tragic ray   作:黒迅 憂

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弱きヒューマン

~???~

 

 

「本当に行くのですか?レイさん」

 

 

フェルスティアの里のとある建物の一室。

 

貧相な部屋に十数人の武装した男女。

 

その中で、レイと呼ばれる高身長の顔立ちが整った男は、部下から押し寄せられ、戸惑っていた。

 

 

「いくらアルヴァンジェロのアジトがわかったからと言って、俺達だけで行くのは無茶ですよ!せめて騎士団に話を……」

 

 

「騎士団には絶対に話すな!」

 

 

レイは騎士団と言う言葉に反応し、怒声を発する。

 

何故こんないざこざが起きているのかというと、ついこの間……ここ、フェルスティアの里にて獣族を見かけたという情報が入った。

 

レイ率いるこの組織は、アヴィルを倒すことで得られる懸賞金を狙っていたため、部下が見つけ次第追跡を行った所、アジトが発覚した。

 

だが、知っての通り相手は獣族。

 

こちらは皆ヒューマンだから手に余る。

 

金欲しさに無茶していると思い、部下は反対しているのだ。

 

 

「奴らは絶対に横取りする。決して情報は漏らすな」

 

 

して、騎士団というのはフェルスティアの里を管理する取り締まり団体のようなものだ。

 

いろんな異種族がいて莫大な力を誇る騎士団には、誰も迂闊に手出しは出来ない。

 

連れて行けば勝てる見込みは上がるが、功績はほとんど向こうに取られるのは言わずもがなだ。

 

 

「俺達だけでアルヴァンジェロ、アヴィルをとる」

 

 

「そんな……無理ですよ!アヴィルの強さはあなたも知らないわけじゃないでしょう?」

 

 

部下は必死に反抗するも、レイは表情一つ変えない。

 

それには変えられない現実があるからだ。

 

……金がないのだ。

 

フェルスティアの里は酷く貧しく、浮浪者の数も後をたたない。

 

大して仕事もないこの組織は、このまま行くと解散になってしまう。

 

そうなれば全員浮浪者行きだ。

 

 

「もうどの道終わってるだろ、こんな組織。元は指定ギルドとして色んな狩りをしてきたが、今じゃどこも金がねぇだなんだで依頼も来やしねぇ。残ったのは出番のない武器ばかり……潮時なんだよ」

 

 

この世界において金を稼ぐ方法は限られている。

 

模擬店を出すか、彼らのようにギルドを構成して野生の獣を倒し、そのドロップアイテムを金に換えるか。

 

住民の税から成り立つ騎士団なんかはまた別だ。

 

 

「でも……」

 

 

「じゃあみんなで浮浪者になるか?」

 

 

「………………」

 

 

アヴィルの強さは里に住む者全員が知っている。

 

挑めば死ぬ。

 

だが、彼らが出来る仕事は狩りだけだ。

 

他に懸賞金がかかったものはない。

 

もはや彼らに残された仕事はこれだけなのだ。

 

 

「わかるだろ……もう俺達は終わりなんだ」

 

 

「………ぐっ………わかりました」

 

 

部下達は皆押し黙り、レイの言うことを聞いた。

 

そして泣いた。

 

約20人程いるこの組織は、かつて賑やかで良い雰囲気だった。

 

それぞれ思い入れがあったのだ。

 

アヴィルの元へ攻め入ろうものならば、少なくとも多くのものが死ぬ。

 

最悪全滅だ。

 

 

「では、アルヴァンジェロへの攻略会議を始める……」

 

 

以前は楽しそうに狩りの攻略会議をしていたが………今は悲しく切ないレイの声が部屋に響いていた……

 

 

 

~Ray part end~

 

 

 

「ここで待ち伏せようか……」

 

 

ジェディ率いるアルヴァンジェロは里の外れの、湖がある場所で待機した。

 

アヴィルはと言うと、エイダとアイレスを連れて行くために時間差で到着する。と皆に伝えてある。

 

 

「敵の進行状況は?」

 

 

ジェディがその場を指揮する。

 

 

「はい。敵との距離は650m。数は25名。魔力の感知はありません。予想通り、全員ヒューマンかと…」

 

 

ショートカットの獣族が答える。

 

彼女は感知能力に優れているのか、的確に相手の情報を告げた。

 

 

「そうか、ではアヴィルが来るまでもないな……やはり私達だけで片付けてしまおう」

 

 

鞘から剣を抜き取るジェディ。

 

それに続き、約10名程の獣族もそれぞれ武器を構える。

 

片手ナイフや両手剣、太刀や大剣なんかを扱う者が見受けられる。

 

 

「さっさと済ませよう。行くぞ」

 

 

待つのが面倒くさくなったジェディはメンバーを引き連れ、敵の元へと行進を始めた。

 

 

♦︎

 

 

ガチャ…

 

 

薄暗く異様な雰囲気に包まれた部屋。

 

その扉が開けられ、外の光が室内に侵入する。

 

それに照らされるエイダ。

 

彼女は身も心もボロボロであった。

 

あれから、ジェディにナイフを刺され、その度に止血剤で無理やり治され、また刺され、を100回に渡り行われた。

 

常人ならば精神崩壊を起こすか、意識が飛んでいた所だが、過去に幾度となく辛い経験をしてきたエイダはタフだった。

 

それに、妖精という種族は元々精神が強い。

 

痛みによる気絶は滅多にないのだ。

 

 

「ボロボロじゃないか………ひひっ」

 

 

エイダの姿は、椅子の背後、足の部分に手足をそれぞれ縛られ、口からはよだれを垂らし、乾いた涙が目付近に見受けられる。

 

失禁したのか、椅子の下には軽い異臭のする水溜りがあった。

 

止血剤により、身体に刺された後こそないものの、刺された瞬間に出た血は、消えることなく服に染みを作っていた。

 

死体と判断されても何も不思議ではない光景。

 

かろうじて、か細い息が聞こえるくらいだ。

 

そんな彼女を見て、嘲笑うアヴィル。

 

 

「私達が憎いか?」

 

 

「…………………」

 

 

アヴィルのそんな問いかけに、エイダはピクリとも反応しない。

 

 

「あーあ……ジェディも、毎度毎度抑えろって言ってるのに……『ヒール』使うのも疲れるんだがな」

 

 

独り言を続けるアヴィルは、エイダの頭に手を当てる。

 

髪の毛は、極度のストレスに晒されたからか、白髪混じりになっていた。

 

 

「悪いが、妖精ちゃん。まだまだ私達には付き合ってもらうぞ………ヒール」

 

 

ヒールという言葉と同時に、エイダの頭に添えていた手が光り出す。

 

すると、屍のようだった彼女の顔色はみるみる内に良くなり、白髪混じりの髪の毛も元に戻った。

 

虫の息だったのも、しっかりとした呼吸に戻る。

 

まるで、ジェディによる拷問など元から受けていなかったかのように……

 

その椅子が拷問椅子ではなく、普通の椅子だったら、ただ座ったまま寝ている少女と判断しても不自然ではない。

 

 

「これでよし……じゃあ行こうか」

 

 

気絶状態から安眠状態へ変わったエイダを、縛られていた椅子から解き、肩に担ぐ。

 

そして直ぐにその場から去っていった。

 

 

 

 

気持ちの悪い夜風が吹く。

 

不気味な暗い空に似合わない多くの星。

 

悲劇の前兆のような景色だ。

 

 

「いつきてもおかしくない、覚悟を決めておけ」

 

 

フェルスティアの里を抜け、見知らぬ外れを歩く20人ほどのヒューマン。

 

彼らの表情は曇るに曇っていた。

 

まるで死刑を待つ囚人のように。

 

レイはなんとか皆をまとめようと言葉を発するが、意味がない。

 

 

「……レイさん、本当に ‘あれ ’をやるんですか?」

 

 

「当たり前だ」

 

 

アルヴァンジェロ攻略会議にて決めたある必勝法。

 

いや、これは必勝と言えるものではない。

 

あくまで、勝てる可能性が上がるというだけだ。

 

自身の身を滅ぼしてまで……

 

 

「…………わかり……ました」

 

 

力なく返事をするその男は、絶望を隠せずに下を向く。

 

‘あれ ’とは一体何なのか、それはこの先のアルヴァンジェロとの戦闘で汚く披露される事になるだろう。

 

 

…………………………………………………………

 

 

しばらく歩くと、前方から群れが見えてきた。

 

その数はこちらとあまり変わらない。

 

 

「作戦通りに行くぞ、相手は獣族だ。ヒューマンなど馬鹿にして油断しているに違いない。様子見などするな。最初から全力で行け」

 

 

レイは声を張ると、皆大きな声で返事をする。

 

…………返事だけをする。

 

 

「………あれか」

 

 

一方で、ジェディ率いるアルヴァンジェロもヒューマンたちの存在を目視した。

 

 

「どうせ雑魚の集まりだ。しかし、夕飯が不味くならないよう死者は必ず出すな」

 

 

「「「はいっ」」」

 

 

女だけの甲高い声の返事が響く。

 

 

やがてその二つの群れは近づき、対面する。

 

 

「……その制服……まぁいい。貴様ら、わざわざ殺されに来たのか?」

 

 

先に口を開けたのはジェディ。

 

 

「……アヴィルはいないのか?」

 

 

レイはジェディの質問を無視し、アヴィルを気にかける。

 

 

「アヴィルが貴様らごときに足を運ぶまでもない。私達だけで充分片付く」

 

 

「そうか、いないのか……行けぇっ!」

 

 

「「「っ!」」」

 

 

突然発されたレイの大声、同時に全速力で向かってくるヒューマンに動揺するジェディ達。

 

これは彼の作戦だ。

 

レイは予想していた。

 

いきなりアヴィルは出てこないと。

 

だから強行突破する。

 

犠牲は考えない。

 

全滅してもいい勢いで突っ込むのだ。

 

仕掛けるような小細工もない。

 

金のない彼らにそんな真似はできなかったから。

 

よって全力で当たりに行く。

 

正真正銘実力がものを言うこの戦闘。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

 

キィィンッ!

 

 

「ぐっ」

 

 

死を覚悟したヒューマンの叫び。

 

その勢いは凄まじく、腕力では上を行く獣族が怯む。

 

戦闘手段は互いに剣のみ。

 

至る所で剣のぶつかり合う音が鳴る。

 

 

「はぁぁぁっ!」

 

 

レイは真っ向からジェディの元へと向かっていた。

 

ヒューマン勢の中で一番強い彼こそがジェディと戦うべき相手だからだ。

 

彼は、アヴィル以外のアルヴァンジェロのメンバーは知らない。

 

だが、ギルドの長として数々の獣と対戦してきた彼だからこそわかる。

 

今いる獣族の中でジェディが一番強い力を持っていると。

 

始めに話しかけてきたから、というのもあるが、それ以外に身体から発される殺気や威圧感などでも判断できる。

 

他の者とはまるで違う。

 

 

キィィンッ!

 

 

カンッ!

 

 

ガキッ!

 

 

キンッ!

 

 

「ふっ……やるな。ヒューマン」

 

 

レイの攻撃を防ぎ続けるジェディ。

 

一方的な彼の攻めは、ヒューマンでもトップクラスの動きだ。

 

 

「やはり………流石、レイコナーギルドのボスって所か」

 

 

ガンッ!

 

 

レイの縦斬りの繰り出しを強く弾くと、お互いに距離が出来る。

 

休憩のつもりか、レイは剣の構えを解く事はないものの、攻めるのを止めた。

 

 

「俺達のギルドを知っているのか?」

 

 

「ああ。フェルスティア出身だからな、私もアヴィルも。アルヴァンジェロを組織するまでは、レイコナーギルド…この言葉をよく耳にしていた」

 

 

レイコナーギルド、というのはレイのいる組織名だ。

 

フェルスティアで唯一の獣狩りの指定ギルドであったため、里で知らない者はいないのだ。

 

 

「そうか……」

 

 

「私達を攻めに来たのは何故だ?お前達の仕事は獣を狩ることだろう。それに、貴様らがアヴィルに勝てる筈がないのはわかっているはずだ。」

 

 

「よく喋るなぁお前。話し好きか?」

 

 

「っ?」

 

 

カンッ!

 

 

カンッ!

 

 

レイは再び攻撃を始めた。

 

縦、横、斜め、全ての方角からランダムに繰り出される。

 

それを正確に受け続けるジェディ。

 

このままでは彼の剣は皮膚へと到達することはないだろう。

 

そう、このままでは……

 

 

「お……らぁっ!」

 

 

ガガガッ!

 

 

「んぐっ!?」

 

 

突然の大振りを受け、その威力に驚くジェディ。

 

………そう。

 

獣を相手にしてきた彼ら、レイコナーギルドは、半端じゃない威力を持ち合わせている。

 

それは並みの獣族を上回るのだ。

 

 

「まだ、終わらねぇぞ!」

 

 

ガガンッ!!

 

 

ゴンッ!

 

 

鈍い音が連発する。

 

それはレイとジェディでの戦いだけではない。

 

近くの者達も同じように鈍い音を鳴らしながら戦っている。

 

 

「くそっ!ヒューマン風情が!」

 

 

 

防いだ刹那、空いたわき腹を斬りかかる。

 

が………

 

 

ガキッ!

 

 

「ぐっ!」

 

 

それよりも早く相手の剣が振り下ろされ、防御の形へと姿勢を戻す。

 

一切の反撃が許されない。

 

本来ならば獣族がヒューマンを力で圧倒する。

 

対してこの状況。

 

ジェディが焦るのも無理はない。

 

いや、焦っているのはジェディだけではない。

 

 

「ジェディさん、こいつらなんでこんなに強いんですっ?話がちがっ……ひっ!?」

 

 

ドゴォッ!

 

 

「かはぁっ!」

 

 

「ミレアッ!」

 

 

ミレアと呼ばれたショートカットの獣族は、対戦していたヒューマンの男に蹴り飛ばされた。

 

そのまま数メートル地面を転がる。

 

 

「貴様ぁ!」

 

 

ブンッ!

 

 

「っ!?」

 

 

ミレアのほうを向くジェディに対し、横振りの剣が炸裂される。

 

それをブリッジで避け、剣が鼻先を掠める。

 

 

「おいおい、お前の相手は俺だろう?」

 

 

「チッ」

 

 

ゴンッ!

 

 

「がっ!」

 

 

突然拳が繰り出され、それに反応できずに殴られる。

 

剣を振りかざして直ぐに構えてきたのだろう。

 

 

「……のっ!」

 

 

まわし斬り。

 

遠心力を使ったこの攻撃は、常人ならば受けることすらできない。

 

それを……………

 

     

 

「おっと」

 

     

 

ガキィィッ!

 

     

 

レイは絶やすく受けた。

 

     

 

「違うな。まわし斬りっていうのは、もっと重心を乗せて、こう……」

 

     

 

ブンッ! 

 

     

 

「っ!?」

 

     

 

ジェディのまわし斬りとは桁違いの速さで繰り出されようとしている。

 

その動きには一切無駄がなく、それ上に速さ、威力が上がるのだ。

 

レイの戦闘力は異常であった。

 

この瞬間、ジェディはもはや刀で受け流そうとしても致命傷は免れないと覚悟した。        

 

 

「うつんだよっ!」

 

 

ジャグッ!

 

 

「?」

 

 

「っ!」

 

 

「………ミレ…ア?」

 

 

レイの繰り出した剣が炸裂したのは、ジェディの剣ではなく………

 

 

「ジェディ……さ……」

 

 

ブシャァァッッ!

 

 

ミレアの身体だ。

 

致命傷を上回る、死を確定した攻撃。

 

彼女の胸部はぱっくりと裂かれ、中の内臓はボトボトと地面へ落ちていく。

 

 

「お前、捨て身になってこいつを守ったのか」

 

 

レイは胸を抉ったミレアの、苦しみながらに守りきったという清々しい顔を見て、唖然とした。

 

 

「わた…は………ジェ…んにすくわれ……だから…この命……ディさんに……ささ…げ……」

 

 

ドサッ

 

 

途切れそうな声でそう言うと、ミレアはその場に力なく倒れた。

 

 

「貴様ぁっ…………貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!」

 

 

血管が切れそうになるほどの絶叫。

 

涙、唾液、鼻水、全てを撒き散らしながら怒り狂う。

 

同胞が殺されたという事実は、ジェディにとって何よりも辛いことなのだ。

 

だが、このまま向かったところで勝機はない。

 

そんな事はわかっていた。進むしかなかった。

 

このまま黙って見過ごせないのだ。

 

短気と言われてもいい。

 

馬鹿でもいい。

 

ここで行かずして、いつ行くのだ?と。

 

ジェディはもう感情論でしか考えられなかった。

 

 

「アホが…」

 

 

レイは下を向き、剣をランスのように構える。

 

そして、目の前までひきつけた所でその剣は繰り出され…………

 

 

「ああ、私もそう思うよ」

 

 

なかった。

 

 

「っ!?」

 

 

ドッ………………フゥゥゥッッ!

 

 

一瞬にしてレイの姿が消える。

 

それの代わりに一つの人影が姿を現す。

 

まるで瞬間移動でもしてきたかのように、それは突然現れた。

 

 

「だ……れ……?」

 

 

ジェディはその影を見続ける。

 

次第にそれははっきりと見えてくるようになり、赤く長い髪の毛、笑っている唇、長身の身長が姿を瞳に写した。

 

もう誰かは言わずもがなだろう。

 

 

「アヴィル!」

 

 

ジェディが腰を抜かしながら名前を呼ぶと、周りの空気は一変する。

 

戦闘は止み、皆唖然と彼女を見ているだけだ。

 

彼女の姿勢は右手を方の位置にまで上げていて、腰は下ろしている。

 

レイに攻撃した後の体勢なのだろう。

 

手のひらはパーの形に開いている、つまりアヴィルは、彼をつっぱり一つで吹っ飛ばしたのだ。

 

 

「お疲れ様だな。全く、私が来るまで待てって言っただろう」

 

 

「す………すまない。しかし……流石だな。あの男を武器も使わず一発で………」

 

 

「ああ、この男が非力だっただけさ………それより、ミレアだな。全く…無茶をするよなぁ。お前も」

 

 

気だるそうにミレアの身体を抱き起こす。

 

 

「これはかなり酷いなぁ……脈は……あるな、よし」

 

 

アヴィルはミレアの抉られた胸部に手を置き、呟く。

 

「クリエイティヒール…」と。

 

すると、その胸部は不思議と再生していく。

 

無くなっていた臓器は、そこで生成されているかのように復活し、皮膚も元通りの姿として再生した。

 

 

「アヴィル、本当にすまない。私のせいだ、私が油断して………」

 

ポン……

 

 

「っ?」

 

 

項垂れるジェディの頭に優しく手を置いた。

 

視線を合わせるためにしゃがむ。

 

アヴィルのその仕草は、まるで我が子を可愛がる母親のよう。

 

 

「ともあれ、死者が出ずに済んでよかった。そうだろう?」

 

 

「………………そう、だな」

 

 

力なく頭をあげ、彼女の言葉に苦笑いするジェディ。

 

そう…………死者さえ出なければよいのだ。

 

アヴィルさえ来てしまえば、もう勝ちが確定する。

 

どういう意味か、それはこの後すぐに分かる。

 

 

「さぁて…………」

 

 

ニヤァ、と不敵な笑みを見せるアヴィルに、ヒューマン達は皆顔を強張らせる。

 

涙を流す者もいる。

 

それぞれ相手にしてきた獣族の女達には目もくれない。まるで死神を見ているようだ、と。

 

 

「ウチの可愛い子達が世話になったようだねぇ、ヒューマンのみんな?」

 

 

「ひっ」

 

 

恐怖のあまり腰を抜かし失禁する女性ヒューマン。

 

他も、皆口を半開きにし、先ほどまでの戦おうという姿勢がまるでない。

 

皆知っているからだ。

 

どんなに頑張っても勝てない彼女の異常な強さと、

 

 

「いっひひ!とりあえず女から、子宮ぶち抜いて口に突っ込んでやろうか、それとも一思いに胸部の皮膚を裂いてから、内臓に噛み付いてやろうか……」

 

 

それ以上の狂いっぷりを………

 

 

「もう………ダメだ。死ぬんだ俺達……」

 

 

「いや………死にたくない、いや!いやぁ!」

 

 

「助けてぇぇ!死にたくない!嫌だぁぁぁ!」

 

 

「だれかぁぁぁぁ!」

 

 

ヒューマン達は剣を地面に落とし、嘆きの大合唱となった。

 

戦意喪失。

 

そんな状況下の中、アヴィルは彼らを殺すべく一歩前へ出る。

 

幕開けだ……

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