スピード規制は守る   作:カバ

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ジェットの怒り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――はぁ、一時はどうなるかと思ったぜ」

 

「えっ? オマエ結構余裕そうじゃなかったか?」

 

「でも、ホントに良かったよ。二人が入れ替わったままだったら、私達だって戸惑うもん」

 

 シャドウ・ギアの三名は依頼を達成した帰路の途中で、先日に起こったチェンジリングの騒動について話し合っていた。

 

 ジェットがグレイに魔法の指導?なるものを行っていた間に制限時間の三十分が過ぎてしまう。

 だが、レビィが時間内に解決法を発見してナツとルーシィの入れ替わり組は元に戻る。

 

 その場に居なかったジェット達、間に合わなかったエルザ達の組は元に戻る事が出来なかった。

 問題はそれだけに留まらず、レビィのちょっとしたミスにより、他の者にまでチェンジリングの効力が及んでしまう。

 

 皆がその結果に騒然とする中、マスターが唐突に一端の解散指示を告げる。

 その指示にギルドの中が騒がしくなるが、マスターは有無を言わせずに皆を家へ帰還させる。

 

 入れ替わった者達はどう過ごすか話し合い、結局は互いに近くで過ごすという結果に落ち着く。

 異性で中身が入れ替わった者同士がどう過ごしたのかは、秘密だ。

 

 そして皆は、マスターの指示通りに一夜を過ごす。

 その結果、皆の入れ替わりは自然と元に戻っていた。

 

 後にマスターから話を聞くと”あくまで言い伝えレベルの与太話”とぶっちゃけられて、マスター自身はチェンジリングの言い伝えを信じていなかったらしい。

 言い伝えが本物だったとしても、マスターは呪文を解除できる手段が在ったとの事だ。

 マスターは”年寄りの茶目っ気だから許ちて!”と宣った為、エルザ等の怖い人から説教される。

 

 こうして、チェンジリングの騒動は幕を閉じた。

 

「まっ、オレからしたらグレイの造形魔法を勉強できる良い機会程度の騒動だったなぁ」

 

 騒動の中心人物だったジェットが気軽に告げる。

 彼のセリフにドロイが呆れる。

 

「……オマエってホントにそういう所は図太いよな。少しは考えて行動しろよ」

 

「まぁまぁ、ジェットは昔からこういう性格だから今更仕方ないって」

 

 レビィが相槌を打つ。

 三人はいつもの様にギルドに帰還する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――だが、ギルドはいつもとは違った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三人は自身の目を疑う。

 

「…………はっ?」

 

 ジェットはその光景を理解できず、

 

「嘘…………!?」

 

 レビィは信じたくないと目で訴え、

 

「おいおい、マジかよ!?」

 

 ドロイはただただ驚くばかりだった。

 

「――オレ達のギルド(いえ)が……壊されてる、だと……!?」

 

 ジェットの発言通り、そこに在ったのは巨大な鉄棒の様なモノで至る所を無残に貫かれたギルド妖精の尻尾(フェアリーテイル)の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――納得いかねぇよ!!! オレはアイツ等を潰さなきゃ気が済まねぇ!!!」

 

 妖精の尻尾(フェアリーテイル)の地下一階で、先程依頼から帰還したナツ達がマスターに対し抗議する。

 それを離れた所で見つめるシャドウ・ギアの面々。

 

「……オレもマスターに抗議しようかな?」

 

 ナツの姿を見てジェットが席を立とうとする。

 それをドロイが止める。

 

「止めとけって、オマエもさっきマスターに散々抗議しただろ?」

 

「――だけどよぉ……!」

 

 ジェットは悔しさを滲ませながら告げる。

 そんな彼をレビィが静かに宥める。

 

「……ジェット、皆気持ちは一緒だよ? だから、ここは耐えよう? ねっ?」

 

 彼女の言葉にジェットは漸く冷静さを取り戻す。

 

「……スマン。頭を冷やしてくる」

 

 そう言ってジェットは、ギルドの外へ出掛ける。

 彼の後姿を見詰めながら、残った二人は遣る瀬無い思いを感じる。

 

「……レビィ、ジェットを止めてくれて正直助かった。ありがとう」

 

 ドロイの言葉にレビィは”別に良いよ”と返す。

 

「私も、ジェットの気持ちは凄く理解できるから……」

 

「――アイツは妖精の尻尾(フェアリーテイル)がホントに大好きだからな。今回の件は相当怒ってる筈だ」

 

 ドロイは相方の心境を心配する。

 ”だからこそ”とレビィは会話を続ける。

 

「――戦闘でいつも頼りにしちゃってるから、こんな時こそ私達でジェットを支えてあげよう」

 

「……あぁ、そうだな」

 

 妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルド内において、シャドウ・ギアは特に仲間思いの良いチームであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジェット、少し良いかの?」

 

 気分転換に少し外出した後、ギルドに戻ったジェットはマスターに呼び止められる。

 ドロイとレビィは話が終わるまで待つと言ってくれたが、彼は二人を先に帰らせた。

 

「何です、マスター?」

 

「なに……ガルナ島の一件についての処分がまだだったと思っての。コレを今からルーシィの家に届けて貰えんか?」

 

 そう言ってマスターは原稿用紙の束を渡してくる。

 ジェットは相手の考えを瞬時に察し、不機嫌だった表情に笑みを浮かべる。

 

「――原稿用紙(コレ)を……ナツ達に使うんですね?」

 

「――ワシの考えが分かったか?」

 

 ジェットとマスターは厭らしく笑いながら同時に答える。

 

「「――反省文をナツ達に書かせる」」

 

 二人は一瞬の間を空けた後、”わっはっは!”と声高らかに笑う。

 

「いや~良いですねぇ。特にナツなんかにはこの罰は効くでしょう」

 

「ナツの頭の回転速度は悪くないが、こういった物書きは苦手じゃからのぉ~」

 

 二人は良い罰だと笑い合いながら話し合う。

 ジェットは原稿用紙を届ける為、ギルドを後にしようとするがマスターから忠告を受ける。

 

「皆には伝えてあるが、今夜は用心して二人以上の集まりで夜を過ごす事じゃ。お主もそれを届け終わった後は、レビィ達と集まるのじゃぞ、良いな?」

 

「了解。コレをナツ達に届けた後は、ドロイ達と駄弁りながら夜でも過ごしますよ」

 

 ジェットはギルドを後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジェットは原稿用紙をルーシィ宅に滞在していたメンバーに配り終える。

 渡した際のナツの表情は、ジェット風に言えば爆笑モノだったとここでは言おう。

 彼は暗くなった道を一人進む。

 

「ナツのあの表情は笑えたな。グレイとルーシィもナツと同じ様に反省文を書く事になったけど、ナツの表情には二人とも腹を抱えてたなー」

 

 彼はナツ達に渡した時の反応を思い出して笑う。

 

「――ジェット……」

 

「んっ? その声はドロ、イ……か…………?」

 

 ジェットは背後から聞こえた声に反応して振り返る。

 振り返った視界の先に、ドロイの姿はあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――痣や傷、身体の至る所を怪我している、親友(ドロイ)の痛ましい姿が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――済まねぇ……やられちまった……」

 

 その言葉を最後にドロイは、気を失って固いアスファルトへ身体を倒す。

 ジェットは倒れた彼の側へ慌てて駆け寄る。

 

「オイッ!!? 如何したッ!? 誰にやられたんだッッ!!? ドロイッッ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――そりゃあ、オレ様にやられて付いた傷さ……ギヒッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――あ゛?」

 

 ジェットは声が聞こえた裏路地へ目を向ける。

 彼の視界に黒の動かし易い服装をした一人の男が見えた。

 

「ほらっ! コレ(・・)も受け取っておきな!」

 

 そう言って男は手に持った何かを地面へ投げ捨てる。

 それは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………レビィ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう一人の親友、レビィの無残な姿であった。

 男は言葉を続ける。

 

「偶然、道端で見かけたからちょいと遊んでやったが……弱すぎて準備運動にすらならなかった。S級の神槍(アンタ)とチームを組んでるモンだから楽しめると思ったんだけどねぇ。まぁこうしてアンタと会えた訳だ……時間潰し程度にはなった。その点はそこのゴミ共に、感謝でもしとくべきか?」

 

「――――――――」

 

 ジェットは男の声が聞こえないかの様にドロイとレビィは安全な所へ静かに寝かせる。

 その姿に男は苛立ちを募らせる。

 

「おい? 無視は酷いんじゃねーか? 俺様がクズ如きに話しかけてやってるっていうのによ?」

 

 再度の言葉にジェットはやっと顔を敵へと向ける。

 その表情からは読み取れるのは、怒り。

 純粋な怒りだけを感じる。

 

「――――だけか?」

 

 ジェットは敵に対して静かに語る。

 

「…………あっ?」

 

 ジェットの言葉を聞き取れなかった男は疑問の声を上げる。

 いつものふざけた気配を微塵も感じさせる事無く、神槍(かれ)はもう一度、静かに告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――辞世の句は、それだけでいいのかと聞いてるんだ……! 屑鉄野郎(ガジル)……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ギヒヒッ!! 思い上がんなよ!! クズ風情がァッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここに、妖精の尻尾(フェアリーテイル)幽鬼の支配者(ファントムロード)の対決が始まる。

 

 

 

 

 

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