問題児たちが異世界から来るそうですよ?~誰も知らぬ死物の物語~ 作:shin-Ex-
それでは本編どうぞ
「お待たせシナナくん」
飛鳥が待ち合わせ場所に赴くと、そこには既にシナナの姿があった。
「いや、そんなに待ってないさ。それじゃあ・・・・・行こうか」
「ええ」
二人はある場所に向かって移動をはじめる。
これが・・・・・二人が過ごす最期の時となる。
シナナと飛鳥の二人が訪れたのはゲームの休止期間中、二人を匿ってくれていた小精霊達のところであった。
目的は・・・・・・元居た時代へと帰る小精霊達を見送るためにだ。
「本当にこれで良かったの?ハーメルンで犠牲になったあなた達が元の時代に戻ったら死んでしまうだけなんでしょ?」
飛鳥の言うとおり、小精霊達はハーメルンの犠牲者。元の時代に戻ったところで死んでしまうだけ。
だが・・・・・・それは飛鳥の知る伝承の中での話だ。
「飛鳥、優しい貴女に聞いて欲しい。死者も神隠しも存在しない"ハーメルンの笛吹"の可能性を」
精霊から語られるもう一つの"ハーメルンの笛吹"の可能性・・・・・それは親元を離れた130人の子供達が笛を吹きながら歌い、自分達の街コミュニティを作ろうと未踏の地を目指す物語であった。
「貴女は信じてくれますか?この可能性を」
「・・・・・信じるわ。あなた達の街造りが上手くいくことを」
「ありがとう」
もう一つの"ハーメルンの笛吹"の可能性・・・・・それを信じてくれた飛鳥に小精霊は感謝の言葉を述べる。
そしてその後に・・・・・・小精霊は瑠々へと視線を向けた。
「瑠々・・・・・あなたには感謝しています。あなたのおかげでディーンを完成させることができました」
「それはこっちのセリフだね~。君たちのおかげで退屈せずに済んだ。だからお礼を言うならボクの方だよ~。ありがとうね~」
互いに感謝の言葉を口にする小精霊と瑠々。小精霊に比べて瑠々は軽薄そうに思われるが、それでも瑠々は真摯な気持ちで礼を言っているとわかっているので小精霊は微笑みを浮かべていた。
「瑠々は・・・・・この子達と一緒には行かないのか?」
「うん~・・・・・・行かないというよりは行けないって言ったほうが正しいからね~」
シナナの問いかけに、瑠々はそう答える。
本来、瑠々は"ハーメルンの笛吹"とは縁もゆかりもない存在だ。そんな彼女が小精霊達について行くことはそもそも不可能なのだ。
「瑠々・・・・・確かに貴女は"ハーメルンの笛吹"とは無関係です。ですが、それでも貴女は私達にとって・・・・・131人目の同士です」
「131人目の同士・・・・・か。嬉しいこと言ってくれるね~」
自分を同士として受け入れてくれた"ラッテンフェンガー"・・・・・・瑠々にとっても、彼女達はかけがえのない仲間だった。
「・・・・・・最後に飛鳥。貴女にだからこそ託させてもらいます。赤い鋼の巨兵ディーンと我らの132人目の同士を」
「あすかっ!」
飛鳥の前に一人の精霊が降りてきて飛鳥に飛びつく。それは飛鳥が初めに出会った子であった。
「私達が持つ開拓の功績をその子に授けました。私達が箱庭に残せる最後の生きた証です。その子を貴女に託します」
「ええ・・・・この子のことは任せて」
「それではこれでお別れです・・・・・さようなら」
ついに訪れた別れの時・・・・・・小精霊たちの身体は光に包まれる。
そして光が消えるのと同時に・・・・・・小精霊達は元いた時代へと帰っていった。
「・・・・・メルン」
飛鳥は自分の手の上に座る精霊に視線を向けながら呼びかけた。
「めるん?」
「そう。それがあなたの名前よ。"ハーメルンの笛吹き"の正当な功績を受け継いだ地精。そして今から私達の同士よ」
「・・・・はい♪」
同士という言葉に反応して、メルンは嬉しそうに返事を返した。
「行っちゃったか~・・・・・・あなた達の行く先に幸あれ」
「・・・・・瑠々はこれからどうするつもりだ?」
小精霊達の幸せを願う瑠々に、シナナが尋ねる。
「ボクは・・・・・・いい加減成仏するさ。もう亡霊でいるのにも飽きたし何より・・・・・・蘭々が待ってる」
「そうか・・・・・色々世話になったな瑠々。感謝する」
「私もあなたには感謝しているわ・・・・・・あなたのおかげで私は・・・・・」
シナナは新たなる武器を作ってくれたことに対して、飛鳥はシナナへの想いを気づかせるきっかけを作ってくれたことに対して瑠々に感謝の念を抱いている。
二人にとって瑠々は間違いなく恩人であるだろう。
「ボクに感謝か・・・・・それだったら最後にお願いがあるんだけどいいかな~?」
「お願い?」
「なにかしら?」
「あのね~・・・・・・・・」
お願いの内容を言おうとする瑠々であったが、なぜか途中で口を噤んでしまった。
「瑠々?どうした?」
「・・・・・・ごめん、やっぱお願いは無しの方向で~。それじゃあさよなら~」
「え?」
それはあまりにもあっけない別れであった。
ニコリと笑顔を浮かべて別れの言葉を口にしたその直後に、瑠々の身体は透けて消え去ってしまったのだ。
「そんな・・・・・こんなに簡単に?」
「まあ、ある意味では瑠々らしいか。あいつ・・・・・人はともかく自分の別れで感傷的になるの好きじゃないから」
「・・・・・・自分勝手ね」
「同感」
自分達に別れの言葉を告げさせずに勝手に消えてしまった瑠々への不満なこえを漏らすシナナと飛鳥。
だが、同時に二人はあの別れが極力悲しい思いをさせないようにという瑠々の配慮でもあったということを理解してもいた。
「それにしても・・・・・・瑠々は一体何をお願いしようとしていたのかしら?」
「・・・・・・・」
瑠々が最後に何をお願いしようとしていたのかを気にする飛鳥。その一方で、シナナは何も言わずに先程まで瑠々がいた場所をジッと見つめていた。
「シナナくん・・・・・・もしかして瑠々のお願いがなんだったのかわかるの?」
「まあ・・・・・な」
「そう・・・・・・それは聞かないほうがいいこと?」
「かもしれないな。それでも聞きたいなら教えるが?」
「いいわ。それだったら聞かない」
「そうか」
本当は何を瑠々のお願いがなんだったのか知りたいであろうが、それでも飛鳥は聞かなかった。
シナナの態度から、そのお願いというのは瑠々とシナナ・・・・・いや、虚野十六夜に関するものだと思ったからだ。
「さて、それじゃあ戻ろうか飛鳥」
「ええ。でもその前に・・・・・シナナくん、ゲーム再開の前日に私が言ったこと覚えてる?」
「・・・・・伝えたいことがあるって言ってたな」
「そうよ。私はあなたに伝えたいことがある・・・・・・とても大切なことよ。聞いてくれる?」
「・・・・・ああ。もちろんだ」
そう返事を返すシナナであったが、実際にはそれを聞きたくないとも思っていた。
なぜなら・・・・・・もうシナナに残された時間は・・・・・
「それじゃあ外に出ましょう。そこで話すから」
話をするために、ひとまず外にでるシナナと飛鳥。
二人の別れの時は・・・・・・・刻一刻と迫る
瑠々の最後の願いについて
瑠々が最後に願おうとしたのはシナナを『虚野十六夜』と呼場せて欲しいというものでした
消えてしまう前に、最後に愛しの者の名を呼びたいと願った瑠々ですが・・・・・それでは蘭々と同じになってしまうとわかっていたため、結局何もお願いせずにあっさりと消えてしまったと言いわけです
それでは今回はここまで
次回いよいよ最終回・・・・・・どうかお楽しみに!