったほうが緊張は紛れるんだろうけど・・・・・」
苦笑いを浮かべながら飛鳥に語りかけるシナナ。
「・・・・・いいえ。凄く安らぐわ」
確かにシナナには体温はない。だが、それでもシナナの手の感触は飛鳥にとっては何よりも安らぎを与えるものであった。
「それ・・・・・黒ウサギに託されたのか?」
シナナは飛鳥が手にしたギフトカードに視線を向けながら尋ねる。
「ええ。当てれば必ず勝つことができるそうだけど・・・・・・」
「・・・・・自信がないのか?」
「・・・・・・」
シナナの問いかけに沈黙してしまった飛鳥。それは肯定の意であった。
「飛鳥・・・・・・自分を信じろ」
「え?」
「自分にとっての一番の味方は自分自身なんだ。だから・・・・・・不安に駆られる気持ちはわかる。でもどうか自分を信じてくれ」
「自分を・・・・・信じる」
シナナに言われた言葉を自分でも呟く飛鳥。
そうすることで・・・・・・飛鳥の中で自信が芽生えた。
「シナナくん・・・・・私やるわ。でも・・・・」
飛鳥はシナナの手を強く握り返した。
「お願い・・・・・・手を離さないで。このまま私の手を握っていて」
「・・・・ああ。わかったよ」
「ありがとう」
シナナと手を繋いだまま、飛鳥はペストの方へと向き直る。
見ると、ペストは黒ウサギの放つ
「今だ!」
「ええ!!」
今が好機と、黒ウサギが託した切り札・・・・・穿てば勝利を決するインドラの槍を出現させ、ディーンに持たせる。
インドラの槍を目の当たりにしたペストは危険だと判断しその場から退こうとするが・・・・・サンドラの炎によって動きを止められてしまう。
「やれ飛鳥!これで終わらせるんだ!」
「撃ちなさいディーン!!」
「DEEEEEN!!」
ディーンの手から放たれるインドラの槍。月の表面を削りながら槍は真っ直ぐと突き進む。
そして・・・・・・槍はペストを穿ち、勝敗が決した。
「・・・・・やったな飛鳥」
「ええ・・・・・・私達の勝ちよ」
勝利を手にしてもなお、二人の手はしっかりと繋がれていた
今回は説明なしです
次回もまたお楽しみに!