「はっ……はっ……!」
俺は全力で走っている。二週間前スカイツリー付近に墜落した隕石、ただの隕石ではなく中から異形の宇宙人が這い出てきたらしい。宇宙人は二週間で人間を遅い急速に数を増やしていっているということだ、俺は今絶賛逃亡中である。
「くっそ……!なんでこんなことになってるんだか。あかねぇもアレから連絡とれねぇし親父たちも出張先から帰ってこねぇし……!!!」
異形の宇宙人。いわゆるリトルグレイといわれる形ではない、どちらかといえばバイクに乗るヒーローモノの特撮作品に出てくる怪物のような生命体が後ろから迫ってくる。人間のもつ兵器や武器、銃火器などは有効らしいのだが如何せんそんなものをもってる人間はそう多くもなく警察や自衛隊の手の届かないところでは被害がどんどん広がっているのが現状だった。
「そろそろしんどくなってきた……暑いし……喉乾いたし……ここまでか……」
夏の熱気と長時間のダッシュによって意識も軽く飛びかけている時だった。
「みなさん!一斉にかかってください!」
聞き覚えのある声と数人の怒号が耳に入り俺の意識は途絶えた。
意識を失ってからどれくらい経っただろう。まだ俺は人なのだろうか、それとも今から怪物にされてしまうのだろうか……意識が戻った瞬間そんな事を考えていた。
「つーかーさーくん!意識戻ったかなー?」
目を開けると目の前にあかねぇの顔があった。おそらく膝枕されているんだろう。
「大丈夫……?」
「いやまぁ……大丈夫だけど一体なにがあって一体ここはどこなのか……」
かなり涼しい、天井も見えるところからおそらく室内だということはわかるのだが……
「ここはねー私の大学。いろんなサークルの人達で例の怪物に対して戦ってるの。私達フェンシングサークルとか、アーチェリーサークル、野球サークルなんかもバット使って戦ってくれたり……そんな中私は小隊を任されちゃっててねぇあはは……」
あかねぇは苦笑しながら頬を掻く。
「それでパトロールみたいなことしてたらたまたま司くんをみつけてね?こりゃやばいっ!って思って助けたってわけよ!」
あかねぇは無い胸を張る。
「む、また今失礼なこと考えた……」
「そ、そんなことないよ。何はともあれありがとうあかねぇ助かったよ」
俺は起き上がりながらあかねぇに対して例を言う。
「うぅん、だって私も司くんのこと心配だったし」
「九条隊長、理事長がお呼びです!」
「あ、はい!今行きます!ごめんね司くん、ちょっと待ってて」
あかねぇが去っていく。
「ふー……まぁ、あかねぇの実力は化け物にも通じるってことか。いやぁ自分が情けないねぇ」
あかねぇを待ちつつボーッとしていると。
「あっ!おーい天道くーん!」
後ろから大きい声で話しかけられる、この声には聞き覚えがあった。
「加賀美か……お前もここに居たとはな」
加賀美明、高校でのクラスメイト。光を反射する綺麗な金髪にあかねぇとは対照的なロングヘアー。これまたあかねぇとは対照的な胸部。クラスの男子からも人気の高いいわゆるお嬢様だ。
「もー、明でいいのにー……天道くんもここに来たんだー」
「あか……えーと、あの小隊に助けられたんだ。お前はなんでここに?」
「私も九条隊長に助けてもらったんだー!私は戦えないから衛生兵みたいなことばっかりだけど」
「なるほどなぁ……みんな大変そうだ」
加賀美と話し込んでいると。
「司くん、ちょっと来てくれるかな?」
「ん、今いく。じゃあ加賀美、また後でな」
「うん!ばいばーい」
俺はあかねぇの元へ行く。
「お友達と話してる途中でごめんねー……ちょっとついてきてもらえるかな?」
「ん?おぉ、わかった」
あかねぇが先導して大学の施設内を少し長めに歩く。その先にあったのは……
「部屋か?あかねぇ、これって一体どういう……」
俺が振り向くと部屋のドアは閉められロックがかかったかのような音がなる。
「は……お、おいちょっとまてあかねぇ!なんだこれどういうことだ!」
『君が天道司くんだね、はじめまして。私が理事長の三島だ。少し、今からテストをしたくてね』
俺が声を上げると室内に放送音声が響く。一面真っ白の窓すらない、まるでこの部屋は……
「実験室……みたいなものか……?」
室内をキョロキョロ見渡す。白い壁と放送用のスピーカー。それ以外に目に入って来たものというのが。
「もう一つの扉……いやシャッターって言った方が正しいのかな」
そのシャッターがゆっくりと開き始める。中から出て来たのは、つい数刻前に俺を追いかけて居た化け物。
『Shuuuuuuuuu……!』
「お、おいおいおい!!!なんだよ!どういうことだ!」
『今から君にはその化け物と戦ってもらう。欲しい武器があれば言ってくれれば渡そう。とりあえずその鉄剣一つで勝ってみせて欲しい、九条くんの幼馴染らしいじゃないか。期待しているよ』
部屋の一角に鞘から抜かれた鉄剣が壁に掛けられている、おそらくこれのことだろう。
「こなくそっ……!」
化け物が近付いて来る前に鉄剣の元へ走る。昔彰さんに体力はつけて損はないと言われたこともあり脚と体力にはそれなりに自信はあった。かといって剣に自信があるわけではない、なにしろ高校の授業で剣道の必修はあるものの相手は人間であり加えてスポーツだ。しかも鉄剣なんて竹刀に比べれば重く、上手く扱わなければ剣に自分が振り回されることになる。でも……
「負ける気もねぇんだよ!!!」
剣を構える。剣道の授業で習ったいわゆる中断の構え。化け物は一気に此方へと間合いを詰めてくる。
『Shuuuuuuuuuu!!!」
「っらぁ!」
どうやら体当たりから捕らえ、そこから攻撃を加えてくる……という寸法なのか、動きは単調だった。突進の動きに合わせて身をかがめてから剣を振る。妙に手に馴染む剣は化け物の右腕を切り飛ばし中に舞わした。
「なんだこの鉄剣……」
よく見れば細かい装飾がされている、刀身にも細かい印のようなものが刻まれている。もしかしたら、ただの鉄剣ではないのかもしれない。いや違う、この鉄剣はまさか……
「うちにあったものだ……」
天道家に伝わる剣。いわゆる家宝ってやつだろう、親父は一切触らせてくれなかったため鞘と柄しか見たことがなかった。しかし直感で感じた、間違いない。
「でも、なぜうちの剣がこんなところに……」
俺が疑問に思っているとまた放送がかかる。
『ごめんね司くん、それはおじさんから有事のためにって渡されてたの』
あかねぇからの言葉だった。有事の時のためか。
「親父らしい!」
改めて鉄剣を構える。これが本当に天道家に伝わる剣ならきっと俺にもうまく扱えるはずだ、確信はない。
『Shuuuuuuuuuu!』
痛みに悶えていた化け物が再び攻撃をしかけてくる。だが相変わらず単調だ、よく見れば隙だらけ。
「俺にも……戦える……!」
その瞬間、俺の中で何かが弾けたような感覚に襲われた。
「っ……!」
間合いを詰めるために化け物に向かって勢い良く走る。化け物にぶつかる直前、化け物の右腕の失った俺から見て左側にに体を逸らす。ぶつかることを予測していたのか化け物はバランスを大きく崩す。
「ここだぁ!!!」
俺は剣を両手で持ち、化け物の方に振り向きつつ身体を回転させ、剣を背中を左肩から右の腰辺りまで深く深く切り込んだ。
その後化け物は数回の痙攣を最後にピタリと動かなくなった。
「勝った……のか……?」
緊張の糸が切れたのか俺はその場に座り込む。部屋のロックが外れ、ドアが開く。
「司くん!!!」
あかねぇが走って俺の方へ近付き
「よかった……!怪我がなくて本当によかった!」
勢い良く抱きしめて来る。少し苦しい。
「この剣のおかげだよ……天道の先祖に感謝だ」
俺があかねぇの頭を撫でながらなだめていると。
「見事だ天道くん。九条くんや彰くんが見込んだだけはある。本当にこういった経験がないのかい?」
理事長、三島が拍手をしながら近づいてきた。
「何のつもりですか、もし俺にこういった能力がなければ奴らの仲間入りだ」
「そう睨まんでくれたまえ。その時は、九条くんに処分させたさ」
理事長は剣の鞘を渡して来た。よく家で見ていた鞘だ。
「さて、君の能力を見込んで二つの選択肢から選んで欲しい」
俺は剣を鞘に戻しながら話を聞く。
「一つは、九条くんと同様に一つの小隊を受け持つ。もう一つは九条くんの小隊の副隊長になるか」
「その二つを断った場合どうなる……?」
「ここで死んでもらうことになるな」
やれやれと言わんばかりに肩を竦める。
「そんな理事長!約束が違います!」
「仕方ないだろう。仲間になってもらえない以上消えてもらわないと困るのだ。なに安心して欲しい、九条くんの小隊は他の隊と違って遊撃部隊だ、他の部隊よりも動きやすいと思うのだが……どうだろう?」
「それ以外に選択肢がないんじゃあな……わかった、あかねぇの小隊に入れてもうことにします」
「そういうわけだ九条くん、今から彼が君のサポートをする副隊長だ。後は好きにしてくれていい」
理事長はそういうと俺たちに背を向け部屋をでて行った。
「ごめんね司くん……とりあえず隊のみんなのところに案内するから着いて来てもらってもいいかな?」
「あぁ。まぁ……よろしくなあかねぇ」
俺は申し訳なさそうにするあかねぇの頭を撫でながら言った。
その後隊のみんなの元へ行く途中にあかねぇから色々な説明を受けた。隊の人数は俺とあかねぇを除いて5人、うち1人はさっきの加賀美だ。
「格闘術、主に蹴り技が得意な矢車くん。同じく格闘術で主にパンチとかの腕を使うのが得意な影山くん。司くんと同様剣術が得意な神代くん。後の2人は司くんのよく知ってる2人だと思うよ?」
「1人は加賀美だろ?さっき会ったよ」
「そっかそっか。さ、ここだよ。みんなーお待たせ、新しい仲間連れて来たよー」
あかねぇは部屋のドアを開けながら周りに声をかける。
「今日から私達の隊の副隊長になる天道司くん。はい、じゃあ司くん自己紹介してね」
あかねぇに催促され俺は前に出る。
「天道司です、至らないことも多いと思いますが足手まといにはならないように頑張ります」
「俺は矢車誠だ。わからないことがあれば俺に聞いてくれ」
見るからに兄貴肌の矢車さん。
「僕は影山稔、兄貴に話せないことが有れば僕に言ってくれてもいいよ!」
少し控えめな影山さん。
「私は神代佳奈。よく男性と間違えられるが私は女だ、そこを間違えないでくれよ」
確かに一瞬男性と見間違えた神代さん。宝塚の人の男装に近いものを感じる。
「やっほー天道くん!よろしくね!」
加賀美……と、ここまではよかった。
「まったく……司くん、貴方までここにいるとは思わなかったわ……」
「…………か、会長⁉︎」
俺の通う私立白鷺学園生徒会、生徒会長風間カノン。水色の髪を後ろで一つに纏めるいわゆるポニーテールに引き締まった体。あかねぇと加賀美の間くらいの程よい大きさの胸。腕には生徒会の腕章が輝いている。確か、会長が得意なのは……
「なるほど、心強い」
会長が得意とするのは謎の拳法。普通の格闘術のようなことも出来るのだが何よりも不思議なのは性質だった。自身の腕や身体しか使っていないのにものを切ったり貫いたりすることができる。気の流れを用いる、なんて聞いたことはあるが到底真似は出来ない。
「ここでは会長副会長は関係ないわ。むしろ貴方が副隊長なのだもの。よろしくね天道副隊長、私のことはカノンでいいわ」
「ぜ、善処します会長……」
「まったく……」
会長は苦笑いをする。
「さてっ!」
あかねぇがてをパンッと合わせると声をあげる。
「これより私達小隊はシックザールと名乗り独立防衛組織イージスの1隊としての活動を本格的に開始します。各自己のやることを把握し日本の、また私達の日常を取り戻すため善処することを願います」
『了解です!!!』
あかねぇの言葉に全員が声を合わせる。
厳しいだろうけど、知らない顔ばかりではない。きっとうまくやれるだろう。きっと上手く行く。これが俺の運命、文字通りシックザールってことなんだろう。
「あら、楽しそうね天道くん?」
「まぁ……生徒会でのんびりやるよりは、ですね」
会長の言葉に俺はニヤリと微笑んだ。
シックザールとは作中にあった通り運命という意味です。とりあえず頭の中で出来上がってる物語はここまでです、とりあえず次の投稿は二話ではなくシックザールメンバーのキャラ紹介になると思います。それまでお待ちください