ビブリア古書堂 事件の裏で   作:ayaka_shinokawa

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小山清 落穂拾ひ・聖アンデルセン

五浦さんと志田さんの出会いは万引き騒ぎからだった。

実は新刊書店、古書店に限らず大きな敵は万引きだったりする。あ、万引き万引き言ってるけど実際は「泥棒」なので警察に捕まったら「窃盗罪」で逮捕・補導されるのであしからず。

実は万引きのせいで廃業してしまう書店は多い。皆さんの家の近くでも何十年も続く本屋さんが閉店してしまったことがないだろうか。

だから、うちにとっても万引きは死活問題だ。

 

犯人の老婆には逃げられてしまったと五浦さんから聴いたが、この辺の人だとしたら不景気っていうやつが古都鎌倉にも来ているってことだろう。

志田さんはうちの常連で藤沢、鎌倉、横須賀、横浜南部あたりをまわる「せどり」の人だ。

「せどり」とは、大手のフランチャイズ古書店などではマニュアルに従って廉価棚に入れられてしまう物を探し出してうちのような古書店に持ち込む人を指すらしい。諸説あるのであたしにはなんとも言えないけど…。

 

で、その志田さんの持ち込んだ事件も「泥棒」だった。

志田さんの持ち物から「落穂拾ひ・聖アンデルセン」が盗まれてしまったらしい。あたしが通っている高校の近くのお寺での話とのこと。話をしていて気づいたのは五浦さんが実はあたしの先輩だっていうことだった。

「高校のとき鎌倉の寺社めぐりって言うのがあって、志田さんがトイレを借りた寺にも行ったことがあるんだよ」

とのこと。

あたしも春にやりましたよそれ。

 

志田さんから聴いた話によると、盗んだ人物はあたしと同じ高校生くらいの人物らしい。もしその子が小山清を売りに来たら、黙ってそいつから買い取ってほしい。とのこと。

 

志田さんの話をと本を持って病院にいった五浦さん、戻ってきてみたら犯人探すをする気になっていた。

 

次の日、店は休みだというのに来て志田さんの知り合いの「せどり」屋さんと会うと言って行ってしまった。

 

姉の病院に現れたのはあたしと同じ学校に通っている小菅奈緒さんだった。

学校では女の子があこがれてしまうくらいにかっこいい女の子だ。

その彼女が犯人で、やはり同じ高校に通う西野君に誕生日プレゼントを渡そうとして志田さんの自転車にぶつかりプレゼントを壊してしまって、本の紐が必要になって志田さんの本を盗んでしまったとのことだった。

後で話を聴いて本を盗った小菅さんよりも、プレゼントを受け取らずに行ってしまった西野君…いや西野への怒りを強く感じてしまった。

西野許すまじ。

 

後日、藤沢に住む志田さんのもとに小菅さんが五浦さんと一緒に訪ね、返したことで一件落着したらしい。


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