スピード規制は守る   作:カバ

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ファントムの目的

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――マグノリア病院

 

「――あの時オレが別行動を取らなければ、こんな事には……レビィ……ドロイ……ゴメンな」

 

 ジェットはベットに横たわる二人の前で、表情を暗くしながら謝罪の言葉を述べる。

 彼等は身体の至る所に包帯を巻き、未だ目を覚ましていなかった。

 眠ったレビィ達に謝るジェットの姿は痛々しいモノを傍目から感じ取れる。

 そんな彼に声を掛ける存在が居た。

 

「ジェットは悪くない!! 悪いのはガジルとファントムの奴等よ!!」

 

 ルーシィは彼に”貴方は悪くない”と励ます。

 彼女の優しさにジェットは笑みを溢す。

 

「――ルーシィ……ありがとう。オレはもう、大丈夫だ」

 

 仲間(ルーシィ)の言葉に失いかけてた自身を取り戻す。

 次が在るのなら、その時は力の限り戦おうと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガジルの襲撃から夜が明ける。

 倒した彼を引き摺ってマグノリアに戻った後、レビィ達をマグノリア病院へ運び込む。

 診察の結果、一週間もあれば傷も完全に癒えるだろうと医師に告げられる。

 ジェットはその結果に安堵した後、マスターとギルドの皆に現状を報告する。

 

「――そうか……ようレビィ達を守ってくれた、ジェット」

 

 ジェットの話を聞いたマスターは静かに労う。

 だが彼は否定する。

 

「――オレは、何もやってない……!! レビィ達を……守れなかった……!!」

 

 ジェットは自身の不甲斐無さに涙を流す。

 そんな彼に(マスター)は厳しく接する。

 

「――お主はお主が出来る最善を尽くした。それ以上を望むのは高望みという一緒じゃ」

 

「けどッ!! オレなら助けられた……!! 助けられたんだ……!!」

 

「――お主がダメならば……わしはガキが傷つく可能性を見逃した愚か者じゃよ……」

 

 マスターは愁いを帯びた顔でレビィ達を見やる。

 ジェット以上にマスターはこの結果に遣る瀬無さを感じていた。

 

 しかし、マスターはその感情を抑える。

 それは今は目の前に鎮座した問題を片付けるのが先だからだ。

 自身の考えを告げる。

 

「――ガジルが襲撃したのは、ヤツの独断専行ではなくファントム(ギルド)全体の意見……いや、ジョゼの企みじゃろう。それ故、今回の事件を解決する一番早い方法は……」

 

「――マスター・ジョゼを倒す……ですか?」

 

 マスターはジェットの言葉に頷く。

 

「うむ、ジョゼ(バカ)はワシを怒らせて引きずり出そうとしておる。ギルドを襲った事、レビィ達に手を出した事、それら全てワシに対しての挑発行為であろう。彼奴を討たない限り、今回の様な襲撃が今後も起こるじゃろうな……」

 

「……マスターは、アイツ等の襲撃に今後も静観する御つもりですか?」

 

 ジェットの発言にマスターは決断する。

 

「……此方からファントムに手を出さなければ、彼奴は何時かは評議会に連行される」

 

 その言葉に口を挿もうとするが、マスターの表情を観て止める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――じゃがな……ガキの血を見て黙ってる親は居ねぇんだよォ……ジョゼ……!!」

 

 自分達(ガキ)の為に(マスター)が怒っている。

 それだけで、ジェットの心は温かくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――戦争じゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「済まないな、ルーシィ。レビィ達の看病を手伝ってもらって」

 

 ジェットは皆がファントムに出撃した中、レビィ達の為に残ってくれたルーシィに感謝する。

 彼女は彼の言葉に”気にしないで”と返す。

 

「アタシもレビィちゃん達が心配だったし全然平気!」

 

「……それでも、オレは礼を言いたい。コイツ等はオレにとって大切な仲間(かぞく)なんだ」

 

「――ジェット……」

 

 優しい笑みを浮かべながら二人を見つめる彼に、ルーシィは母であるレイラを思い出す。

 母もよくこの様な表情で自分を見つめていたと……。

 彼女の視線にジェットは気付く。

 

「ん? 何かオレの顔に付いてるか?」

 

「ッ!? ううん! 何でも無い! アタシ、ちょっと買い出しに行ってくるね!」

 

 気恥ずかしくなった彼女はレビィ達の病室を後にする。

 彼女の変化に若干戸惑うが”別にいいか”と気に留めなかった。

 

 ジェットも彼女に続く形で一旦レビィ達の病室を後にする。

 病室を出た後に病院内を移動し、とある一室の前で足を止める。

 

「――オイ、起きろや。屑鉄野郎」

 

 部屋の主に断りもなくズカズカと入室。

 そこには今回の襲撃犯である『鉄竜(くろがね)のガジル』の姿が在った。

 

「……………………何だ?」

 

 彼も身体に包帯を巻いていたが、思いの外に元気だった。

 ジェットもこの結果には相当数の舌打ちをしたものだ。

 彼は顔を顰めながらガジルに話し掛ける。

 

「……結構、最後は本気で打ち込んだ筈なんだがな?」

 

「ギヒヒッ! 言っただろ? オレ様の鋼鉄(からだ)は丈夫なんだよ」

 

「……まっ、今更そんな事どうでも良い。オマエに幾つか聞きたい事がある」

 

 ジェットの話を聞いてガジルが現状に納得する。

 

「……その為にオレ様を病院に担ぎ込んだ訳か」

 

「オレ的には滅茶苦茶、不本意だけどな……」

 

 ジェットは眉間に皺を寄せながら告げる。

 

「……で? そこまでして、オマエはオレから何を聞き出したいんだ?」

 

「――オマエ等が隠してる……本当の目的を吐け」

 

「……一体、何の話だ?」

 

 ガジルは惚ける様に告げる。

 ジェットは気にせず話を続ける。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)幽鬼の支配者(ファントムロード)の仲が悪いのは周知の事実だ。武力衝突になりそうだった時も昔から数多く存在する。だが互いに、最後の一線だけは越えなかった」

 

 ジェットは互いの関係を文献で読み、根が深い事を知る。

 だから今回の襲撃は腑に落ちなかった。

 

「そんな関係を続けてきたオマエ達が、今更オレ達に喧嘩を売った? マスターとジョゼが最後に会ったのは六年前だと聞く。人伝に聞いたジョゼの性格を考えてみても、考え無しに行動するとはとても思えない。何か切欠があった筈だ。少なくとも、争いを起こそうとする切欠がな……」

 

「……………………ギヒヒヒヒッ!!」

 

 ジェットの憶測にガジルは嗤うだけだった。

 彼はそんなガジルの胸倉を乱暴に持ち上げる。

 

「――オイ、オレはオマエに対して怒りしか感じてないんだ。さっさと白状しないと新しい傷を鋼鉄(からだ)に刻むぞ? お゛?」

 

「おおォ! 怖い怖い! 乱暴なヤツだなぁ……ギヒヒッ!」

 

 ガジルはニタニタと嗤う。

 ジェットがその対応にキレて拳を一発打ち込もうとする。

 

 その時、彼等が居る病室にミラが駆け込んで来る。

 彼女はジェットを見つけると叫ぶように伝える。

 

「ジェットッ!! ルーシィが攫われたわッ!! 男女二人組があの子を攫って行くのを街の何人か目撃したってッ!!」

 

 彼女の言葉に顔色を変える。

 

「ッ!? ルーシィッ!? 何でだッ!? ……マスター達に対しての人質かッ?」

 

 騒然とする場にガジルが唐突に告げる。

 

「――ハートフィリア財閥(コンツェルン)令嬢 ルーシィ・ハートフィリア」

 

「……? …………ッッッ!!? オマエ達の狙いは、最初からルーシィかッ!?」

 

 敵の狙いに、漸く合点がいくジェット。

 ガジルが得意げに告げる。

 

「オレ等のマスターはマカロフと違って、あの女(ルーシィ)を存分に利用して金を巻き上げてやるんだとさ。残念だったな、また助けられなくて? ギヒヒヒ――ィッ!?」

 

 嗤うガジルに一撃を叩き込む。

 ベットに沈む彼の姿を見届けたジェットはミラに問う。

 

「ミラ……ファントムの本部は何処にある?」

 

「まさか乗り込むつもりッ!? 貴方がS級でもそれは無茶よ!! ジョゼには勝てないわ!!」

 

 ミラはジェットの無謀な行動を咎める。

 その反応に彼は笑みを浮かべる。

 

「――オレを誰だと思ってる? 逃げ足なら誰にも負けた事が無い『神速のジェット』様だぜ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――聖十の魔導士(ジョゼ)から囚われの姫様(ルーシィ)を掻っ攫ってくるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人の魔導士(イレギュラー)により、正史の時空軸とは違う終わりが見え始める。

 

 

 

 

 

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