スピード規制は守る 作:カバ
ジェットは一度戻って来たエルザに、ルーシィ達が受けた依頼を続行させる様に提案する。
「ダメだ」
一考の余地も無く切り捨てられる。
ジェットもその結果は分かっていた為、ある物を取り出す。
彼が取り出した物のは、呪われた島『ガルナ島』の依頼書。
その依頼を正式に受理した証明として発行される承諾書であった。
「
「……何だと?」
この対応にはエルザも驚く。
彼女はジェットから紙を掻っ攫い、食い入る様に見詰める。
その紙にはギルドが依頼を受理する際に押す正式な印もあり、エルザから見ても本物であった。
彼女は先程の鋭さより二割増しとなった視線をジェットへ向ける。
「ジェット……
「出発する前に正式な手続きをして、依頼を受けただけだ。単純な話だろ?」
「貴様……!」
エルザは持っていた剣をジェットへ向ける。
それにも動じずに彼は言葉を続ける。
「……オレだって、オマエの怒りは理解できるさ。マスターと
「お願いエルザ!! 私、島の皆を助けてあげたいの!!」
「あい!! オイラもです!!」
ジェットに便乗し、ルーシィとハッピーも懇願する。
彼の考えを聞いてたエルザは一応の理解を示す。
「……オマエの思惑は理解できた。だがルーシィ達をサポーターとして使用するのは許可しない」
エルザはジェットに最低限の許可を出す。
「邪魔するぞ」
皆が会話をしているテントに人が入って来る。
それは先程まで眠っていたグレイだった。
「エルザ!? それにジェットも!!」
彼は中に居た二人に驚きの声を上げた。
グレイの登場にエルザは、ジェットに向けていた視線を彼に変更する。
「大体の事情は、ルーシィから聞いた。お前はナツ達を止める側ではなかったのか? 呆れて物も言えんぞ、グレイ」
冷たく言い放つエルザに恐怖と後ろめたさの感情に視線を泳がせる。
だが視界にナツが見えなく疑問を抱く。
「ナ……ナツは?」
「それは私が聞きたい」
グレイはエルザを出来るだけ視界に入れず、正座させられているルーシィへ疑問を問う。
「ルーシィ……ナツはどうした?」
「わ……分からない。村で零帝の手下と戦ってた筈なんだけど……」
ルーシィは傍に居るエルザにビビりながらもグレイに事情を話していく。
「ソイツ等は片づけられてたのに、ナツの姿が見えなかったの。そ……それでね……グレイの所に連れてけって言われて……」
「そうだったのか……良くこの場所が分かったな? ここは村の資材置き場だって聞いたぞ」
「オイラが空から探したんだよ。縛られたまま……」
「つまりナツはこの場所が分からなくてフラフラしてる訳だな」
ルーシィとグレイの会話を聞いたエルザは、再度ナツを探しに行こうと立ち上がる。
「グレイ、ナツを探しに行くぞ。見つけ次第ギルドに戻るぞ」
「な、何言ってんだ! 事情を聞いたなら、今この島で何が起こってるのか知ってんだろ!?」
「その件についてなら、そこに居るジェットがS級魔導士として、正式に依頼を受けた。後の事はジェットに任せて、お前達は私とギルドに戻って貰おう」
「――それはホントなのか、ジェット!?」
その言葉を聞いてグレイはジェットへ向き直る。
「ああ、エルザが言った事は本当だ。ここに書類もある。オマエはナツ達とギルドに戻れ」
「だけど……!」
グレイはジェットの話を聞いて迷う素振りを見せる。
その様子にエルザの視線が鋭くなる。
「何だグレイ。不服な事でもあるのか?」
「…………オレもこの依頼に参加させてくれ」
エルザは自分の耳を疑う。
「……貴様、今、何と言った?」
「――だから、オレを今回のS級クエストに参加させろって言ってんだよ!!」
彼女の再度の疑問にグレイは自身の願いを打ち明ける。
彼の言葉に多少緩くなっていたエルザの視線に鋭さが戻る。
「オマエは今回、巻き込まれた側だ。故に大目に見てやるつもりだったが……勝手が過ぎるぞ」
「何とでも言ってくれて構わねぇ……オレだって身勝手すぎる要求なのは、分かってるつもりだ。でも……今回の依頼は、オレ自身が解決しなきゃならねぇ事なんだ」
グレイはジェットに告げる。
「ジェット……オマエに今回の依頼を任せちまえば全部解決しちまうと思う。だけど……それでもオレは……自分の手で方を付けたいんだ。――頼む……」
頭を下げて懇願するグレイ。
そんな彼の願いに、
「――いいぞ」
ジェットは比較的に軽い感じで願いを聞き入れる。
「……済まねぇ、ジェット!」
グレイは感謝する。
だが、横で聞いていたエルザが割って入る。
「ジェット!! 私はサポーターの件、許しを出してはいないぞ!!」
「グレイの責任はオレが持つ。それで良いだろ?」
「マスターからの命を
「マスターには事前にこういった状況に陥るかもしれないから、帰りが遅くなると伝えておいた」
エルザが言う事を想定し事前に解決しておくジェット。
彼の言葉に言いたい事が多くあったエルザだったが、そこで一旦口を閉じる。
彼女は疲れた表情を見せる。
「……貴様の方が、私より一枚上手だったという訳か」
「オマエが結構単純なだけだ」
「…………はぁ」
そこまで会話したエルザはグレイ達に向き直る。
「――まずは依頼を片付ける。話はそれからだ。だが、お前達の罪が消えた訳ではない。ギルドに帰還したらキッチリと罰は受けてもらう、いいな?」
「ああ、分かってる」
エルザの言葉を素直に受け入れるグレイ。
「ありがとう! エルザ、ジェット!」
心強い仲間を得て喜ぶルーシィ。
「ナツも早く探してあげなくちゃ……」
ナツの行方を心配するハッピー。
「――では、手早く済ませるぞ」
エルザは皆を先導し、先を急ぐ。
「……さて、後はナツの野郎だけだが……まず出合い頭に一発殴る……いや、一蹴り入れるか」
ジェットは遺跡に向かいながら、今回の主犯であるナツをぶっ潰す事を再度心に誓う。