スピード規制は守る   作:カバ

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実力の一部

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回の依頼は、『ガルナ島』で起こった島の住人の悪魔化を解く為に月を破壊する事。

 無論、月を破壊する事は出来ないので別の解決口を探す。島を調査する事にしたルーシィ達は、島にあった遺跡で悪魔『デリオラ』の封印を解こうとする怪しげな一団を発見。

 一団を率いる零帝(リーダー)の名は『リオン』。

 彼の正体はグレイの旧友であり、魔法の兄弟子にあたる氷の造形魔導士だった。

 

 彼等の目的は、目覚めたデリオラを打倒する事。

 住人の悪魔化は、一団が行っている儀式『月の雫(ムーンドリップ)』の影響だとルーシィ達は考える。

 儀式を行っているリオン達を倒し、中止させる事で今回の依頼は達成される。

 

 ……と、これが今回の出来事を纏めた情報(モノ)だ。

 

「――てか、月の雫(ムーンドリップ)の影響で島の人間が悪魔になった(・・・・・・)訳じゃないだろ?」

 

 ジェットは何気なく言う。

 

「えっ? どういう事?」

 

 ジェットの言葉にルーシィは疑問を感じる。

 彼は自身が知り得る情報を告げる。

 

「まず、この島が呪われた島……いや、悪魔の島(・・・・)と呼ばれだしたのが何時(・・)か知ってるか?」

 

「最近の事じゃないの?」

 

 ”違う”とジェットは言葉にする。

 

「この島が悪魔の島と呼ばれだしたのは、少なくともここ数年の話じゃない。もっと(まえ)からだ」

 

「なら、リオン達の儀式と住人の悪魔化は関係ないのか?」

 

 グレイは自分達の推理は勘違いだったのかと聞く。

 その答えにも”違う”とジェットは返す。

 

「いや、依頼内容に月の雫(ムーンドリップ)が影響してるのは間違いない」

 

「……?? ルーシィ、結局ジェットは何が言いたいの?」

 

「ごめん、私にも良く分からない……」

 

 ジェットの変な物言いにハッピーは混乱する。

 彼女も彼の話についていけなかった。

 

「いや、だから……」

 

「お前達、無駄話はそこまでにしろ。私達が今しなければならない事は、リオン達を倒して儀式を中止させる事だけだ」

 

 ジェット達の話し合いを中断させてエルザは先を急ぐ。

 彼女に急かされ、皆も移動速度を速める。

 一行は目的地の遺跡が目視できる場所まで辿り着く。

 

「「えぇぇぇぇ!?」」

 

 遺跡を見たルーシィとハッピーが驚きの声を上げる。

 それは彼女達が最初に訪れた時とは違って、建物が随分と傾いていたからだ。

 

「遺跡が傾いてる!?」

 

「どうなってんだー!?」

 

「……ナツだな。どうやったか知らねぇが、こんな出鱈目するのはアイツしか居ねぇ」

 

 驚く二人を余所にグレイは考察する。

 

「狙ったのか、偶然か……どちらにせよ、これで月の光はデリオラに当たらねぇ」

 

「ならさっさと遺跡に…………いや、敵の片づけが先か」

 

 ジェットが先を足そうとしたが、辺りの草むらからガサガサと何かが近づいてくる音が響く。

 音が鳴る草木から『月の雫(ムーンドリップ)』の儀式を行っていた装束服の一団が姿を現す。

 

「見つけたぞ! 妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!」

 

「うわっ!?」

 

「変なのがいっぱい来た!!」

 

 気付いた時には辺りを囲まれる様に敵が出現していた。

 ジェットはグレイに視線を向ける。

 

「行けよ、グレイ」

 

「っ!」

 

 ジェットはグレイに告げる。

 彼はその言葉に目を見張った。

 

「ここは私達に任せろ」

 

「面倒だが、役回り的に俺達の仕事だからな」

 

「エルザ……ジェット……」

 

 グレイはエルザとジェットの二人が、率先して協力してくれる状況に戸惑いを感じる。

 そんな彼の戸惑いに気付きながらも二人は言う。

 

「リオンとの決着をつけてこい」

 

「兄弟子に勝ってこいよ」

 

 グレイに背を向けながらエルザとジェットが告げる。

 彼女達の言葉に背を押され、グレイは遺跡へと駆けだす。

 

 遺跡に駆けだしたグレイの後を数人の敵が追おうとする。

 だが、敵の眼前にジェットが立ちはだかる。

 

「――さて、なら始めるとするか」

 

 彼は屈伸などの準備運動をしながら告げる。

 

「――手早く済ませるぞ」

 

 エルザは換装で取り出した剣を構える。

 

「よし! 私は二人の邪魔にならない様に端っこで戦ってるね!」

 

「うわーサボりだー」

 

「うっさい猫!」

 

 そんな二人に後を任せて、一人で非難するルーシィ。

 彼女の対応にハッピーが非難する。

 

 リオンの撃退をグレイに任せ、三人(と一匹)の戦いが始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレイの行かせた後、ジェットの周りを二十人前後の敵が囲い込む。

 

「零帝様の邪魔はさせないぞ!」

 

「我等の願いはきっと……あの御方が遂げてくれる……!」

 

「覚悟しろ! 妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士!」

 

 戦意を滾らせる敵の一団。

 そんな敵の姿に多少の疑問を感じながらジェットも魔力を練る。

 

「――オマエ等が何をやろうと関係無いが、今回の依頼には邪魔な存在だ。どんな思惑があるのか知らないが、早々に倒させてもらうぞ」

 

 ジェットは右足を少し下げ、走り出す体勢を整える。

 相手もそれに合わせて合図を送る。

 

「行くぞ、皆! 妖精の尻尾(フェアリーテイル)を打ち取れ!!」

 

 ジェットに対して三人の敵が同時に仕掛ける。

 彼は迫り来る敵を見据えながら、

 

 

 

『――開始(スタート)

 

 

 

 静かに呟く。

 その瞬間、

 

「ぐわっ!?」

 

「ぐぅっ!」

 

「あぁ!!」

 

 ジェットに突撃した三人がほぼ同時に吹き飛ばされた。

 そして、彼等の前に今まで存在したジェットの姿が掻き消える。

 

 彼が消えるとヒュンヒュンという風切り音と同時に、辺りにカマイタチの様な現象が発生する。

 この異常事態に、攻勢に出ようとした敵の歩みが止まる。

 何がどうなっているのか分からず、戦場は混沌と化す。

 

「一体、何が起こってる!?」

 

魔法を使った素振りは無かったぞ(・・・・・・・・・・・・・・・)!?」

 

「何の魔法を使ってるんだ!!」

 

「それよりもジェット(ヤツ)は何処に消えた!?」

 

 敵はジェットの不可解な攻撃に動きが止まり、消えた彼を見つけようと手当たり次第に探す。

 

「――良いのか? そんな無防備な姿を見せて?」

 

 ジェットは敵に手心を加える程、甘くはない。

 彼等の致命的な隙を的確に突く。

 

「ぎゃっ!?」

 

「がっ!!」

 

「うわぁ!!」

 

 周りを木々で覆われ視界が限られる中で、一人、また一人と見えない攻撃に吹き飛ばされる。

 その異常な状態に残りのメンバーが恐怖を感じる。

 

「――何なんだよ!? この状況は!! 一体……なんなんだよぉぉぉおぉおおぉぉ!?!?」

 

 見えない敵……見えない攻撃……一人が声を荒げる。

 叫んだ男は手に持った所有系(ホルダー)の魔法杖を使って、辺り一帯に無差別魔法を放つ。

 無差別に放った攻撃はジェットには当たらず、味方の一団に当たっていく。

 

「おい!? 止せ!! 何を考えてんだ!!」

 

「敵の術中に嵌るな!」

 

「うるせぇ!! ならどうすればいいんだよ!?」

 

「それをいま考えるんだろうがっ!」

 

 思い通りにいかない現状に皆が苛立つ。

 

 

 

『――終了(エンド)

 

 

 

 そう呟き、彼等の前にジェットがその姿を現す。

 

「――はぁ……弱いとは思っていたが、ここまでとはな……」

 

 ジェットは敵の弱さに溜息を吐く。

 

「貴様……!」

 

 そんなジェットの姿を見た敵は明確な怒りを示す。

 

「我々に恐れをなして姿を隠していた貴様に、その様な事を言われる筋合いは無い!!」

 

「……はっ?」

 

 ジェットは茫然とした表情をする。

 敵は得意げに語る。

 

「恍けても無駄だ! 現に貴様は、我等と対峙した瞬間にその身を隠したであろう!! こそこそと隠れながらでないと攻撃も出来ない臆病者めぇ!」

 

「いや、別にオレは隠れてはいなかったぞ? 現に攻撃して見せただろ(・・・・・・・・・)?」

 

「嘘をつけ! なら何故、我等にオマエの姿が見えなかった!!」

 

「それは言葉通り、オマエ等には見えてなかっただけだろ(・・・・・・・・・・・)?」

 

「なら我等が見えてなかった原因とは何だ!」

 

「――オレが速く走ってた所為で、肉眼では捉えられなかった。――それだけだ」

 

 ジェットはそう告げた。

 

「……………………はっ?」

 

 彼の言葉に今度は敵が茫然とした表情を取る。

 

「だからオマエ等が仕掛けて来た瞬間から、さっきまでずっとただ走ってただけだよ」

 

「ふっ……ふざけるな!? 走っていただけだとぉ!? そんな訳ある筈ない!! 私達はオマエから見えない攻撃を受けたぞ!?」

 

「ああ、それは走って体当たりしてただけだ」

 

「……体当たり……だと……?」

 

 彼はジェットの言葉を理解しきれなかった。

 消えたのはただ走っただけ……見えない攻撃の実態はただの体当たり……

 常人の理解が及ぶ範囲に回答はなかった。

 ジェットは口にする。

 

「オレはまず、この準備運動(・・・・)で敵の強さを計るんだ。戦うべき相手か、それ以下をな。その結果、オマエ達はそれ以下になった。だから……一瞬で楽にしてやる」

 

 ジェットは地を蹴り、一瞬で何十mも飛び上がる。

 敵はまた消えた彼の姿を必死に探す。

 

 敵の一人が上空に身を投げるジェットの姿に気付く。

 それに釣られて残りの敵が一斉に見上げる。

 

 ――そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――隕石(メテオライト)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日、ガルナ島の一画に小さなクレーターが誕生する。

 

 

 

 

 

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