オラリオにてトマトを育てます   作:招き蕩う黄金劇場

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二話 トマト農家の固有結界発動(笑)

度重なる咆哮が轟く地下迷宮内部。

ドシンドシンと地面を揺るがすほどの足音。

山羊のようなねじれ曲がった二本の大角が生えた、馬面の醜悪な異形。

真っ赤な眼球で獲物を見据える様は、神話の怪物を彷彿とさせる。

そんな異形は、その巨体をもって異様な速さで進み、鈍器を持った太い腕を頭上高く振りかぶった。

 

「秘剣・蠧魔與(トマト)返し」

 

その言葉が発せられた瞬間、六つの剣撃によって異形の巨躯は細切れとなる。

その剣術の最終奥義とも呼べる技は、放った本人、ジョン・ピエーロ・ポルナンデス曰く、「空中に投げたトマトを食べやすい大きさに斬ろうとしてたら出来た」らしい。(NOUMINさんごめんなさい)

 

「前衛、密集陣形を崩すな!後衛組は攻撃を続行!ポルナンデス、前に出過ぎるな!」

 

凶悪獰猛な異形――モンスターを迎え撃つのは、複数の種族からなるヒューマンと亜人(デミ・ヒューマン)の一団だった。

二枚の巨盾を構える筋骨隆々のドワーフ、矢と魔法を間断なく打ち込むエルフと獣人。褐色の肌のアマゾネスの姉妹と某配管工のような服を着たヒューマンの少年は戦場を駆けめぐり、味方の射撃をかいくぐりながらモンスターへと斬りかかる。

前衛後衛に二分される部隊の中、陣の中心で妙な存在感を発する一本の旗。

刻まれているのは滑稽な笑みを浮かべる道化師(トリックスター)のエンブレム。

一柱の『神』と契りを結んだ、『眷族』の証。

 

『――――――――――っっ!』

 

一本の草木もない荒涼とした大地。全てが赤茶色に染まった茫漠たる大空間。

何十もの階層を積み重ねた、『地底深く』。

決して地上には届かない雄叫びを張り上げながら、人とモンスターが戦闘を繰り広げる。

 

「ティオナ、ティオネ、ポルナンデス!左翼支援急げッ!」

「yes sir!」

「返事はしなくていい!急げッ!」

 

この戦場にて誰よりも小柄な少年――小人族(パルゥム)の首領の指示が、的確かつ矢継ぎ早に飛ぶ。

 

「あ~んっ、もう体がいくつあっても足りなーいっ!」

「モンスター共の血潮、この屠冥刀(トメイトゥ)の錆びにしてくれるわッ!」

「ごちゃごちゃ言ってないで働きなさい」

 

命を受けたアマゾネスの姉妹と武装トマト農家の少年が疾走して、九体のモンスターを一瞬で切り伏せる。

しかし、モンスターの量はいっこうに減らない。

どこからともなく現れるモンスターの大群。屠れども屠れども途切れることなく押し寄せ、まさに質と量が合わさった悪夢のような光景。

一匹一匹が大の大人を易々と越すその巨体は、棍棒型の鈍器を振り回し、最前線で盾を構える者達の顔を苦悶に歪めた。

肩を並べ密集し合った彼等の防衛戦は既にじり貧の域であった。

 

「リヴェリア~ッ、まだぁー!?」

 

アマゾネスの少女の声が向かう先、前衛組の背後。

魔導士や弓使いに囲まれた中心で、ハイエルフの女性の声が絶えず紡がれる。

 

「【――間もなく、焔は放たれる】」

 

翡翠色の長髪に白を基調とした魔術装束。浅く水平に構えられた白銀の杖。

細く尖った耳を生やしたエルフの王族。

 

「【忍び寄る戦火、免れえぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む】」

 

ジョンは密かに思う。「厨二も真っ青なオサレ呪文だぜ」と。

そんなことは露ほども知らぬハイエルフの少女は詠唱を続ける。

彼女の足元に展開された魔法円は翡翠の色に輝き、無数の光粒を舞い上がらせる。

 

「【至れ、紅蓮の炎、無慈悲の猛火】」

 

流れるような詠唱をBGMにして、この場の誰もが力を振り絞る。

 

『――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウッッ!!』

 

一方で、モンスター――『フォモール』が特大の咆哮を轟かせる。

群れの中でも一際巨体を誇る一体が、仲間さえ蹴散らしながら驀進し、自らが持つ得物を大上段に構えた。

 

「フィンッ!固有結界を発動させるぞッ!」

「わかった!頼んだぞポルナンデス!」

 

ジョンの体から魔力の奔流がわき起こる。

溢れでた魔力の奔流は、地下迷宮をジョンの心象風景で上書きしようと包み込む。

そこは、トマトを極めた者にだけ与えられる境地。

そこは、トマトに人生を捧げた少年の人生そのもの。

そこは、トマトだけを愛したものが辿った道。

 

「【闍嘛緘は俺の輿眼】ッ!!」

 

その場にいた誰もが、その美しくもどこか寂しさを感じさせる景色に見とれていた。

その景色は、荒れ果てた荒野に一本のトマトの苗だけが立っているというもの。

トマトを愛しすぎて破滅した一人の少年の物語がそこにはあった。

 

「蹂躙せよ!」

 

ジョンの声が響いたその瞬間、荒れ果てた地面から巨大なトマトの蔓が伸び、モンスター達に絡み付く。

そして、そのまま蔓はモンスター達の養分を吸い始めた。

養分を吸われたモンスター達は萎びていき、最後には死んで魔石となった。

モンスターの養分を吸ったトマトの蔓は、どんどん大きなトマトを実らせながら巨大化していく。巨大化した蔓は生き残ったモンスターを薙ぎ払う。

 

「や、やった!さすがジョン!俺たちに出来ないことを平然とやってのける!そこに痺れる憧れるぅ!」

「もうアイツだけで良いんじゃないかな……」

 

その一方的なジェノサイドとも呼べるべきものを見て、部隊の士気が高まっていく。「これでカツル!」と。

しかし、喜ぶのはまだ早い。小人族の首領は思う。

固有結界に使われる魔力量はとんでもなく多い。故にこの『闍嘛緘は俺の輿眼』が展開できるのもあと数十秒。

して、その時は来た。ジョンの心象風景によって上書きされていた地下迷宮の景色が現れていく。

戦いはまだ終わらない。




ジョンのFate風ステータス

真名:ジョン・ピエーロ・ポルナンデス
身長:183cm / 体重:73kg
地域:URUKU
属性:中立・中庸
性別:男性
イメージカラー:黒
特技:トマト栽培
好きなもの:トマト/ 苦手なもの:頭文字G高速機動生命体(好きな奴っていんの?)
天敵:武装チンゲン菜農家

筋力 B+
耐久 C
敏捷 A
魔力 B+
幸運 C
宝具 EX
保有スキル
トマト栽培 EX
心眼 EX
神性 C+
ご都合主義 EX

宝具
闍嘛緘は俺の輿眼(トマトハオレノヨメ)
ランク:A++
種別:対城宝具
トマトの固有結界。本来は魔術であり宝具ではないが、ジョンの象徴ということで宝具扱いになっている。 心象風景は、荒れ果てた荒野が広がっており、その中央に一本のトマトの実った蔓が生えている。 結界内では、術者が命じると同時に夥しい量の蔓が生え、敵に絡み付き養分を吸ったり、巨大化した蔓で薙ぎ払う。相手は死ぬ。

屠冥刀(トメイトウ)
ランク:EX
種別:対界宝具
空間をぶっ壊せる刀。相手は死ぬ。
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