GATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて斯く戦えり ~帝国の逆襲~   作:異世界満州国

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エピソード9:炎龍の襲撃

 

 エルフの村と接触できた事は幸運なのかもしれない――伊丹は村人とコミュニケーションを図る部下たちを眺めながら、伊丹耀司二等陸尉はそんな事を考えていた。

 

(あいかわらず警戒の矢じりには狙われてるし、テュカって娘の考えは分からんが、あのコダ村よりかはマシだ)

 

 とりあえず、コミュニケーションが取れている。何よりそれが重要だった。

 

 どれだけ優れたテクノロジーを有していようと、特地の地理について自分たちは赤子も同然なのだ。現地住民の協力は、喉から手が出るほど欲しい存在だった。

 

(ある程度の情報が手に入ったら、基地に戻って報告でもしとくか)

 

 そんな事を呑気に考えていた時だった。

 

「――ッ! アス・デレク、シャク、タヤンっ!」

 

 甲高い笛の音が空気を裂き、エルフの村全体に響き渡った。

 

「なんだ!? どうしたんだ?」

 

 伊丹が叫んだ次の瞬間、目も眩むような閃光が大樹を覆う――樹上にあった家々が吹き飛ばされ、村のシンボルであった大樹は一瞬のうちに炎に包まれた。轟轟と沸き起こる炎の熱風に、木々の葉が揺れる。

 

「オコン、エルマ、ヴライ!?」

「クンヤ、トゥス、ネンクル!」

 

 エルフたちが悲鳴を上げて逃げようとするも、すぐに炎に焼かれて跡形も無く蒸散する。

 

「イタミ!」

 

 血相を変えて走って来たテュカが、明らかに動転した表情で伊丹にすがりつく。

 

「テュカ!無事……ダイジョブ、か!?」

 

 伊丹が帝国標準語で話しかけると、テュカはこくんと頷いた。

 

「炎龍が……村が炎龍に襲われているの!?」

 

 テュカの言葉を手製の辞書で調べた伊丹は驚愕した。

 

(炎龍……ドラゴンの事か? この世界のドラゴンはヒトを、いやエルフを襲うのかよ!?)

 

 その時、頭上に影が覆いかぶさった。見上げれば巨大な影が照り付ける太陽を覆い隠している。

 

 それは余りにも巨大で、なおかつ余りにも恐ろしい存在――。

 

 見ているとその巨大な顎から、凄まじい熱量を誇る火炎放射が放たれていく。運悪く炎の直撃を食らったものは何が起こったのかも分からない内に全身に大やけどを負い、動けなくなったところを炎龍の餌として喰らわれていった。

 

「お願い、助けて!村を助けるのに、力を貸して!」

 

 テュカの必死の訴えに、伊丹は。

 

「分かった」

 

 笑顔でテュカに頷くと、伊丹は無線機に口を近づけて全員に命令を飛ばす。

 

「――第三偵察隊に告ぐ。隊長の伊丹だ。我々はこれより現地住民の保護を開始する。障害となる特定外来危険生物・炎龍については自衛のため発砲を許可する。以上、各員行動に移れ!」

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

「くそっ、くそぉッ!」

 

 栗林たちは車窓から64式小銃を出して、炎龍に向けて発砲を続けていた。しかし奮戦虚しく、7.62mm弾では炎龍の分厚い鱗を貫通できなかったらしい。炎龍は何食わぬ顔で、相変わらず村人を襲い続けている。

 

「おいおい、全っ然効いてないじゃないか!?」

 

「倉田うるさい!効果なくても撃ち続けてれば、ドラゴンの気を引くぐらいはできるでしょ!」

 

 栗林は諦めずに銃を撃ち続けるも、まるで豆鉄砲のごとく弾かれていく。軽装甲機動車の上では富田が12.7mm弾も撃っているが、同じく効果があるようには見えなかった。

 

『――気を付けろ!火炎放射、来るぞ!!』

 

 無線越しに伊丹から叫び声。直後、高機動車の真後ろにブレスが着弾する。

 

「どこか弱点はないの!?」

 

 栗林はスコープを覗いて、炎龍の弱点になりそうな箇所を探す。

 

『――隊長、どっかにドラゴンの弱点とか無いんですか?』

 

 栗林の無線を聞いて、伊丹はテュカの方を見やる。日本語の分からないテュカであるが、何となく雰囲気で言いたい事を察したらしい。自分の目を指さしながら、大声で叫んだ。

 

「オー・ノー、オー・ノー(目を狙って)!」

 

『――目だ! みんな目を狙え!!』

 

『――了解!』

 

 伊丹の指示を受け、一斉に炎龍の目に向け発砲を開始する隊員たち。大量の銃弾がばら撒かれ、その殆どが鱗で弾かれるも、弱点である目への被弾を恐れて炎龍は顔を腕で庇おうとする。

 

 それこそが、伊丹の狙っていた“隙”だった。

 

(眼に銃弾を当てるのは無理になったが、向こうもこれで視界が大きく遮られる……!)

 

『――今だ勝本! ドラゴンの死角からアレをぶっぱなせ!』

 

『――了解!』

 

 伊丹の命令に、勝本三等陸曹が勢いよく返事する。その手には、110mm個人携帯対戦車弾(パンツァーファウスト3)が握られていた。

 

「後方安全確認よーし、てぇっ!」

 

 勝本の声と共に、対戦車弾が放たれ―――数秒と経たず、炎龍の左腕に命中する。

 

「グオオオオ――――ォンッ!」

 

 さすがの炎龍もたまらず悲鳴をあげ、これ以上は危険と判断したのか忌々しげに翼を翻して別方向へと飛び去って行った。

 

「隊長、ドラゴンが逃げていきます!」

 

 富田が喜びの声をあげ、他の隊員たちも続くように勝利の雄たけびを上げる。

 

「やったんだ!俺たちは勝ったんだ!」

 

「部位破壊、やったぞ!」

 

 

 **

 

 

 

 爆発の衝撃は、逃げ惑うエルフたちにも達していた。

 

「い、今のは……」

 

 何が起こったのかわからない。鋼鉄の馬車から何かが発射されたかと思うと、眩い閃光が煌めき、続いて轟音が響いた。

 

「なんなの……これ……」

 

 思わず閉じてしまった目を開けとき、テュカは恐るべき光景に愕然とした。

 

 あちこちに炎が燃え盛って尋常な被害ではなく、うめく負傷者を仲間たちが手当てしている。

 だが、最早この場に『炎龍』の姿は無い。それは、つまり――。

 

 あの緑色の服を着た人たちが、炎龍を追い払ったのだ。

 

「そんな……炎龍を、一撃で……」

 

 信じかねるように呟く。周囲にいる仲間のエルフたちも、余りの事に言葉も出ない。数百年を生き た父のホドリューでさえ、蒼ざめた顔でそれを見つめていた。

 

 大変なことになった……未だに目の前の光景が現実のものと思えぬ自分がいる。炎龍を生身の人間が追い払う、それが何を意味するのか彼らには分かっていないに違いない。

 

 どうしよう、という言葉が頭の中を駆け巡る。

 

 炎龍を一撃で倒し、村を守った英雄であるはずの自衛隊……そんな彼らにテュカは感謝するより先に恐怖を覚えた。

 

 それほど、彼女たちにとって炎龍は恐ろしく強大な存在で――。

 

 それをあっさりと倒した自衛隊は更に恐ろしい存在に違いないだろうから。

 

  




今回は炎龍戦でした。

にしても、アニメ2期は「炎龍編」と銘打ってるのに、炎龍の出番が少なくて(ry
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