「は?」
タイトル早々、この子は人の部屋で何を言っているの?
「ふふ〜んっ、私は昨日すんっげー事実を知ったんだ!」
「どういう事ですの?」
「女の子は他人から胸を揉まれると大きくなるんだって!」
頭が痛くなってきましたわ。
「あのねぇ……そんなの迷信に決ま——」
「なんだよっ、向日葵ばっかりおっぱい独占してズルいぞ!」
「きゃあっ!?」
櫻子がいきなり鷲掴みしてきました。
「何をするのよ!」
「あだっ——」
思わず脳天に肘を落としてしまいましたが櫻子の自業自得ですし、悔いはありません。
寧ろスッキリしましたわ。
「痛た……ハッ! 私とした事が向日葵のおっぱいを育てる手伝いをしてしまった……もう揉まないぞ!」
「あなたね……まあそれでしたら喜んで受け入れますけれど」
「よしっ、分かったら私のおっぱいを揉め!」
全く、付き合うしか無いようですわね。
「はあ……そこまで櫻子が言うのなら別によろしいですけど、揉める胸があなたに有って?」
「あっ……え?」
櫻子が私の顔と自分の胸を交互に見ては、何やら困惑しております。
「な、なんだよ! イヤミかー!」
「ああいえ、そう言うわけでは無くて……仕方ありませんわね」
「向日葵、なんで正座してんの?」
「いいから背中から上に座りなさい。正面から撫でるなんて恥ずかしくて無理ですので」
「わーいっ、じゃあ遠慮なくー!」
「うごっ——」
櫻子が勢い良く私の膝に座り込んできたものですから、かなり痛かったんですの。
「この……少しは人の痛みを知りなさい!」
「あ痛っ! えへへー、ゴメンゴメンっ。悪気は無いから許してよー」
ですが、それだけ嬉しいんですのね。
なんだか怒る気も失せますわ。
「全く……では撫でてあげますけど、本当によろしいの?」
「さっきから撫でるって……やっぱりイヤミかよ!」
「コ、コラ櫻子っ! 暴れたら危ないでしょう!」
「ぎゃははははっ! くすぐったーい!」
ただ脇をがっしり掴んだだけでこの反応のしよう。
後が心配で仕方ありませんわ。
「はあ……はあ……笑い死ぬかと思った」
「ほら、早く済ませますから暴れないでね?」
「おうっ! あまり乱暴にするなよ向日葵ー!」
「分かってますから」
私は余計な事を考える事なく、櫻子の可愛らしい胸を服の上から優しく撫でました。
「くふっ……あははっ……んんー……はぅ……ふぁ……」
初めはくすぐったそうに笑っておりましたが、時が経てば甘い声を上げ始めるので、こちらも変な気分になりそうです。
「櫻子、痛くありませんの?」
「あにゃっ——う、うん……痛くない……」
櫻子ったら、なんでそんなに可愛らしい声を上げますの。
こちらの気持ちも考えて欲しいわね。
「あの……櫻子、そろそろ止めにしない?」
「あっ……やだ! こんだけじゃ大きくならねーし!」
「全く……我儘ですのね」
そうね、私が気にしなければ良いだけなのですから平気ですわ。
「はあ……んん……」
もう10分も火照った櫻子の胸を撫でていたのですが、妙に生々しい呼吸音が部屋中に広がり、そろそろ我慢の限界です。
「櫻子……」
「向日葵……」
私達の声が重なります。
「あの……」
「あのさ……」
呼吸のリズムも同じく。
「もう、止めにしませんこと?」
「そろそろ、やめて欲しいなーって……」
考えまで同じだなんて。
「あっ、はい! そうですわね!」
「う、うんうん! もうやめ! これ以上しても無駄な気がしてきたし!」
櫻子がそそくさと私の膝から立ち上がり、いつもの安心できる笑顔を咲かせてくれました。
「てゆーかもう昼じゃん、向日葵は何か食べたい?」
「あっ、そうですわね……オムライスとか?」
「よしっ、じゃあ作れ!」
「は?」
相変わらずの櫻子に対し、思わず睨み付けてしまいましたわ。
「あっ、違う違う……作ってください、お願いします」
「はあ……たまには一緒に作りませんこと?」
「ええーっ、向日葵がひとりで作ったほうが美味しいに決まってるじゃん!」
櫻子にそう言って貰えると素直に嬉しいのですが、それでも一緒に作りたいもの。
「櫻子は隣で見ているだけで良いですから、一緒に作りましょうよ」
「それ、なんか矛盾してる気がすんだけど……まあいっか!」
「ありがとう、櫻子っ」
思わず笑顔を向けてしまいましたが、別に嬉しくなんてありませんから。
ただ、櫻子が側にいれば暇では無くなるんですもの。
「ま、まあ今回は手伝ってやるし……いつも任せっぱなしだからな」
「はい、はい。さっさと台所に行きますわよ」
「なんだよ、その身籠ってない返事ー!」
「ちょっと櫻子! それを言うなら心の籠ってないでしょうが!」
その間違い方だけは絶対に許しませんわ!
「あれ、そうだっけー……。あははっ、まあいーじゃん別に!」
「よくありません! 食事が終わったら国語の勉強を始めますから!」
「ええーっ、そんなの聞いてねえよー!」
「あなたが悪いんですからね!」
「知らねーし!」
結局いつもの様に口喧嘩を始めてしまいましたが、きっと私達はこれでいいんです。
ええ、きっと。