スピード規制は守る 作:カバ
デリオラが倒れた後、リオン達一同はジェット達に降伏する。
だが、ジェット達は彼等の過ちを問わず拘束する事も無かった。
リオン達の処置が終わった後、島の呪いを解く為にジェット達は住人達の元へ戻る。
彼等が戻った際、消滅した村がその姿を元に戻していた。
その現状にジェット達は驚愕するが、考えるのは後回しにして呪いの解除を優先。
帰路の際にジェットがナツ達に事件の種明かしをした為、すぐに島を覆っていた膜を破壊する。
その結果、
何故、ジェットは謎が解けたのか?
答えは簡単。彼は事前にこの島に住む住人が本物の悪魔だと知っていたのだ。
ジェットは以前、悪魔について調べていた時期があり、その際にこの島の現状を知る。
故に今回の依頼は、彼が到着した時点で終わっていた様なモノであった。
島の住人は呪いから解放され、喜びを露わにする。
ジェット達は事件の解決を祝って催された宴の席に招待される。
皆はその申し出を受け入れ、村で一夜を過ごした。
宴の最中にリオン達が姿を現し、住民に謝罪する等の出来事が起こる。
リオン達の謝罪を島の住民は受け入れ、無事に宴は幕を閉じた。
翌日ギルドに帰還する際、村長から成功報酬の八百万を譲られるが受け取りは拒否する。
ナツ達の行動は
しかし、村長達の好意を全て無下にするのは忍びなかった為、追加報酬の鍵だけを貰い受ける。
――そしてジェット達一行は、島の住人に見送られながらガルナ島を後にした。
「――以上が今回のガルナ島で起こった、大まかな出来事です」
「――うむ、ようやった。ナツ達の勝手な振る舞いを除けば、仕事を熟せたと考えて良かろう」
青年が今回の件についての報告を終える。
その報告にマスターが労う。
だが、マスターの反応に難色を示す。
「……一歩間違えれば、島の住人が死んだかもしれないんですよ? その判断は甘いと思います」
どうやら彼は、危機感が足りない事を危惧している様だ。
それでもマスターは悠々と構える。
「結果として皆が無事じゃったのじゃ。そう堅い事を言いなさんな」
マスターの言葉に、苦虫を噛み潰した表情をする。
「……まさか、罰も与えない御つもりですか?」
「――それこそ
その時の表情は、親の顔ではなくギルドの皆を纏める
それを見て、漸く彼は安堵の溜息を吐く。
「――人間とは過ちを確り理解してこそ、前に進める生き物です。犯した罪の重さを理解できないバカは、生きている価値すらありません」
「――お主の言葉には言い過ぎな部分が多々あるが……確かにそうじゃな。安心せい、ナツ達にはワシから確りと罰を与える」
それを最後に、マスターと
「――って、何を呑気にオマエはじーさんと話し込んでんだよォ!?」
その光景を見た
「煩いわボケ! オマエ達が勝手な行動を取るから、こうして何が起こったのかマスターに一から説明してんだろうがよォ!?」
「時と場合を考えろよ!? 今はそんな事をやってる場合じゃないだろうがァ!?」
「ふざけんな!! 今回の一件は絶対、有耶無耶にさせないぞ!! オマエ達には、キッチリと罰を受けて貰うからな!!」
「分かった! オマエの言いたい事は分かったから! まずは
「……って言ってもなぁ~、
「何か考えろよ!? オマエだって
その一角ではナツ、ルーシィ、エルザ、ハッピーの計四名が主に騒いでいた。
「こんな姿はもうイヤー!!」
ナツが床に伏せながら女子の様に涙を流す。
そして口からは、火をよだれの様に垂らしていた。
「胸が重い……腰も痛い……あーもう!! メンドくせーぞ、女の身体って!?」
ルーシィが天に向かって雄たけびを上げる。
腕や足を乱暴に振り回して遣る瀬無さを身体で表現している。
「ねぇねぇ見て見てー! じゃーん! 換装ー!」
エルザがそう言って、スク水ツインテールに変身する。
彼女の表情には、今まで見た事の無い様な笑みが浮かんでいた。
「止めんかーーっ!!」
そんなエルザに何故かハッピーが果敢にも挑む。
だが振り向いた拍子に彼女の肘がハッピーの顔面にめり込む。
ハッピー、無残に撃沈。
死屍累々とは今の状況の事を指すのだろう。
「……まさにカオスだな」
壮絶な光景を目の当たりにして、
「いや、オレとオマエの状況も十分にカオスだからな? そこんとこ理解してんのか?」
一体……この六名に何が起こったのか?
時間を数十分前の時空軸に戻してみよう。
「マスターは居られるか!」
そうエルザが告げながら、ジェット達一行はガルナ島からギルドへ帰還する。
彼等の無事な姿を見て、受付嬢のミラが声を掛ける。
「あらエルザ、お帰りなさい。ナツ達を無事に連れて帰って来たのね」
「ミラか、マスターは居られるか?」
ミラの挨拶もそこそこにして、マスターの姿を探すエルザ。
「評議会の何たら解剖だとか何とかで、三日前から居ないぞ」
「何時頃になったら戻られる?」
「多分、もうちょっとで帰って来る筈よ」
エルザにマカオとミラがそう伝える。
彼女は”そうか”と言って先程までの気持ちを抑える。
エルザの後ろで今まで静かにしていたナツとグレイとハッピーが安堵の溜息を吐く。
「よっしゃあ! 今の処は
「熱くねぇのに冷や汗を掻いちまったぜ」
「良かったよぉー! オイラ達、まだ
そんな彼等の態度にルーシィが恐怖する。
「だから一体、
「静かにしていろ! オマエ達!」
騒がしくなった後方にエルザが睨みを効かせる。
それだけで先程の騒ぎは消え失せた。
「一旦、休憩しないか? 遺書を書かせる位の時間があってもオレはいいと思うぞ?」
「……そうだな。マスターも多少時間を置けば帰還するだろう」
ジェットの物騒な提案にエルザが承諾する。
ナツ達はその間、互いの身体を抱き合って震えさせる。
「ホントに
ルーシィが恐ろしさのあまりちょっと発狂した。
「んっ? 何か変な依頼があるぞ?」
エルザから解放されたナツは気分転換にギルド内を歩き回り、
「あっ? 何だそりゃあ?」
横に立っていたグレイもその依頼書に目がいく。
そこへジェットが立ち寄る。
「ナツ、グレイ、何か見つけたのか?」
彼は二人に何かあったのかと声を掛ける。
「いや、何か変な依頼書があんだよ」
「どれだ?」
「何々? ナツが何か見つけたの?」
「オマエ達! 大人しくマスターの帰りを待てんのか!」
ナツ達の騒ぎにルーシィやエルザも集まって来る。
「え~何々、『この文字の意味を解いた方には、五十万を差し上げます』……だってよ!」
「あい!」
ナツが怪しげな依頼書を手に取り、その依頼内容を読み上げる。
その内容にグレイが怪訝な表情をとる。
「文字の意味? 珍しい依頼だな……ってコレ、古代文字じゃねぇか! 誰が読めんだよ……」
彼はナツが机に置いた依頼書の中身を見て呆れる。
「でも隣に現代語訳が書いてあるよー」
「だから止めろと言っている!」
「読んでみようぜ! 何々……ウゴ・トゥル・ラス・チ・ボロカニア……全然分かんねー!」
エルザが皆を窘めるが、ナツが現代語訳に従って依頼書を読み上げてしまう。
――すると、
『!?!?』
依頼書から発生した虹色の輝きが、ナツ達の周囲を包み込む。
「何だありゃあ?」
「へー、人間ってヤツはお仕置きの恐怖に耐えられなくなると虹まで出んのか?」
「……何か違くね?」
ナツ達を見ていたマカオとワカバが下らない事を話し合う。
虹の光は次第に収まり、後には普段と変わりがないナツ達の姿がそこにはあった。
だが、変化はすぐに訪れた。
「――何か肌寒いな……って、オレはいつの間に上半身裸になったんだ?」
グレイは自身の体を抱きながら肌寒そうに摩る。
エルフマンがそんな彼の姿をみて怪訝な表情をする。
「あ? 氷の魔導士が何で寒がんだよ?」
「別にオレは氷の魔法なんて使わねーぞ?」
寒さに強いグレイが寒いと言う姿を見て、ギルドの連中は疑問を浮かべる。
「氷の魔導士っていったらオレの事だろうがよ」
「いや、オマエはそんな魔法使わねぇだろ?」
ジェットが自分を指さしながら告げるが、エルフマンが”違うだろ”と指摘する。
「あ、暑いィ!? 何コレ!? 何で身体がこんなに暑いの!?」
「暑いって……炎使いのオマエがか?」
ナツの”暑い暑い”という発言に皆は珍獣を見る様な視線を向ける。
「お、重てェ!? 何か胸が異様に重てェ……って、何でオレにオッパイが付いてんだァ!?」
次にルーシィが自身の身体に付いている胸を持ち上げながら声を荒げる。
「女の子なんだから当然の事だろ?」
「てかルーシィちゃん、何か声のトーンがいつもと違うような……」
普段の彼女と違う反応に戸惑うマカオとワカバ。
そんな彼等の言葉にナツが返事をする。
「そ、そんな事ない……ってアレェ!!?」
ナツが隣に居るルーシィを視界に収めると何故か驚愕する。
そんな騒がしくなった彼等の前に、
「オマエ達! 一体何を騒いでいる!!」
ハッピーがキリっとした表情で皆を叱咤する。
「ナツー! 見て見て!!」
「あん? 何だよエルザ?」
普段の口調とは懸け離れたモノでナツを探すエルザ。
そんな彼女に何故かルーシィが返事を返す。
「オイラの体にカッチョイイおっぱいが2つついてるよ! ホラホラ!」
「「「おおっ!!」」」
エルザは自身の胸を持ち上げて誇らしげに見せびらかす。
男性メンバー達がその光景に興奮の声を上げる。
「止めんかーーっ!!」
そんなエルザを止めようと、何故かハッピーが彼女に跳びかかる。
――ガンッ!
「ッ!?」
だがエルザが鎧を纏ってしまい、逆にダメージを受けてしまう。
「このネコ型体型は何なのだ? というか、コレはネコそのものだ! 換装した覚えなどないぞ!」
ハッピーは床に膝を突き、訳が分からないと喚いていた。
「誰か上着を貸してくれないか? 地味に寒い」
「何でオレがもう一人居んだよ!?」
「キャー!? 目の前に私に似た美少女が居る!?」
「胸が重たいから腰にくる!? 誰か助けてくれー!!」
「何か知らないけど目線も高くなったよー」
ナツ達の奇行にギルドの皆が呆然とする。
そんな中、ハッピーが凛とした声で言い放つ。
「オマエ達! まだ気づかんのか! 私達は今、心と体が入れ替わっているのだ!!」
『……ええーーーっ!!?』
「……まあ、知ってたけど」
その言葉に当事者であるナツ達、周りで様子を見ていたギルドの全員が騒然とする。
その中で唯一、ジェットだけがこの状況に適応していた。
「どういう事だ!? ハッピー!!」
「私はエルザだ!」
「ハッピーはオイラだよ!? 酷いよルーシィ!!」
「私はコッチ!!」
このややこしい現状を比較的冷静なエルザが纏める。
「つまり中身は、ジェットとグレイ……ナツとルーシィ……そしてあろう事か私とハッピーが……入れ替わったのだ!!」
『えぇーーーーっ!!?』
「何であろう事か何だよぉ!?」
そこへ……
「古代ウンペラー語の言語魔法……『チェンジリング』が発動したんじゃ」
ギルドの入り口前に立っていたマスターがギルドの皆に告げる。
「マスター!!」
「じっちゃん!!」
マスターの下に入れ替わった面々が駆け寄る。
駆け寄った彼等にマスターは話を続ける。
「依頼書が原因じゃ。あの呪文を読み上げると、その周囲にいた人の人格が入れ替わってしまう。これぞ……チェンジリングじゃ」
マスターの話を聞いてナツ達一同は愕然とする。
そんな中、
「お前、中身はナツなんだな?」
「ああ」
「テメェ!! 何てことしやがった!?」
「知るかっ!! 依頼書をちょっと読んでみただけだろーがっ!!」
「止めんかジェット…いやグレイ」
言い合う二人をマスターは宥め、続きを説明する。
「この魔法で入れ替わるのは人格だけではない。魔法も入れ替わるのじゃ」
「「「はぁ!!?」」」
「そして、最後にもう1つ。『チェンジリング』が発動して三十分以内に呪文を解除しないと……未来永劫元に戻る事はない……という言い伝えもある」
『ッッッッッ!?!?』
それを聞いて皆は愕然とし、
「ミラさん!! あれから何分経ちました!?」
「十六分。後……十四分よ」
残りの制限時間を知り、入れ替わった者達が焦りだす。
「じっちゃん!! 元に戻す魔法は!?」
「うむ、なんせ古代魔法じゃからのぉ……そんな昔の事は……ワシはよう知らんっ!!」
『なっ!?!?』
マスターの言葉に絶望的な表情を浮かべる。
「――ま、せいぜい頑張ることじゃ」
マスターはそう告げてギルドの奥へと戻ろうとする。
残された入れ替わり組の殆どが呆然とその場で膝をつく。
だが……
「マスター。ガルナ島の一件、今から報告します」
その行動には流石のマスターも唖然とする。
「……えー、ジェット? お主、チェンジリングの事はよいのか?」
マスターの言葉に
「――大丈夫ですよ。オレには心強い友が居ますから……後の事は任せていいか、レビィ?」
彼の言葉と同時に、
「――うん! 私に任せてよ!!」
頼もしい声がギルド一帯に響き渡る。
全員の視線が出入り口へ向かう。
「レビィちゃん!!」
「オレも居るぜ!!」
彼女の傍にはドロイも居た。
「いや、今回オマエはいらないだろ?」
「ヒデェ!?」
もう一人の友には冷たい反応を返す。
「オレだってオマエを助けてぇんだよ!!」
「ドロイ……オマエ……」
ドロイの言葉に
「――という訳で、頼んだぜ! レビィ!」
「うん! ジェットとルーちゃんの為だもん!! 私、頑張るよ!!」
「ドロイ……オマエ……」
そんな漫才を繰り広げる二人を捨て置き、皆はレビィの周りに集まる。
「で、どうすんだ?」
「私、古代文字にちょっと詳しいんだ。だからまずは、この依頼書の文字を調べてみる」
「時間がねぇ、間に合うのか?」
「とにかく、この場はレビィに任せよう」
「因みに残り時間はあと十分よ」
レビィは作業に取り掛かり、依頼書の古代文字に関連しそうな文献を調べ始める。
その様子を見て、
「――で、あの後から何も進展が無かった訳か」
「……ああ、レビィも頑張ってくれてるが正直厳しいだろうな」
「じいさんが言ってた通り、オレ達の魔法は入れ替わってた。だが本来の力より弱体化しすぎて、使い物になりゃしねぇ。これじゃギルドの仕事にも支障が来ちまう。だから何としても、オレ達は元に戻らなくちゃならねぇんだ」
そんな
「――グレイ、魔法ってのはどんなモノだと想う?」
「はっ? オマエ、いきなり何を言ってんだ?」
「まあまあ、良いから答えてくれ」
「”自由”……オレが魔法をどう捉えているかって言われたら、この言葉しか思い浮かばねぇな」
「――”自由”か……なら何でオマエは、変な考えに囚われているんだ?」
「……ジェット、オマエついに頭がおかしくなっちまったのか?」
その反応に”心外だ”と返事を返す。
「魔法ってのは”自由”なモノ何だろ? なら、オマエは
「……だから、どうやって使うんだよ?」
「――創造しろ。オマエ自身が氷の造形魔法を扱う時の様に、
「…………………………………………」
一秒……五秒……十秒、短くとも彼の中でイメージが固まるのは十分な時間が経つ。
――そして、
「――
だが、
――走り去った後に残る、荒々しい風を……
「……ジェット? もう、制限時間の三十分過ぎたけど?」
「…………………………………………あっ」
――やっちゃったZE☆!